多次元の汚染データの準備
まず、汚染データのモザイク データセットを探索します。 そのモザイクを使用して、多次元レイヤーと時空間キューブを作成します。 多次元レイヤーと時空間キューブのデータ構造は、時系列データを表現する異なる方法であり、多くの異なる解析ツールに対応している形式です。
データのダウンロードと内容確認
まず、微粒子状物質汚染のレベルを計測しているグローバル ラスター データを探索します。 これらは、直径 2.5 ミクロン以下の大気汚染粒子で、PM 2.5 と呼ばれます。 微粒子状物質や他の屋外大気汚染については、「世界保健機関の Web サイト」をご参照ください。
- 「InvestigatePollutionPatterns プロジェクト パッケージ」をダウンロードします。
- コンピューター上で、ダウンロードした [InvestigatePollutionPatterns.ppkx] ファイルを選択します。 ファイルをダブルクリックし、ArcGIS Pro で開きます。 求められた場合、ArcGIS アカウントにサイン インします。
注意:
ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください。
プロジェクトには、3 つのマップ ([Part 1]、[Part 2]、[Part 3.1]) とローカル シーン ([Part 3.2]) が含まれています。 [Part 1] マップがアクティブです。
- 必要に応じて、世界全体が見えるまで縮小します。
このマップは、「Equal Earth」投影座標系を使用して描画されています。 この座標系は、エリアを歪ませないため、グローバル解析に適しています。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[PM25] の横にあるボックスをオンにして、このレイヤーの表示を有効にします。
[PM25] は多次元モザイクです。 多次元とは、複数の回数、深度、または高度で取得されたデータを意味します。 この場合、もう 1 つの次元は時間です。 ArcGIS Pro のモザイク データセットは、境界線、フットプリント、イメージの 3 つのパートで構成されます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Footprint] を右クリックして [属性テーブル] を選択します。
属性テーブルがマップの下に表示されます。 このテーブルには、19 の行が含まれています。
このモザイクは、19 個の .tif ラスター ファイルを参照します。 このテーブルの行は、1998 年から 2016 年までの 19 個のラスターのフットプリントを表しています。 19 個のラスターは、[PM25] モザイク内で積み重ねられています。 各ラスターには、1 年間の微粒子状物質汚染 (PM 2.5) の平均レベルが記録されています。
- テーブルを右にスクロールして、各ラスターのフットプリントが [Standard Time]、[Dimensions]、および [Variable] フィールド内にデータを含んでいることを確認します。 [Standard Time] の値は、行ごとに 1 年ずつ増え、1/1/1998 から始まって 1/1/2016 で終わっているはずです。
注意:
これら 3 つのフィールドは、「多次元情報の構築」ツールを使用して作成されました。 ArcGIS Pro のマルチディメンション ツールの多くは、このような特定のフィールドを必要とします。そのため、このツールは、既存のフィールド ([Var] および [Date]) に基づいて、適切なフィールド名とタイプでフィールドを作成します。
- 属性テーブルを閉じます。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Image] レイヤーをクリックして選択します。
リボンにレイヤーのコンテキスト タブが表示されます。
- リボン上の [イメージ レイヤー] タブをクリックします。 [ストレッチ タイプ] ボタンをクリックして展開し、[標準偏差] を選択します。
ストレッチ タイプは、ラスター データがシンボル表示される方法を変更します。 視覚化における外れ値の影響が軽減されたので、PM 2.5 の汚染レベルが高い (白) および低い (黒)、世界のエリアを確認できるようになりました。
多次元ラスター レイヤーの作成
次に、モザイク データセットを使用して、多次元ラスター レイヤー (CRF 形式) を作成します。 これは、作成元の多次元モザイクに似たプロパティを持つ時間対応レイヤーですが、データはすべて 1 つのラスター レイヤーに含まれています。 ArcGIS Pro の多くのジオプロセシング ツールとチャートで多次元ラスター レイヤーを入力として使用できるため、このレイヤーを作成すると、解析の機会がより多く提供されます。 例として、タイム スライダーを使用して、多次元ラスター レイヤーのタイム スライスを探索します。
