マップへの多次元データの追加

まず、データをマップに追加します。 次に、地図投影法を、解析に適したものに変更します。

データの追加

このチュートリアルで使用するデータは、Zip ファイルとして ArcGIS Online 上でホストされます。 マップにデータを追加するには、データをダウンロードして解凍し、ArcGIS Pro で新しいプロジェクトを作成します。

  1. Multidimensional Data to Predict Coral Bleaching Events」zip ファイルをダウンロードします。
    注意:

    お使いの Web ブラウザーによっては、ダウンロードを開始する前に、ファイルの場所を選択するよう求めるメッセージが表示される場合があります。 ほとんどのブラウザーでは、デフォルトでコンピューターのダウンロード フォルダーがダウンロード先の場所になります。

  2. [MultidimensionalAnalysis_SampleDataset.zip] ファイルの内容を、選択した場所に展開します。

    このレッスン用にパッケージされたデータは、NCAR Research Data Archive からのものです。 パッケージには、CFSR (Climate Forecast System Reanalysis、気候予測システム再分析) 製品に含まれる netCDF (Network Common Data Form、ネットワーク共通データ フォーム) ファイルが含まれています。このファイルには、35 年間にわたる月ごとの海面温度データが、0.5 度の空間解像度で保存されています。 netCDF 形式は、多次元の科学的データの保存および管理で一般に使用されます。

  3. ArcGIS Pro を開き、ArcGIS アカウントにサイン インします。
    注意:

    ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください

    ArcGIS Pro が開くと、[新しいプロジェクト] 見出しの下に、空白のプロジェクト テンプレートのリストが表示されます。 すでにプロジェクトを作成している場合は、[最近使用したプロジェクトを開く] の下にそのプロジェクトが表示されます。

  4. [新しいプロジェクト] の下の [マップ] をクリックします。

    マップ テンプレート

    [マップ] テンプレートは、Topographic ベースマップが含まれている 2D マップを含むプロジェクトを作成するために使用できます。

  5. [新しいプロジェクトの作成] ウィンドウの [名前] に「Coral Bleaching Prediction」と入力します。
  6. [このプロジェクトのための新しいフォルダーを作成] がオンになっていることを確認して [OK] をクリックします。

    デフォルト マップでプロジェクトが作成されます。

    ヒント:

    マップをドラッグおよび画面移動するには、マウスの左ボタンをクリックしたままにします。 画面を拡大縮小するには、マウスの右ボタンを押したまま、またはマウスのスクロール ホイールを使用します。 マップのビューを回転するには、V キーを押し、マウスを使用して方向を変更します。

    ここでは地上ベースのデータではなく海面温度のデータを使用するので、ベースマップを更新して地形の詳細情報が少ないものにします。

  7. リボンの [マップ] タブをクリックします。 [レイヤー] グループで [ベースマップ] ボタンをクリックして、[キャンバス (ライト グレー)] を選択します。

    キャンバス (ライト グレー) ベースマップ オプション

    ベースマップが、詳細情報の少ないものに変更されます。 このベースマップは多次元ラスターとしてマップに追加する海面温度データを強調します。

  8. [マップ] タブの [レイヤー] グループで、[データの追加] をクリックし、[多次元ラスター レイヤー] を選択します。

    多次元ラスター レイヤー オプション

    [多次元ラスター レイヤーの追加] ウィンドウが表示されます。

  9. 必要に応じて、[出力構成][多次元ラスター] を選択します。

    [多次元ラスター] に設定された [出力構成] パラメーター

  10. [入力ファイル、モザイク データセット、またはイメージ サービス] で、[変数のインポート] ボタンをクリックし、[ファイルから変数をインポート] を選択します。

    ファイルから変数をインポート オプション

    [NetCDF、GRIB、または HDF ファイルから変数をインポート] ウィンドウが表示されます。 このウィンドウを使用して、適切なタイプのファイルの場所を参照することができます。 レッスンの初めにダウンロードしたデータには netCDF ファイルが含まれているので、このファイルを参照します。

