洋上風力発電用リース地のための風況の監視
プロジェクトの設定
最初に、ArcGIS Pro で新しいプロジェクトを設定し、データを読み込みます。
- 「チュートリアル データ」をダウンロードします。
注意:
このファイルは 1.8 GB であるため、ダウンロードに多少時間がかかります。
ほとんどの Web ブラウザーでは、デフォルトでコンピューターのダウンロード フォルダーにファイルがダウンロードされます。
- [Hurricane_Elsa] プロジェクト パッケージをダブルクリックして ArcGIS Pro を開きます。 必要に応じて、ライセンス付き ArcGIS アカウントでサイン インします。
ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください。
プロジェクト パッケージを開くと、2 つのレイヤーが描画されたマップが表示されます。 [Outer Continental Shelf Active Renewable Energy Leases] (外部大陸棚有効再生可能エネルギー リース地) データセットは、海洋エネルギー管理局によって提供されています。 マップはまた、Historical Hurricane Tracks (ハリケーンの追跡履歴) レイヤーからハリケーン エルサの進路を示します。 このレイヤーは NOAA データから公開されており、信頼できる地理空間データのオンライン リポジトリである ArcGIS Living Atlas of the World で利用できます。
注意:
.ppkx ファイルは、ArcGIS Pro プロジェクト パッケージです。これには、ArcGIS Pro で開くことができるマップ、データ、その他のファイルが含まれます。 .ppkx ファイルの管理の詳細については、このガイドをご参照ください。
- マップ上で、[Wind Lease] ポリゴンの 1 つをクリックします。
ポップアップが開き、プロジェクト名、リース日、所有者などに関する詳細情報が表示されます。
- ポップアップを閉じます。
ArcGIS Pro プロジェクトには、気象データに関する 15 のファイルが GRIB 形式で格納されたフォルダーも含まれています。 GRIB 形式の詳細については、チュートリアルの後半で説明します。
次に、多次元 GRIB ファイルから気象データを追加します。
多次元の気象データセットからのデータ抽出
地理空間分析の分野では、単一の変数や 2D データはシェープファイルや GeoTIFF ファイルでパッケージ化できますが、複雑な多次元データには、より複雑なデータ構造が必要です。 これは、気象データセットの場合です。通常は、地理範囲全体、複数の変数、および複数のポイントについての時間内のデータが含まれています。 気象学と気候学で最も一般的なデータ構造は GRIB、netCDF、HDF です。ArcGIS Pro は、WMO (World Meteorological Organization) または CF (Climate and Forecast) の規格に準拠して書式設定されていれば、これらを読み取ることができます。
チュートリアルの初めにダウンロードしたこの GRIB ファイルは、「HRRR (High-Resolution Rapid Refresh)」データセットから取得したものです。 HRRR は、アメリカ海洋大気庁 (NOAA) から提供され、1 時間ごとに更新される全米の気象モデルです。 気温、風速、降水量、およびその他の気象データに関する情報を提供する多数の変数が含まれています。 ダウンロードしたサブセットには、7 月 9 日の午後 12 時 (正午) から 7 月 10 日の午前 2 時 (UTC) までの 1 時間おきのアメリカ大陸のデータが格納されています。
HRRR データには、非常に多くの情報が含まれているので、すべてを一度に調べるのは困難です。 代わりに、特定の対象エレメントを抽出してマップに表示します。
まず、単一の時点における持続風速を調べます。 そのためには、GRIB データセットからデータを抽出して、単一ラスターとしてマップに追加します。 ラスターの各セルは、メートル/秒での風速値を含みます。
- リボンの [マップ] タブの [レイヤー] グループで、[データの追加] ドロップダウン ボタンをクリックして、[多次元ラスター レイヤー] を選択します。
- [入力ファイル、モザイク データセット、またはイメージ サービス] で、[変数のインポート] ボタンをクリックします。
- [NetCDF、GRIB、または HDF ファイルから変数をインポート] ウィンドウで、[Hurricane_Elsa] プロジェクト フォルダーを参照します。[commondata] フォルダーを展開し、[userdata] フォルダーを展開し、[HRRR] フォルダーをダブルクリックします。
- HRRR フォルダーで、最後の grib2 ファイル、[hrrr.t23z.wrfsfcf00.grib2] を選択し、[OK] をクリックします。
このファイルには、7 月 9 日の午後 11 時 (UTC) の最後の 1 時間のデータが含まれています。
そのデータセットに含まれているすべての気象変数のリストが、[変数の選択] テーブルに追加されます。 変数はアルファベット順に並び、簡単な説明が表示されます。 ここで注目すべきは、風速変数 [WIND@HTGL] です。
- [変数の選択] で、[WIND@HTGL] チェックボックスをオンにします。