- リボンの [解析] タブをクリックします。 [ジオプロセシング] グループで、[ツール] をクリックします。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの検索ボックスに「ラスターのコピー」と入力します。 検索結果で、[ラスターのコピー] ツールをクリックして開きます。
- [入力ラスター] で [PM25] を選択します。
- [出力ラスター データセット] で、[参照] ボタンをクリックします。
- 新しいラスターを保存するフォルダー (C: など) を参照します。 [名前] で「PM25.crf」と入力して [保存] をクリックします。
- [NoData 値] には「0」と入力します。
- [多次元として処理] がオンであることを確認します。
- [実行] をクリックします。
新しい [PM25.crf] レイヤーがマップに追加されます。 これは [PM25] モザイクと似ているように見えます。
- [コンテンツ] ウィンドウで [PM25] モザイク レイヤーをオフにします。
これで、19 年間のデータが、19 個のラスター レイヤーのモザイクではなく、1 つの時間対応ラスター レイヤー内に含まれるようになりました。 タイム スライダーを使用して [PM25.crf] レイヤーをアニメーションにします。
- 必要に応じて、[コンテンツ] ウィンドウで [PM25.crf] をクリックして選択します。
- マップ上部で、タイム スライダーにポインターを合わせて、そのコントロールを表示します。 スライダーの中央にある [再生] ボタンをクリックします。
1998 年から 2016 年までの期間でデータがアニメーション化され、一度に 1 年ずつ表示されます。
このチュートリアルの後半でも、[PM25.crf] レイヤーを使用して時系列プロファイル チャートを作成します。 しかし、まずはデータの 3 番目の表現である時空間キューブを作成しましょう。
時空間キューブの作成
次に、多次元ラスター レイヤーから時空間キューブを作成します。 時空間キューブは、時空間データを構造化するもう 1 つの方法です。 これは netCDF ファイルとして保存され、「時空間パターン マイニング ツールボックス」で使用できます。
まず、多次元ラスターに時間フィルターがないことを確認します。
- リボンの [時間] タブをクリックします。 [現在の時間] グループで、[開始時間の有効化] ボタンと [終了時間の有効化] ボタンをクリックします。
[開始]、[間隔]、および [終了] フィールドがクリアされます。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。
ヒント:
[ジオプロセシング] ウィンドウが見つからない場合は、リボン上の [解析] タブをクリックし、[ツール] ボタンをクリックします。
- [多次元ラスター レイヤーから時空間キューブを作成] ツールを検索し、開きます。
- [入力多次元ラスター レイヤー] で、[PM25.crf] を選択します。
- [出力時空間キューブ] で、参照ボタンをクリックします。
- 時空間キューブを保存するフォルダー (たとえば、C:) を参照します。 [名前] に「PM25」と入力し、[保存] をクリックします。
- [空のビンの補完方法] で、デフォルトの [ゼロ] をそのまま使用します。
- [実行] をクリックします。
ツールによって NetCDF 時空間キューブが作成されます。 ファイルには拡張子 .nc が付いています。 この時空間キューブはマップに追加されませんが、[時空間パターン マイニング] ツールボックスのツールで入力として使用される基本的なデータ構造です。 これらのツールのいくつかの例をこのチュートリアルの後半で紹介します。
- ツールの実行が終了したら、ウィンドウ下部の [詳細の表示] リンクをクリックします。
詳細ウィンドウが表示されます。 このウィンドウでは、[メッセージ] タブが有効です。 このウィンドウは、ツールで使用されたパラメーターを確認し、メッセージ、エラー、警告を読む場合に便利です。
- 詳細ウィンドウの角をドラッグして、ウィンドウを拡大します。 [メッセージ] タブをスクロールします。
このセクションでは、タイム スライスの数、時間間隔、各タイム スライスの場所のサイズなど、時空間キューブに関する情報を確認できます。 場合によっては、データまたは実行されているアクションについての警告もあります。 アクションが完了する限り、続行できます。
- 詳細ウィンドウを閉じます。
- [クイック アクセス ツールバー] で [保存] ボタンをクリックして、プロジェクトを保存します。
ここまでのチュートリアルでは、多次元モザイク、多次元ラスター レイヤー、時空間キューブという 3 種類のデータ構造について学びました。 多次元ラスター レイヤーを作成してアニメーションにし、時空間キューブを生成しました。 次は、多次元ラスター レイヤーを使用して、多次元データを視覚化するもう 1 つの方法である時系列チャートを作成します。
