標高データの検索とマッピング
次の画像は、ArcGIS Pro の [陰影起伏] ジオプロセシング ツールのデフォルト出力 (左) と、このチュートリアルで作成する陰影起伏 (右) を比較するものです。
この結果を得るには、実際の環境における光と影のプロパティを考慮し、それをラスター関数で構築した一連の透過表示レイヤーを用いて近似させます。
陰影起伏を構築するには、「SRTM (Shuttle Radar Topography Mission)」のデータを使用します。 SRTM は、2000 年に実施された調査ミッションで、スペース シャトルに搭載したレーダー アンテナを使用して、地球の標高データを捕捉しました。 このデータは、数値標高モデル (DEM) のグリッドとして一般公開されています。 DEM はラスター形式で、標高をピクセル値で格納します。 標高が低い場所は低い値、標高が高い場所は高い値で表されます。 通常、これは黒 (谷) から白 (山) へのグレースケール画像として表示されます。
対象地域の DEM をダウンロードし、ArcGIS Pro のマップに追加して、マップの座標系を変更します。
数値標高モデルのダウンロード
SRTM データは、NASA (アメリカ航空宇宙局) によって提供されます。 このデータにアクセスし、エチオピアのグレート リフト バレー地域の DEM をダウンロードできるよう、NASA Earthdata アカウントを作成します。 代わりに、別の地域のデータをダウンロードすることもできます。 このチュートリアルは、どの DEM でも実施できます。
注意:
NASA Earthdata アカウントを作成したくない場合は、「DEM ファイルをダウンロード」し、次のセクションにスキップします。
- 「https://urs.earthdata.nasa.gov」を開き、[Register] をクリックします。 登録フォームに入力して送信し、Earthdata アカウントを作成します。
- 「30-Meter SRTM Tile Downloader」を開きます。
SRTM データは、「USGS (米国地質調査所)」など複数の場所からダウンロードできますが、Derek Watkins が構築したこの Web サイトでは DEM の選択とダウンロードをシンプルに行えるインターフェイスを使用できます。
このマップの各タイルは、単一の DEM ファイルを表します。
- マップでアフリカ東部のエチオピアを拡大します。 アディス アベバ南東に位置するアダマ市を含むタイルをクリックします。
ポップアップが開き、タイルは N08E039 と表示されます。
- ポップアップの [Download DEM] ボタンをクリックします。
サイン イン ウィンドウが表示されます。
注意:
タイル ダウンローダーから DEM をダウンロードできない場合は、「ArcGIS Online」からダウンロードできます。
- Earthdata ユーザー名とパスワードを入力し、[Sign in] をクリックします。
コンピューターに .zip ファイルがダウンロードされます。
ArcGIS Pro プロジェクトの作成
次に、ArcGIS Pro のマップに標高データを追加します。
- コンピューター上でダウンロードした [N08E039.SRTMG1.hgt.zip] ファイルを見つけ、解凍します。
- ArcGIS Pro を起動します。 サイン インを求められたら、ライセンスが割り当てられた ArcGIS アカウントを使用してサイン インします。
注意:
ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください。
- [新しいプロジェクト] の下の [マップ] をクリックします。
- [新しいプロジェクト] ウィンドウの [名前] に「Custom Hillshade」と入力します。 必要に応じて、プロジェクトに別の場所を選択します。 [OK] をクリックします。
ベースマップを含む新しいマップが表示されます。 背景コンテキストが必要なマップを作成するわけではないので、ベースマップを削除します。 ここでは、今後のマップに使用するためのカスタム背景コンテキスト レイヤーを作成します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [World Topographic Map] を右クリックし、[削除] を選択します。
- [陰影起伏図 (World Hillshade)] レイヤーも削除します。
- リボンの [マップ] タブをクリックします。 [レイヤー] グループの [データの追加] ボタンをクリックします。
- [N08E039.hgt] を参照して選択します。 [OK] をクリックします。
