コミュニティにおいて重要な場所のマッピング
プロジェクトの設計
場所の検索を開始する前に、プロジェクトを計画して、何をどのように学ぶかを明確にする必要があります。 このプロセスは、プロジェクト設計と呼ばれます。 プロジェクト設計には、次の 3 つの主な手順があります。
- 調査のための質問を策定する。
- 収集するデータとその数量を決める。
- データを収集するための調査質問を作成する。
データ収集は、プロジェクトのコンテキスト内で目的をもって行う必要があります。 まず、この目的をまとめる調査質問を作成します。 調査質問では、次のようなことを問いかける必要があります。データを収集する理由は? 何を知りたいのですか?
- コミュニティ内の重要な場所について、プロジェクトの指針となる調査質問を策定します。
たとえば、コミュニティ内で社会的、経済的、政治的に価値があり、コミュニティのアイデンティティを強化するような場所はどこか?といった質問です。
シンプルにすると、コミュニティの中で、アイデンティティ形成に寄与している場所はどこですか?といった質問にもできます。
調査質問が決定したら、プロジェクトに必要なデータの種類を検討する必要があります。 調査質問に回答するには何が必要ですか? プロジェクト設計のこの段階では、データを収集するために必要なすべての質問を練ります。 「誰が、何を、いつ、どこ、なぜ」を考えましょう。
- 調査質問に回答するためのデータ収集に使用できる、サンプルの質問を 5 つ作成します。
以下の例をご参照ください。
- この場所の名前は?
- あなたにとって、この場所が重要な理由は?
- この場所でどのような活動を行いますか?
- この場所を訪れる頻度は?
- 誰と行きますか?
- 何人で行くことが多いですか?
次に、データ タイプに注目します。
収集後のデータの用途に応じて、数値、テキスト、日付、評価尺度、画像などの形式を選択できます。 形式によって、異なる方法でデータを操作できます。 たとえば、場所の名前は文字列フィールドかテキスト フィールドに格納する必要があります。 しかし、毎週その場所を訪れる回数を数える場合は、数値として格納する必要があります。
質問を作成しながら、それぞれのデータの種類を考えましょう。 意図した形にできるだけ近いデータを収集できるような質問を作成すると、後からデータを変更する手間を省くことができます。
- 調査質問と、それぞれの場所について収集したいデータの種類を念頭に置きながら、5 ~ 8 個の調査質問を作成します。
注意:
以下に示すサンプル質問を、自分のプロジェクト設計に合わせて自由に使用したり手を加えたりしてもかまいません。 このチュートリアルに用意されているサンプル調査には、これらの質問のうち、最初のものと最後のもの以外のすべてが含まれています。
質問 オプション データ タイプ この場所の名前は?
テキスト
これはどこにありますか?
マップ
どのような場所ですか?
- 学校
- 近傍
- 公園または空き地
- 図書館
- 市場
- ショッピング センター
- 宗教的な場所
- コミュニティ センター
- 記念碑または史跡
- レストラン
- 舞台芸術の空間
- その他のコミュニティ スペース
単一の選択肢
この場所はどのように利用されますか?
- 家族と時間を過ごす
- 友人たちと時間を過ごす
- 運動
- 娯楽
- 買い物
- 学習
- 礼拝
- その他
複数の選択肢
あなたにとって、この場所はどれだけ重要ですか?
評価
この場所を週に何回訪れますか?
数値
この場所はどのような脅威にさらされていますか?
- 気候の脅威と適応性
- 資金面の課題
- 土地利用の変化と開発
- なし
この場所の写真をアップロード
画像
最後に、調査質問に答えるために必要な回答数を検討します。 クラスの全員が 1 か所ずつ協力したら、十分なデータを得られるでしょうか? あるいは、見方を変えて、必要となる視点の数を考えてみる方法もあります。
- 収集する必要があるデータ ポイントと、その人数を決定します。
どれだけのデータが必要であるか、また、誰に質問するかを決めます。このとき、データのバイアスを考慮しましょう。 データのバイアスは、データが母集団を正確に表さないときに見られます。
たとえば、中学 1 年生のクラスのみを対象に調査を行った場合、町内の中学 1 年生にとって重要な場所がデータに反映されますが、中学 2 年生や大人にとって重要な場所は反映されません。
収集するデータの種類や、導きたい結論の規模に応じて、データのバイアスに留意する必要があります。 見つけた情報を共有する際は、データを提供した人と、その収集方法を記述する必要があります。
- 収集するデータ ポイント数や調査する人数について、クラスとして目標を決定します。
データ収集プロジェクトの計画を立てたら、次に、調査の作成に取りかかります。
調査の作成
次に、ArcGIS Survey123 を使用して、質問を調査に変換します。
- ArcGIS Survey123 Web サイトにアクセスし、ArcGIS の組織アカウントを使用してサイン インします。
注意:
組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください。
- [新しい調査] をクリックします。
- [空白の調査] で [基本操作] をクリックします。
質問の追加に着手する前に、調査に名前を付け、調査に回答する人のために情報を追加します。
- リボンで [調査情報の編集] ボタンをクリックします。
[調査情報の編集] ウィンドウが表示されます。
- [調査情報の編集] ウィンドウの [名前] で [無題の調査] を削除し、「Places of importance」と入力します。
- [OK] をクリックします。
調査に回答する人がどのような質問に答えるか理解できるようにするため、調査のタイトルと説明を設定します。
- [調査のタイトルが設定されていません] をクリックします。
[調査のヘッダー] ウィンドウが [編集] タブに表示されます。
- [調査のヘッダー] ウィンドウの既存のテキストを削除し、「Places of importance in our community」と入力します。
- 調査ビルダー ウィンドウで [調査の説明コンテンツ] をクリックします。
- [調査の説明] ウィンドウの既存のテキストを削除し、次のように入力するか、コピーして貼り付けます。
What places in the community have social, economic, or political value and add to my community’s resilience?