時間経過に伴う汚染のチャート化と視覚化
多次元ラスター レイヤーを作成し、タイム スライダーを使用して、そのデータを視覚化しました。 ただし、タイム スライダーのみを使用して確定的な結論を出すことは困難です。 次に、時系列プロファイル チャートを作成して、さまざまな国の汚染の時系列を探索します。 時系列データをチャートにまとめることは、データをより簡単に理解したり、伝えたりするための重要な手法です。
Living Atlas からの国境の追加
わかりやすくするために、新しいマップを使用して、そこに [PM25.crf] レイヤーのコピーを追加します。 また、ArcGIS Living Atlas of the World を使用して世界の国レイヤーも追加します。
- 必要に応じて、[InvestigateGlobalPollutionPatterns] プロジェクトを再度開きます。
- [Part 1] というマップの [コンテンツ] ウィンドウで、[PM25.crf] を右クリックして [コピー] を選択します。
- [Part 2] マップ タブをクリックしてアクティブ化します。 [コンテンツ] ウィンドウで、[Part 2] を右クリックして [貼り付け] を選択します。
[PM25.crf] レイヤーが [コンテンツ] ウィンドウとマップ上に表示されます。
- [Part 2] というマップがアクティブであることを確認し、[カタログ] ウィンドウを開きます。
ヒント:
[カタログ] ウィンドウを開くには、リボンの [表示] タブをクリックし、[ウィンドウ] グループで [カタログ ウィンドウ] をクリックします。
- [カタログ] ウィンドウで [ポータル] タブをクリックして、[Living Atlas] ボタンをクリックします。
- 検索バーに「World Country」と入力し、Enter キーを押します。
- 検索結果で、[World Countries (Generalized)] を右クリックして [現在のマップに追加] を選択します。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[World_Countries_(Generalized)] レイヤーのシンボルを右クリックして [色なし] を選択します。
これによりレイヤーの塗りつぶしが透明になるため、下にあるラスター レイヤーが表示されます。
- リボンの [マップ] タブをクリックします。 [ナビゲーション] グループで、[ブックマーク] をクリックし、[Europe] ブックマークを選択します。
マップでヨーロッパが拡大表示されます。
時系列プロファイル チャートの作成
次に、ヨーロッパの 3 つの国の汚染の時系列を示すチャートを作成します。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[PM25.crf] を右クリックして [チャートの作成] をクリックし、[時系列プロファイル] を選択します。
空のチャート ビューと [チャート プロパティ] ウィンドウが表示されます。
時系列プロファイル チャートでは、多次元ラスター レイヤーから対象エリアを定義して、それらのエリアの時系列をチャート化できます。 これらのエリアは、マップ上に描画するか、別のレイヤーから選択できます。 対象エリアの [World Countries (Generalized)] レイヤーから国を選択します。
- [チャート プロパティ] ウィンドウの [時系列] で、[1 つの変数を持つ複数の位置] が選択されていることを確認します。 [対象エリアの定義] で [フィーチャ セレクター] ボタンをクリックします。
- マップ上で、英国をクリックして選択します。 この国のポリゴンがライト ブルーでハイライト表示されます。
チャート ビューにライン チャートも青で表示されます。 [チャート プロパティ] ウィンドウの [対象エリアの定義] セクションのテーブルに新しい入力が表示されます。
各対象エリアを別の色にして、チャートを読みやすくします。
注意:
チャートが表示されない場合は、[対象エリアの定義] で [選択した行を削除] ボタンをクリックします。 もう一度英国を選択します。
- シンボルをクリックして、[マーズ レッド] (2 列目の 3 行目) を選択します。
ヒント:
色の名前を表示するには色にカーソルを合わせます。
- ラベルを「UK」に変更します。
- マップで、ノルウェーをクリックします。 [チャート プロパティ] ウィンドウで、その色を [ミディアム アップル] (7 列目の 3 行目) に変更します。
- マップで、イタリアをクリックします。 その色を [ラピスラズリ] (10 列目の 4 行目) に変更します。
- 新しい入力に対して、ラベルを「Norway」および「Italy」に変更します。
