過去のコレラ流行のマッピング

1854 年、ロンドンはコレラの大流行に見舞われていました。 当時、細菌やその他の微生物がどのようにして病気を発生させるのかについては、ほとんど理解されていませんでした。 コレラは空気中の瘴気または有害な蒸気により感染すると言われていました。 ジョン・スノウ医師は、現在の GIS の研究者やアナリストと同様に、データを集め、情報をマッピングして、パターンを探しました。 ここでは、ポップアップとヒート マップ シンボルを使用してジョン・スノウが収集したデータを調査し、コレラが空気により拡散するか、他の方法で拡散するかを示します。

コレラのデータの調査

GIS では、地理データをレイヤーとして比較できます。 マップ内の各レイヤーには、パターンおよびそれらがどのように影響し合っているかを見やすくして十分に理解するために比較できるさまざまな情報が含まれています。 最初に Map Viewer を使用して、1854 年のコレラ流行のデータを表示する既存のマップ内のレイヤーを探索します。

  1. Cholera Outbreak, 1854 マップを開きます。

    Map Viewer にマップが表示されます。

    Map Viewer でマップを開く

  2. ArcGIS アカウントにサイン インします。
    注意:

    組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください

    エラーが発生する場合や、アカウントにサイン インできない場合には、パスワードは大文字と小文字が区別されることを思い出してください。 ArcGIS パスワードを忘れた場合、サイン イン ページからパスワードをリセットできます。 詳細については、「アカウントに関するトラブルシューティング」をご参照ください。

  3. [コンテンツ] (暗い背景の) ツールバーにある [レイヤー] をクリックして、マップ上のレイヤーを表示します。

    レイヤー ウィンドウ

    このマップには 3 つのレイヤーがありますが、[Snow's Cholera Map] のみが表示されています。 このマップは、ジョン・スノウがコレラの流行時に収集したデータを描画し、公開したものです。 各ハッシュ記号 (道路沿いの改行された太字のライン) は、それぞれの住所でコレラが原因で死亡した人を表します。

    道路に沿ってハッシュ記号が積み上げられているマップの細部

  4. 画面移動ツールとズーム ツールを使用して、ソーホー地区でも、コレラが特に大流行している場所をマップで調べます。

    ソーホーは、ロンドンのウェスト・エンドにある、シティ・オブ・ウェストミンスターのエリアです。

    最も死亡報告が多いエリアまたは特定の住所はありますか?

  5. [レイヤー] ウィンドウで [Cholera Cases] レイヤーの [可視性] ボタンをクリックして、マップでそのレイヤーをオンにします。

    [Cholera Cases] レイヤーの [可視性] ボタン

    [可視性] ボタンをクリックすると、そのレイヤーがマップ上に表示されます。 [Cholera Cases] レイヤーに、スノウがマップ上にマッピングした地区と同じ場所が表示されます。

  6. マップ上のいずれかのポイントをクリックします。

    住所と死者数を示すポップアップ

    住所と、そこで発生した死者数を含むポップアップが表示されます。 GIS には、マップで描画したり、ラベリングしたりする以上に多くの情報を格納できます。 ポップアップや、レイヤーの属性テーブルで、この情報にアクセスできます。

  7. ポップアップを閉じます。
  8. [レイヤー] ウィンドウの [Cholera Cases][オプション] ボタンをクリックしてから [テーブルの表示] をクリックします。

    [Cholera Cases] レイヤーの [テーブルの表示] オプション

    各住所で発生した死者数をリストする属性テーブルが表示されます。 属性テーブルには、マップ フィーチャに関連する情報を提供する行と列があります。

  9. テーブルの [Deaths] 列で、[オプション] をクリックし、[降順で並べ替え] をクリックします。

    属性テーブルの降順ボタン

    これで、属性テーブルが降順で表示されます。最も高い死者数を確認して、特定の場所に関連付けることができます。 これにより、最も影響を受けるエリアを確認できますが、理由がわかるとは限りません。 これについては、次のセクションで詳しく調べます。

  10. 属性テーブルを閉じます。

    属性テーブルの閉じるボタン

  11. [コンテンツ] ツールバーで [保存と開く] をクリックしてから [名前を付けて保存] をクリックします。
  12. [マップの保存] ウィンドウで、[タイトル] に「 1854 Cholera Outbreak Map」と入力し、自分のイニシャルを付け加えて、ArcGIS 組織内でマップが一意になるようにします。

