解析用の SAR 画像の準備

まず、プロジェクトをダウンロードして ArcGIS Pro で開きます。 パナマ運河とその周辺の SAR 画像をマップに追加します。 次に、画像に放射量キャリブレーションを追加し、シンボルを変更して準備します。

プロジェクトをダウンロードして開く

このチュートリアルのデータをすべて含むプロジェクトをダウンロードし、ArcGIS Pro で開きます。

  1. Detect_ships_with_SAR_imagery.zip ファイルをダウンロードし、コンピューター上で、ダウンロードしたファイルを選択します。
    注意:

    ほとんどの Web ブラウザーでは、デフォルトでコンピューターのダウンロード フォルダーにファイルがダウンロードされます。

  2. [Detect_ships_with_SAR_imagery.zip] ファイルを右クリックし、コンピューター上の場所 (C ドライブなど) に展開します。
  3. 展開した [Detect_ships_with_SAR_imagery] フォルダーを開き、[Detect_ships_with_SAR_imagery.aprx] をダブルクリックして ArcGIS Pro でプロジェクトを開きます。

    プロジェクト フォルダー

  4. サイン インを求められたら、ArcGIS 組織のアカウントにサイン インします。
    注意:

    ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください

    プロジェクトが開きます。

    初期のプロジェクトの概観

    現在のマップには、パナマ運河を中心としたデフォルトの地形図ベースマップのみが含まれています。 このチュートリアルで使用する SAR 画像はプロジェクトに含まれています。これをマップに追加します。

  5. リボンの [表示] タブをクリックします。 [ウィンドウ] グループで、[カタログ ウィンドウ] をクリックします。

    カタログ ウィンドウ ボタン

    [カタログ] ウィンドウが表示されます。

  6. [カタログ] ウィンドウで、[フォルダー] の横にある矢印をクリックして展開します。 同様に、[Detect_ships_with_SAR_imagery][Input Data] フォルダーも展開します。

    展開したフォルダー、Detect_ships_with_SAR_imagery、Input Data

    [Input Data] フォルダーには、このチュートリアルで使用する大半のデータが含まれています。

  7. [SAR Image] フォルダーを展開して、[ICEYE_GRD_SC_244270_20220207T192226.xml] を右クリックし、[現在のマップに追加] を選択します。

    マップに ICEYE_GRD_SC_244270_20220207T192226.xml を追加。

    マップに画像が表示されます。

    マップ上の ICEYE_GRD_SC_244270_20220207T192226.xml

    これは 2022 年 2 月にキャプチャしたパナマ運河とその周辺の SAR 画像です。

    注意:

    この画像は、星画像プロバイダー ICEYE の SAR Level-1 Ground Range Detected (GRD) データ プロダクトから生成されたものです。 2014 年に設立された ICEYE は、小型 SAR 衛星コンステレーションを通じて地球に関するタイムリーで信頼性のある情報を提供することを目的としています。 これらの衛星は、高解像度の画像で地球表面を撮影するため、自然災害や環境の変化、海洋活動、インフラストラクチャの監視などさまざまな現象を監視し分析することができます。 詳しくは、ICEYE の SAR データをご参照ください。 SAR GRD と、SAR 画像を配布するために一般的に使用されるその他のプロダクトタイプについては、SAR 衛星データもご参照ください。

    レイヤーに意味のある名前を付けます。

  8. [コンテンツ] ウィンドウで [Scan_ICEYE_GRD_SC_244270_20220207T192226] レイヤーを 1 回クリックして選択し、もう一度クリックして編集モードに切り替えます。 「Panama SAR」と入力して Enter キーを押します。

    名前が Panama SAR に変更された SAR 画像

    ヒント:

    レイヤーを選択し、F2 キーもしくは Fn+F2 キーを押して名前を変更することもできます。

放射量キャリブレーションの適用

放射量によってキャリブレーションし、SAR 画像を準備します。 画像内の特徴の物理的特性に関連付けできる、意味のある後方散乱値を取得するためには、放射量キャリブレーションが必要です。 後方散乱の概念に関する詳細は、合成開口レーダー (SAR) の基礎のガイドをご覧ください。 放射量キャリブレーションの適用ツールを使用して、キャリブレーションを実行します。

