トレース ネットワークの作成
アショカン貯水池の汚染が上流と下流に与えうる影響を調べるには、まずトレース ネットワークを作成します。 トレース ネットワークとは、各河川が流れる方向 (方向性ともいう) の情報を含むデータセットです。
プロジェクトの作成
まず、このチュートリアルで使用するデータをダウンロードし、ArcGIS Pro の新しいプロジェクトに追加します。
- Ashokan_Data 圧縮フォルダーをダウンロードします。
- コンピューター上で、ダウンロードしたフォルダーを確認します。
注意:
お使いの Web ブラウザーによっては、ダウンロードを開始する前に、ファイルの場所を選択するよう求めるメッセージが表示される場合があります。 ほとんどのブラウザーでは、デフォルトでコンピューターのダウンロード フォルダーがダウンロード先の場所になります。
- フォルダーを右クリックし、[すべて展開] を選択します。 [展開先の選択とファイルの展開] で、[参照] ボタンをクリックします。
- チュートリアル データを格納するドキュメント フォルダーなどのフォルダーを参照して、[フォルダーの選択] をクリックし、[展開] をクリックします。
展開したフォルダーには、ArcGIS Pro で使用できる複数のフィーチャクラスを含むジオデータベースが格納されています。
- ArcGIS Pro を起動します。 サイン インを求められたら、ライセンスが割り当てられた ArcGIS 組織アカウントを使用してサイン インします。
注意:
ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください。
- [新しいプロジェクト] の下の [マップ] をクリックします。
- [新しいプロジェクトの作成] ウィンドウで、[名前] に「Ashokan_Trace」と入力します。 [OK] をクリックします。
デフォルト マップでプロジェクトが作成されます。 ダウンロードしたジオデータベースにフォルダー接続を追加し、データにすばやくアクセスできるようにします。
- [カタログ] ウィンドウで [データベース] を右クリックして [データベースの追加] を選択します。
- [既存のジオデータベースを選択] ウィンドウで、展開した Ashokan_Data.gdb ジオデータベースを参照し、選択します。 [OK] をクリックします。
ジオデータベースが [カタログ] ウィンドウに追加されます。
データのマッピング
次に、アショカン貯水池のデータをマップに追加し、そのデータについて学びます。
- [カタログ] ウィンドウで [データベース] を展開し、[Ashokan_Data.gdb] を展開します。
ジオデータベースには、[Ashokan_Streams]、[Permitted_Discharger_Origin]、[Storm_Drain_Origin] の 3 つのフィーチャクラスが含まれています。 河川データは USGS (United States Geological Survey) から取得したもので、残り 2 つのフィーチャクラスは、このチュートリアルで汚染の発生地点を表すために作成されたものです。
- [Ashokan_Streams] を右クリックし、[現在のマップに追加] を選択します。
河川ネットワークがマップに追加されます (河川のデフォルト シンボルは、サンプル画像とは異なる場合があります)。
河川は、大きい貯水池の周囲にあります。 データの属性を探索し、理解を深めます。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Ashokan Streams] を右クリックし、[属性テーブル] を選択します。
テーブルが表示されます。 このデータセットには、多数の属性が含まれています。 トレース解析で特に重要な属性の 1 つとして、[Flow Direction] があります。
この属性は、各河川セグメントの方向性を示します。 このデータセットでは、すべての河川セグメントのフロー方向は 1 です。 このデータセットで 1 とは、フィーチャが最初にデジタイズされた方向とフロー方向が同じであることを意味します (水は、ラインの最初の頂点から最後の頂点に向かって流れます)。
注意:
トレース ネットワークで独自の河川データセットを使用するか作成する場合、すべての河川セグメントが同じ方向に流れるよう正しくデジタイズされていることを確認する必要があります。 このチュートリアルでは、河川データセットにフロー方向を追加する手順は説明しません。 詳細については、「トレース ネットワークのフロー方向」のトピックをご参照ください。
- テーブルを閉じます。
- [カタログ] ウィンドウから [Storm_Drain_Origin] データセットと [Permitted_Discharger_Origin] データセットをマップに追加します。
[Storm_Drain_Origin] レイヤーは、汚染が観察された場所です。 [Permitted_Discharger_Origin] レイヤーは、考えられる汚染源です。 どちらの場所も、貯水池の北端にあります。
トレース ネットワークの作成
