データの追加
対象地域 (アフリカ、ジブチのキャンプ・レモニエ) の携帯電話の位置を格納した架空のデータセットを確認することから始めます。 このデータには、犯罪が発生した当日のモバイル デバイスおよびその所有者の移動情報が含まれています。
まず、データをダウンロードして、ArcGIS AllSource のプロジェクトに追加します。
注意:
このチュートリアルで使用するデータはすべて架空で、トレーニング専用に設計されています。
- 「Camp Lemonnier Intelligence Data」をダウンロードします。
[Camp_Lemonnier_Intelligence.gdb] という圧縮フォルダーがコンピューターにダウンロードされます。 .gdb という拡張子は、フォルダーにジオデータベース (地理データを格納するためのフォルダー形式) が格納されていることを示します。
- 圧縮フォルダーを、覚えやすい場所 (ドキュメント フォルダーなど) に展開します。
続いて、ArcGIS AllSource にプロジェクトを作成し、データを追加します。
- ArcGIS AllSource を起動します。 サイン インを求められたら、ライセンスが割り当てられた ArcGIS アカウントを使用してサイン インします。
注意:
ArcGIS AllSource の詳細については、製品ページをご参照ください。
ArcGIS AllSource を起動すると、新しいプロジェクトを作成するか、既存のプロジェクトを開くかを選択できるオプションが表示されます。 以前プロジェクトを作成したことがある場合は、最近使用したプロジェクトのリストが表示されます。
- [空のテンプレート] で [マップ] をクリックします。
[新しいプロジェクトの作成] ウィンドウが開きます。
- [名前] に「同行者解析プロジェクト」と入力します。 [OK] をクリックします。
プロジェクトが作成されました。プロジェクトには、このワークフローのすべてのマップとデータが保存されます。 [マップ] テンプレートを選択したので、プロジェクトに空白のマップが追加されます。
ダウンロードしたジオデータベースから、携帯電話の位置に関するデータを追加します。
- リボンの [データ] タブをクリックします。 [追加] グループの [データの追加] ボタンをクリックします。
[データの追加] ウィンドウが開きます。 プロジェクト、ポータル (ArcGIS Online)、またはコンピューターから、データを追加することができます。
- [コンピューター] の下で、ダウンロードして展開したジオデータベースの場所を参照します。 [Camp_Lemonnier_Intelligence.gdb] をダブルクリックします。
ジオデータベースには、[Administrative_Data]、[Cell_Phone_Data]、[Vehicle_Data] という 3 つのフィーチャ データセットが含まれています。 早速、携帯電話データを解析してみましょう。
- [Cell_Phone_Data] をダブルクリックします。
フィーチャ データセットには、複数のフィーチャクラスが格納されています。 フィーチャクラスは、マップに追加できる地理フィーチャ (ポイント、ライン、ポリゴン) のコレクションです。 [Cell_Phone_Data] フィーチャ データセットには、9 つのフィーチャクラスが格納されていますが、この解析では [Cell_Phone_Data_All] のみを使用します。
ヒント:
データセットの別のフィーチャクラスである [Cell_Phone_Data_Find_Cotravelers_100ft_10s] には、同行者解析の最終結果が格納されています。 ワークフローが完了したら、このフィーチャクラスをマップに追加して、結果を比較できます。
- [Cell_Phone_Data_All] をクリックして選択します。
- [OK] をクリックします。
フィーチャクラスがマップに追加されます マップがデータの範囲にズームします。
注意:
レイヤーの色は、サンプル画像とは異なる場合があります。
このレイヤーには、アフリカの小国、ジブチにあるキャンプ・レモニエという名前の米軍基地内およびその周辺に集中している多数の (100 万を超える) ポイントが含まれています。 この基地が、このワークフローの対象地域です。
各ポイントは、ある特定の時間の携帯電話の位置を表しています。 携帯電話は終日移動していたので、複数のポイントが同じ携帯電話に対応する可能性があります。 属性テーブルを開くと、レイヤーについてさらに理解できます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[All Cell Phone Data] を右クリックして [属性テーブル] を選択します。
属性テーブルが表示されます。 属性は、各フィーチャに関連付けられたテキストまたは数値データです。 テーブルの各行は個々のフィーチャを表し、各列は属性フィールドを表します。
テーブルには、形状、緯度、経度、各携帯電話レコードの一意の ID ([OBJECTID]) を記述したフィールドが含まれています。 また、携帯電話の位置情報を取得した日時を記述した [Time] フィールドや、携帯電話の所有者を識別する [POI] (対象人物) フィールドがあります。 実際のデータセットでは、[POI] フィールドには所有者の名前が格納されますが、このデータは架空なので代わりに数字が使用されています。