- [チャート プロパティ] ウィンドウの上部にある [軸] タブをクリックします。
[X 軸] セクションと [時間の形式] セクションで、[日付形式] を更新します。
- [日付形式] で、[(yyyy)] オプション (その前に現在の年) を選択します。 [時間形式] で、[<なし>] を選択します。
- [Y 軸] の下にある [範囲] で、[最小] 値を「0」に変更します。
- [一般] タブで、[チャートのタイトル] を「Mean Annual PM 2.5, 1998–2016」に変更します。
- [X 軸のタイトル] に「Year」と入力します。 [Y 軸のタイトル] に「PM 2.5 (μg/m3)」と入力します。
微粒子状物質汚染 (PM 2.5) は、1 立法メートルあたりのマイクログラム数で計測されます。
ヒント:
μ シンボルをこのページから ArcGIS Pro にコピーできます。
世界保健機関 (WHO) では PM 2.5 のレベルを 10 μg/m3 以下に抑えることを推奨しています。 このガイドラインに従うことで、「大気汚染関連の死亡者数を 15 パーセント減らせる可能性があります」。 チャートを完成させるために、この最高推奨レベルを表すガイドを追加します。
- [ガイド] タブをクリックし、[ガイドの追加] をクリックします。
- [ガイド 1] の横で、[ガイド名の編集] ボタンをクリックし、テキストを編集して「WHO PM 2.5 Guideline」にします。
- [値] で、最初のボックスに「10」、2 つ目のボックスに「20」と入力します。
- チャートとマップを確認します。
チャートでは、あまり離れていない国の PM 2.5 汚染レベルが大きく異なることが示されています。イタリアで最もレベルが高く、英国ではそれよりレベルが低くなっており、ノルウェーが最低レベルとなっています。 また、この違いが何年にもわたってかなり一貫していることも示されています。
2003 年に、英国では PM 2.5 平均濃度が急上昇しましたが、それはノルウェーやイタリアには影響しませんでした。 2014 年には逆のことが当てはまりました。つまり、イタリアとノルウェーの両方で PM 2.5 平均濃度が急上昇しましたが、英国ではそうではありませんでした。 全体的に見て、1998 年から 2016 年まで、ノルウェーの PM 2.5 平均濃度には上昇傾向も下降傾向もありませんでした。 しかし、英国とイタリアでは、その 19 年間に PM 2.5 平均濃度が徐々に低下しています。
チャート上のグレーで色付けされたエリアは、WHO のガイドラインである 10 μg/m3 より高い値を特定しています。 ノルウェーと英国は時系列全体で、推奨されている最高レベルを下回っています。 しかし、イタリアでは 19 年のうち半分の期間で推奨レベルを上回っています。 イタリアには、ヨーロッパで最悪の汚染地域の 1 つであるポー平原 (ミラノ市を含む) が北部にあります。 そこでは、主に交通機関が原因で汚染度が高くなっています。 北にアルプス山脈が横たわり、この汚染を谷に閉じ込めているため、WHO のガイドライン レベル内に抑えるのが難しくなっています。
- チャートと [チャート プロパティ] ウィンドウを閉じます。
チャートを閉じると、英国、イタリア、ノルウェーの色の付いた地域がマップに表示されなくなります。 チャートはその後も使用可能で、[コンテンツ] ウィンドウから再び開くことができます。
- プロジェクトを保存します。
チュートリアルのこのパートでは、ヨーロッパの 3 つの国の PM 2.5 の時系列データをチャート化しました。 ArcGIS Living Atlas を利用して、追加のデータを検出しました。 時系列プロファイル チャートを使用して、汚染データを集約し、解釈しました。 チャート化された 3 つの国のうち、イタリアの PM 2.5 平均濃度が最も高いことと、それが時系列全体にわたって一貫していることがわかりました。 次に、PM 2.5 データに統計テストを適用して、汚染度が高いエリアと低いエリアを地球規模で検出します。
時空間パターン マイニングの実行
多次元ラスター レイヤーと時系列チャートでデータを探索しました。 しかし、データのパターンについて導き出した結論は、客観的な統計テストで裏打ちされると確実性が増します。 次に、時空間キューブを使用して、時空間で汚染の統計的に有意なホット スポットとコールド スポットを検出します。 地球全体で、時間経過に伴ってパターンがどのように変わるかを調べます。 人間の目では、存在しないパターンが見えたり、存在するパターンを見逃したりすることがあるため、時空間データに統計テストを適用することは重要です。
時空間キューブでのホット スポットとコールド スポットの検出
時空間キューブ、および「時空間パターン マイニング ツールボックス」の [時空間ホット スポット分析] ツールを使用して、汚染のホット スポットとコールド スポットを検出します。 その後、結果を解析します。 この解析は [Part 3.1] マップで行います。