GIS のネットワークとは、通常、特別なプロパティを持つライン フィーチャのグループを指します。 たとえば、ネットワーク データセットには、特定のプロパティ (速度制限、U ターンの可否など) を持つ道路を表すライン フィーチャが含まれており、それらのライン フィーチャが、ある場所への最適ルートや最速ルートを判断する解析において必要となることがあります。 ユーティリティ ネットワークには、公益事業の会社が所有する配管や電線などのインフラストラクチャを表すライン フィーチャが含まれています。
方向性を持つ河川やその他の線形オブジェクト (鉄道など) は、トレース ネットワークで効果的に表されます。 このようなネットワークでは、ライン フィーチャには、それらの移動方向に関する情報が含まれています。
河川データセットには、各河川フィーチャの方向性を示す [フロー方向] という属性フィールドがあります。 このフィールドを使用してトレース ネットワークを作成し、汚染が観察された場所から上流と下流の位置をトレースするために使用します。
まず、空のフィーチャ データセットを作成し、河川データとトレース ネットワークを含めます。 フィーチャ データセットを使用すると、すべてのフィーチャクラスが共通する座標系を共有し、トレース ネットワークの作成が簡素化されます。
- [カタログ] ウィンドウで [Ashokan_Trace.gdb] を右クリックし、[新規] にポインターを合わせて [フィーチャ データセット] を選択します。
[ジオプロセシング] ウィンドウが表示され、[フィーチャ データセットの作成] ツールが表示されます。
- [フィーチャ データセット名] に「Ashokan_Streams_Dataset」と入力します。 [座標系] で [現在のマップ] を選択します。
[現在のマップ] を選択すると、マップの座標系 (NAD 1983 StatePlane New York East FIPS 3101) が選択されます。
- [実行] をクリックします。
ツールが正常に実行されます。 空のフィーチャ データセットが作成され、出力ジオデータベースに追加されます。 河川データをこのデータセットに追加します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの下部にある [カタログ] タブをクリックします。
[カタログ] ウィンドウに戻ります。
- [データベース] で [Ashokan_Trace.gdb] を展開します。 [Ashokan_Streams_Dataset] を右クリックし、[インポート] にポインターを合わせて [複数のフィーチャクラス] を選択します。
ヒント:
[Ashokan_Streams_Dataset] が表示されない場合は、[Ashokan_Trace.gdb] を右クリックして [更新] を選択します。
[フィーチャクラス → ジオデータベース (マルチプル)] ジオプロセシング ツールが開きます。
- [入力フィーチャ] で [Ashokan Streams] を選択します。 [出力ジオデータベース] で [Ashokan_Streams_Dataset] が選択されていることを確認します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、河川データがフィーチャ データセットにコピーされます。 これで、河川をトレース ネットワークに変換する準備が整いました。 これを行うために、適切なジオプロセシング ツールを検索します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。
- [ツールの検索] 検索バーに「トレース ネットワークの作成」と入力します。 検索結果のリストで [トレース ネットワークの作成 (トレース ネットワーク ツール)] を選択します。
- [トレース ネットワークの作成] ツールの [入力フィーチャ データセット] で [参照] ボタンをクリックします。
- [入力フィーチャ データセット] ウィンドウで [Ashokan_Trace.gdb] を参照し、[Ashokan_Streams_Dataset] をダブルクリックします。
残りのパラメーターについては、トレース ネットワークに名前を付け、入力エッジ (河川データ) を選択するだけです。 また、リソースが河川の一方の端からもう一方の端まで流れるか (シンプル エッジ)、河川に沿ってリソースの流れが変わるか (コンプレックス エッジ) を定義する接続性ポリシーも選択します。 このチュートリアルでは、河川は一方の端からもう一方の端まで流れることとし、流れは変わらないことを想定します。
- [トレース ネットワーク名] に「Hydro」と入力します。 [入力エッジ] の [クラス名] で [Ashokan_Streams] を選択します。 [接続性ポリシー] が [シンプル エッジ] に設定されていることを確認します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、[Hydro トレース ネットワーク] レイヤーと [Ashokan_Streams] レイヤーがマップに追加されます。 続行する前に、チュートリアルで先に追加した元の河川データを削除します。