[ピラミッドの構築と統計情報の計算] ウィンドウが表示される場合があります。
- 必要に応じて、[ピラミッドの構築と統計情報の計算] ウィンドウで [OK] をクリックします。
DEM がマップに表示されます。
エチオピアのグレート リフト バレーは、画像中心を斜めに横切る、低標高の暗いバンドとして表示されます。
ここは、起伏の大きい山、緩やかな丘陵、河川、急勾配の侵食谷、古代からの火山性段丘、火山縁などで構成される、地質的に興味深い地形です。 多様な地表に対し、地形の陰影処理を行うのに最適です。 しかし、別の場所を選択した場合でも、このチュートリアルの手順に従うことで効果的な陰影起伏を得ることができます。
- [コンテンツ] ウィンドウで [NO8E039.hgt] をクリックして選択し、もう一度クリックして名前を変更できるようにします。 「Elevation」レイヤーの名前を変更して Enter キーを押します。
注意:
複数の隣接する DEM ファイルをダウンロードした場合は、[新規ラスターにモザイク (Mosaic To New Raster)] ジオプロセシング ツールを使用して、それらを 1 つのファイルに結合できます。 このツールの使用方法の例については、チュートリアル「解析用画像およびラスター データの準備」をご参照ください。
マップへの投影法の割り当て
ダウンロードした DEM は、地理座標系で格納されます。 陰影起伏のアルゴリズムは、マップが投影座標系を使用している方が適切に動作します。 陰影起伏を作成する前に、マップの座標系を変更します。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[マップ] レイヤーを右クリックし、[プロパティ] を選択します。
- [マップ プロパティ] ウィンドウで、[座標系] をクリックします。
マップの現在の座標系は、唯一のレイヤーに合わせて WGS 1984 です。 代わりに、「ユニバーサル横メルカトル」(UTM) 投影座標系を使用します。 エチオピアの分析範囲の UTM ゾーンは 37N です。
- [検索] バーに「UTM座標系 第37帯N (WGS 1984)」と入力して Enter キーを押します。
[使用可能な XY 座標系] リストが絞り込まれます。
- リストで [投影座標系] と、すべての後続のフォルダーを展開します。 [UTM座標系 第37帯N (WGS 1984)] をクリックします。
[現在の XY] ボタンが更新され、マップの現在の座標系として [UTM座標系 第37帯N (WGS 1984)] がリストされます。
注意:
異なる地域をマッピングする場合は、最終的なマップで使用する投影座標系を選択します。 どの投影座標系を使用するかわからない場合は、「適切な投影法の選択」をご参照ください。
- [OK] をクリックします。
マップが再描画されますが、以前とほぼ同じように表示されます。 投影法を変更しても、このマップの外観はほとんど変わりませんが、より効果的な陰影起伏を計算するうえで役立ちます。
DEM を使用し、投影マップを作成しました。 陰影起伏を構築し、シンプルな標高ラスターを、自然かつ直感的に地形に似た画像に変換します。
写実的なスケール感の作成
実世界の地形を見ると、ごつごつした岩角や裂け目の細かい構造や、丘陵や渓谷といった大きな構造が一目でわかります。
一般的に、陰影起伏は、細かい地形または単純化した地形しか描写できません。 スケール感を自然に表現するために、詳細レベルが異なるデータを複数バージョン作成します。 透過表示したシンボルを使用して複数のバージョンを組み合わせ、最終的な陰影起伏に細部と単純化した部分が含まれるようにします。
標高データのぼかし
細部の描写を近似しつつ、地形全体の構造を維持するには、DEM の単純化バージョンを作成します。 カートグラフィにおける単純化とは、単純化またはスムージングを行うことで、大きな地理的縮尺に適した詳細レベルを持つようデータを変換することを意味します。 ラスター データを単純化するには、データをぼかします。 DEM をぼかすと、大きい地理的フィーチャは合体し、視覚的に 1 つのまとまりになります。 統計ラスター関数を使用し、データをぼかします。
- リボンの [画像] タブをクリックします。 [解析] グループで [ラスター関数] ボタンをクリックします。
[ラスター関数] ウィンドウが表示されます。 ラスター関数は、ジオプロセシング ラスター ツールに代わるもので、より高速かつ軽量です。 計算は、ラスターのピクセル値に直接適用されます。新しいデータを保存する必要はありません。
- [ラスター関数] ウィンドウで「統計」を検索します。 [システム] タブの [統計演算] で [統計] をクリックします。