    マップの保存ウィンドウで更新されたタイトル

  13. [保存] をクリックします。

    マップのコピーが ArcGIS Online アカウントに保存されます。

ヒート マップ シンボルの使用

属性テーブルは、コロナ死者の場所の詳細を示します。 しかし、マップ上にポイントとして表示した患者で見たように、マップ上にデータを表示すると、パターンを検出しやすくなります。 次に、パターンをより明確に把握できるよう、別の方法でデータを描画します。

  1. [設定] (明るい背景の) ツールバーで [シンボル] をクリックすると、選択した [Cholera Cases] レイヤーのスタイル設定にアクセスできます。

    シンボル ボタン

  2. [シンボル] ウィンドウの [属性の選択][フィールド] をクリックします。
  3. [フィールドの選択] ウィンドウで [Deaths] を選択して [追加] をクリックします。

    シンボル表示する属性として追加するために [Deaths] フィールドが選択されている状態

    マップが更新され、大きさの異なる円が表示されます。 住所の位置のみを示すだけでなく、マップにはそれぞれの場所で発生した死者数も表示します。コレラの症例数が多い場所ほど、円が大きくなります。 このシンボルは、元のマップで使用されていたハッシュ記号のようなものです。

  4. [スタイルの選択][ヒート マップ] を選択します。

    現在のスタイルとして選択されているヒートマップ

    ヒート マップ シンボルは、空間のデータセットの密度 (または指定したエリアでの現象の程度) をすばやく視覚化するうえで役立ちます。

  5. [完了] をクリックします。

    紫と赤は、コレラ患者の密度が高い場所を表します。 黄色は、最も密度が高い場所です。 密度は、各地域の近傍性と死者数を考慮に入れます。

    ヒート マップ スタイルに更新されたコレラ患者シンボル

    しかし、スノウのマップが見えにくいため、[Cholera Cases] レイヤーの [ブレンド] 設定を調整します。 ブレンド モードを適用すると、ブレンドして各レイヤーを表示させることで、マップの表示設定をさらに細かく制御することもでき、追加レイヤーが見やすくなります。

  6. [設定] ツールバーにある [プロパティ] をクリックします。
  7. [表示設定] セクションの [ブレンド][通常] をクリックして、ドロップダウンを開きます。 [ブレンド] ウィンドウで、[暗くする] セクションまでスクロールし、[乗算] を選択します。

    ブレンド ウィンドウで乗算を選択

  8. [ブレンド] ウィンドウを閉じます。

    さらに、レイヤーの透過表示レベルを設定して、透過度を上げて、他のレイヤーを見やすくすることができます。

  9. [透過表示] ではスライダーを [ 25% ] に移動します。

    透過表示のスライダーを 25% に設定

  10. [レイヤー] ウィンドウの [Water Pumps] レイヤーで、[可視性] ボタンをクリックします。

    ヒート マップの最も明るい黄色ゾーン近くに給水ポンプがあります。

    透明のヒート マップと給水ポンプのポイント データを重ねた古地図

  11. ヒート マップの黄色ゾーンに最も近い給水ポンプのシンボルをクリックすると、ポップアップが表示されます。

    マップで特定された中央の給水ポンプ

    これは Broad Street のポンプで、スノウのマップから、1854 年にロンドンで発生したコレラの大流行の原因となった給水ポンプであることが判明しています。 その後、Broad Street は Broadwick Street に名称変更になりました。 このマップを見ると、発生源として Broad Street のポンプを調査するべきであるという、スノウと同じ結論に達します。

  12. ポップアップを閉じます。 マップで、[デフォルト マップ ビュー] をクリックしてから、マップを保存します。

    マップのデフォルト マップ ビュー ボタン

スノウの調査のおかげで、給水ポンプのハンドル部分が撤去されました。 汚染された給水ポンプが使用停止になると、ロンドンでのコレラの大流行は終息しました。 命が救われ、コレラは飲料水で媒介される疾病であることも判明しました。 スノウは、ロンドンの上下水道や廃棄物処理サービスの改善に向けて尽力を続けました。 彼の調査は、世界中の衛生設備と公衆衛生の向上にも役立ちました。


