森林破壊状況のマップ作成

この最初のシナリオでは、ブラジル森林局の画像アナリストとして、分析用の SAR 画像を点検し、ブラジルのアクレ州における森林破壊活動を特定します。

プロジェクトをダウンロードして開く

まず、このチュートリアルのデータをすべて含むプロジェクトをダウンロードし、ArcGIS Pro で開きます。

  1. Explore_SAR_Satellite_Imagery.zip ファイルをダウンロードし、コンピューター上で、ダウンロードしたファイルを選択します。
    注意:

    ほとんどの Web ブラウザーでは、デフォルトでコンピューターのダウンロード フォルダーにファイルがダウンロードされます。

  2. [Explore_SAR_Satellite_Imagery.zip] ファイルを右クリックし、コンピューター上の場所 ([ドキュメント] フォルダーなど) に展開します。
  3. 解凍した [Explore_SAR_Satellite_Imagery] フォルダーを開き、[Explore_SAR_Satellite_Imagery.aprx] をダブルクリックして ArcGIS Pro でプロジェクトを開きます。

    .aprx ファイル

  4. プロンプトが表示されたら、ArcGIS の組織アカウントまたは指定ユーザー アカウントを使用して ArcGIS Enterprise にサイン インします。
    注意:

    ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください

    プロジェクトが開きます。

    初期の概観

    マップ ウィンドウには、[森林破壊マップ][海洋監視マップ][洪水マップ] の 3 つのタブがあります。 最初のシナリオとして、[森林破壊マップ] タブを確認します。

    3 つのマップのタブ

マップを確認してシンボルを理解する

ここで、[森林破壊マップ] タブを確認して、マップに含まれる SAR 画像がどのようにシンボル表示されているかを把握します。

  1. 必要に応じて、[森林破壊マップ] タブをクリックして選択します。

    森林破壊マップタブの選択

    [コンテンツ] ウィンドウでは、マップに [AcreBrazil_20210722.crf][AcreBrazil_20210802.crf] の 2 つの画像が掲載されており、衛星画像の上に画像べースマップが表示されていることがわかります。

    2 つの画像と 1 つのベースマップを表示しているコンテンツ ウィンドウ

    注意:

    これらの分析用 SAR 画像は、ICEYE の SAR Ground Range Detected (GRD) データ プロダクトから導き出されたものです。

    SAR GRD と、SAR 画像を配布するために一般的に使用されるその他のプロダクトについては、SAR 衛星データをご参照ください。

    これらの画像 (またはこのチュートリアルで使用されている他の画像) の詳細を確認したい場合は、[コンテンツ] ウィンドウで、画像名を右クリックして、[メタデータの表示] を選択します。 または、画像名をダブルクリックして [レイヤー プロパティ] ウィンドウを表示することで、[メタデータ][ソース] の両方の情報を確認できます。 [ソース] 情報の [処理履歴] セクションで、これらの分析用 SAR 画像を取得するために行われた前処理に関する情報も確認できます。

    両方の画像は、アマゾンの熱帯雨林の中心にあるブラジルのアクレ州の同じ範囲を表しています。 これらは、2021 年 7 月 22 日と 2021 年 8 月 2 日に撮影された画像です。 ここで、マップ上では、トップ画像の [AcreBrazil_20210722.crf] を確認できます。

  2. マップ上の SAR 画像をご覧ください。

    風景が光学カメラではなく SAR センサーで撮影されたものであり、写真には見えないため、風景の表現方法が異質に思えるかもしれません。 SAR 衛星は、地表に向けてレーダー波を送出し、反射する波を基にマップを作成します。 SAR センサーが受信するこのレーダー波を、測定された後方散乱と呼びます。 SAR 画像は、測定された後方散乱を 2 次元でレンダリングしたものです。 レーダー波は、異なる種類の地表に異なる形で反射し、異なる後方散乱値を生じます。

    注意:

    後方散乱の概念に関する詳細は、合成開口レーダー (SAR) の基礎のガイドをご覧ください。

  3. [コンテンツ] ウィンドウで、[AcreBrazil_20210722.crf] の画像の凡例を確認します。

    後方散乱測定値は、およそ -33 ~ -4 dB となります (測定単位はデシベル)。 小さい方の値は黒と濃いグレー、大きい方の値は薄いグレーと白で表示されます。