注意:

Level-1 SAR データにはキャリブレーションされていないデジタル ナンバー (DN) がピクセル値として含まれています。 キャリブレーション プロセスで DN 値をレーダー後方散乱強度値に変換します。 後方散乱強度とは、地表に衝突する照射信号と地表から反射した受信信号 (DN) の割合を表したものです。 後方散乱強度の放射分析や明るさは変化する可能性があります。 そのため、SAR 画像から正確な定性的観測と定量的測定を得るため、これらの値を正規化するための放射量キャリブレーションが重要です。

  1. リボン上の [解析] タブの [ジオプロセシング] グループで、[ツール] ボタンをクリックします。

    ツール ボタン

    [ジオプロセシング] ウィンドウが表示されます。

  2. [ジオプロセシング] ウィンドウで、[ツールボックス] タブをクリックします。

    ツールボックス タブ

  3. [Image Analyst ツール] ツールボックスを展開すると、含まれているツールセットがすべて表示されます。

    Image Analyst ツールのツールボックス

  4. [Image Analyst ツール][合成開口レーダー] ツールセットを展開します。

    合成開口レーダー ツールセット

    このツールセットには、[放射量キャリブレーションの適用] ツールなどの SAR ジオプロセシング ツールが含まれています。

    ヒント:

    [ジオプロセシング] ウィンドウの検索ボックスに名前を入力して、[放射量キャリブレーションの適用] ツールを探すこともできます。

  5. [放射量キャリブレーションの適用] ツールをクリックして開きます。

    放射量キャリブレーションの適用ツール

  6. 次のツール パラメーターを設定します。
    • [入力レーダー データ][Panama SAR] を選択します。
    • [出力レーダー データ] で「Panama SAR - Radiometric Calibration.crf」と入力します。
    • [偏波バンド] のチェックボックスがオンであることを確認します。
    • [キャリブレーション タイプ][ガンマ ノート] を選択します。

    分散処理格納環境で大規模ラスター ファイルを読み書きするために最適化された、クラウド ラスター形式 (CRF) ファイル形式で出力されます。

    ワークフローの後半で使用する [明るい海洋物体の検出] ツールには、そのキャリブレーション タイプの SAR 入力が必要なため、[ガンマ ノート] オプションを選択します。

    放射量キャリブレーションの適用ツールのパラメーター

    注意:

    キャリブレーション オプションの詳細については、放射量キャリブレーションの適用ツールのドキュメントをご参照ください。

  7. [実行] をクリックします。

    しばらくすると、新しい [Panama SAR - Radiometric Calibration.crf] レイヤーが表示されます。

    マップ上の Panama SAR - Radiometric Calibration.crf

注意:

画像の詳細情報を表示するには、[コンテンツ] ウィンドウの [Panama SAR - Radiometric Calibration.crf] レイヤーを右クリックし、[プロパティ] を選択して [ソース] タブをクリックします。

これには、ソース画像に適用された処理手順に関する情報も含まれます。 [処理履歴] セクションに一覧が表示されます。

SAR 画像プロパティの処理履歴セクション

キャリブレーションされた画像のシンボル表示と確認

キャリブレーションされた SAR 画像のデフォルト シンボル配色を変更することで、測定対象の後方散乱を見やすくします。 画像を確認して、画像に含まれる船やその他の特徴を表示します。

  1. [コンテンツ] ウィンドウで [Panama SAR - Radiometric Calibration.crf] レイヤーが選択されていることを確認します。

    Panama SAR - Radiometric Calibration.crf レイヤーが選択されている。

  2. リボンの [ラスター レイヤー] タブの [レンダリング] グループで、[シンボル] ボタンをクリックします。

    シンボル ボタン

    [Panama SAR - Radiometric Calibration.crf] レイヤーの [シンボル] ウィンドウが表示されます。

  3. [シンボル] ウィンドウで、画像が現在白黒の [ストレッチ] として表示されていることを確認します。

    Panama SAR - Radiometric Calibration.crf のシンボル ウィンドウ

    つまり、画像内のすべてのピクセルが白から黒の色調で表示され、測定された後方散乱値が小さい場合は黒、大きい場合は白、中程度の場合はグレーのグラデーションで表示されます。