  11. データを展開した場所を参照し、[CFSR_sst.nc] ファイルを選択します。 [OK] をクリックします。

    データが [多次元ラスター レイヤーの追加] ウィンドウに追加されます。 分析用の多次元ラスターを指定したら、含める変数を選択します。 この場合、ソース データには海面温度 ([cfsrsst]) 変数のみが含まれています。

  12. [変数の選択][cfsrsst] をオンにします。

    cfsrsst が選択された変数の選択パラメーター

  13. [OK] をクリックします。

    netCDF ファイルを使用して [CFSR_sst.nc_cfsrsst] という多次元ラスター レイヤーが作成され、[コンテンツ] ウィンドウに追加されます。 グラデーションの配色を使用して、データがマップに表示されます。 青いエリアは温度が低く、赤いエリアは温度が高い場所です。 温度の単位はケルビン度です。

    海面温度を示すマップ

地図投影法の変更

データをマップに追加したときに、地図投影法が変更されました。 地図投影法は、3D の地表を 2D マップに変換する方法です。 地球上のある部分を歪めずにこの変換を行うことはできないので、特定の歪みを減らしながら他の部分を取り込むさまざまな投影法があります。

現在の投影法では、領域が歪んでいるので、領域のサイズを適切に比較することができません。 投影法を、サンゴの白化現象が発生する可能性のある領域の相対的なサイズをより適切に表すものに変更します。

  1. リボンの [マップ] タブの [ナビゲーション] グループで、[全体表示] ボタンをクリックします。

    全体表示ボタン

    マップが、データの全範囲に拡大表示されます。

  2. [コンテンツ] ウィンドウで、[マップ] をダブルクリックします。

    コンテンツ ウィンドウのマップ

    [マップ プロパティ] ウィンドウが表示されます。

  3. [座標系] タブをクリックします。

    このタブには、現在の座標系である [WGS 1984] が表示されています。 これを、等積図法であるベールマン図法に変更します。

  4. 検索バーに「ベールマン」と入力し、Enter キーを押します。
  5. [投影座標系] を展開して [世界] を展開し、[ベールマン正積円筒図法 (Behrmann) (world)] を選択します。

    ベールマン正積円筒図法 (Behrmann) (world) 座標系

  6. [OK] をクリックします。

    選択した投影法がマップに適用されます。

    再投影されたマップ

    [CFSR_sst.nc_cfsrsst] レイヤーは、海面温度をケルビン度で表します。 この情報が表示されるようレイヤーのプロパティを更新します。

  7. 必要に応じて、[コンテンツ] ウィンドウで、[CFSR_sst.nc_cfsrsst] レイヤーを展開します。
  8. [値] をクリックして選択します。
  9. [値] を再度クリックして編集します。 「海面温度 (ケルビン度)」と入力して Enter キーを押します。

    名前を変更した値

    レイヤー プロパティが更新されます。 レイヤー名も変更します。 現在の名前には略語が多く含まれており、わかりやすくありません。

  10. 必要に応じて、[CSFR_sst.nc_cfsrsst] レイヤー名をクリックして選択します。 編集できるようレイヤー名を再度クリックし、「海面温度」と入力して Enter キーを押します。
  11. [クイック アクセス ツールバー][保存] ボタンをクリックします。

    保存ボタン

    プロジェクトが保存されます。

このレッスンでは、データをマップに追加し、世界規模で領域を比較できるよう地図投影法を変更しました。 これで、解析を開始する準備が整いました。


多次元データの視覚化

次に、データを調査します。 多次元データには、複数のレイヤーの情報が上下に積み重ねられ、キューブとして含まれています。 これらの積み重ねられたレイヤーは、異なる深度や高度、またはこの例のように時間から得られたデータを表しています。