    後方散乱測定値は、およそ -33 ~ -4 dB です。

  4. マップで、画像に表示されている複数種類のフィーチャを確認します。
    • 森林地域はミディアム グレーの色調 (中程度の後方散乱値) で粗い表面として表示されます。
    • 地表エリアは黒または濃いグレーの色調 (小さな後方散乱値) で滑らかな表面として表示されます。 これらは、過去のある時点で森林破壊され、農業に転用された可能性がある地域です。
    • 最近森林破壊された地域は、丸太と切り株が残っている可能性があるため、薄いグレーの色調 (高い後方散乱値) で表示されます。

    複数種類のフィーチャ
    画像は、(A) 森林地域、(B) 地表、(C) 最近森林破壊された地域を示しています。

    森林の樹冠では、レーダー波がボリュメトリック スキャタリングと呼ばれる特殊な形式で反射します。つまり、レーダー波は、森林の 3D フィーチャに複数回反射して、反射中に方向を無作為に変えます。 これにより、画像のテクスチャが粗く見えます。

    注意:

    各種の散乱に関する詳細は、合成開口レーダー (SAR) の基礎のガイドをご覧ください。

  5. マップで、画像の中央にある最近森林破壊された地域を確認します。

    最近森林破壊された地域

    最近森林破壊された地域は、森林に切り込んでいるように見えます。 この地域は、開拓地の西側を黒い線形フィーチャ (低い後方散乱値) で、東側を白い線形フィーチャ (高い後方散乱値) で区切られています。 黒い線は、レーダー波を遮る樹木によって生じる影を表し、白い線は、レーダー波が背の高いフィーチャの底部に到達する前にその頂部に到達した場合に生じるレイオーバー効果を表します。

    ヒント:

    視覚的には、森林破壊された地域が森林に食い込んでいるのではなく、森林に飛び出しているように見えるユーザーもいるかもしれません。 画像を左から右に見て、木の影を表す色の濃い線に特に注意を払うと、画像を正しく解釈しやすくなります。

    影やレイオーバーのような効果は、SAR 衛星が横向きで画像を撮影するために起こる典型的な SAR の歪みです。 この場合、衛星は北から南へ降下しながら周回しており、左 (東方向) を向いて撮影しています。 飛行機の左側に座って窓の外を見ているのと同様です。

    注意:

    各種の歪みに関する詳細は、合成開口レーダー (SAR) の基礎のガイドをご覧ください。

  6. 他にもいくつかの興味深いフィーチャを見ていきましょう。
    • 川沿いには森林地帯があり、森林破壊を免れているように見えますが、これはおそらく、川岸が険しすぎて農業ができないためと思われます。
    • 川の支流である小川にも、その形状に沿って小さな森林が残っています。

    その他の興味深いフィーチャ
    川 (A) と小川 (B と C) に沿った森林地帯。

    この画像をより詳細にシンボル化するための設定を確認します。

  7. [コンテンツ] ウィンドウで、必要に応じて [AcreBrazil_20210722.crf] レイヤーをクリックして選択します。

    AcreBrazil_20210722.crf レイヤーを選択

  8. リボンの [ラスター レイヤー] タブの [レンダリング] グループで、[シンボル] ボタンをクリックします。

    シンボル ボタン

    [シンボル] ウィンドウが表示されます。

  9. [シンボル] ウィンドウで、画像が現在白黒の [ストレッチ] として表示されていることを確認します。

    シンボル ウィンドウ

    つまり、凡例で先に確認したとおり、画像のすべてのピクセルが白黒で表示され、測定後方散乱値が小さい場合は黒、大きい場合は白、中程度の場合はグレーの色調で表示されます。

  10. [ストレッチ タイプ][標準偏差の数値] のパラメーターを確認します。

    ストレッチ タイプと標準偏差の数値のパラメーター

    これらの設定は、[ストレッチ タイプ] の設定として [標準偏差] を使用し、[標準偏差の数値] の値として [1] を使用して SAR 画像を表示する一般的な推奨に従っています。