風力データがマップ上に描画されます。 レイヤーを、より直感的な名前に変更します。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[hrrr.t23z.wrfsfcf00.grib2_WIND@HTGL] レイヤーをクリックして選択し、もう 1 回クリックします。 名前を「Wind Speed (m/s)」に変更します。
- アクティブ リース サイトに近い数か所をクリックして、それらに関する情報をポップアップ ウィンドウに表示します。
このエリアでは、2021 年 7 月 9 日の午後 11 時 (UTC) に風速約 12.19 m/s が記録されました。
- ポップアップ ウィンドウを閉じます。
次に、2021 年 7 月 9 日~ 10 日の突風データの変動を調べます。 突風は、突発的に風速が増した風です。 強い突風はタービンを損傷する可能性があるので、タービンを監視する必要があります。
GRIB ファイルの 1 時間ごとの突風データを抽出して多次元モザイク データセットに格納し、マップに追加します。 モザイクは、複数の次元のデータ (時間、空間、変数、バンドなど) をジオデータベース内で単一コンポジットにまとめる方法です。
まず、データのコンテナーとして使用するための空のモザイク データセットを作成します。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Wind speed (m/s)] ラスターをオフにして非表示にします。
- リボンの [解析] タブをクリックします。 [ジオプロセシング] グループで、[ツール] をクリックします。
- 表示された [ジオプロセシング] ウィンドウで、[モザイク データセットの作成] を検索して選択します。
- [モザイク データセットの作成] ツールで、次のパラメーターを入力します。
- [出力場所] で [参照] をクリックします。 表示されたウィンドウで [データベース] をクリックし、[Hurricane_Elsa.gdb] を選択して、[OK] をクリックします。
- [モザイク データセット名] に「WindGust」と入力します。
- [座標系] で [現在のマップ [マップ]] を選択します。
- [実行] をクリックします。
次に、このモザイク コンテナーに突風データを追加します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで、戻る矢印をクリックします。
- [モザイク データセットにラスターを追加] を検索して選択します。
- [モザイク データセットにラスターを追加] ツールの [モザイク データセット] で、[WindGust] を選択します。 [ラスター タイプ] で [GRIB] を選択します。
- [入力データ] で [ファイル] をクリックし、[フォルダー] を選択します。 [フォルダー] で [参照] をクリックします。
- [HRRR] チュートリアル用データ フォルダーを参照します。 選択して、[OK] をクリックします。
フォルダーがデータ ボックスに追加され、GRIB ファイル タイプとして指定されます。 フォルダーを選択すると、多次元 GRIB データセットから取得する変数を指定できます。
- [ラスター タイプ] の横にある [プロパティ] ボタンをクリックします。
[ラスター タイプ プロパティ] ウィンドウにフォルダー内の GRIB ファイルに関する情報が表示されます。
- [変数] タブをクリックして、風速を表す [GUST@SFC] のチェックボックスをオンにします。 [OK] をクリックします。
[ラスター タイプ] フィールドが更新され、ファイル パスと [GUST@SFC] 変数が追加されました。
- [ラスター プロセシング] を展開して、[統計情報の計算] をオンにします。
- [実行] をクリックします。
データがモザイクに追加され、マップ上に描画されます。 (Wind speed レイヤーで特定の GRIB ファイルを選択したのとは異なり) [HRRR] フォルダー全体を選択したため、HRRR フォルダーに存在する 15 時間すべてのデータがモザイクに追加されました。 1 時間のデータを一度に表示するには、[多次元] タブを使用します。
- リボンで [多次元] コンテキスト タブをクリックします。 [現在の表示スライス] グループの [StdTime] で、画像の 1 つを選択します。
次に、レイヤーを時系列アニメーションとして表示します。
多次元突風レイヤーのアニメーション表示とシンボル表示
[WindGust] モザイク レイヤーには、2021 年 7 月 9 日〜 10 日の、15 時間のアメリカ大陸の突風速度データが含まれています。 このセクションでは、このデータをアニメーションとして表示し、適切なシンボルを選択します。 まず、モザイク コンテンツに関する情報を確認します。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[WindGust] モザイク レイヤーを展開し、[イメージ] をダブルクリックします。
[レイヤー プロパティ] ウィンドウが表示されます。 このウィンドウには、モザイク画像に関する情報が含まれています。
- [レイヤー プロパティ] ウィンドウで、[ソース] タブをクリックし、[多次元情報] を展開します。 [変数] で、[gust@sfc (StdTime = 15)] と [StdTime] を展開します。
計測単位 ([単位])、時間間隔 ([間隔])、時間範囲 ([範囲]) など、データセットの説明が表示されます。 [データの個数] の値「15」は、モザイク内に、1 時間ごとに 1 つずつ、15 のデータ レイヤー (またはデータ スライス) があることを示します。
