ラスター データの追加

2D マップを作成したことがあれば、フィーチャ データ (不連続オブジェクトとして表示されるデータ、すなわちフィーチャ) についてなじみがあるのではないでしょうか。 フィーチャ データは、構造物、運河、ランドマークなどを表現するにはすぐれていますが、連続するサーフェス上の標高を表すには適していません。 これを表すには、ラスター データという別の種類のデータを使用します。

ラスター データは多数のピクセルから構成されており、そのそれぞれに独自の値があります。 フィーチャ データと外観は異なりますが、マップへの追加方法は同じです。 まず、フィーチャ データを含む、ヴェネツィアの 2D マップを表示するプロジェクトを開きます。 次に、標高を示すラスター レイヤーをマップに追加します。

  1. このシリーズの前回のチュートリアル、「ヴェネツィアを 2D でマッピング」を完了している場合は、ArcGIS Pro で作成した [Venice] プロジェクトを開きます。
  2. 前回のチュートリアルを完了していない場合は、「Map Venice in 3D」プロジェクト パッケージをダウンロードします。 ダウンロードしたプロジェクト パッケージを探し、そのパッケージをダブルクリックして ArcGIS Pro で開きます。 サイン インを求められたら、ArcGIS アカウントを使用してサイン インします。
    注意:

    ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください

    前回のチュートリアルで作成したプロジェクトを使用している場合でも、プロジェクト パッケージをダウンロードした場合でも、プロジェクトには、ヴェネツィアの構造物、運河、ランドマークを表示するマップが含まれます。

    デフォルト マップ

    次に、標高データを追加します。

  3. リボンの [マップ] タブをクリックします。 [レイヤー] グループの [データの追加] ボタンをクリックします。

    データの追加ボタン

    [データの追加] ウィンドウが開きます。

    注意:

    ArcGIS Enterprise を使用している場合、「Venice_Data.zip」をダウンロードして、プロジェクトで作成したプロジェクト フォルダーに展開します。 [Venice_Data] を参照して、[Venice_Elevation_Data] アイテムを追加します。 ポータルのセキュリティのために、Enterprise ではユーザーが ArcGIS Online に保存されたアイテムを検索することはできません。 データは、ライセンス ポータル、ArcGIS Living Atlas、またはローカルでホストする必要があります。

  4. [データの追加] ウィンドウで、[ポータル] の下の [ArcGIS Online] をクリックします。
  5. 検索ボックスに「Venice_Elevation_Data owner:Learn_ArcGIS」と入力し、Enter キーを押します。

    データの追加ウィンドウ

  6. [Venice_Elevation_Data] をダブルクリックして、マップに追加します。
    注意:

    パッケージは 150 MB で、ネットワークの接続状況によってはダウンロードに数分かかる場合もあります。

    パッケージには、[Venice 1m][Venice Ground Surface] の 2 つのレイヤーが入っています。

  7. [コンテンツ] ウィンドウで、[Landmarks][Canals][Structures] の横にある各ボックスをオフにして、[Venice 1m] とベースマップだけを表示します。

    Venice 1m ラスター レイヤー

    このレイヤーがラスター レイヤーです。 ラスター レイヤーでは、各ピクセルが独自の値を格納します。 レイヤー名 [Venice 1m] は、その解像度 (ピクセルのサイズ) を表します。 1m は、各ピクセルが 1 平方メートルの面積であることを意味しています。

    このラスター レイヤーは、一連のポイントを内挿することで作成されています。 ただし、これは内挿であり、不正確な可能性があるため、このラスター レイヤーは実際の分析には適していません。 ただし、このチュートリアルではニーズに合っています。

  8. [コンテンツ] ウィンドウの [Venice 1m] の横にある矢印をクリックして、シンボルを表示します。

    Venice 1m のシンボル

    このレイヤーには、単一のシンボルではなく、複数値を表す配色があります。 値は、メートル単位の標高を表します。 ヴェネツィアの標高は、海面直下 (暗い色) から海抜約 11 メートル (明るい色) までとなっており、非常に平坦です。