サンプル画像では、最初の 4 つの携帯電話レコードはすべて、Person-102 として識別される同一人物が所有しています。 これらのレコードはすべて 2017 年 9 月 9 日に取得され、最初のレコードは午後 10:19、4 つ目のレコードは午後 11:44 に発生しています。
- テーブルを閉じます。
時間設定の有効化
同行者解析を実行するには、レイヤーを時間対応にする必要があります。 属性テーブルを調べてみると、携帯電話データには時間フィールドがあることがわかります。 このフィールドを使用して、レイヤーの時間設定を有効にすることができます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[All Cell Phone Data] をダブルクリックします。
[レイヤー プロパティ] ウィンドウが表示されます。 このウィンドウで、レイヤーに関連する多くの設定を行うことができます。 まず、レイヤーに単一の時間フィールドを設定するか、開始と終了の 2 つのフィールドを設定するかを指定します。 データには、時間フィールドが 1 つだけあります。
- [時間] タブをクリックします。
- [時間を使用したフィルター] で、[属性値に基づいてレイヤー コンテンツをフィルター] を選択します。
- [レイヤーの時間] で [各フィーチャに 1 つの時間フィールドがあります] を選択します。 [時間フィールド] が [Time] に設定されていることを確認します。
注意:
時間フィールドを使用して時間設定を有効にするためには、フィールドが特定のルールに従っている必要があります。 ご自身のデータを使用してこのワークフローを実行して、時間設定を有効にできなかった場合は、「時間フィールドを日付形式に変換」してみてください。
次に、属性フィールドのリストから時間フィールドを選択します。
- [OK] をクリックします。
レイヤーが時間対応になりました。 マップの上部にタイムラインが表示されます。 タイムラインにポインターを合わせると、データの最も早い日付と最も遅い日付が表示されます。
同行者の検索
これでデータが時間対応になったので、同行者解析を実行して、一緒に移動した POI を探すことができるようになりました。
- リボンの [解析] タブをクリックします。 [ツール] グループで、[移動] グループをクリックし、[同行者の検索] をクリックします。
[ジオプロセシング] ウィンドウが表示されます。 ウィンドウに、[同行者の検索 (Find Cotravelers)] ツールが表示されます。 このツールにはいくつかのパラメーターが必要です。 まず、解析する入力データセットを選択します。 次に、解析結果を格納するためにツールが作成する出力フィーチャクラスの名前を選択します。
- [入力フィーチャ] で [All Cell Phone Data] を選択します。 [Output Feature Class] で、すべてのテキストを削除して「Cell_Phone_Cotravelers」と入力します。
次に、入力レイヤーの ID フィールドを選択します。 属性テーブルを開いたときに、各携帯電話レコードに関連する人物を識別する [POI] フィールドがありました。 このフィールドを使用します。
- [ID フィールド] で [POI] を選択します。
残りのパラメーターはすべてデフォルト設定にします。 データおよび解析要件に応じて、場合によってはこれらのパラメーターを調整する必要があります。
[検索距離] パラメーターは、フィーチャを別のものとして切り離せる最大距離です。この距離よりも大きい場合、フィーチャ同士は同行者ではないと判断されます。 デフォルト値は 100 フィートですが、すでに手元にある情報に基づいて、それより大きい値またはより小さい値を検討できます。 このワークフローでは、デフォルトを使用します。
[時間差] パラメーターは、フィーチャを別のものとして切り離せる最大時間差です。この時間差よりも大きい場合、フィーチャ同士は同行者ではないと判断されます。 デフォルト値は 10 秒です。 検索距離に関しては、ワークフローによっては、より大きいまたはより小さい値を検討できます。 このワークフローでは、デフォルトを使用します。
入力フィーチャは単一のフィーチャクラスに格納されているので、[入力タイプ] パラメーターは変更しません。 最小同行時間フィルターを使用することもできます。 このフィルターを使用すると、フィーチャが同行していると見なされる最小の時間差を設定できます。 この解析では、このフィルターは必要ないので、パラメーターはオフのままにします。
- [実行] をクリックします。
注意:
データセットには (100 万を超える) 非常に多数のフィーチャが含まれているため、ツールの実行には多少時間がかかる場合があります。
ツールが実行されます。 完了すると、[ジオプロセシング] ウィンドウの下部に、通知メッセージが表示されます。
ヒント:
ツールの実行時間を含め、解析の詳細を確認するには、[詳細の表示] をクリックします。
さらに、[Cell_Phone_Cotravelers] レイヤーがマップと [コンテンツ] ウィンドウに追加されます。 元のレイヤーのポイント数のため、出力レイヤーの表示が困難な場合があります。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[All Cell Phone Data] をオフにします。