- 必要に応じて、[InvestigateGlobalPollutionPatterns] プロジェクトを再度開きます。
- [Part 3.1] マップ タブをクリックします。
- 必要であれば、[ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 [時空間ホット スポット分析] ツールを検索して開きます。
- [時空間ホット スポット分析] ツール ウィンドウの [入力時空間キューブ] で、[参照] ボタンをクリックします。
- 以前保存した、時空間キューブに移動します。 [Pm25.nc] というファイルをクリックし、[OK] をクリックします。
- [分析変数] で、[PM 2.5_NONE_ZEROS] を選択します。 このフィールドには、微粒子状物質のレベルが含まれており、欠損値はゼロで埋められています。
- [空間リレーションシップのコンセプト] で、[K 近傍] を選択します。
注意:
[空間統計] ツールボックスと [時空間パターン マイニング] ツールボックスの多くのツールでは、解析で「空間リレーションシップのコンセプト」に対して複数の選択肢が提供されます。選択する際は、どのような現象を計測しようとしているかを考慮することが重要となります。
- [グローバル ウィンドウの定義] で、[個別の時間ステップ] を選択します。
- [実行] をクリックします。
[時空間ホット スポット分析] ツールによって、時空間データの統計的に有意な傾向が検出されます。 このツールは、まず、「Getis-Ord Gi*」統計値を使用して、年ごとのホット スポットとコールド スポットを検出します。 ホット スポットは単に高い値を持つ場所ではなく、高い値を持ち、かつ他の高い値に囲まれている場所です。 同様に、コールド スポットは、低い値を持ち、他の低い値に囲まれている場所です。 年ごとのホット スポットとコールド スポットが検出されたら、その結果に「Mann Kendall 傾向検定」を適用してホット スポットとコールド スポットの経時的な変化を明らかにします。 この検定では、[散発性のある]、[連続性のある]、[新規] など、8 つの異なるタイプのホット スポットとコールド スポットが検出されます。 統計的に有意なパターンを持たない場所は、[検出されたパターンなし] と分類されます。
[時空間ホット スポット分析] ツールの結果がマップに追加されます。 17 のタイプのホット スポットとコールド スポットがあります。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[World Terrain Reference] レイヤーを [PM25_EmergingHotSpotAnalysis] レイヤーの上にドラッグします。
[World Terrain Reference] レイヤーによって、世界各国の名前と地理的な位置が提供されます。 時空間ホット スポット レイヤーの上に移動すると、参照ラベルが表示されます。
- リボン上の [マップ] タブで、[ブックマーク] をクリックして、[SE Asia] ブックマークにズームします。
- 東南アジアのホット スポット分析結果を確認します。
パキスタン、インド、中国などの国で、広い範囲が PM 2.5 のホット スポットになっています。 最も一般的な傾向は、[永続的なホット スポット] および [増大しているホット スポット] です。
- [永続的なホット スポット] は、時間ステップ間隔の 90% で統計的に有意なホット スポットであり、時間経過に伴うクラスタリングの強度に増加傾向も減少傾向も認められない場所です。 このチュートリアルのコンテキストでは、これは、少なくとも 17 年間ホット スポットであり、その期間中に PM 2.5 のレベルに大きな上昇傾向も下降傾向も認められなかった場所を意味します。
- [増大しているホット スポット] は、最終の時間ステップを含め、時間ステップ間隔の 90% で統計的に有意なホット スポットであり続けている場所です。 さらに、各時間ステップにおける高いカウント値のクラスタリングの強度が全体的に増加し続け、その増加が統計的有意性を持っています。 このチュートリアルのコンテキストでは、これは、2016 年を含めて少なくとも 17 年間ホット スポットであった場所であり、その期間全体を通してその場所で PM 2.5 の濃度に統計的に有意な増加があったことを意味します。
モンゴルの南の境界にコールド スポットのエリアがあり、それらは主に [永続的なコールド スポット] と [連続性のあるコールド スポット] です。 ヒマラヤ山脈の北、チベット高原にも、[減衰しているコールド スポット] と [履歴のコールド スポット] の大きなエリアがあります。 これは、このエリアではこれまでは汚染度が低かったが、汚染度レベルが上がってきていることを示唆しています。 [減衰している] などの説明的な用語は、データ値ではなく、ホット スポットとコールド スポットのことを言っていることに注意してください。つまり、汚染度ではなく、コールド スポットが減衰しているのです。