- [コンテンツ] ウィンドウで、元の [Ashokan Streams] レイヤー (アンダースコアなし) を右クリックし、[削除] を選択します。
ネットワーク トポロジの有効化
トレース ネットワークを作成すると、マップに半透明の紫色のポリゴンが追加され、マップ範囲全体が覆われます。 このポリゴンは、トレース ネットワークに含まれる [ダーティ エリア] レイヤーです。 これは、フィーチャ間の接続性を維持するネットワーク トポロジのエラーを表します。 現在、ネットワーク トポロジがトレース ネットワークに対して正しく有効化されていないため、レイヤーがマップ全体を覆っています。
ネットワーク トポロジを有効にする前に、ネットワーク属性を作成し、構成します。 ネットワーク属性とは、トレース解析に対して構成された、元の河川フィーチャクラス内の属性のことです。 ネットワーク属性には、ネットワーク トポロジに必要なトポロジ情報が含まれています。
ここでは、元のデータの [Length (KM)] 属性に基づき、各河川の長さを含むネットワーク属性を構成します。 この属性がネットワーク属性として明確に設定されていない限り、河川の長さを計算するために使用されることはありません。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 [ネットワーク属性の追加 (トレース ネットワーク ツール)] を検索し、開きます。
このツールは、空のネットワーク属性を作成します。 属性は元の属性と同じタイプであり、同じ NULL 値を許可する設定でなくてはなりません (これにより、NULL 値が使用できるかどうかが決定されます)。 ここでは、[Length (KM)] 属性は [Double] タイプで NULL 値を許可する設定になっています。
ヒント:
フィールド タイプと NULL 値を許可する設定を確認するには、フィールドのレイヤーの属性テーブルを開きます。 リボンで [フィールド] をクリックし、[フィールド] ビューを開きます。 このビューには、レイヤーのすべての属性の設定がリスト表示されます。
- [ネットワーク属性の追加] ツールで、次のパラメーターを設定します。
- [入力トレース ネットワーク] で [Hydro トレース ネットワーク] を選択します。
- [属性名] に「Length_KM」と入力します。
- [属性タイプ] で [Double (64 ビット浮動小数点)] を選択します。
- [NULL 値を許可] をオンにします。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、空のネットワーク属性が作成されます。 次に、元の [Ashokan Streams] フィーチャクラスの既存の属性を使用するよう、ネットワーク属性を設定します。
- [戻る] ボタンをクリックします。 [ネットワーク属性の設定 (トレース ネットワーク ツール)] を検索し、開きます。
- 次のパラメーターを設定します。
- [入力トレース ネットワーク] で [Hydro トレース ネットワーク] を選択します。
- [ネットワーク属性] で [Length_KM] を選択します。
- [フィーチャクラス] で [Ashokan_Streams] を選択します。
- [フィールド] で [lengthkm] を選択します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、ネットワーク属性が設定されます。 重要なトポロジ情報を含むネットワーク属性を作成したので、次に、トレース ネットワークのネットワーク トポロジを有効にします。 ネットワーク トポロジは、トレース解析の実行とネットワーク ダイアグラムの作成に不可欠です。
- [戻る] ボタンをクリックします。 [ネットワーク トポロジの有効化 (トレース ネットワーク ツール)] を検索し、開きます。
このツールに必要なのは、1 つの入力パラメーターのみです。 トレース ネットワークが正しく作成されていれば、ツールは正常に実行されます。
- [入力トレース ネットワーク] で [Hydro トレース ネットワーク] を選択します。
- [実行] をクリックします。
マップ全体を覆っていた大きな半透明のポリゴンがなくなり、各河川フィーチャの端にあるポイントに置き換わります。 各河川の長さを設定し、ネットワーク トポロジを有効にしたことで、トレース ネットワークは各河川の始点と終点を正しく特定できるようになりました。
- [クイック アクセス ツールバー] で、[保存] ボタンをクリックして、プロジェクトを保存します。
チュートリアルのデータを正常にダウンロードし、ArcGIS Pro にマッピングして、正しいネットワーク トポロジでトレース ネットワークを作成しました。 次に、トレース ネットワークを使用して、汚染が観察された場所から上流と下流を調査します。
トレース解析の実行
トレース ネットワークを構成し、解析の準備が整いました。 次に、汚染が観察された場所の上流と下流のエリアを把握したいと考えています。 上流トレースは汚染の生じうる発生源を理解し、下流トレースは汚染の影響がどこに及ぶのかを理解するのに役立ちます。