  4. [シンボル] ウィンドウで、次のパラメーターを設定します。
    • [プライマリ シンボル][ストレッチ] が選択されていることを確認します。
    • [バンド][VV] 偏波が選択されていることを確認します。
    • [標準偏差の数値] に「0.5」と入力します。
    • [ガンマ] に「2.0」と入力します。

    シンボルのパラメーター

  5. [配色] でドロップダウン リストを展開し、[名前の表示] チェックボックスをオンにします。 [Viridis] 配色を選択します。

    Viridis 配色

    マップ上で、レイヤーが新しいシンボルで更新されます。

  6. リボンの [マップ] タブの [ナビゲーション] グループで [ブックマーク] をクリックして [Northern Entrance] を選択します。

    Northern Entrance ブックマーク

    マップがブックマークで指定された位置に更新され、パナマ運河を通行する船が待機しているパナマ運河の北入口が表示されます。

    マップの北入口ビュー

    後方散乱値が最も高いエリアは黄色、最も低いエリアはインディゴの色調で表示されています。 海は主にインディゴの色調で表示されています。 陸は主に青の色調で表示されています。 海では船が黄色で表示されています。

    この画像では、最も高い後方散乱値が 2 回反射というタイプの散乱に対応しています。 このタイプの散乱では、レーダー信号が垂直ターゲット (船) から滑らかなサーフェス (海) に 1 回反射し、滑らかなサーフェスから 2 回目の反射でセンサーに戻ります。 この散乱タイプは、たいてい船などの人口構造物で発生し、かなり高い後方散乱値となります。 2 回反射散乱を描いた次の図をご参照ください。

    2 回反射散乱の図
    2 回反射散乱の図

    注意:

    2 回反射散乱に関する詳細は、「合成開口レーダー (SAR) の基礎」ガイドの「散乱のタイプ」セクションをご参照ください。

  7. リボンの [ブックマーク] を再度クリックし、[Southern Entrance] ブックマークを選択すると、パナマ運河を通行しようと南入口で待機している船が表示されます。

    南入口ビュー

  8. マウス ホイール ボタンを使用して拡大表示や縮小表示し、画面移動して画像を調査します。

    ほとんどの船は小さくて細長い黄色の形状として表示されています。 船は 2 回反射散乱を発しているため、後方散乱には明るいプラス記号か星として解釈される場合がある高い値が含まれています。 2 つの例を確認します。

  9. リボンの [ブックマーク] を再度クリックし、[Ships] ブックマークを選択します。

    明るいプラス記号または星として表示されている船

    プラス記号と星の交差線は船を表しているのではなく、単に SAR 画像のアーティファクトであることに注意してください。

  10. 縮小表示して、海岸線や陸、水域などの画像の別の特徴も時間をかけて調査します。
  11. 画像の確認が終わったら、リボンで [ブックマーク] を再度クリックして、[Overview] ブックマークを選択し、全範囲に戻ります。

    シンボル表示された SAR 画像の概観

    プロジェクトを保存します。

  12. [クイック アクセス ツールバー] で、[保存] をクリックして、プロジェクトを保存します。

    保存ボタン

    このワークフローのここまでで、プロジェクトを用意し、パナマ運河とその周辺の SAR GRD 画像に放射量キャリブレーションを適用し、画像をシンボル表示し、画像に含まれている船やその他の特徴を確認しました。 次に、解析を開始します。


SAR データの分析

SAR 画像の分析の準備が整いました。 ここではまず、画像内の船舶を検出します。 次に、検出された船舶を元の画像と比較して、幾何テレイン補正の重要性を理解します。

明るい海洋オブジェクトの検出 (Detect Bright Ocean Objects)

明るい海洋オブジェクトの検出ツールを使用して、SAR 画像内の船舶を検出します。 このツールは、ガンマ ノートによるキャリブレーション済みの SAR 画像を入力として使用し、高い後方散乱値のピクセルのクラスター (つまり明るいオブジェクト) を探します。 次に、それらをフィルタリングして、指定した最小、最大の幅と長さを持つ明るいオブジェクトのみを検出の対象にします。 出力は、検出されたオブジェクトを含む四角形を示すフィーチャクラスとなります。 この画像内で検出される明るいオブジェクトは船舶です。 他の範囲では、石油掘削プラットフォームなど、異なる種類の人工フィーチャが検出される可能性があります。