多次元データのスタック

このレッスンで使用する海面温度データセットは、1980 年から 2015 年までの毎月の温度観測データで構成され、それぞれの月は実質的に別のレイヤーと見なすことができます。

データの表示

データセットの月ごとのタイム スライスを表示するには、[多次元] タブのツールを使用します。

  1. 必要に応じて、ArcGIS Pro[Coral Bleaching Prediction] プロジェクトを開きます。
  2. [コンテンツ] ウィンドウで [Sea Surface Temperature] レイヤーをクリックして選択します。

    コンテンツ ウィンドウで Surface Temperature レイヤーを選択

    [多次元ラスター レイヤー] が選択されると、リボンで [多次元] タブを使用できるようになります。

  3. リボンで [多次元] タブをクリックします。

    このタブには、データ探査、解析、データ管理のツールが含まれています。

  4. [現在の表示スライス] グループで、[変数][cfsrsst] に設定されていることを確認します。

    変数に cfsrsst を設定

  5. [現在の表示スライス] グループで、[StdTime] ドロップダウン メニューをクリックします。

    このメニューには、データに含まれる月次タイム スライスの一覧が含まれます。 時間形式は年、月、日です。

    StdTime メニュー

    タイム スライスは、月次の海面温度の観測値を表します。 個々のタイム スライスを表示するには、メニューから選択します。 また、アニメーションとして連続して表示することもできます。

  6. メニューの外側をクリックして、メニューを閉じます。
  7. [現在の表示スライス] グループで、[標準時間に沿ってスライスを再生] ボタンをクリックします。

    標準時間に沿ってスライスを再生 ボタン

    マップに、データセットの月次タイム スライスが連続して表示されます。

  8. 終了したら [標準時間に沿ってスライスを再生] ボタンをもう一度クリックしてアニメーションを一時停止します。

    一時停止ボタンに変わった標準時間に沿ってスライスを再生ボタン

  9. プロジェクトを保存します。

多次元データを視覚化し、いくつかの多次元ツールの使い方を学習しました。


海面温度のトレンドの生成と予測

次に、多次元ジオプロセシング ツールを使用してデータを調査し、傾向分析を実行します。

時系列プロファイルの生成

多次元データをレビューする方法の 1 つは、時系列プロファイル チャートです。 時系列プロファイル チャートは、[Sea Surface Temperature] レイヤーを使用して、時間を X 軸、海面温度を Y 軸とするグラフを表示します。 このグラフは、海面温度の経時的な変化の概要を表します。

  1. 必要に応じて、ArcGIS Pro[Coral Bleaching Prediction] プロジェクトを開きます。
  2. 必要に応じて、[コンテンツ] ウィンドウで [Sea Surface Temperature] レイヤーを選択します。
  3. リボンで [多次元] タブをクリックします。 [解析] グループの [時系列プロファイル] をクリックします。

    時系列プロファイル ボタン

    マップの下に [Sea Surface Temperature - Chart of Sea Surface Temperature] ウィンドウが表示され、マップの右側に [チャート プロパティ] ウィンドウが表示されます。

    時系列プロファイル チャートでは、ポイント、ライン、ポリゴンを使用して対象の領域を定義できます。 その後でチャートは、対象の領域についてのみ、時間経過に応じた値をプロットします。

  4. [チャート プロパティ] ウィンドウで 対象エリアの定義ツールで [ポイント] をクリックして選択します。

    対象エリアの定義ツールの [ポイント]

    対象エリアを、サンゴの多様性が高い場所に設定します。

  5. [ポイント] ツールがアクティブな状態で、マップでオーストラリアの北西沿岸とインドネシアの間の位置をクリックします (必要に応じ、エリアを特定しやすいよう拡大表示します)。

    オーストラリアとインドネシアの間の対象領域

    注意:

    時系列プロファイルは、指定した位置によって異なります。

    [Sea Surface Temperature - Change in cfsrsst over StdTime] ウィンドウが更新され、選択した場所における 1980 年から 2015 年までの毎月の海面温度の時系列プロファイルが表示されます。

    ヒント:

    ウィンドウのサイズを変更すると、チャートが見やすくなります。

    選択した位置の時系列プロファイル

    チャートは、海面温度に周期的なパターンがあることを示しています。 このパターンは、その場所における温度の季節的な変動に対応しています。 ビニング周期 (チャート内でデータをどのようにグループ化するか) を変更し、年間平均温度を表示します。

  6. [チャート プロパティ] ウィンドウで、[集約オプション] を展開します。 [時間集約][平均値] に設定します。
  7. [時間ビニング オプション][時間集約の間隔サイズの決定] ボタンをクリックし、間隔を [1 年] に変更します。

    間隔サイズを 1 年に設定

    チャートが更新され、年ごとの平均海面温度の変動が表示されます。

    年間平均を示す時系列プロファイル

    時系列プロファイルを調べることで、選択した位置の海面温度の変化を知ることができます。 この海域では、2000 年以降、平均温度が上昇しており、サンゴの白化現象のリスクが高くなっています。

  8. [Sea Surface Temperature - Change in mean cfsrsst over Standard Time] ウィンドウと [チャート プロパティ] ウィンドウを閉じます。
    注意:

    チャートを閉じても、チャートはプロジェクトから削除されません。 チャートは、[コンテンツ] ウィンドウでアイテムとしてアクセスできます。

  9. プロジェクトを保存します。

海面温度のトレンドの計算と予測

他の多次元ツールを使用して、データの傾向を分析できます。 既存の傾向を把握しておくと、温暖化が発生し、サンゴの白化現象のリスクがある場所を特定するうえで役立ちます。 生物多様性が豊富なサンゴ礁は、オーストラリアとインドネシアの周囲の海域に集中しているため、この海域に分析を限定します。

  1. リボンの [マップ] タブをクリックします。 [ナビゲーション] グループで [XY へ移動] ボタンをクリックします。

    XY へ移動 ボタン

    マップの下にナビゲーション ウィンドウが表示されます。 このウィンドウを使用し、位置の経度と緯度で移動できます。

  2. ナビゲーション ウィンドウで、[経度] には「127 E」、[緯度] には「10 S」と入力します。

    緯度および経度パラメーター

  3. Enter キーを押します。

    指定した座標がマップの中央に配置されます。 しかし、マップ縮尺は世界全体に表示されたままです。

  4. マップの下の縮尺バーに「42500000」と入力し、Enter キーを押します。

    縮尺を 1:42,500,000 に設定

    マップが拡大表示されます。 この領域は、現地および全世界のサンゴのエコシステムの重要な部分を表し、サンゴの白化現象の大きな脅威にさらされています。 これ以降の解析でもこの範囲を使用するので、変更しないでください。

    ヒント:

    範囲を誤って変更してしまった場合は、[マップ] タブの [ナビゲーション] グループの [前の表示範囲] ボタンをクリックして戻ることができます。

    正しい範囲に拡大表示したマップ

    次に、データの傾向を調べます。

  5. リボンで [多次元] タブをクリックします。 [解析] グループの [トレンド] をクリックします。

    トレンド ボタン

    [ジオプロセシング] ウィンドウに [トレンド ラスターの生成 (Generate Trend Raster)] ツールが表示されます。 このツールは、1 つまたは複数の変数に基づき、多次元ラスター レイヤーの各ピクセルの傾向を推定します。

    ほとんどのデフォルト パラメーターは解析に適しています。 入力レイヤーは [Sea Surface Temperature] レイヤー、ディメンションは [StdTime] で、[cfsrsst] 変数がオンになっていることを確認します。 トレンド ライン タイプを線形から調和に変更します。 調和トレンド ラインは、季節的な温度変化などの周期的なパターンを表すデータに最適です。