始点の選択
まず、汚染が発見された雨水排水管と、トレース解析を開始する地点を表す、トレース ネットワークの始点を選択します。 この地点を表すレイヤーはすでに作成したので、参照用として使用できます。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Hydro トレース ネットワーク] のチェックボックスをオフにします。
ネットワークが非表示になり、雨水排水管のポイントがわかりやすくなります。
- マップで [Storm Drain Origin] ポイントにズームします。
ポイント自体は、河川データとは異なるレイヤーから取得されているので、トレース ネットワークの一部ではありません。 この位置に基づいてトレース ネットワークに新しいポイントを追加します。
- リボンで [トレース ネットワーク] タブをクリックします。
このタブは、トレース ネットワークを作成したときにリボンに作成されました。
- [ツール] グループで [トレース] ドロップダウン メニューをクリックし、[始点] を選択します。
[トレース] ウィンドウが表示されます。 デフォルトでは、[フィーチャの追加] が選択されており、ネットワークにポイントを作成できる状態になっています。
- マップ上で、[Storm Drain Origin] ポイントに近いトレース ネットワーク内の位置をクリックします。ここでは Boulevard Road の北側です。
注意:
トレース ネットワーク内のポイントを正確にクリックすると、トレース ネットワークではなく [Storm Drain Origin] フィーチャをクリックすることになるため、ポイントを作成できない可能性があります。 トレースでは、ポイントが始点として位置する河川セグメント全体を使用するため、この例では起点から少しずれた場所にポイントを追加してもかまいません。
クリックした位置に緑色のポイントが追加されます。 [トレース] ウィンドウで、[Ashokan_Streams] という新しい始点が追加されます。 98 という数字は、ポイントが位置する河川セグメントの ID を表します (クリックした場所によっては、数字が異なることがあります)。
上流トレースの実行
次に、選択した始点から上流トレースを実行します。
- リボンの [トレース ネットワーク] タブで、[ツール] グループの [上流] をクリックします。
[ジオプロセシング] ウィンドウが開き、[トレース] ツールが表示されます。 デフォルトで複数のパラメーターが設定されています。
- 次のパラメーターが選択されていることを確認します。
- [入力トレース ネットワーク] で [Hydro トレース ネットワーク] が選択されていることを確認します。
- [トレース タイプ] で [上流] が選択されていることを確認します。
- [始点] で [TN_Temp_Starting_Points] が選択されていることを確認します。
- [バリア] で [TN_Temp_Barriers] が選択されていることを確認します。
- [バリア フィーチャを含める] と [一貫性の検証] がオンになっていることを確認します。
これらの設定では、トレース ネットワークと、上流トレースを実行するために作成した始点を使用します。 現時点では、トレース ネットワークにはバリアがないので、バリア フィーチャを含めるかどうかは関係ありません。
[一貫性の検証] オプションでは、トレース結果とネットワーク トポロジとの一貫性を保証します。 このオプションがオンのときに、ダーティ エリアがトレース パスと交差するとツールは失敗します。 先ほどネットワーク トポロジを正常に有効にしたため、このエラーは発生しないはずです。
- [実行] をクリックします。
注意:
エラー メッセージが表示される場合、問題の原因は不正なトポロジではない可能性があります。 [一貫性の検証] をオフにして、ツールをもう一度実行してください。そうすると、データのエラーに起因するダーティ エリアがトレースされます。 フロー方向が正しく設定されていなくてもエラーは表示されませんが、トレースが停止したり、予期しない結果を表示したりする場合があります。
ツールが実行され、トレースが完了します。 始点の上流にあるエリアがマップ上でハイライト表示されます。 これらは、汚染源となった可能性があるエリアです。
始点がセグメントの始めになくても、始点が位置する河川セグメント全体が選択されます。 フィーチャの一部ではなく全体が選択されるため、この結果は予期したとおりです。
これらの結果はデータ上で一時的に選択されるだけなので、トレース解析をすばやく実行する場合に便利です。 ただし、この解析の結果を他の結果と比較するには、トレース解析の結果を新しいフィーチャクラスとして保存するのも有益です。 解析をもう一度実行し、今度はパラメーターを変更したうえで結果を保存します。
- リボンの [編集] タブをクリックします。 [選択] グループで、[選択解除] をクリックします。
選択が解除されます。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [高度な設定] を展開します。