  11. [コンテンツ] ウィンドウで、[AcreBrazil_20210802.crf] をクリックして選択します。

    [シンボル] ウィンドウが更新され、2 番目の画像の設定が表示されます。 最初の画像と同様のシンボルが使用されていることがわかります。

次に、2 つの画像を比較し、2 つの画像がキャプチャされた 2021 年 7 月 22 日と 8 月 2 日の間に対象地域がどのように変化したかを視覚化します。

SAR 画像の比較

ここで、[スワイプ] ツールを使用して、2 つの画像を比較します。

  1. [コンテンツ] ウィンドウで、[AcreBrazil_20210722.crf] レイヤーが選択されているか確認します。

    AcreBrazil_20210722.crf レイヤーを選択

  2. リボンの [ラスター レイヤー] タブの [比較] グループで、[スワイプ] をクリックします。

    スワイプボタン

  3. マップで、スワイプ ハンドルをクリックして上下または左右に繰り返しドラッグし、7 月 22 日の画像をめくって、8 月 2 日の画像を表示します。

    スワイプ ハンドル

    ヒント:

    [スワイプ] ツールを使用するには、めくりたいレイヤーを選択する必要があります。

    スワイプするうちに、2 つの画像の違いがわかります。 調査地域の中央では、森林破壊活動が西の方向に大きく進んでいます。

    2 つの画像間の新しい森林破壊活動

    驚くべきことに、この変化は、たった 12 日のうちに起こりました。

  4. 画像の探索を終了したら、リボンの [マップ] タブの [ナビゲーション] グループで [マップ操作] ボタンをクリックしてスワイプ モードを終了します。

    マップ操作ボタン

この最初のシナリオでは、分析用 SAR 画像を探索して、森林破壊が行われている地域を視覚化しました。 ブラジル森林局の画像アナリストとして、このような画像を定期的に点検することで、森林破壊などの森林活動を正確に追跡し、政策立案者に精度の高い報告を行うことができます。 複数の SAR 衛星により、短期間に繰り返し森林破壊などの活動をほぼリアルタイムに画像撮影できます。 たとえば、ICEYE は、各地域の新しい画像を 1 ~ 22 日ごとに、Sentinel-1 は 6 ~ 12 日ごとに提供します。 アマゾンの熱帯雨林のような地域では、厚い雲に覆われることが大変多く、雲の影響を受けない SAR 画像は特に貴重です。


海洋活動の監視

2 つ目のシナリオでは、パナマ運河当局の画像アナリストとして、パナマ運河の通過待ちをしている船の特定と監視を行う必要があります。 解析対応 SAR 画像のシンボルを変更し、そこに船があるかどうかを評価します。

画像のシンボル表示

まず、この 2 つ目のシナリオ用のマップに切り替え、解析対応 SAR 画像のデフォルト シンボル配色を変更することで、測定対象の後方散乱を見やすくします。

  1. [Maritime Monitoring Map] タブをクリックします。

    Maritime Monitoring Map タブ

    マップが開きます。 [PanamaCanal_20220207.crf] という SAR 画像が 1 つだけ含まれており、画像ベースマップに重ねて表示されています。

    Maritime Monitoring Map の初期ビュー

    注意:

    前のシナリオで使用した画像同様、この解析対応 SAR 画像は ICEYE 衛星ミッションの SAR GRD データ プロダクトから導き出されたものです。

  2. [コンテンツ] ウィンドウで [PanamaCanal_20220207.crf] レイヤーのシンボルをクリックします。

    PanamaCanal_20220207.crf レイヤーのシンボル

    ヒント:

    この方法でも [シンボル] ウィンドウを開くことができます。

    [シンボル] ウィンドウが表示されます。

  3. [シンボル] ウィンドウの [配色] でドロップダウン リストを展開し、[名前の表示] オプションがオンになっていることを確認します。 [Viridis] 配色を選択します。

    配色パラメーター

    マップ上で [PanamaCanal_20220207.crf] レイヤーが更新されます。

データの解釈

次に、画像を確認して船を特定します。

  1. マップ上で、更新された画像を観察します。

    新しくシンボル表示された SAR 画像

    後方散乱値が最も高いエリアは明るい黄色、最も低いエリアは暗い青の色調で表示されています。 海は暗い青と緑の色調で表示されています。 陸地は黄色と明るい緑の色調で表示されています。 海では船が明るい黄色で表示されています。 ここでも値がデシベル単位で表示されています。