これで調査の概要が設定されたので、質問を追加できるようになりました。
調査への質問の追加
このセクションでは、調査に質問を追加します。 [追加] タブには、調査に追加できるさまざまな種類の質問がリストされます。 多くの場合、同様のデータを収集する方法はたくさんあることを覚えておいてください。 たとえば、[リッカート尺度] と [評価] の質問タイプは、いずれも自分が決めたスコア (5 つ星のうち 4 つ星など) を取得するデータを収集します。 しかし、リッカート尺度の方が柔軟性が高いので、星をテキストに置き換えて [あまりない] から [とてもある] までの尺度にすることもできます。
質問はデータ収集プロジェクトによって異なる可能性があるため、このセクションでは最初の 2 つのサンプル質問を作成し、必要に応じて他の質問を追加します。
- [調査の説明] ウインドウで、[追加] タブをクリックします。
[追加] ウインドウが開き、調査に追加できるさまざまな種類の質問が表示されます。 このような多種多様な質問を使用して、どのような種類のデータを収集できるか考えてみましょう。 たとえば、場所に関する説明は、テキスト、単一の選択肢、複数の選択肢として収集できます。
- [追加] ウィンドウで [単一行テキスト] の質問を探し、調査ウィンドウにドラッグします。
調査に空白の質問が追加され、[編集] タブが開きます。
- [編集] タブの [ラベル] で「What is the name of this place?」と入力するか、コピーして貼り付けます。
[調査] ウィンドウの質問が更新され、質問のラベルが表示されます。 質問には、他にもいくつかのオプションを設定できます。 たとえば、質問に答えるためのヒントを示すなどです。 また、調査の回答者が必ずこの質問に答えるよう指定することもできます。 これに答えなければ、調査を実施する価値はないような質問でしょうか? そうであれば、この質問への回答を必須にします。
- [整合チェック] で [この質問は必須です] ボックスをオンにします。
調査ウィンドウで質問文の後に赤いアスタリスクが付いていると、その質問は必須であることを意味します。
場所の名前を聞いたら、それに関連する次の質問では、それがどこにあるかを聞きます。 そのためには、マップの質問を追加します。 これにより、データ ポイントの地理的な位置が収集されます。
- [追加] ウィンドウで [マップ] の質問タイプを探し、最初の質問の下にある調査ウィンドウにドラッグします。
[編集] タブが開き、[マップ] の質問の設定が表示されます。
まず、質問に名前を付けてから、調査の回答者がその質問にどう答えるかヒントを示します。 データを収集する際には、プライバシーのニーズと要件について話し合うことが重要です。 潜在的に機密性が高いデータ (氏名、自宅住所、その他の個人情報など) を収集する場合は、そのデータが格納される場所、それを表示できる人、その用途を把握しておく必要があります。
- [ラベル] に「Where is this place?」と入力します。
- [ヒント] に、「Keep in mind with maps that some information is personal: you probably shouldn't share your home's location nor other personal locations. But you can safely share locations like your city or a major intersection.」と入力するか、コピーして貼り付けます。
ここで、収集する地理データの種類 (ポイント、ライン、ポリゴン) を選択します。 また、調査の参加者に現在地を共有してもらったり、データをマップに描画してもらったりすることもできます。 調査の参加者がコミュニティから開始しやすいように、デフォルトの場所を学校に設定できます。
- [描画ツール] で [ポイント] が選択されていることを確認します。
- [マップと範囲] に学校の住所を入力して Enter キーを押すか、キャンパスが見つかるまでズームして画面移動します。
注意:
サンプル調査のデフォルトの位置は、カリフォルニア州レッドランズの ESRI キャンパスです。
- [デフォルトの位置] で [上で指定されたマップ範囲の中心] を選択します。
最後に、調査の回答者にこの質問に答えてもらう必要がるかどうかを決定します。 調査の質問の鍵となるのは位置なので、マップの質問は必須にします。
- [整合チェック] で [この質問は必須です] ボックスをオンにします。
調査ウィンドウで質問文の後に赤いアスタリスクが付いていると、その質問は必須であることを意味します。
- [追加] タブをクリックし、作成した残りの質問を追加します。 さまざまな質問タイプを試し、最善の調査結果を得る方法を確認します。
- 質問の追加が完了したら、設計ウィンドウの下で [保存] をクリックします。
調査はまもなく公開できますが、その前に作業の内容を見直します。 順番が正しいか、スペルが間違っていないか、必須と任意の設定に不備がないかなど確認します。
- [公開] を 2 回クリックします。
調査が公開されるまで数分かかることがあります。 完了したら、クラスでデータを収集できるよう調査を共有します。