注意:
ホット スポットとコールド スポットのすべてのタイプの完全な説明については、「時空間ホット スポット分析の詳細」をご参照ください。
- [Ethiopia] ブックマークに移動します。
エチオピアの首都であるアディスアベバの近くに大きな [永続的なホット スポット] があり、[減衰している]、[散発性のある]、[新規]、[連続性のある] ホット スポットのエリアに囲まれています。 この場所の汚染パターンは複雑であり、時間経過に伴ってホット スポットのサイズが大きくなっていることを示しています。
- プロジェクトを保存します。
次に、このエリアを 3D でさらに詳しく調べます。
時空間データの 3D 表現の作成
次に、時空間キューブを 3D レイヤーに変換します。 データを 3D で視覚化すると、エチオピアの汚染パターンについて理解を深めることができます。 分析のこの部分は [Part 3.2] 3D ローカル シーンで行います。
- 現在の [Part 3.1] マップの [コンテンツ] ウィンドウで、[PM25_EmergingHotSpotAnalysis] レイヤーを右クリックして [コピー] をクリックします。
- [Part 3.2] ローカル シーン タブをクリックします。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Part 3.2] を右クリックして [貼り付け] を選択します。
レイヤーが [2D レイヤー] グループに追加されます。
- 必要に応じて [ブックマーク] を使用して、[Ethiopia 3D] ブックマークにズームします。
シーンが 3D で表示されます。 この時点では、表示する 3D エレメントはありません。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 [時空間キューブを 3D で視覚化] ツールを検索し、開きます。
- 次の [時空間キューブを 3D で視覚化] パラメーター値を入力します。
- [入力時空間キューブ] で [参照] ボタンをクリックします。 最初のチュートリアルで作成した時空間キューブ ([PM25.nc]) を参照して選択します。
- [キューブの変数] で、[PM 2.5_NONE_ZEROS] を選択します。
- [表示テーマ] で [値] を選択します。
- [出力フィーチャ] に「PM25_3D」と入力します。
- [実行] をクリックします。
新しい 3D レイヤーが、シーンおよび [コンテンツ] ウィンドウに表示されます。
このレイヤーが膨大な量の描画リクエストの原因となっているという警告が表示される場合があります。 レイヤーを小さなエリアにクリップします。これにより、この問題を回避できると同時に、データの探索が容易になります。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Ethiopia] レイヤーを [PM25_EmergingHotSpotAnalysis] レイヤーの上にドラッグします。
これは、以前に使用した、ArcGIS Living Atlas からの [World Countries (Generalized)] レイヤーと同じものですが、エチオピアのみを表示するようにフィルターされています。 3D レイヤーをこの境界にクリップします。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 [クリップ] ツールを検索して開きます。
- 次の [クリップ] パラメーター値を入力します。
- [入力フィーチャ] で、[PM25_3D] を選択します。
- [クリップ フィーチャ] で、[Ethiopia] を選択します。
- [出力フィーチャクラス] に「PM25_Ethiopia」と入力します。
- [実行] をクリックします。
エチオピアの国境にクリップされた、新しい 3D レイヤーがシーンに追加されます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[PM25_3D] レイヤーをオフにします。
シーンには [PM25_Ethiopia] 3D レイヤーのみが表示されます。 地面から空へと伸びる垂直カラムに、PM 2.5 の値の経時的な変化が表示されています。
次に、PM 2.5 の値が見やすくなるように、新しいレイヤーのシンボルを変更します。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[PM25_Ethiopia] レイヤーを選択します。
- リボンの [フィーチャ レイヤー] タブをクリックします。 [描画] グループで、[インポート] をクリックします。
[シンボルのインポート] ウィンドウが開きます。