- [統計プロパティ] ウィンドウで、次のパラメーターを設定します。
- [ラスター] で [Elevation] を選択します。
- [統計情報の種類] は [平均値] のままにします。
- [ロウ数] に「10」と入力します。
- [カラム数] に「10」と入力します。
- [NoData ピクセルのみ塗りつぶします] をオフのままにしておきます。
ロウ数とカラム数は、ラスター関数がぼかし効果を実装するために使用するピクセル距離を表します。 値が大きくなると、ぼかし効果も大きくなります。
- [新しいレイヤーの作成] をクリックします。
新しいレイヤーが、マップ上に表示されます。 このレイヤーはラスター関数で作成されたため、新しいラスター ファイルではなく、入力データの新しいビューでしかありません。
- [コンテンツ] ウィンドウで、新しいレイヤーの名前を「Elevation Blur 10」に変更します。
- 新しいレイヤーの横にあるボックスのオンオフを切り替え、下のレイヤーと比較します。
新しいレイヤーは、元のレイヤーよりも不鮮明です。
この処理を繰り返し、さらに不鮮明な標高レイヤーを作成します。
- [ラスター関数] ウィンドウで [統計] ラスター関数をもう一度開きます。
- [ラスター] には再度 [Elevation] を選択しますが、今回は [ロウ数] と [カラム数] を「20」に設定します。
- [新しいレイヤーの作成] をクリックします。
- 新しいレイヤー名を「Elevation Blur 20」に変更します。
- レイヤーのオンオフを切り替え、3 つの標高レイヤーすべてを比較します。
3 つのレイヤーは同じ標高を表示しますが、詳細レベルを変えて単純化しています。
- 3 つのレイヤーがすべてオンになっていることを確認します。
カスタム色のグラデーションの作成
ここで、3 つの標高レイヤーすべてを視覚的にマージします。 これは、半透明のシンボル グラデーションを使用して行います。 このグラデーションは、チュートリアルを通じて再利用します。 使用するたびに再構築する必要をなくすため、スタイルに保存します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Elevation Blur 20] を右クリックし、[シンボル] を選択します。
- [シンボル] ウィンドウで [配色] メニューをクリックし、[配色の書式設定] をクリックします。
[配色エディター] ウィンドウが表示されます。 ここで、標高レイヤーを描写するために使用されるグラデーションの色を制御します。 低い標高は半透明の黒で、高い標高は完全に透明な黒で表示されるようグラデーションを編集します。
- [連続配色] で左 (黒) のカラー ストップをクリックして選択します。 [設定] で [透過表示] を「60」パーセントに変更します。
- 右 (白) のカラー ストップをクリックします。 [設定] で [色] メニューを開き、[黒] を選択します。
ヒント:
色にポインターを合わせると、色の名前が色メニューに表示されます。
- [透過表示] を「100」パーセントに変更します。
このプロジェクトでは、この配色を頻繁に使用します。そのため、この設定を毎回適用せずに済むよう、配色をスタイルに保存します。 スタイルとは、再利用可能なシンボル リソースです。 ArcGIS Pro のすべてのプロジェクトには、「お気に入り」という名前のデフォルト スタイルがあります。
- [配色エディター] ウィンドウの下で [スタイルに保存] をクリックします。
- [名前を付けて配色を保存] ウィンドウの [名前] に「Semitransparent black」と入力します。
- [OK] をクリックします。 [配色エディター] ウィンドウで [OK] をクリックします。
配色が [お気に入り] スタイルに保存され、[Elevation Blur 20] レイヤーに適用されます。
同じ透過表示のシンボルを、残り 2 つのレイヤーにも適用します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Elevation Blur 10] をクリックします。
[シンボル] ウィンドウが更新され、選択したレイヤーのシンボル設定が表示されます。
- [配色] メニューを開き、リストの上部で [Semitransparent black] を選択します。
- また、[Elevation] レイヤーの配色も [Semitransparent black] に変更します。
これで、3 つのレイヤーすべてに、同じ半透明のシンボルが適用されました。 その結果、白い紙の上に 3 層の透明インクが重なったような効果を得ることができます。 レイヤーが増えるごとに、色が少しずつ濃くなります。
陰影起伏の生成