  6. [ジオプロセシング] ウィンドウの [トレンド タイプ][調和] を選択します。

    トレンド ラスターの生成ツールのパラメーター

    注意:

    [トレンド ラスターの生成] ツールには、クラウド ラスター形式 (.crf) を使用した出力を作成します。 .crf 形式はクラウド ベースの処理や解析に最適化されており、ArcGIS Pro でも表示および処理可能です。

    このデータセットは大きく、処理に数分を要する可能性があるため、処理範囲を適用し、オーストラリアとインドネシアの周囲の海域に解析を制限します。

  7. [環境] タブをクリックします。 [処理範囲] セクションの [範囲][現在の表示範囲] に設定します。
    注意:

    [ジオプロセシング] ツールで環境設定を更新すると、プロジェクトに関連付けられているデフォルトの解析および出力の設定はオーバーライドされます。

    現在の表示範囲 オプション

    解析の処理範囲が、現在のマップ範囲に変わります。

  8. [実行] をクリックします。
    注意:

    コンピューターの処理速度によっては、このツールの実行に数分を要することがあります。

    ツールが入力ファイルを処理し、出力の [Sea Surface Temperature_GenerateTrend.crf] ファイルを作成します。このファイルがマップのレイヤーに追加されます。

    マップの海面温度の傾向

    紫のエリアは温暖化しつつある海域で、緑のエリアは温度が低下しつつある海域です。 マップのほとんどの海域は、時間とともに温暖化しつつあります。 このトレンド解析結果を使用して、海面温度を予測します。

  9. [コンテンツ] ウィンドウで [Sea Surface Temperature] レイヤーをオフにします。
  10. リボン上の [多次元] タブにある [解析] グループの [予測] をクリックします。

    予測 ボタン

    ヒント:

    [分析] グループの [予測] ツールをアクティブにするために、[Sea Surface Temperature_GenerateTrend.crf] レイヤーが選択されていることを確認します。

    [ジオプロセシング] ウィンドウに [トレンド ラスターを使用した予測 (Predict Using Trend Raster)] ツールが表示されます。 このツールは、トレンド ラスター レイヤーを使用して新しい多次元データセットを生成します。

    [入力トレンド ラスター] パラメーターと [変数] パラメーターは、それぞれトレンド ラスター ([Sea Surface Temperature_GenerateTrend.crf]) と海面温度の変数 ([cfsrsst]) に設定済みです。 [ディメンション定義] パラメーターは、ツールが予測する値または間隔を決定します。 2011 年 1 月 1 日から 2022 年 1 月 1 日までの毎週に設定します。

  11. [ジオプロセシング] ウィンドウで、次のパラメーターを変更します。
    • [出力多次元ラスター] に「Sea_Surface_Temperature_Predict.crf」と入力します。
    • [ディメンション定義][間隔による] を選択します。
    • [開始] に、「2011-01-01T00:00:00」と入力します。
    • [終了] に、「2022-01-01T00:00:00」と入力します。
    • 必要に応じ、[値の間隔] に「1」と入力します。
    • [単位][週] を選択します。

    [トレンド ラスターを使用した予測 (Predict Using Trend Raster)] ツールのパラメーター

  12. [実行] をクリックします。

    [トレンド ラスターを使用した予測] ツールが実行され、予測された海面温度のトレンド レイヤーがマップに追加されます。

    注意:

    [Sea_Surface_Temperature_Predict.crf] レイヤーがマップに追加されますが、最初は表示されない可能性があります。 表示されない場合は、マップを更新し、レイヤー プロパティで [レイヤー キャッシュ] をオフにしてみてください。

    マップ上の、予測された海面温度レイヤー

    このレイヤーには、2011 年 1 月から 2021 年 12 月まで、週ごとの海面温度の予測値が表示されます。 元の多次元ラスター レイヤーと同様、[多次元] タブのツールを使用して、週ごとのタイム スライスを探索できます。