- [レイヤー プロパティ] ウィンドウを閉じます。
次に、時系列アニメーションとして表示された突風データを調べます。 マップのデータの一部は時系列で表示できるので、マップの上部にタイム スライダーが追加されています。 また、リボンに [時間] タブも表示されます。 これらの設定がマップの時間を構成します。 [多次元] コンテキスト タブを使用して、レイヤーに固有の時間設定を適用します。
- 必要に応じて、[コンテンツ] ウィンドウで、[WindGust] の下の [Image] をクリックして選択します。
- リボンの [多次元] タブにある [現在の表示スライス] グループで、[再生] をクリックします。
データがカバーする 15 時間にわたりマップが変化するのがわかります。 現在の虹色のカラー マップは誤解を招く可能性があるため、連続的なランプを選択して、突風の強いエリアをより適切にシンボル表示します。
- 必要に応じて、[コンテンツ] ウィンドウで [Image] レイヤーを展開し、カラー ランプを右クリックします。
- ドロップダウン リストを展開して [名前の表示] をクリックし、[紫青 (連続)] カラー ランプを選択します。
- カラー ランプを再度右クリックし、[配色を反転] をクリックして、最も強い突風を濃い青色で表示します。
マップが更新され、強い突風は濃い青色、弱い突風は薄い紫色の階調で表示されます。
- リボンで [再生] を再度クリックし、最終的なシンボル表示によるアニメーションを確認します。
- マップを保存します。
時系列プロファイル チャートを使用した、多次元データの視覚化
次に、時系列プロファイル チャートを使用して、特定の石油掘削場の突風を視覚化します。 時系列プロファイル チャートは、時系列を表す多次元データを対象とする基本の解析ツールとして機能します。 このチャートのタイプは、多次元ラスター データの細部にわたる視覚化および解析を可能にします。
- [多次元] タブ上の [解析] グループで、[時系列プロファイル] をクリックします。
[チャート プロパティ] ウィンドウが表示され、空白のチャートが [チャート イメージ] という名前でプロジェクトに追加されます。 チャートは、[コンテンツ] ウィンドウの [WindGust] モザイク レイヤーの下にもリストされます。
チャートにデータを入力するため、対象地域を風力リース ブロックとして定義します。
注意:
大きな多次元データセットを扱う場合、それらを CRF、つまり多次元ラスターを生成するジオプロセシング ツールのデフォルトの出力ラスター形式として格納することを選択できます。 時系列プロファイルの実行時に多数のスライスに時間の経過に伴いアクセスする場合は、多次元 CRF がより速いオプションになります。
- マップが適切なサイズで表示されるよう、必要に応じてチャート ウィンドウのサイズを小さくします。
- [チャート プロパティ] ウィンドウの [対象エリアの定義] で、[四角形] ツールをクリックします。
- マップ上に、アクティブ リース ブロックを大まかにカバーする四角形を描画します。
チャートに、描かれた四角形のエリアにおける風速の変化の平均が表示されます。
注意:
選択したエリアによって、チャートが異なる場合があります。
このチャートは、14 m/s を超える突風のピークを示しています。 個々のリース地における条件を示すために、[ポイント] ツールを使用することもできます。
- [チャート プロパティ] ウィンドウの [対象エリアの定義] の下の [シンボル] 列で、[位置 1] のポイント シンボルをクリックして、[透過表示] を [75%] に変更します。
- [対象エリアの定義] で、[ポイント] ツールをクリックします。
- マップ上で、最も南のアクティブ リース地の 1 つ、および最も北のアクティブ リース地の 1 つをクリックします。
チャートが更新され、マップに追加された 2 つのポイントについての時間ごとの状態が表示されます。 ここで、チャートには 3 本の線があります。
このチャートに示されている北部のリース地はハリケーンの進路に近かったため、28 m/s を超える強い突風に見舞われました。 チャート化されたデータを識別しやすくするために、ラベルをカスタマイズします。
注意:
時系列プロファイル チャートには、他にも多数のオプションがあります。 たとえば、毎時のデータを毎日、毎月、毎年の時間間隔で集約し、異なるタイム スケールで傾向を視覚化することができます。 チャートに対して行うことができるカスタマイズや変更の詳細については、「時系列プロファイル チャート」をご参照ください。 - [チャート プロパティ] ウィンドウで、[位置 1] の [ラベル] を「Atlantic Lease Region」に変更します。
- マップ上にポイントをどのように配置したかによって、[位置 2 および 3] のラベルを「Northern Lease」および「Southern Lease」に変更します。
- プロジェクトを保存します。
ここで、2 つのリース サイトの位置における突風速度と、その地域の全体平均を示すチャートができました。 この期間にわたる、これらのリース サイトで最も強かった突風は、秒速 28.9 メートル (56 ノット) でした。 これらは「嵐および暴風雨」状態として分類され、おそらく損害についてのさらなる調査が必要となります。
ArcGIS Pro を使用すると、多くのファイル形式と複数の変数を視覚化して、特定の位置で正確にモデリングすることができます。
同様のチュートリアルについては、「画像およびリモート センシングの概要」ページをご参照ください。