ここで、各標高レイヤーに陰影起伏を適用します。 元の DEM の陰影起伏には詳細が維持され、ぼかした DEM の陰影起伏には大まかな部分が維持されます。
陰影起伏は、以下の写真のような効果の再現を試みます。つまり、光が当たるサーフェスと影になるサーフェスがあり、それによって写実的な 3 次元サーフェスを描写することができます。
陰影起伏アルゴリズムは標高データを検証し、架空の光源の光と影がサーフェスにどのように当たるか再現します。 このアルゴリズムにおいて重要な 2 つのパラメーターは、光源方位と光源高度です。 光源方位とは光源の入射方向を指し、一般的にはマップの北西または左上隅にあります。 光源高度とは、水平線に対する光源の角度を指します。 光源高度が 90 度の場合は光は真上にあり、0 度の場合は水平線にあります。 これらの設定は、サーフェスに仮想の光と影がどのように当たるか決定します。
- [ラスター関数] ウィンドウを開きます。
ヒント:
リボンの [画像] タブをクリックします。 [解析] グループで [ラスター関数] ボタンをクリックします。
- 必要に応じ、検索バーを消去します。 ウィンドウの下部で [サーフェス] グループを展開し、[陰影起伏] をクリックします。
- [ラスター] で [Elevation] を選択します。 その他の設定はデフォルトのままにしておきます。
[陰影起伏タイプ] は [一つの光源方向] に設定されています。つまり、1 つの光源のみが使用されます。 [方位] は [315] に設定されており、光源は北西に配置されます。 [高度] は [45] に設定されています。これは、正午と日没の間です。
- [新しいレイヤーの作成] ボタンをクリックします。
新しいレイヤーが、マップ上に表示されます。
ぼかした標高レイヤーのそれぞれについて、類似の陰影起伏レイヤーを作成します。
- [陰影起伏] ラスター関数をもう一度開きます。 [ラスター] で [Elevation Blur 10] を選択し、[新しいレイヤーの作成] をクリックします。
- [Elevation Blur 20] レイヤーを使用し、新しい陰影起伏レイヤーをもう 1 つ作成します。
これで、段階的にスムーズに、かつ単純化されてゆく 3 つの陰影起伏レイヤーが出来上がりました。
陰影起伏レイヤーのそれぞれに対し、先ほど使用した半透明の配色を適用し、3 つすべてを最終的な画像に使用します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Hillshade_Elevation Blur 20] を右クリックし、[シンボル] を選択します。
- [シンボル] ウィンドウで [配色] 設定を [Semitransparent black] に変更します。
- 残り 2 つの陰影起伏レイヤーの配色も [Semitransparent black] に変更します。
マップ上の陰影起伏レイヤーが、その下にある標高レイヤーとブレンドされます。
マップには 6 つのレイヤーがあります。そのすべてが、半透明の黒の配色で描画されています。 これらをグループに整理します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Elevation] レイヤーをクリックして選択します。 Ctrl キーを押しながら [Elevation Blur 10] と [Elevation Blur 20] をクリックし、3 つのレイヤーをすべて選択します。
- 選択したレイヤーのいずれかを右クリックして、[グループ] を選択します。
- グループ レイヤーの名前を「Elevation」に変更します。
- 3 つの [Hillshade] レイヤーをグループにまとめます。 グループの名前を「Hillshade」に変更します。
複数のレイヤーから陰影起伏を作成し、地形の細部と大まかな部分の両方を描写しました。
視覚効果による陰影起伏の強化
現実には、光は複雑な形で地形に当たります。 光源は、光線に面した地表面を直接照らします。 周辺環境に光が拡散したり、他の地形に反射したりすることで、直射日光が当たらない場所も見ることができます。 通常、高度が低い場所は暗く、高い場所には光が当たりやすくなります。 次に、陰影起伏にもたらされる複雑な自然効果のいくつかを再現します。
傾斜の視覚化
傾斜が急勾配であればあるほど、特に太陽が水平線近くにない場合は、直射日光が当たりにくくなります。 以下の写真は快晴の日に撮影されたものですが、急斜面は影になっています。 陰影起伏においてこの視覚効果を強調するため、特に傾斜が急な地形を暗くします。
標高レイヤーごとに 1 回ずつ、合計 3 回にわたって、標高が急激に変化する場所に陰影処理を行います。