Web アプリの作成

ジョン・スノウは空間解析の成果を共有し、人々の役に立ちました。 次に、マップを Web アプリとして共有し、GIS プロジェクトを完成させます。

GIS ユーザーとして、Map Viewer を使用して、Web マップでデータを設計し、視覚化しました。 マップを他のユーザーと共有するため、Web アプリを作成して、ユーザーがそのマップを表示し操作できるようにすることができます。ユーザーが Map Viewer で利用可能なすべてのツールを操作する必要はありません。 マップベースのアプリは、特化した方法でストーリーやメッセージを共有し、他のユーザーが特定の目的を想定してマップを探索できるようにするシンプルなインターフェイスを提供します。

ArcGIS Instant Apps を使用してマップをアプリに変換し、ユーザーが直感的にマップとデータを操作できるようにします。

マップの共有

アプリを構築する前に、マップを共有して公開します。 チュートリアルのこの時点では、本人だけが Web マップにアクセスし表示できます。 他のユーザーと共有する準備ができたら、共有設定をパブリックに更新して、すべてのユーザーがマップを表示できるようにします。

  1. 必要に応じて、Map Viewer でマップ [ 1854 Cholera Outbreak Map] を開きます。
  2. [コンテンツ] (暗い背景の) ツールバーの [マップの共有] をクリックします。

    コンテンツ (暗い背景の) ツールバーのマップの共有

  3. [共有] ウィンドウの [共有レベルの設定] で、[すべての人に公開 (パブリック) ] を選択して、[保存] をクリックします。

    次に、そのマップを使用して Web アプリを作成し、すべてのユーザーがマップを探索できるようにします。

  4. [コンテンツ] ツールバーで [アプリの作成] ボタンをクリックし、[Instant Apps] を選択します。

    アプリの作成オプションの Instant Apps

    Instant Apps ギャラリー ページは、ユーザーのニーズに応じて、適切なアプリ テンプレートの選択に役立つ情報とガイダンスを提供します。 アプリのサイド パネルには、詳細と凡例を追加します。

  5. [サイドバー] テンプレートを見つけ、[選択] をクリックします。

    サイドバー アプリを選択

  6. [アプリの作成] ウィンドウで、タイトルに「Explore the 1854 Cholera Outbreak in London」と入力して [アプリの作成] をクリックします。
  7. 必要に応じて、ようこそウィンドウを閉じます。

    アプリの構成ウィンドウには、アプリのインタラクティブ プレビューと、変更可能な構成設定のパネルが表示されます。 次に、アプリを構成および共有します。

アプリの構成

マップの詳細を設定したり、マップ ナビゲーションをスノウ医師のマップの範囲に限定したりして、アプリのデフォルトを変更します。

アプリを設定するときに、構成可能オプションのサブセットを提供するデフォルトの高速セットアップを使用するか、[高速] をオフにして使用可能なすべての構成設定にアクセスできます。

  1. [高速] ウィンドウで、[ステップ 3. [サイドバー] をクリックします。

    [サイドバー] 設定には、凡例やポップアップなどの、ユーザーがマップを理解するのに役立つ情報をサイド パネルで提供するオプションが含まれています。 アプリにポップアップは必要ないため、そのパネルを削除します。

  2. [ポップアップ] 設定をオフにします。

    アプリのプレビューが行った変更で更新され、構成パネルに表示された [ドラフト] バッジの横に注意書きされているように、アプリは自動的に保存されます。

  3. [詳細コンテンツの編集][編集] をクリックします。

    構成パネルの詳細コンテンツの編集設定

  4. テキスト エディターで、次のテキストをコピーして貼り付けます。
    ヒント:

    書式設定なしでテキストを貼り付けるには、Ctrl + Shift + V キーを押してテキストを貼り付けます。

    1854 年に、ロンドンのソーホー地区でコレラが大流行しました。 当初は、コレラは空気感染すると言われていました。 ジョン・スノウ医師が作成したマップから、汚染された給水ポンプとコレラの発症例との間に空間的なつながりがあることがわかりました。 これによって、3 つの好ましい変化が見られました。給水ポンプが使用停止になり死亡率がなくなったこと、コレラは飲料水媒介の疾病であることが判明したこと、そしてロンドンの上下水道と廃棄物システムの改善が行われたことです。