  13. [コンテンツ] ウィンドウで [Sea Surface Temperature_GenerateTrend.crf] レイヤーをオフにします。
  14. [多次元] タブの [現在の表示スライス] グループで、[StdTime] ドロップダウン メニューをクリックします。

    予測された海面温度タイム スライス

    2011 年 1 月 1 日から 2022 年 1 月 1 日に到達するまで、7 日間隔でタイム スライスが表示されます。

    予測された海面温度マップは、サンゴの白化現象が起こる可能性がある場所はまだ示しません。 しかし、週ごとの予測温度と、追加の多次元ジオプロセシング ツールを使用して異常を識別し、白化現象が発生する可能性が最も高い海域を特定できます。

  15. ドロップダウン メニューの外側をクリックして、メニューを閉じます。
  16. プロジェクトを保存します。

海面温度のデータのトレンドを解析し、そのトレンドをもとに将来の海面温度を予測しました。 次に、作成したレイヤーを使用して、サンゴの白化現象が発生する場所を予測します。


サンゴの白化現象が発生する場所の予測

サンゴの白化現象は、長期的に水温が高くなる礁に発生します。 トレンド解析を使用して、2022 1 月 1 日までの期間について海面温度の予測を作成したので、予測データを分析して、長期的に水温の高い状態が続く場所を予測します。

サンゴの白化現象の予測

まず、データの異常値を計算します。 ここでは、異常値は平均値からの観測値の偏差を指します。 解析では、平均よりも温度が高い海域を示します。

  1. 必要に応じて、ArcGIS Pro[Coral Bleaching Prediction] プロジェクトを開きます。
  2. リボンで [多次元] タブをクリックします。 [解析] グループで [偏差] をクリックします。

    [偏差] ボタン

    [ジオプロセシング] ウィンドウで [多次元異常の生成 (Generate Multidimensional Anomaly)] ツールが開きます。 それぞれの場所における月ごとの平均温度と、総合的な平均温度を比較することで偏差を識別できるよう、ツール パラメーターを調整します。

  3. [ジオプロセシング] ウィンドウで、次のパラメーターを変更します。
    • [出力多次元ラスター] に「Sea_Surface_Temperature_GenerateAnom.crf」と入力します。
    • [平均の計算間隔][毎月繰り返し] を選択します。

    [多次元異常の生成 (Generate Multidimensional Anomaly)] ツールのパラメーター

  4. [実行] をクリックします。

    [多次元異常の生成 (Generate Multidimensional Anomaly)] ツールが実行され、マップに [Sea_Surface_Temperature_GenerateAnom.crf] レイヤーが追加されます。

    マップに示した偏差

    青色の海域は平均より温度が低く、黄色および赤色の海域は平均より温度が高いことを表しています。 オーストラリアとインドネシアの間のほとんどの海域は、表示したタイム スライスで黄色になっています。

    他の多次元データセットと同じく、このデータセットにもタイム スライスがあります。 ある週には平均温度よりも高いものの、翌週には平均温度を下回る海域もあります。 サンゴの白化現象は、海面温度が長期間にわたって高いときに発生するため、海面温度データの統計を計算して、場所において海面温度が温暖である (平均値より 0.1 ~ 5 度高温になる) 頻度を特定します。

  5. [コンテンツ] ウィンドウで、[Sea_Surface_Temperature_Predict.crf] レイヤーをオフにして非表示にします。
  6. [多次元] タブの [解析] グループで [引数の統計を検索] をクリックします。

    [引数の統計を検索] ボタン

    [ジオプロセシング] ウィンドウで [引数の統計を検索 (Find Argument Statistics)] ツールが開きます。 このツールは、所定の統計を得られる値またはバンドを抽出します。 [統計の種類] パラメーターを [期間] に設定すると、それぞれの場所について海面温度が何週間にわたって継続的に上昇するかを把握できます。 温度が長期間にわたって上昇すると、サンゴの白化現象が発生します。