このセクションには、結果に関するオプションなど、トレース解析向けのその他のオプションが含まれています。 集約されたジオメトリを保存すると、結果はジオメトリのタイプ (ポイント、ライン、ポリゴン) ごとにマルチパート フィーチャクラスとして保存されます。
- セクションの下部までスクロールします。 [結果タイプ] で [集約されたジオメトリ] を選択します。
以前のトレース結果を消去するオプションをオフにすると、比較するために、異なるトレース解析操作から得た複数のレコードを作成することができます。
- [以前のトレース結果をすべて消去] をオフにします。
- [トレース名] で「Trace_Interactive」と入力します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行されます。 [Trace_Results_Aggregated_Points] と [Trace_Results_Aggregated_Lines] という 2 つのレイヤーが作成され、マップに追加されます。 ポイント レイヤーは、各河川セグメントの終点を示し、ラインはセグメント自体を示します。
上流セグメントだけを選択したときとは異なり、新しいフィーチャクラスには、始点が位置する河川セグメント全体は含まれず、上流側にある部分だけが含まれます。 既存のフィーチャの一部だけを選択することはできませんが、既存のフィーチャの一部のみを含むフィーチャを作成することはできます。
上流トレースを実行しました。 続行する前に、作成した始点をクリアします。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの下部で [トレース] タブをクリックします。
- [トレース] ウィンドウで [すべて消去] をクリックします。
始点が消去され、ウィンドウとマップから削除されます。
ヒント:
または、リボンの [トレース ネットワーク] タブをクリックし、[トレース位置] ドロップダウン メニューをクリックして、[すべて削除] を選択して、始点を消去することもできます。
- プロジェクトを保存します。
トレース ネットワークへのポイントのスナップ
トレース解析の実行時に、マップに対話的に追加した起点の近似値を使用しました。 この近似値は、解析をすばやく実行するには便利でしたが、さらに精度を向上したい場合はどうでしょうか。 ネットワークに含まれていない別のフィーチャクラスのポイントを使用し、トレース解析を実行できます。 ただし、ポイントはネットワークに正確に配置されている必要があります。 近ければ良いというものではなく、フィーチャ ジオメトリにおけるわずかな違いが予期せぬ結果を招くことがあります。
次に、[Storm Drain Origin] レイヤーと [Permitted Discharger Origin] レイヤーをトレース ネットワークにスナップします。 スナップすることで、あるフィーチャが別のフィーチャと正確に位置合わせされるため、正確なトポロジを必要とする解析で使用できるようになります。
まず、スナップ時にフィーチャ ジオメトリに加えられた変更が元のデータに影響しないよう、フィーチャクラスを新しいフィーチャクラスにコピーします。 レイヤーのジオメトリを変更する前に、常にレイヤーのコピーを作成することをお勧めします。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 「フィーチャのコピー」を検索し、[フィーチャのコピー (データ管理ツール)] を開きます。
- [入力フィーチャ] で [Storm Drain Origin] を選択します。 [出力フィーチャクラス] で「Storm_Drain_Snap」と入力します。
- [実行] をクリックします。
フィーチャクラスがコピーされ、そのコピーがマップに追加されます。 次に、それを河川データにスナップします。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 「スナップ」を検索し、[スナップ (編集ツール)] を選択します。
雨水排水管のポイントを、最大 50 メートルの範囲内で、河川データ内にある最寄りの頂点にスナップします。
- 次のパラメーターを設定します。
- [入力フィーチャ] で [Storm_Drain_Snap] を選択します。
- [スナップ環境] の [フィーチャ] で [Ashokan_Streams] を選択します。
- [種類] で [頂点] を選択します。
- [距離] で「50」と入力し、[メートル] を選択します。
- [実行] をクリックします。
雨水排水管ポイントが河川フィーチャの頂点にスナップされました。
[Permitted Discharger Origin] ポイントに対し、コピーとスナップの処理を繰り返します。 このポイントは、考えられる汚染源を表します。 後のトレース解析でこれをバリアとして使用するため、これも河川ネットワークにスナップする必要があります。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 [フィーチャのコピー] ツールを検索し、開きます。