- [ラスター関数] ウィンドウの [サーフェス] グループで、[傾斜角] をクリックします。
- [傾斜角プロパティ] ウィンドウの [DEM] で [Elevation/Elevation] を選択します。
- その他のパラメーターはデフォルトのままにしておき、[新しいレイヤーの作成] をクリックします。
白い筋が入った、暗いレイヤーが生成されます。
新しいレイヤーは、地形の相対的な傾きや平坦さを表します。 平坦なサーフェスは暗く、傾斜のあるサーフェスは明るい色です。 配色を反転させると、視覚的にわかりやすくなります。
- [傾斜角_Elevation] レイヤーで [シンボル] ウィンドウを開きます。 [配色] で [反転] チェックボックスをオンにします。
地形の傾斜をより直感的に視覚化した画像が生成されます。 白いエリアは平坦なサーフェスで、暗いエリアは標高が急激に変化する急斜面を表します。
- [配色] 設定を [Semitransparent black] に変更します。 [傾斜角_Elevation] レイヤーのオンとオフを切り替え、マップの見た目がどのように変化するか確認します。
最初の画像は、傾斜角_Elevation レイヤーを追加する前の陰影起伏です。 2 枚目の画像は、傾斜角_Elevation レイヤーを追加した後の陰影起伏です。 陰影処理を行った傾斜角レイヤーを見ると、起伏の激しいエリアがはっきりし、陰影起伏に深さと鮮明さが加わります。 ぼかした標高レイヤーについて、傾斜角ラスター関数を繰り返します。
- [傾斜角] ラスター関数をもう一度開きます。 [DEM] で [Elevation/Elevation Blur 10] を選択し、[新しいレイヤーの作成] をクリックします。
- [Elevation\Elevation Blur 20] レイヤーを使用し、新しい傾斜角レイヤーをもう 1 つ作成します。
- 新しい傾斜角レイヤーの両方で配色を反転し、配色を [Semitransparent black] に変更します。
3 つの傾斜角レイヤーが生成され、異なる単純化レベルによって地形の暗さを表現します。
- 3 つの傾斜角レイヤーをまとめ、このグループの名前を「Slope」に変更します。
陰影起伏へのハイライトの追加
実際の地形を見ると、サーフェスの一部 (多くの場合は標高の高い場所) が直射日光で照らされています。
現時点では、陰影起伏に陰影処理を行っただけの状態です。 半透明の暗いレイヤーが、その下にある白いサーフェスを覆うように追加され、ダイナミックな影のサーフェスが作成されました。 次に、数多くのレイヤーを重ねたことで失われた明るい部分を戻します。 光源の真正面にあるエリアに白を追加します。
この効果を得るには、このチュートリアルの前半で行った手順で、陰影起伏レイヤーをもう 1 つ作成します。 しかし、今回は最も明るい部分だけをシンボル表示し、画像の残りの部分は完全に透明なままにしておきます。
- [陰影起伏] ラスター関数を開きます。 [ラスター] で [Elevation/Elevation] を選択し、[新しいレイヤーの作成] をクリックします。
- [コンテンツ] ウィンドウで、レイヤーの名前を「Highlights」に変更します。
- [Highlights] レイヤーの [シンボル] ウィンドウを開きます。 [配色] メニューを開き、[配色の書式設定] をクリックします。
完全に透明な白から完全に不透明な白までの、新しい配色を作成します。
- [連続配色] で左 (黒) のカラー ストップをクリックして選択します。 [設定] で [色] を [白]に、[透過表示] を「100」パーセントに変更します。
- 左のカラー ストップをクリックし、配色の中央までドラッグします。
これにより、完全に透明な新しいカラー ストップが作成されます。
- [設定] で [位置] を「60」パーセントに変更します。
この配色では、このレイヤーの影のエリアが無視され、日光が最も明るいエリアにのみ明色のグラデーションが適用されます。
- [OK] をクリックします。
積み重ねられた影のレイヤーの上にハイライトが適用されるため、コントラストと立体感がさらに際立ちます。
最初の画像には、Highlights レイヤーを追加する前の陰影起伏を示します。 2 枚目の画像は、Highlights レイヤーを追加した後の陰影起伏です。
エッジの強化
人間の目は、周辺のものよりもコントラストがはっきりしている外観に引かれます。 以下の写真を見ると、侵食した地形で特に視線を捉えるのは、鋭く尖った地物、段差、峻谷、段丘面です。
起伏がそれほど激しくない場所であっても、デジタル環境でこの段差効果を再現できます。これによって、尾根や水域の縁など、地形において興味深い部分をハイライト表示できます。
- [陰影起伏] ラスター関数を開きます。