  7. [ジオプロセシング] ウィンドウで、次のパラメーターを設定します。

    • [出力ラスター] に「Sea_Surface_Temperature_Statistics.crf」と入力します。
    • [統計情報の種類][期間] を選択します。
    • [ディメンション定義][間隔キーワード] を選択します。
    • [間隔キーワード][毎年] を選択します。
    • [最小値] に「0.1」と入力します。
    • [最大値] に「5」と入力します。

    [引数の統計を検索 (Find Argument Statistics)] ツールのパラメーター

    これらのパラメーターを設定すると、それぞれの場所について、1 年のうち温度が平均よりも 0.1 ~ 5 ℃ 高かった週の数を特定できます。

  8. [実行] をクリックします。

    ツールが実行され、偏差レイヤーがマップに追加されます。

    マップ上の偏差マップ

    青色の海域は、温度が平均よりも高かった期間が一度につき数週間に留まった場所で、黄色と赤色の海域はそれよりも長い期間にわたって平均よりも高かった場所です。 現在のタイム スライスでは、オーストラリアとインドネシアの間の海域には、長期間にわたって温暖であった場所はありません。 しかし、このデータセットには 2011 年から 2021 年までの年次タイム スライスがあります。

  9. [コンテンツ] ウィンドウで [Sea_Surface_Temperature_GenerateAnom.crf] レイヤーをオフにします。
  10. [多次元] タブの [現在の表示スライス] グループで、[標準時間に沿ってスライスを再生] ボタンをクリックします。

    マップに、タイム スライスが連続して表示されます。 タイム スライスが 2021 年に近づくにつれ、平均温度を上回る期間が長くなる海域が増えていきます。

    タイム スライスの調査

    ニュー ギニア北東などの一部の海域では、温度の上昇が非常に長期にわたっています。 他の海域の温暖な期間も、短いものの軽視できません。 オーストラリアとインドネシアの間の海域は、長期間にわたって、平均温度を上回っていないようです。

    この解析から、調査海域は 2022 年以前にサンゴの白化現象は起こらない判断できます。 しかし、世界の他の海域でサンゴの白化現象が起こる可能性はあります。

  11. アニメーションが終了したら、プロジェクトを保存します。

このチュートリアルでは、海面温度の過去のデータと、多次元データ ジオプロセシング ツールを使用して、サンゴの白化現象を予測しました。 まず、それぞれの場所について検出した、平均水温の経時的な傾向を把握します。 その傾向をもとに、今後数年間の海面温度を予測しました。 異常に温暖な温度を特定し、異常な温度が続く期間を定量化しました。 高い水温が長期間にわたって続く海域を識別することで、環境や生態系に深刻な損害を及ぼすサンゴの白化現象が発生する可能性が高い場所を特定できます。

ヒント:

サンゴ礁ステーションにアラート マップを作成するため、サンゴ礁の識別、優先度付け、管理に役立つマップを構築します。 Living Atlas NOAA CRW (Coral Reef Watch) Virtual Stations フィーチャ レイヤーと、[ゾーン統計 (Zonal Statistics)] ツール ([多次元] タブにもあります) を使用して、それぞれの礁の場所で何週間にわたって水温の上昇が予測されるかを判定できます。 結果は、ArcGIS Operations Dashboard を使用して公開し、保護および管理チームと共有できます。 例については、「Coral Reefs at Risk of Bleaching」をご参照ください。

多次元データは、海洋や気候の調査に多く使用されます。 サンゴの白化現象が起きる可能性の高い場所を特定するほかに、同様のツールやプロセスを使用して温度、降水量、海洋の塩分濃度のトレンドも調査できます。 このレッスンで使用した多次元ジオプロセシング ツールは、今日の世界における多くの重要な質問に回答するため役立ちます。

他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。