- [入力フィーチャ] で [Permitted Discharger Origin] を選択します。 [出力フィーチャクラス] で「Permitted_Discharger_Snap」と入力します。
- [実行] をクリックします。
ポイントがコピーされました。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 [スナップ] ツールを検索して開きます。
- 次のパラメーターを設定します。
- [入力フィーチャ] で [Permitted_Discharger_Snap] を選択します。
- [スナップ環境] の [フィーチャ] で [Ashokan_Streams] を選択します。
- [種類] で [頂点] を選択します。
- [距離] で「50」と入力し、[メートル] を選択します。
- [実行] をクリックします。
両方のポイントがトレース ネットワークにスナップされ、解析の準備が整いました。 元のポイント レイヤーは必要なくなったため、プロジェクトから削除できます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Storm Drain Origin] を右クリックして、[削除] を選択します。 [Permitted Discharger Origin] レイヤーも削除します。
バリアを使用したトレースの実行
上流トレース解析をもう一度実行します。ただし、今回は最初の解析のように対話的に選択した始点ではなく、スナップした雨水排水管ポイントを始点として使用します。 スナップしたポイントを使用すると、結果の精度が高くなります。
また、スナップした認可された排水設備レイヤーをバリアとして使用して解析を実行します。 バリアとは、トレース解析を停止する終点を示します。 この例では、認可された排水設備を汚染源として想定した場合、汚染源と汚染が観察された場所の間のエリアをトレースして、どのエリアがすでに汚染されているかを把握できます。
- リボンで [トレース ネットワーク] タブをクリックします。 [ツール] グループで [上流] をクリックします。
[トレース] ツールが表示されます。 前回の解析と同じようにパラメーターを設定しますが、スナップしたポイントを始点およびバリアとして使用します。
- 次のパラメーターを設定します。
- [入力トレース ネットワーク] で [Hydro トレース ネットワーク] が選択されていることを確認します。
- [トレース タイプ] で [上流] が選択されていることを確認します。
- [始点] で [Storm_Drain_Snap] を選択します。
- [バリア] で [Permitted_Discharger_Snap] を選択します。
- [高度な設定] を展開します。 [結果タイプ] で [選択] を選択します。
結果タイプが選択されていなければ、選択がデフォルトのオプションになります。 高度な設定を指定せずに初めて解析を実行した場合、結果はトレース ネットワーク上の選択になります。 選択と、集約されたジオメトリを含む新しいフィーチャクラスの両方を受け取るために、結果タイプをさらに追加します。
- [結果タイプ] で、[選択] の下の新しいドロップダウン メニューをクリックして [集約されたジオメトリ] を選択します。
- [以前のトレース結果をすべて消去] をオフにします。 [トレース名] で「Trace_with_Barrier」と入力します。
[集約されたポイント] パラメーターと [集約されたライン] パラメーターに警告が表示されます。 これらの警告は、これらのパラメーターが指定したフィーチャクラスがすでに存在することを示しています (前回、トレース解析を実行したときに作成済みです)。
他の多くのジオプロセシング ツールでは、すでに存在する出力フィーチャクラスを使用すると、既存のフィーチャクラスが上書きされます。 しかし、このツールでは、既存のフィーチャクラスに新しいフィーチャを追加するだけなので、属性テーブルを使用して複数のトレース解析の結果を比較することができます。 警告は無視してかまいません。
- [実行] をクリックします。
解析が実行されます。 マップに選択が追加され、始点とバリアの間にある河川セグメントがハイライト表示されます。
前回と同様、選択は上流にあるセグメントの一部のみならず、河川セグメント全体を網羅します。 これは、河川セグメントの一部のみを選択することが不可能な、元のトレース ネットワーク上で選択されるために発生します。
- リボンの [編集] タブをクリックします。 [選択] グループで、[選択解除] をクリックします。
選択を解除すると、集約されたライン フィーチャクラスが、始点から下流のエリア全体を網羅するように表示されます。このとき、選択したバリアは考慮に入れられません。 しかし、これは前回の解析と同じフィーチャクラスに結果を追加したからです。 属性テーブルを使用し、結果を比較して視覚化できます。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Trace_Results_Aggregated_Lines] を右クリックし、[属性テーブル] を選択します。