このツールは、陸域ポリゴンを表すフィーチャクラスと、数値標高モデル (DEM) ラスターの 2 つの追加入力レイヤーを使用します。 これらのレイヤーをマップに追加して、その役割を理解しましょう。

  1. [シンボル] ウィンドウの下部にある [カタログ] タブをクリックします。

    カタログ タブ

  2. [カタログ] ウィンドウで、[データベース] フォルダーと [Detect_ships_with_SAR_imagery.gdb] ジオデータベースを展開し、[Land_Polygons] フィーチャクラスを右クリックして、[現在のマップに追加] を選択します。

    Land_Polygons をマップに追加します。

    [Land_Polygons] レイヤーがマップ上に表示されます。

    マップ上の Land_Polygons

    注意:

    色はランダムに割り当てられているため、異なる場合があります。

    これは、この地域の地形を表すポリゴン レイヤーです。 [明るい海洋オブジェクトの検出] ツールは、陸域ではなく海洋上の船舶の検出だけを試みるよう、このレイヤーをマスクとして使用します。

    次に、DEM レイヤーを追加します。

  3. [カタログ] ウィンドウで、[フォルダー][Detect_ships_with_SAR_imagery][入力データ] を参照し、[DEM] フォルダーを展開します。 [Panama DEM 30m.tif] を右クリックし、[現在のマップに追加] を選択します。

    Panama DEM 30m.tif をマップに追加します。

    DEM レイヤーがマップに表示されます。 その上に [Land_Polygons] レイヤーが表示されます。このレイヤーが一部分を遮っているため、オフにします。

  4. [コンテンツ] ウィンドウで、[Land_Polygons] レイヤーの横にあるチェックボックスをオフにして、レイヤーをオフにします。

    Land_Polygons をオフ

    DEM レイヤー全体が見えるようになります。

    マップ上の DEM レイヤー

    この DEM レイヤーは、この地域に関する標高データを提供するラスターです。 デフォルトでは、黒から白の配色で表示されます。この配色では、標高が最も低いところが黒、最も高いところが白で表示されます。 このレイヤーは、[明るい海洋オブジェクトの検出] ツールで出力のオルソ補正を実行するために使用されます。 オルソ補正とは、センサーの視野角と地形起伏による地上物体の位置ずれを補正する処理のことです。

  5. [コンテンツ] ウィンドウで、[Panama DEM 30m.tif] レイヤーをオフにします。このレイヤーはこれ以降視覚化する必要はありません。

    Panama DEM 30m.tif をオフ

    次に、[明るい海洋オブジェクトの検出] ツールを実行します。

  6. [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。

    戻るボタン

  7. [ツールボックス] タブの [Image Analyst ツール] ツールボックスにある [合成開口レーダー] ツールセットで、[明るい海洋オブジェクトの検出] ツールをクリックして開きます。

    明るい海洋オブジェクトの検出ツール

  8. 次のツール パラメーターを設定します。
    • [入力レーダー データ][Panama SAR - Radiometric Calibration.crf] を選択します。
    • [出力フィーチャクラス] に「Detected_Ships」と入力します。
    • [出力タイプ] で、[バウンディング ボックス] が選択されていることを確認します。

    明るい海洋オブジェクトの検出ツールのパラメーター

    注意:

    [明るい海洋オブジェクトの検出] ツールには、[ガンマ ノート] 法によりキャリブレーションされた SAR 入力が必要になります (このチュートリアルで以前に取り上げた「放射量キャリブレーションの適用」セクションをご参照ください)。 他にも、SAR 入力に対してスペックル除去、幾何テレイン補正など他の処理を実行していないことが必要条件となります。他の処理を実行すると、明るいオブジェクトの検出に必要となるピクセル分布が変化するからです。

  9. 幅と長さに関する次のパラメーターを設定します。
    • [オブジェクトの最小幅] に「5」と入力します。
    • [オブジェクトの最大幅] に「500」と入力します。
    • [オブジェクトの最小長] に「10」と入力します。
    • [オブジェクトの最大長] に「700」と入力します。