    ここには、スノウ医師が 1854 年に作成したマップと、ヒート マップ シンボルを使用して同じデータを表したものを示します。 マップの黄色の部分は、コレラの症例数が特に多かった場所で、Broad Street の水道ポンプから給水されている地区に一致します。

  5. [閉じる] をクリックします。

    閲覧者がアプリの [詳細] タブをクリックすると、このテキストが表示されます。構成後にアプリをテストすることができます。

  6. アプリ プレビューで、[詳細] タブをクリックすると、追加したコンテンツが表示されます。

    詳細タブ

    次に、マップの範囲を設定して、ロンドンのソーホー地区外にマップをナビゲートできないようにします。

  7. 垂直方向のツールバーで [高速] をオフにします。

    垂直方向のツールバーで高速設定をオフ

    構成パネルに、使用可能なすべての設定が含まれるようになりました。

  8. 必要に応じて、[高速モードをオフにする] ウィンドウで、[続行] をクリックします。
  9. 垂直方向のツールバーで [マップ] をクリックします。

    マップの表示設定

  10. [マップ] タブで [マップ エリア] をオンにして [構成] をクリックします。

    マップ エリアの構成ボタン

    [マップ エリアの構成] ウィンドウが表示されます。 表示可能な範囲を調整し、指定された範囲を超えてマップをナビゲートできないようにすることができます。 ナビゲーションの境界をスノウ医師のマップの範囲に限定します。

  11. [マップ エリア] 設定で [ナビゲーションの境界] をオンにします。
  12. ナビゲーションの境界を、スノウ医師のマップの端に近づけるようにドラッグします。

    スノウ医師のマップの周囲に設定されたナビゲーションの境界

    マップがヒート マップに合わせて拡大され、Broad Street 排水ポンプが存在するエリアが中心に表示されます。

  13. [マップ縮尺] ウィンドウで、左のスライダーを [近郊] マーカーまでドラッグします。

    マップ縮尺範囲を近郊に設定

  14. [マップ エリアの構成] ウィンドウの下部にある [保存] をクリックします。
  15. 垂直方向のツールバーで [テーマとレイアウト] をクリックし、[テーマ] をクリックします。 [モードの選択][明色] を選択します。

    アプリの構成が完了し、公開できるようになりました。

  16. 構成パネルで [公開] をクリックします。 [公開] ウィンドウで、[確認] をクリックします。

    公開が完了すると、操作が正常に終了したことを示すメッセージが表示され、[ドラフト] バッジが [公開] バッジに変わります。 [共有] ウィンドウが表示されます。このウィンドウには、アプリへのリンク、ソーシャル メディアで共有するボタン、Web サイトにアプリを埋め込むオプション、およびアプリが最後に公開された日時が含まれます。

  17. [起動] をクリックし、アプリを新しいウィンドウで開いてテストします。
  18. アプリをテストします。 たとえば、凡例パネルや詳細パネルを表示し、設定した境界を超えてマップをナビゲートしてみます。

    新しいウィンドウで起動した最終的なアプリ

  19. アプリを閉じて、アプリ構成ウィンドウに戻ります。

    すでにマップはすべてのユーザーと共有するように設定されています。 次に、アプリをすべてのユーザーと共有するように設定します。

  20. [共有] ウィンドウで [共有設定の変更] をクリックします。
  21. [共有レベルの設定] で、[すべての人に公開 (パブリック) ] を選択して [保存] をクリックします。

    これで、すべてのユーザーはアプリを使用して表示および探索できるようになりました。

このチュートリアルでは、ジョン・スノウ医師が実施した解析を示す Web マップを探索し、コレラの発生源を特定しました。 属性テーブル、ポップアップを使用して、異なるレイヤー間の関係を探り、ヒート マップ シンボルを使用して、コレラのデータをスタイル設定しました。 Web アプリを作成し、構成された Web マップを表示して、すべてのユーザーがそのマップを表示および探索できるようにしました。

この例では、データセットは小さく、データセット間の関係は比較的簡単にわかります。 多くの場合、地理データセットはより大きく複雑です。 複雑な空間に関する疑問に答え、困難な問題を解決するためには、GIS データを迅速に整理、解析、共有するためのシステムが必要になります。

他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。