テーブルには、[Trace_Interactive] (前回のトレース解析の結果) と [Trace_with_Barrier] (最新の結果) の 2 つのレコードが含まれています。 テーブルには、各トレースの長さもリストされています。
注意:
値は多少異なる場合があります。
- [Trace_Interactive] で、レコードの左側にある 1 をクリックして選択します。
テーブルでレコードを選択すると、マップでも選択されます。 選択は、バリアを含まない前回のトレース結果のエリアを網羅します。
- [Trace_with_Barrier] で、レコードの左側にある 2 をクリックして選択します。
マップ上の選択が更新されます。 これで、バリアを含むトレース解析の結果が表示されます。 上流トレースは、認可された排出設備ポイントの位置に到達すると停止します。
元の選択とは異なり、この選択では、最初の河川セグメントの上流部分のみが表示されます。 これは、元のトレース ネットワークで行われた選択ではなく、集約されたポイント フィーチャクラスの選択を見ているからです。
- 属性テーブルで [解除] をクリックして選択を解除します。
各フィーチャの [Shape_Length] フィールドは、各トレースに含まれる河川セグメントの長さをメートル単位で示します。 元のトレースの長さは約 6,378 メートルで、バリアを含むトレースの長さは約 4,777 メートルです。
これらの結果から、認可された排出設備の場所と汚染が観察された場所との間に、4,777 メートルの河川があることが予想されます。 認可された排出設備の場所の上流には、さらに 1,600 メートルの河川があります。 予想通り、汚染源が認可された排出設備の場所ではない場合は、その 1,600 メートルに対して別の潜在的な汚染源を調査する必要があります。
- 属性テーブルを閉じます。
下流トレースの実行
これまでは、観察された汚染地点の上流に焦点を当ててきました。 上流解析は、潜在的な汚染源を特定するうえで役立ちます。 次に、下流のどのエリアが汚染されている可能性があるかに注目します。
水文学者は、水量の増加に伴って汚染は希釈されると想定します。 水量は河川の幅や深さによって変化するため、ここでは河川の長さの総和を水量の代わりに使用します。 要するに、汚染が移動して下流方向に進むにつれて、希釈も進むということです。 下流トレースを行う場合、この下流での希釈を示すために関数バリアを使用します。
- リボンで [トレース ネットワーク] タブをクリックします。 [ツール] グループで [下流] をクリックします。
[トレース] ツールが表示されますが、今回は [トレース タイプ] を [下流] に設定します。
- 次のパラメーターを設定します。
- [入力トレース ネットワーク] で [Hydro トレース ネットワーク] が選択されていることを確認します。
- [トレース タイプ] で [下流] が選択されていることを確認します。
- [始点] で [Storm_Drain_Snap] を選択します。
バリア パラメーターはデフォルトのまま残し、関数バリアを高度な設定で指定します。 関数バリアは、固定されたポイント フィーチャではなく、計算に基づくものです。 指定された関数の条件を満たすかどうかに基づき、トレースの範囲を定義します。 関数バリアを使用して最大値を設定すると、それに到達したときにトレースは停止します。
この例では、下流トレースが終了するまでの最大値を 0.5 キロメートル (500 メートル) に指定します。 この値は、水路に新たな汚染源が入り込まないことを前提に、汚染が通常レベルに近い値まで希釈されるまでの距離を概算するために使用されます。 この関数バリアは、トレース解析で使用する目的で作成し、トレース ネットワークに追加した、[Length_KM] フィールドを使用して設定できます。
- [高度な設定] を展開します。 [関数バリア] で次のパラメーターを設定します。
- [関数] で [加算] を選択します。
- [属性] で [Length_KM] を選択します。
- [演算子] で [以上] を選択します。
- [値] で「0.5」と入力します。
- [ローカル値の使用] がオンであることを確認します。
この下流解析では、デフォルトの選択結果タイプを使用するため、他のパラメーターは変更しません。
- [実行] をクリックします。
下流トレースが実行されます。 マップ上で、始点から下流方向に向かう、最初の 500 メートルの累積河川距離が選択されます。
選択は、河川がアショカン貯水池に到達するのとほぼ同じ地点で終了します。アショカン貯水池は水量が多いため、汚染を軽減するフィーチャです。
- リボンの [編集] タブをクリックします。 [選択] グループで、[選択解除] をクリックします。
- プロジェクトを保存します。
このチュートリアルでは、汚染が観察された場所から上流と下流の河川ネットワークをトレースしました。 トレース ネットワークを作成し、ネットワーク トポロジを有効にし、複数のトレース解析を実行しました。 その結果を見ることで、汚染の発生地点と、どの程度移動すれば希釈されるかを判断できるようになりました。
他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。