  9. マップ上で、ラスター レイヤー内の任意の場所をクリックします。

    クリックしたピクセルのポップアップが表示されます。 画像例では、ピクセルの標高は、海抜約 1.04 メートルです。

    Venice 1m のポップアップ

  10. ポップアップを閉じます。

    マップの調査から、ヴェネツィアのほとんどのエリアは海抜約 1 メートルであり、市内の東西の端部の標高がいくぶん高いに過ぎないことがわかります。 このように標高の低い環境のため、ヴェネツィアは洪水の被害を受けやすくなっています。 ヴェネツィアの極端に平坦な地形をさらに理解するために、3D で視覚化します。

マップからシーンへの変換

元々、マップのデータは 2D で表示されます。 シーンは、データを 3D で表示するマップです。 デフォルトでは、ArcGIS Pro はマップをグローバル シーンに変換します。グローバル シーンは、世界全体を球体で表現します。 ここでは、対象が世界全体ではなくヴェネツィアであるため、設定を変更して、マップがローカル シーンに変換されるようにします。

  1. リボンの [表示] タブをクリックします。 [表示] グループで、[変換] をクリックして、[ローカル シーンに変換] を選択します。

    変換ボタン

    マップが 3D に変換され、[Map_3D] というビューが作成されます。 いつでも [Map] ビュー タブをクリックして、2D マップに戻ることができます。

  2. [コンテンツ] ウィンドウで、[Venice 1m] をオフにします。 [Landmarks][Canals][Structures] をオンにします。

    デフォルトのヴェネツィアのシーン

    シーンでは、レイヤーは 2D または 3D のいずれかで指定できます。 現在使用しているレイヤーは 2D であるため、平坦なままです。 これはこのチュートリアルで後ほど変更します。

  3. ポインターをドラッグしながら V キーを押すと、3D シーンを傾斜および回転させて操作できます。 2D マップの場合と同じ方法で画面移動やズームを行います。 右クリックでズームすることもできます。

    傾けられたヴェネツィアのシーン

    ヴェネツィアの平坦な地形が、遠くの山々と対照的に表示されます。 ラスター データはヴェネツィア以外は表示しないはずですが、これらの山々はなぜ表示されているのでしょうか。 デフォルトでは、シーンは、標高サーフェスという標高データのマップを使用して標高を判断しています。 このデフォルトのサーフェスが、解像度は低い (詳細ではない) ものの、世界全体を網羅しているためです。

  4. リボンの [マップ] タブをクリックします。 [ナビゲーション] グループで、[ブックマーク] をクリックして [Venice] を選択します。
    注意:

    マップをシーンに変換すると、マップの 2D ブックマークも 3D ブックマークに変換されます。 現時点ではどちらのブックマーク セットも同じものなので、どちらを使用しても構いません。

標高ソースの追加

デフォルトの地表サーフェスは、ヴェネツィアの極端に平坦な土地を正確に描画します。 ただし、解像度が低いため、詳細に欠けています。 高解像度のラスター レイヤーの 1 つを新しい標高サーフェスとして追加します。

  1. [コンテンツ] ウィンドウで、[Venice Ground Surface] レイヤーをオンにします。

    Venice ground surface

    [Venice Ground Surface] レイヤーには [Venice 1m] レイヤーと同じ標高データがありますが、周辺の潟の海抜データも含まれています。 このデータにより、ヴェネツィアの標高が詳細になり、シーンの設定に役立ちます。 このレイヤーを地表面の標高として使用します。

  2. [コンテンツ] ウィンドウで [Venice Ground Surface] を右クリックし、[標高] にカーソルを合わせて [地表に複製] を選択します。

    地表に複製オプション

    [venicesource] レイヤーが、[コンテンツ] ウィンドウの [標高サーフェス] セクションの下に追加されます。 標高サーフェスは 2 つあります。 1 つは先ほど追加した [venicesource] レイヤーで、もう 1 つはデフォルトのサーフェスです。