注意:
調査を公開したくない場合は、サンプル調査に記入できます。 この調査には、場所の名前、および写真をアップロードするオプションを除く、上記の表のすべてのサンプル質問が含まれています。 未成年者のプライバシー保護のため、これらは含まれていません。
データの収集
調査を作成し、公開したので、データの収集を開始できます。 十分なデータを収集したら、結果をマッピングし、結論を導きます。
- Survey123 サイトで [共同作業] タブをクリックします。
- [この調査に送信できるユーザー] で [すべての人に公開 (パブリック)] チェックボックスをオンにします。
共有設定に応じ、クラスまたはすべての人が調査に回答できるようになります。
注意:
組織のプライバシー設定やアカウントの権限によっては、組織内でしか共有できないこともあります。
- [保存] をクリックします。
- [この調査を共有] でリンクをコピーして共有するか、[QR コードを表示] をクリックして、クラスで調査を開けるようにします。
- クラスメートに、調査への回答と送信を依頼します。
データを収集する際には、先ほどの問いかけ「どれくらいのデータがあれば十分なのか」に対する答えを念頭に置いてください。
目標として設定した数の調査回答が集まったら、調査結果の解析を始めます。
データの分析
データを収集したら、解析に取りかかります。 データを解析する際は、いくつかの問いに答えます。調査に回答したのは何人か? データにバイアスがある可能性はあるか? 意外な回答はあったか? いつでも前に戻って、データをさらに収集できることも覚えておいてください。
注意:
調査を作成しないことを選択した場合、[データ] タブにマップ ビューは表示されません。 手順 1 ~ 6 を確認した後、手順 7 でチュートリアルを再び参照して、サンプル データセットのデータを解析することができます。
- [データ] タブをクリックします。
[データ] タブに、2 つの主要コンポーネント (収集したデータ ポイントのマップと属性テーブル) が表示されます。 属性テーブルとは、各ポイントに関するすべてのデータを整理したテーブルのことです。
- マップ上のポイントをクリックします。
対応するレコードが、属性テーブルで青くハイライト表示されます。
まず、データの分布を把握します。 ポイントはマップ全体に分散しているでしょうか、それとも多くのポイントが重なり合っているでしょうか。 この質問に答えるには、ヒート マップ シンボルを使用します。 ヒート マップでは、多くのデータが集まっている場所を色で表示します。
- [データ] リボンで [Map Viewer で開く] をクリックします。
Survey123 ブラウザー内にマップ ウィンドウが表示されます。
現時点では、データは、その位置を表すポイントとして表示されています。
- [設定] (明るい背景の) ツールバーの [スタイル] ボタンをクリックします。
[シンボル] ウィンドウが表示されます。 このウィンドウでは、データ ポイントの表示に使用するスタイルを指定できます。
- [スタイルの選択] で、[ヒート マップ] をクリックし、[完了] をクリックします。
- ヒート マップとしてスタイル設定されたポイントを表示できるよう、マップ上で学校を拡大します。
マップに、青から黄までの範囲の色が表示されるようになりました。 黄色のエリアはデータが多い場所で、青色のエリアはデータが少ない場所です。
クラスのヒート マップはどのようになりましたか? 多くの生徒たちが、同じ場所を重視していると思われますか? それとも、生徒たちが重視している場所は多岐にわたるのでしょうか?
次に、これらの質問への答えを見ていきます。
- Map Viewer ウィンドウを閉じます。 リボンで [解析] タブをクリックします。
注意:
調査を作成しなかった場合は、結果を開いてサンプル データセットの回答を解析します。
[解析] タブには、各質問に対する回答が表示されます。 クラスでたずねた質問によって、解析の表示が異なることがあります。
クラスの回答に、どのような共通点がありますか? どのような違いがあるでしょうか?
これでデータ収集のすべての手順を終了しました。 プロジェクトが完了したかどうかを判断するには、調査の質問 (コミュニティ内で社会的、経済的、政治的に価値があり、コミュニティのアイデンティティを強化するような場所はどこか?) に戻ります。
データは、この質問に答えていますか?
答えている場合は、プロジェクトの設計目標を正常に達成しており、プロジェクトは完了です。 そうでない場合は、どの手順に戻るか確認した上で調整します。 データ収集プロセスは繰り返し行われます。つまり、調査の質問により適切に回答するため、随時戻ってさらにデータを収集するか、新しい質問を追加できます。
このチュートリアルでは、プロジェクト設計を策定し、コミュニティにおいて重要な場所についてデータを収集するための調査の質問を作成しました。 調査を作成し、関連データを収集し、解析する方法について学びました。 このプロセスはどのような調査の質問にも適用できるので、自分や自分のコミュニティにとって重要な調査の質問でこのワークフローを実施できます。
他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。