今回は、入力として DEM レイヤーを使用する代わりに、前回 DEM レイヤーから生成した傾斜角レイヤーを使用します。 これは、陰影起伏処理の技術としては一般的ではありませんが、地形のエッジを強調するうえでは効果的です。
- [ラスター] で、[Slope/傾斜角_Elevation] を選択します。 [新しいレイヤーの作成] をクリックします。
- 新しいレイヤーの名前を「Edges」に変更します。
これにより、グレーの泥に覆われたサーフェスに、筋が付いたような画像が生成されます。 この筋は、地形が急激に変化したエリアで、地形のエッジを強調するものです。 明るいエリアと暗いエリアをそのままにし、不要なグレーの中間トーンを削除します。 そのために、カスタム配色をもう 1 つ作成します。
- [Edges] レイヤーの [シンボル] ウィンドウを開きます。 [配色] メニューを開き、[配色の書式設定] をクリックします。
デフォルトの配色は、黒から白になっています。 中間が、グレーではなく完全な透明になるよう編集します。
- [配色エディター] ウィンドウで、[色の追加] ボタンをクリックします。
配色にカラー ストップが表示されます。 これが選択されたストップです。
- [設定] で [色] を [白]に、[位置] を「85」パーセントに変更します。
ヒント:
カラー ストップにポインターを合わせると、その名前を表示できます。
- カラー ストップをあと 3 つ追加します。 新しいストップには、次のプロパティを設定します。
ストップ名 色 透過表示 位置 4/6
白
100 パーセント
72 パーセント
3/6
黒
100 パーセント
70 パーセント
2/6
黒
0 パーセント
55 パーセント
透明な中間トーンは配色のごくわずかしか占めませんが、レイヤーのピクセルの大半をシンボル表示します。
- [OK] をクリックします。
最初の画像には、Edges レイヤーを追加する前の陰影起伏を示します。 2 枚目の画像は、Edges レイヤーを追加した後の陰影起伏です。 中間のグレー トーンが削除され、Edges レイヤーの明るい部分と暗い部分だけが地形を構成するようになったので、湖、河川、段丘が際立ちます。 特に、エチオピアのグレート リフト バレーとは異なる地形をマッピングする場合は、カラー ストップの位置を変更することで自分の好みに合った地形を作成できます。
低地への影の追加
最後に、レイヤーを並べ替えて、渓谷に影を作る効果を陰影起伏に適用します。
通常、標高が高くなると、直射日光と間接光の両方が当たりやすくなります。 このようなエリアは明るく、コントラストもはっきりしています。 低地や渓谷は暗いことがほとんどです。 このようなエリアに当たるのは偶発的で、柔らかい光です。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Elevation] レイヤーをレイヤー リストの下部から最上位にドラッグします。
[Elevation] レイヤーが、他のすべてのレイヤーの上に描画されます。 半透明の配色により、低標高の場所は暗い値で描画されるため、わずかにくぼみを作るようにして低地の暗さを表現します。
- レイヤーのオンとオフを切り替え、それぞれが陰影起伏においてどのような役割を果たしているか確認します。
陰影起伏とは、架空の光と影がサーフェスにどのように当たるか再現するものでしかありません。 方法には正解や不正解はないので、さまざまなラスター関数やシンボルを試して、独自のカスタム陰影起伏を作ってください。
- 必要に応じて、レイヤーの並べ替え、配色の編集、統計、陰影起伏、または傾斜角ラスター関数のパラメーターの変更も行ってみてください。
これで、多数の透明レイヤーを積み重ねた陰影起伏が作成されました。 エッジや急勾配の傾斜を強調し、地形の細部や大まかな形状を描写しました。 日光が当たる斜面は明るく、谷は暗くしました。 ここで適用した方法は、1 つの提案に過ぎません。地形やマップによって、あるいは好みに応じて、改良を加えることができます。
新しいマップでの陰影起伏の使用
これでカスタム陰影起伏が作成できたため、1 つのファイルとしてエクスポートし、他のマップ データとともに別のマップで使用します。
陰影起伏を GeoTIFF としてエクスポート
陰影起伏は多くのレイヤーで構成されており、それぞれのレイヤーが地形に一定の明暗を与えています。 写実的な光と影の表現の構築には階層化が極めて重要ですが、扱いにくい形式になっているため、他のユーザーと結果を共有したり、他のプロジェクトで使用したりすることが難しくなっています。 このマップを、より便利な形式である、平坦化された 1 つの画像としてエクスポートします。