- [入力レイヤー] で [PM25_ Ethiopia] が選択されていることを確認します。
- [シンボル レイヤー] で、[参照] ボタンをクリックします。
- [プロジェクト] で [フォルダー] をクリックし、[InvestigatePollutionPatterns] フォルダー接続を開きます。
- [Commondata] フォルダー内の [userdata] フォルダーで、[space_time_cube_symbology.lyrx] を選択し、[OK] をクリックします。
その他のツール パラメーターは、.lyrx ファイルから自動的に入力されます。
- [データごとにシンボル範囲を更新] で、[範囲の更新] を選択します。
このオプションによって、入力データセットの範囲に基づいて、シンボルのクラス閾値が更新されます。
- [OK] をクリックします。
シンボルが更新されます。
これで、重なって表示されるフィーチャの色の範囲が大きくなりました。 赤いブロックは、PM 2.5 のレベルが高いエリアおよび時間です。 青いブロックは低いレベルを示します。
[時空間キューブを 3D で視覚化] ツールで、PM 2.5 の値の経時的な変化を示す垂直カラムを作成しました。 これらの結果を対象エリアにクリップして、色彩豊かなシンボルを適用し、高い値と低い値の違いを見やすくしました。
3D でのホット スポットとコールド スポットの探索
このチュートリアルの最後のステップでは、3D で汚染データを探索し、ホット スポットとコールド スポットの結果について理解を深めます。
- 必要に応じて、[Ethiopia 3D] ブックマークにズームします。 シーン内を移動してシーンを探索します。
注意:
マウス ホイール ボタンを使用して拡大/縮小できます。 ドラッグしてシーン内をあちこち画面移動できます。 「スクリーン ナビゲーター」を使用することもできます。
これらの結果は 1998 年 (地面に最も近い) から 2016 年 (一番上) までの各年の時系列データを表しています。 いくつかの濃い紫色のエリアに注目してください。これらは、PM 2.5 が 0 のエリアです。 これらは、元は NULL 値または欠損値であった可能性がありますが、時空間キューブを作成したときにゼロで埋められました。
- [永続的なホット スポット] (濃い赤) を 1 つ見つけ、地面に一番近いブロックをクリックします。
ポップアップ ウィンドウが表示されます。 このウィンドウには、クリックしたデータの日付範囲と、その範囲の PM 2.5 レベル ([PM 2.5_NONE_ZEROS]) が示されています。
- 同じホット スポットで、地面から一番遠いブロックをクリックします。
[永続的なホット スポット] では、時系列の最初と最後で PM 2.5 の値が大きくは変わりません。
- [新規のホット スポット] の 1 つを見つけ、そのホット スポットの最初の年と最後の年の PM 2.5 の値を調べます。
これらの場所では、PM 2.5 の相対的に大きな増加が認められるでしょう。
- いくつかの [散発性のあるホット スポット] のシンボルを確認します。 これらの場所では、時系列全体にわたって数回、薄い色と濃い色が切り替わっています。
- シーンで他のタイプのホット スポットとコールド スポットを調べます。
時系列データを 3D で視覚化すると、[時空間ホット スポット分析] ツールの結果が解釈しやすくなります。
これで、時空間キューブの汚染データに統計方法を適用しました。 世界中で、PM 2.5 のさまざまなタイプのホット スポットとコールド スポットを検出しました。 2D の解析結果を調べ、さまざまなタイプのホット スポットとコールド スポットの傾向を理解しました。 その後、3D の視覚化を使用して、各ホット スポットが示すパターンについて理解を深めました。
このチュートリアルでは、時空間データを作成、視覚化、解析する方法について学びました。 時系列データを格納する 3 つの方法である、多次元モザイク、多次元ラスター レイヤー、時空間キューブについて理解しました。 時系列プロファイル チャートを使用して、ヨーロッパの 3 つの国の汚染レベルを比較しました。 その後、時空間パターン マイニング ツールを適用して汚染データを解析し、解析結果を理解しました。
独自のラスター データ (.tif や NetCDF ファイルなど) から時空間キューブを作成する方法については、「Explore your raster data with Space Time Pattern Mining (時空間パターン マイニングでラスター データを探索する)」をご参照ください。 時空間キューブのさらに高度な 3D 視覚化の取得に興味がある場合は、「ArcGIS Pro 向けの Space Time Cube Explorer アドイン」をお試しください。
他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。