    新しい標高サーフェスがヴェネツィア周辺エリアの地表として設定されます。 デフォルトの標高値は、引き続きヴェネツィア以外のエリアで使用されます。したがって、背景の山々も引き続き表示されます。

  3. [コンテンツ] ウィンドウの [2D レイヤー] で、[Venice Ground Surface] をオフにします。
  4. 画面移動、ズーム、傾斜を行ってシーンをナビゲートし、新しい地表面サーフェスの表示をより見やすくします。

    更新されたヴェネツィアのシーン

    標高のシフトを表示するために非常に近くまでズームする必要がある場合があります。ヴェネツィアは、非常に平坦で標高が低いためです。 標高が非常に低いことで、ヴェネツィアで洪水がどれほど深刻であるかがよくわかります。

  5. 終了したら、[Venice] ブックマークに移動します。

3D でのフィーチャの表示

シーンを傾けたらわかるように、[Landmarks] レイヤーは、2D レイヤーとして表示され、押しピンのシンボルが地表に対してフラットになっています。 このレイヤーには標高データがありませんが、レイヤーの表示を変更して、押しピンのシンボルに高さを加えることができます。

  1. [コンテンツ] ウィンドウの [2D レイヤー] で、[Landmarks] レイヤーを [2D レイヤー] セクションから [3D レイヤー] セクションにドラッグします。

    3D レイヤー グループの Landmarks

    押しピンが 3D で表示され、マップを回転したり画面移動したりすると、垂直に立ち上がるようになります。

    3D ランドマークが表示されたヴェネツィアのシーン

    また、現在はフラットですが、3D で表示できるレイヤーとして、[Structures] レイヤーがあります。 [Structures] レイヤーには、[Landmarks] レイヤーとは異なり、属性に高さデータがあります。 レイヤーを 3D で表示するには立ち上げを使用します。立ち上げは、定数または属性を Z 値として使用してフィーチャを 3D で表示します。

  2. [コンテンツ] ウィンドウで、[Structures] レイヤーを [2D レイヤー] セクションから [3D レイヤー] セクションにドラッグし、[Landmarks] レイヤーの下に配置します。

    [Structures] レイヤーの外観が若干変わりますが、まだフラットなままです。 フィーチャを立ち上げるには、属性を使用して各フィーチャの Z 値を決定します。

  3. [コンテンツ] ウィンドウで、[Structures] を右クリックして、[属性テーブル] を選択します。

    テーブルには 5 つのフィールドがあります。そのうちの 1 つが [Height] です。 このフィールドの値を使用して、[Structures] レイヤーを立ち上げます。

    Structures レイヤーの属性テーブル

  4. 属性テーブルを閉じます。
  5. [フィーチャ レイヤー] タブの [立ち上げ] グループで、[タイプ] ボタンをクリックして [最大高度] を選択します。
    注意:

    [フィーチャ レイヤー] タブは、状況依存であるため、特定の状況でのみ表示されます。 このタブは、[コンテンツ] ウィンドウでレイヤーが選択された場合にのみ表示されます。 次に進む前に [Structures] レイヤーが選択されていることを確認してください。

    最大高度オプション

  6. [立ち上げ] グループの [フィールド] で、[Height] を選択します。 [単位] パラメーターが [メートル] に設定されていることを確認します。

    フィールドを Height に設定

    フィーチャが立ち上げられると、選択したフィールドに基づいて高さ値が設定されます。 これで、マップが 3D 表示されます。

    立ち上げられたシーン

  7. シーンを確認します。 終了したら、[Venice] ブックマークに戻ります。
  8. プロジェクトを保存します。

2D マップをシーンに変換し、標高とレンダリングの設定を調整して、データをさらに効果的に表示しました。 ヴェネツィアは、非常に標高が低いため、わずかな水面上昇でも危険な状態になることがわかります。

このチュートリアルでは、ArcGIS Pro での 3D に関連する多くの基本的なワークフローを学習しました。 これらのワークフローを他のロケーションに適用して、3D で世界を探索することができます。

他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。