- リボンの [共有] タブをクリックします。 [出力] グループで、[マップのエクスポート] ボタンをクリックします。
[マップのエクスポート] ウィンドウが表示されます。
- [ファイル タイプ] で [TIFF] を選択します。
- [名前] で、[参照] ボタンをクリックして、ファイルの場所を選択します。 ファイルの名前を「CustomHillshade」に設定します。
- [画像圧縮] で、[LZW] を選択します。
次に、画像のサイズを設定します。 出力の解像度を最大にするには、元のラスター レイヤーのプロパティを確認し、新しい陰影起伏レイヤーを同じサイズにします。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Elevation] レイヤーを右クリックし、[プロパティ] を選択します。
- [レイヤー プロパティ] ウィンドウで [ソース] タブをクリックし、[ラスター情報] を展開します。
[カラム数] と [ロウ数] の値は両方とも 3601 です。
- [レイヤー プロパティ] ウィンドウを閉じます。
- [マップのエクスポート] ウィンドウの [画像サイズ] で、[幅] と [高さ] の両方に「3601」と入力します。
- [プレビューの表示] チェックボックスをクリックします。
マップ ビューの一部がグレーでマスクされ、エクスポート エリアの視覚的な参考になります。 ビューの中央にある白色の四角形だけがエクスポートされます。
陰影起伏でエクスポート エリアを埋めます。
- リボンの [マップ] タブをクリックします。 [ナビゲーション] グループで、[全体表示] ボタンをクリックします。
マップが陰影起伏レイヤーの範囲に合わせてズームします。 画像はプレビューに可能な限りぴったりと適合します。
- [マップのエクスポート] ウィンドウの [TIFF 設定] で、[GeoTIFF タグの書き込み] チェックボックスをオンにします。
これにより、生成された画像に空間情報が付与され、他の GIS プロジェクトで開いて、正しい地理的位置に描画できるようになります。
- [色深度] で、[32 ビット アルファ付き] を選択します。
アルファとは、画像が透過表示を維持することを意味します。 これは重要なことで、陰影起伏画像は正方形のように見えますが、実際には投影によってわずかに傾斜しています。 透過表示を使用しないと、エクスポートされた画像のエッジは白いスリバーとして表示されます。
ただし、透過表示を含めると、陰影起伏のすべてのレイヤーが透明になってしまうという問題が発生します。 このため、エクスポートされた画像も透明になり、他のマップでの使用が困難になります。 これを避けるには、陰影起伏に完全に不透明な白色の背景を作成する必要があります。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Elevation] レイヤーを右クリックし、[コピー] をクリックします。
- [マップ] を右クリックし、[貼り付け] をクリックします。 新しいレイヤーの名前を「Background」に変更します。
- [Background] レイヤーの [シンボル] ウィンドウを開きます。
- [配色] メニューを開き、[配色の書式設定] をクリックします。
- 両方のカラー ストップを [白] に変更し、[透過表示] を「0」パーセントに設定します。
- [OK] をクリックします。
[Background] レイヤーが完全に白になり、残りの陰影起伏が非表示になりました。
- [Background] レイヤーをレイヤー リストの最下位にドラッグします。
陰影起伏が再び表示されます。 エクスポートされた陰影起伏の背景が不透明な白になりますが、エッジに不透明な白のスリバーはありません。
- [マップのエクスポート] ウィンドウで、[エクスポート] をクリックします。
エクスポート処理が完了するまでに、数分かかります。 この結果、1 つの TIFF ファイルが生成され、他のユーザーと共有したり、他のプロジェクトで使用したりすることができます。
- [マップのエクスポート] ウィンドウを閉じます。
空のマップの作成と、新しい陰影起伏レイヤーの追加
次に、平坦化された新しい陰影起伏グラフィックスをマップで使用します。
- リボンの [挿入] タブをクリックします。 [プロジェクト] グループで、[新しいマップ] をクリックします。
新しいマップ [マップ 1] が表示されます。
- リボンの [マップ] タブをクリックします。 [レイヤー] グループの [データの追加] ボタンをクリックします。
- [データの追加] ウィンドウで、[CustomHillshade.tif] を参照して選択します。 [OK] をクリックします。
注意:
[CustomHillshade.tif] ファイルを保存したフォルダーを参照して、そのファイルがない場合、右クリックして [更新] を選択します。 エクスポートした画像が表示されます。
- 統計情報を計算するように求められた場合は、[はい] をクリックします。
ラスターの統計情報を計算すると、レンダリング オプションが増え、パフォーマンスが向上します。
陰影起伏が単一のレイヤーとしてマップと [コンテンツ] ウィンドウに表示されます。
陰影起伏画像の表示設定の調整
陰影起伏の TIFF は、作成時とは少し異なるように見えます。 これは、ArcGIS Pro がデフォルトで自動レンダリング設定を適用し、コントラストが向上しているためです。 このようなデフォルトの画像レンダリングのオーバーライドを元に戻すことで、設計時の陰影起伏画像を表示できます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[CustomHillshade.tif] をクリックします。
- リボンの [ラスター レイヤー] タブをクリックします。 [レンダリング] グループで、[ストレッチ タイプ] ボタンの下側をクリックします。
デフォルトでは、[ストレッチ タイプ] は [割合クリップ] に設定されています。 この設定では、最大値と最小値が切り捨てられ、より高いコントラストが生成されます。 ただし、画像をエクスポートする前に、すでにコントラストを慎重に決定しているため、このような方法でコントラストが向上するのは好ましくありません。
- [最小値 - 最大値] を選択します。
また、リサンプリング タイプを変更し、ピクセルが目立たない滑らかな外観を生成します。
- [リサンプリング タイプ] ボタンをクリックし、[三次たたみ込み内挿法] を選択します。
- [強調] グループで、[レイヤーのガンマ] (下) のスライダーを 1 に設定します。
注意:
同様の表示設定の調整をカラー ラスターに適用する方法の例については、「1 分でわかるマップ作成のコツ: 画像レンダリングのオーバーライドの解除」をご参照ください。
陰影起伏画像のベースマップへのブレンド
最後に、ブレンド モードを使用して、新しい陰影起伏レイヤーをベースマップに結合します。
- リボンの [マップ] タブの [レイヤー] グループで、[ベースマップ] ボタンをクリックして [衛星画像] を選択します。
衛星画像ベースマップが、マップおよび [コンテンツ] ウィンドウに、陰影起伏の下の [衛星画像] ベースマップとして表示されます。
ブレンド モードを使用して、陰影起伏レイヤーとその下にある [衛星画像] レイヤーの視覚的なプロパティをマージします。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[CustomHillshade.tif] をクリックします。
- リボンの [ラスター レイヤー] タブをクリックします。 [効果] グループの [レイヤーのブレンド] で [オーバーレイ] を選択します。
これで、陰影起伏のトーンが基になる衛星画像ベースマップの色とマージされました。 これにより、テレインを強調する効果が得られます。衛星画像はそのまま表示されますが、陰影付きの標高も表示され、その地域の地形が強調されます。
- マップをズームおよび画面移動し、マップのさまざまな箇所で陰影起伏が衛星画像とどのように相互作用しているかを調査します。
- [レイヤーのブレンド] を [輝度] に変更します。
この結果、テレインを強調した衛星画像マップよりも代表的なテレイン マップに近くなり、リテラルな処理よりもカートグラフィックな処理と言えます。
最初の画像は オーバーレイ ブレンド モードを示しています。 2 つ目の画像は、輝度ブレンド モードを示しています。 - [レイヤーのブレンド] を [オーバーレイ] に戻すか、実験してマップに最適な設定を見つけます。
これまで、[ラスター関数] を使用し、GIS での光と影のレンダリングを行ってきました。 DEM をダウンロードし、ぼかすことで単純化して、陰影起伏および傾斜角レイヤーを作成し、カスタムの透過配色を使用してすべてのレイヤーを組み合わせてリアルなテレインを表現しました。 最後に、陰影起伏をエクスポートして、画像ベースマップとブレンドしました。 今回学習した手法は、あらゆる DEM 入力に使用できますが、データ ソース、解像度、その場所のテレインによって結果は異なる場合があります。 最適な結果を得るにはパラメーターを調整します。 マップを作成する方法に正解はありませんが、ニーズや想像力に合わせてカスタマイズするための十分な機能が用意されています。
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