    この画像では、最も高い後方散乱値が 2 回反射というタイプの散乱に対応しています。 このタイプの散乱では、レーダー信号が垂直ターゲットで 1 回反射して滑らかなサーフェスに到達し、滑らかなサーフェスで 2 回目の反射が発生してセンサーに戻ります。 この散乱タイプは、船や建物などの人口構造物で発生します。

    注意:

    2 回反射散乱に関する詳細は、「合成開口レーダー (SAR) の基礎」ガイドの散乱のタイプセクションをご参照ください。

  2. マップ上でマウスのホイール ボタンを使用して拡大と縮小を行い、画像に画面移動してパナマ運河の入り口のすぐ外で見つかった船を観察します。

    パナマ運河の入り口のすぐ外で見つかった船

    ほとんどの船は小さくて細長い黄色の形状として表示されています。 ただし、以下のサンプル画像でハイライト表示されているように、2 回反射散乱の効果によって一部が明るいプラス記号か星として表示される場合があります。

    明るいプラス記号または星として表示されている船

    注意:

    船は 2 回反射散乱を発しているため、後方散乱には明るいプラス記号か星として解釈される場合がある高い値が含まれています。 これは SAR 画像に固有の一般的な画像アーティファクトを表しています。

    プロジェクトを保存します。

  3. [クイック アクセス ツールバー][保存] ボタンをクリックします。

    保存ボタン

この 2 つ目のシナリオでは、解析対応 SAR 画像のシンボル表示と探索を行うことで、パナマ運河の通過待ちをしている船を特定しました。 SAR 画像をこのように応用することで、日用品や商品、貨物の輸送を追跡する企業で使用できる物流情報が手に入ります。 違法、無報告、無規制 (IUU) 漁業を行っている疑いがある船舶の監視にも使用できます。


洪水エリアの特定

最後のシナリオでは、米連邦緊急事態管理局 (FEMA) の画像アナリストとして、ハリケーン ハービーによる洪水に見舞われたテキサス州フリーポート近郊の地域を特定します。 ハリケーン来襲の前後に撮影された分析用 SAR 画像を操作して、偏波バンドについて学習し、2 つのカラー合成を導き出します。 その後、スワイプ ツールを使用して、洪水地域を視覚化します。

カラー合成の作成

まず、この第 3 のシナリオのマップに切り替え、偏波バンドについて学習して、ハリケーン来襲前後の画像のカラー合成を作成します。

  1. [洪水マップ] タブをクリックします。

    洪水マップ タブ

    マップが開きます。 マップには、ハリケーン来襲前の SAR 画像 [Texas_20170805.crf] とハリケーン来襲後の SAR 画像 [Texas_20170829.crf] が存在します。 これらの画像は、2017 年 8 月 5 日と 29 日に撮影されました。

    洪水マップの内容

    注意:

    これらの分析用 SAR 画像は、European Space Agency の Copernicus Sentinel-1 ミッションの SAR GRD データ プロダクトから導き出されたものです。

    ここでは、ハリケーン来襲後の画像 [Texas_20170829.crf] がオンになっており、マップに表示されています。 この画像の構造をより深く理解するために、[シンボル] ウィンドウを確認します。

  2. [コンテンツ] ウィンドウで [Texas_20170829.crf] レイヤーのシンボルをクリックします。

    Texas_20170829.crf レイヤーのシンボル

    [シンボル] ウィンドウが表示されます。

  3. [シンボル] ウィンドウで、設定を確認します。

    画像には現在、白黒の [ストレッチ] シンボルが表示されています。

    シンボル ウィンドウ

  4. [バンド] で、ドロップダウン リストを展開します。

    バンド パラメーターのドロップダウン リスト

    画像は、[VV][VH] の 2 つのバンドで構成されています。

    1 つの SAR 画像には複数のバンドが含まれ、各バンドが異なる偏波のレーダー波を表す場合があります。 この例では、1 つのバンドが共偏波バンド ([VV])、もう 1 つが交差偏波バンド ([VH]) となっています。 各バンドは、地表の各種フィーチャを強調してくれるため、これらのフィーチャすべてから有用な情報が得られます。

    注意:

    偏波に関する詳細は、合成開口レーダー (SAR) の基礎のガイドをご覧ください。

    各バンドは、別々に視覚化できます。 今マップに表示されているバンドは [VV] です。 [VH] に切り替えます。

  5. [バンド] で、[VH] を選択します。

    マップが更新されます。 [VV][VH] の偏波がそれぞれ地形の異なる要素を強調していることがわかります。

    VV 偏波バンドと VH 偏波バンド
    この最初の画像には、ハリケーン来襲後の画像 Texas_20170829.crf の VV バンド、2 番目の画像には同画像の VH バンドが表示されています。

    注意:

    SAR 画像には、1 つのバンドしか含まないものや複数のバンドを含むものがあります。 これは、使用されている能動型センシングの種類によります。 能動型センシングでは、送信される電磁波の偏波を制御できます。

  6. 必要に応じて、同様の手順で、ハリケーン来襲前の [Texas_20170805.crf] の画像の [VV] バンドと [VH] バンドを視覚化しましょう。

    各バンドを個別に確認できますが、バンドを組み合わせることで、より充実した風景を表示でき、水辺、陸地、都市の建物などのサーフェス特性をより明確に区別できます。 これは、各バンドが赤、緑、または青の表示チャンネルに割り当てられるカラー合成を作成することで行えます。 まずは、ハリケーン来襲後の画像のカラー合成を作成します。

  7. リボンの [解析] タブの [ジオプロセシング] グループで、[ツール] をクリックします。

    ツール ボタン

    [ジオプロセシング] ウィンドウが表示されます。

  8. [ジオプロセシング] ウィンドウの検索ボックスに「カラー合成の作成」と入力します。 結果リストで、[カラー合成の作成 (Image Analyst)] ツールをクリックして開きます。

    カラー合成作成ツールの検索

  9. [パラメーター] タブの [入力ラスター] で、[Texas_20170829.crf] を選択します。

    カラー合成作成ツールの入力ラスター パラメーター

    ツールにより、残りのパラメーターにデータが自動入力されます。 これらの値を一部変更します。

  10. 次のパラメーター値を設定します。
    • [出力ラスター] で、値が [Texas_20170829_RGB.crf] になっているか確認します。
    • [方法] で、[バンド名] を選択します。
    • [赤の式] で、値が [VV] になっているか確認します。
    • [緑の式] で、値が [VH] になっているか確認します。
    • [青の式]「VV-VH」と入力します。

    カラー合成パラメーターの作成

    [方法] パラメーターで [バンド名] を選択すると、[VV][VH] などのバンド名でバンドを指定することになります。

    元の画像には 2 つのバンド (VV と VH) があるため、第 3 のバンドを [青の式] に割り当てることができません。 代わりに、青の式には数式 [VV-VH] を入力します。 つまり、画像の各ピクセルについて、[VH] バンドの値が [VV] バンドの値から差し引かれます。 その結果が第 3 のバンドとなり、青チャンネル経由で表示され、風景の興味深いフィーチャをさらに強調します。

    注意:

    使用されるバンド間演算は、入力 SAR データの単位によって異なります。 入力 SAR データがデシベル単位 (dB) の場合、バンド割り当ては赤を [VV]、緑を [VH]、青を [VV-VH] にする必要があります。 入力 SAR データが距離単位である場合、赤に [VV]、緑に [VH]、青に [VV/VH] を使用します。

  11. [実行] をクリックします。

    新しいラスター レイヤー [Texas_20170829_RGB.crf] がマップに表示されます。

    マップに表示された Texas_20170829_RGB.crf

    カラー合成は、水域 (海洋、河川、氾濫域) を青と紫の色調で、植生地域と森林地域を緑で、都市構造物を黄色で表示します。 ピンク色は、最適な方向 (レーダーの視線方向と直交する方向) を向いた都市構造物、水中の瓦礫、または洪水になった植生です。

    次に、ハリケーン来襲前の [Texas_20170805.crf] 画像のカラー合成を作成します。

  12. [ジオプロセシング] ペインの [パラメーター] タブの [入力ラスター][Texas_20170805.crf] を選択します。 他のパラメーターは現在の値のままにしておき、[実行] をクリックします。