    幅と長さのパラメーター

    このツールでは、幅 5 ~ 500 m、長さ 10 ~ 700 m の検出済みオブジェクトのみが検出の対象になります。

  10. ツールで使用する陸域ポリゴンと DEM レイヤーを指定します。
    • [マスク フィーチャ] で、[Land_Polygons] を選択します。
    • [フィーチャ タイプ] で、[陸域ポリゴン] を選択します。
    • [DEM ラスター] で、[Panama DEM 30m.tif] を選択します。
    • [ジオイド補正を適用] がオンになっていることを確認します。
    • [マスク許容値] に「300」と入力します。

    陸域ポリゴンと DEM のパラメーター

    注意:

    ツールのパラメーターの詳細については、パラメーターをポイントして、情報ボタンをクリックします。

    情報ボタン

  11. [実行] をクリックします。

    数分後、マップ上に [Detected_Ships] レイヤーが表示されます。

検出された船舶レイヤーのシンボル表示と確認

[Detected_Ships] レイヤーのシンボルを変更し、結果を確認します。

  1. [コンテンツ] ウィンドウで [Detected_Ships] レイヤーが選択されていることを確認します。

    Detected_Ships レイヤーが選択中

  2. リボン上の [フィーチャ レイヤー] タブにある [描画] グループで、[シンボル] ボタンをクリックします。

    シンボル ボタン

  3. [シンボル] ウィンドウで、シンボルのタイルをクリックします。

    シンボルのタイル

  4. [プロパティ] タブの [表示設定] の下にある [色] で、カラー パレットを展開して [色なし] を選択します。

    色なしオプション

  5. [アウトライン色] のカラー パレットを展開し、[エレクトロン ゴールド] などの明るいオレンジを選択します。

    エレクトロン ゴールド色オプション

  6. [アウトライン幅][2 pt] を選択します。

    アウトライン幅パラメーター

  7. [適用] をクリックします。

    マップ上で、検出された船舶が明るいオレンジの四角形として、[Panama SAR - Radiometric Calibration.crf] レイヤーの上に表示されます。

  8. ズームおよび画面移動して結果を確認します。

    マップ上で検出された船舶

    ほとんどの船舶が無事検出されました。 ただし、オレンジの四角形と SAR 画像での船舶の位置にややずれがあることにお気づきかもしれません。

    オレンジの四角形と船舶の位置のずれ

    この問題については次のセクションで理解し、対処します。

幾何テレイン補正の適用 (Apply Geometric Terrain Correction)

[明るい海洋オブジェクトの検出] ツールにより、(DEM を活用して) オルソ補正された出力が生成されました。一方、[Panama SAR - Radiometric Calibration.crf] 画像はまだオルソ補正されていません。 これが、オレンジの四角形と SAR 画像での船舶の位置にずれがある原因です。 より正確度の高い比較を可能にするために、次に幾何テレイン補正の適用ツールを使用して SAR 画像をオルソ補正します。

  1. [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。
  2. [ツールボックス] タブの [Image Analyst ツール] ツールボックスにある [合成開口レーダー] ツールセットで、[幾何テレイン補正の適用] ツールをクリックして開きます。

    幾何テレイン補正の適用ツール

  3. 次のツール パラメーターを設定します。
    • [入力レーダー データ][Panama SAR - Radiometric Calibration.crf] を選択します。
    • [出力レーダー データ] で「Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf」と入力します。
    • [偏波バンド][VV] チェックボックスがオンであることを確認します。
    • [DEM ラスター][Panama DEM 30m.tif] を選択します。
    • [ジオイド補正を適用] ボックスがオンになっていることを確認します。

    幾何テレイン補正の適用ツールのパラメーター

  4. [実行] をクリックします。

    数分後、新しいレイヤーが表示されます。 このレイヤーのシンボルを変更します。

  5. [コンテンツ] ウィンドウで [Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf] レイヤーが選択されていることを確認します。
  6. リボンの [ラスター レイヤー] タブの [レンダリング] グループで、[シンボル] をクリックします。
  7. [シンボル] ウィンドウで、次のパラメーターを設定します。
    • [配色] でドロップダウン リストを展開し、[名前の表示] チェックボックスをオンにして、[Viridis] 配色を選択します。
    • [標準偏差の数値] に「0.5」と入力します。
    • [ガンマ] に「2.0」と入力します。

    Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf のシンボル パラメーター

    北方の入口にいる船舶を視覚化します。

  8. リボンの [マップ] タブで、[ブックマーク] をクリックして、[Northern Entrance] ブックマークを選択します。
  9. ズームおよび画面移動して、検出された船舶を観察します。

    Detected_Ships フィーチャクラスと SAR 画像の船舶の位置が揃う

    [Detected_Ships] フィーチャクラスと [Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf] ラスター レイヤー内の船舶の位置が揃うようになりました。

  10. [コンテンツ] ウィンドウで、[Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf] レイヤーをオフにして、位置の違いを確認します。

    Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf レイヤーのオンとオフを切り替えます。

    位置の違いがはっきりとわかります。

    幾何テレイン補正がない場合とある場合の位置の違い
    検出された船舶にフォーカスした幾何テレイン補正なしの SAR レイヤー (左) と幾何テレイン補正ありの SAR レイヤー (右)。

    注意:

    比較的大型の船舶の一部は複数のポリゴンに対応しています。これは船舶の異なる部分が個別に検出されたためです。 より高精度の船舶数を得るために、必要に応じてペアワイズ ディゾルブ ツールを使用できます。この際、[マルチパート フィーチャの作成] チェックボックスをオフにします。

    オルソ補正の概念をより深く理解するために、画像の別の領域を確認します。

  11. マップ上で、海岸線が表示される位置まで縮小および画面移動します。

    マップ上の海岸線

  12. [コンテンツ] ウィンドウで、[Land_Polygons] レイヤーをオンにします。

    Land_Polygons レイヤーをオン

  13. [Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf] レイヤーのオンとオフを切り替えて、海岸線の位置も補正されたことを確認します。

    幾何テレイン補正がない場合とある場合の海岸線の位置の違い
    海岸線にフォーカスした幾何テレイン補正なしの SAR レイヤー (左) と幾何テレイン補正ありの SAR レイヤー (右)。

    オルソ補正プロセスが画像全体で実行されたことを確認できます。

  14. リボンの [マップ] タブで、[ブックマーク] をクリックして、[Overview] ブックマークを選択し、全範囲に戻ります。
  15. [コンテンツ] ウィンドウで、[Land_Polygons] をオフにして、[Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf] がオンであることを確認します。

    Land_Polygons と Panama SAR - Geometric Terrain Correction.crf のオーバービュー

  16. Ctrl + S キーを押して、プロジェクトを保存します。

ワークフローの今回の範囲では、[明るい海洋オブジェクトの検出] ツールを使用して SAR 画像内の船舶を検出しました。 次に、SAR 画像に幾何テレイン補正を適用した後、検出された船舶と画像を比較しました。


船舶密度マップの生成

検出された船が密集している場所を示すために船舶密度レイヤーを作成します。 その後、レイヤーをシンボル表示し、結果を解釈します。

エリア内での集計

[エリア内での集計] ツールと 5 x 5 キロメートル グリッドを使用して、船舶密度レイヤーを作成します。 まず、マップにグリッド レイヤーを追加します。

  1. [カタログ] ウィンドウで、[データベース][Detect_ships_with_SAR_imagery.gdb] を展開し、[Grid_5km] を右クリックして [現在のマップに追加] を選択します。

    マップに Grid_5km を追加。

    マップ上に格子線 (グリッド) が表示されます。 各セルは 5 x 5 キロメートルの範囲を表します。

    マップ上のグリッド レイヤー

    グリッドにはまだデータが含まれていません。

    注意:

    この空のグリッドは、フィッシュネットの作成ツールで作成されています。

    [エリア内での集計] ツールを使用して、グリッドの各セル内に何隻の船が存在するかを集計します。

  2. [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 検索ボックスに「Summarize Within」と入力し、[エリア内での集計 (解析ツール)] をクリックして開きます。

    Summarize Within を検索。

    注意:

    [エリア内での集計 (GeoAnalytics Desktop ツール)] は別のツールであり、このワークフローでは使用しません。

  3. 次のツール パラメーターを設定します。
    • [入力ポリゴン][Grid_5km] を選択します。
    • [入力集計フィーチャ][Detected_Ships] を選択します。
    • [出力フィーチャクラス] で、デフォルト名を使用します。
    • [すべての入力ポリゴンを維持] ボックスをオフにします。
    • [シェープの単位][平方メートル] を選択します。

    エリア内での集計ツールのパラメーター

  4. [実行] をクリックします。

    新しいレイヤーがマップ上に表示されますが、元のグリッド レイヤーと区別することができません。

  5. [コンテンツ] ウィンドウで [Grid_5km] レイヤーをオフにします。

    Grid_5km をオフにした状態

    新しいレイヤーで、1 隻以上の船を含むセルのみが残っていることが確認できます。

    マップ上の Grid_5km_SummarizeWithin レイヤー

    このレイヤーの属性テーブルを確認します。

  6. [コンテンツ] ウィンドウで [Grid_5km_SummarizeWithin] を右クリックして、[属性テーブル] を選択します。

    属性テーブル メニュー オプション

  7. [Grid_5km_SummarizeWithin] 属性テーブルの内容を調べます。

    [エリア内での集計] ツールによって [ポリゴン数] 属性が追加され、各グリッド セルの船の隻数が含まれています。

    ポリゴン数属性

  8. 属性テーブルの確認が終わったら、[Grid_5km_SummarizeWithin] 属性テーブル ウィンドウを閉じます。

    ウィンドウの閉じるボタン

船舶密度レイヤーのシンボル表示と解釈

船舶密度レイヤーをシンボル表示し、結果を解釈します。 まず、レイヤーに意味のある名前を付けます。

  1. [コンテンツ] ウィンドウで [Grid_5km_SummarizeWithin] レイヤーをクリックして選択し、もう一度クリックして名前を変更します。 「Number of ships per grid cell」と入力し、Enter キーを押します。

    Number of ships per grid cell に名前が変更されたレイヤー

    次に、シンボルを変更し、グリッド セルごとの船舶数を反映します。

  2. [Number of ships per grid cell] レイヤーが選択されていることを確認します。
  3. リボン上の [フィーチャ レイヤー] タブにある [描画] グループで [シンボル] をクリックします。
  4. [シンボル] ウィンドウの [プライマリ シンボル] で、[等級色] を選択します。

    等級色が選択されたプライマリ シンボル パラメーター

  5. [フィールド][ポリゴン数] を選択します。

    ポリゴン数が選択されたフィールド パラメーター

    船舶密度マップをシンボル表示したので、次は、船が最も混雑している場所を確認します。

  6. マップ上で、[Number of ships per grid cell] レイヤーと、[コンテンツ] ウィンドウにある対応する凡例を調べます。

    最終的なマップ

    最も密度が高いエリアを赤色で、最も密度が低いエリアを黄色で表示しています。 大半の船は、運河の北入口と南入口に沿って並んでおり、各入口から約 75 平方キロメートルのエリアを占めていることがわかります。

  7. Ctrl + S キーを押して、プロジェクトを保存します。

このチュートリアルでは、パナマ交通サービス機関のアナリストとして、SAR 画像を使用してパナマ運河地域の海上交通渋滞を調査しました。 SAR 画像に放射量キャリブレーションを適用し、シンボルを変更しました。 そして、[明るい海洋オブジェクトの検出] ツールを使用して SAR 画像内の船を検出しました。 SAR 画像に幾何テレイン補正を適用した後、検出した船と画像を比較しました。 最後に、検出された船が密集している場所を示すために船舶密度レイヤーを生成し、レイヤーをシンボル表示して結果を解釈しました。

パナマ交通サービス機関のような組織は、様々な要因を監視し効果的なマネジメント戦略を実施することで船の混雑を最小限に抑え、円滑な業務を遂行することを目指しています。 現実の設定では、船舶密度マップはこうした目標を達成するために使用されるツールの 1 つにすぎないことに注意してください。 その他の重要な要因として、天候、出入りする貨物の数、港湾の貨物取り扱い量などが挙げられます。

他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。