    2 番目の画像のカラー合成パラメーターの作成

    新しいラスター レイヤー [Texas_20170805_RGB.crf] がマップに表示されます。

    マップに表示された Texas_20170805_RGB.crf

次に、カラー合成レイヤーのシンボルを微調整して、より意味のあるものにします。

シンボルの微調整

ハリケーン来襲前後のカラー合成を比較するには、カラー合成で同じシンボルが使用されているかを確認する必要があります。 ご存じのとおり、カラー合成には同じバンドが含まれていますが、2 つの画像間で同じ値範囲を維持するためにシンボルを調整する必要があります。

  1. [Texas_20170829_RGB.crf] をオフにしてからオンにして、[Texas_20170805_RGB.crf] と比較します。

    現在、値の範囲は異なっています。 たとえば、草木が生えた土地は、一方の画像では濃い緑で表示され、もう一方の画像では薄い緑で表示されていることが確認できます。

  2. [コンテンツ] ウィンドウで、[Texas_20170829_RGB.crf] のシンボルの 1 つをクリックします。

    Texas_20170829_RGB.crf のシンボル

    [シンボル] ウィンドウが表示されます。

  3. [シンボル] ウィンドウでオプション ボタンをクリックして [レイヤーからインポート] を選択します。

    レイヤー メニューからインポートのオプション

  4. [ジオプロセシング] ウィンドウの [レイヤーのシンボル情報を適用] ツールで、以下のパラメーター値を選択します。
    • [入力レイヤー] で、[Texas_20170829_RGB.crf] が選択されているか確認します。
    • [シンボル レイヤー] で、[Texas_20170805_RGB.crf] を選択します。
    • [データごとにシンボル範囲を更新][範囲を維持] が選択されているか確認します。

    レイヤーのシンボル情報を適用のパラメーター

  5. [実行] をクリックします。

    2 つのカラー合成では今、同じ範囲の値の同じシンボルが使用されています。 たとえば、草木が生えた土地は、おおむね同様の薄い緑の色調で表示されています。

次に、画像を確認して、データを解釈します。

カラー合成の比較

[スワイプ] ツールを使用して、ハリケーン来襲前後のカラー合成の違いを視覚化します。

  1. [コンテンツ] ウィンドウで [Texas_20170805_RGB.crf] レイヤーをクリックして選択します。
  2. リボンの [ラスター レイヤー] タブの [比較] グループで、[スワイプ] をクリックします。

    スワイプボタン

  3. マップで、スワイプ ハンドルをクリックして上下または左右に繰り返しドラッグし、ハリケーン来襲前の画像をめくって、ハリケーン来襲後の画像を表示します。

    スワイプ ハンドル

    両方の画像の違いを確認して、洪水に遭った地域を特定します。 参照ポイントとして使用できる特徴的なフィーチャを特定します。 以前は乾燥した土地だった多くの地域のうち青になっている地域は、ハリケーン来襲後に浸水している地域で、紫になっている地域は、洪水になった地域に草木または瓦礫が存在する地域です。

  4. 画像の探索を終了したら、リボンの [マップ] タブの [ナビゲーション] グループで [マップ操作] ボタンをクリックしてスワイプ モードを終了します。

    マップ操作ボタン

    プロジェクトを保存します。

  5. [クイック アクセス ツールバー][保存] ボタンをクリックします。

    保存ボタン

    注意:

    SAR 画像による洪水のマッピングの詳細については、「SAR データの解釈による洪水のマッピング」のドキュメント ページをご覧ください。

この 3 つ目のシナリオでは、分析用 SAR 後方散乱から共偏波バンドと交差偏波バンドに対応する 2 つのカラー合成を作成し、2 つの画像間で同じ値範囲が維持されていることを確認しました。 その後、スワイプ ツールを使用してハリケーン来襲前後の画像を比較し、洪水地域を特定しました。 このような解釈は、洪水マップの作成に使用される一部の高度な分析技術の基礎となります。 洪水マップは、災害管理や捜索救助活動の支援、住宅ローンの貸し手による保険要件の決定の支援など、さまざまな目的で利用されます。

このチュートリアルでは、森林破壊のマッピング、海洋活動の監視、洪水地域の特定という 3 つの用途について説明しました。 画像のシンボルを変更し、対象フィーチャを強調するための複数の方法について説明しました。 その後、マップを操作するためのツールを使用して、データを探索し、解釈しました。

他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。