レイヤーをオフにすると、マップに表示されません (オンにすれば、いつでもレイヤーを再表示できます)。これで、マップには同行者のみが表示されます。
マップの各ポイントは、2 つの異なる POI が一緒に移動している場所と時間を示します。 各ポイントの色は、2 人の移動者の間の時間差 (秒) に対応しています。 赤は、約 1 秒の時間差を示します。 テーブルを使用して、結果の詳細を確認できます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Cell_Phone_Cotravelers] レイヤーを右クリックして [属性テーブル] を選択します。
テーブルが表示されます。
テーブルには多数のフィールドがあります。それらのフィールドは次のとおりです。
- X: 移動フィーチャの X 座標。 この座標も、テーブル内の他のすべての座標も、入力フィーチャの投影法と同じ計測単位を使用します。 この場合の単位はメートルです (単位は、入力レイヤーの [レイヤー プロパティ] ウィンドウを開き、[ソース] タブをクリックして、[空間参照] を展開して確認できます)。
- X_cotraveler: 移動フィーチャに同行していたフィーチャの X 座標。
- Y: 移動フィーチャの Y 座標。
- Y_cotraveler: 同行フィーチャの Y 座標。
- cotraveler_id: 同行フィーチャの一意の識別子。 識別子は、ツールのパラメーターを設定した際に選択した ID フィールドから取得します。 この場合は、元のレイヤーの [POI] フィールドから取得します。
- cotraveler_time: 同行フィーチャがそのポイントの場所にいた日付と時間。
- traveler_id: 移動フィーチャの一意の識別子。
- traveler_time: 移動フィーチャがそのポイントの場所にいた日付と時間。
- time_diff: [cotraveler_time] フィールドと [traveler_time] フィールドの差 (秒)。 正の数は、同行者が移動者の後の場所にいたことを示し、負の数は、同行者が移動者の前の場所にいたことを示します。
- distance_diff: 指定した時間での、同行者フィーチャと移動者フィーチャの間の距離。 距離の計測単位は座標と同じ (この場合はメートル) です。
- unique_pair_id: 同行フィーチャの一意の各ペアに対して生成された、一意の識別子。 2 つの同行フィーチャ (A、B) は、(A、B) と (B、A) の両方に対し、同じ ID を共有します。
次に、この情報を使用して、犯罪調査に役立てます。 この例では、この地区で強盗が発生したと仮定します。 警察当局は、強盗の容疑者として、Person-1189 として識別される人物をすでに特定しています。 警察当局は現在、強盗の前後に容疑者が会った相手を特定したいと考えています。その人物は犯罪の共謀者の可能性があるためです。
Person-1189 を含む同行フィーチャを選択して、この情報を調べます。
- テーブルで、[属性条件で選択] をクリックします。
[属性条件で選択] ウィンドウが開きます。 このツールを使用すると、指定した属性値を持つフィーチャを選択する式を作成できます。
さまざまなことを示す式を作成できます。 作成した式は、[traveler_id] フィールドの値が [Person-1189] に等しいフィーチャを選択するよう、ツールにプロンプトします。
- 式ボックスに、[traveler_id]、[と等しい]、[Person-1189] という式を作成します。
- [OK] をクリックします。
式に一致する、テーブル内のすべてのフィーチャがハイライト表示されます。 非常に多くのレコードがあるので、テーブルをフィルターして、選択したレコードのみを表示します。
- テーブルの下部にある [選択レコードの表示] ボタンをクリックします。
テーブルがフィルターされます。 選択された 15 のフィーチャのみが表示されます。 これらのすべてのフィーチャで、移動者は、容疑者 Person-1189 です。 また、各フィーチャには同じ同行者 Person-998 がいます。
これらの各フィーチャでは、時間差と距離差が 0 であるため、Person-1189 と Person-998 が、おそらく同じ車両で一緒に移動していたと考えられます。
選択されたフィーチャは、マップでもハイライト表示されます。
マップを調べることで、捜査官は、2 人が一緒に移動中、犯行現場にどの程度近かったかを特定できます。
結果に基づき、Person-998 は、警察当局が犯罪に関して尋問すべき人物である可能性があります。 犯罪が発生した時間と場所の前後に容疑者と一緒に移動していたことから、彼らは、共犯者であるか、捜査官が犯罪を立証できる重要な情報を持っている可能性があります。
- テーブルを閉じます。 [クイック アクセス ツールバー] の [選択解除] ボタンをクリックします。
選択したフィーチャが解除されます。
- [保存] ボタンをクリックします。
プロジェクトが保存されます。
ヒント:
または、キーボード ショートカットの Ctrl + S キーを押して、プロジェクトを保存することもできます。
このチュートリアルでは、ArcGIS AllSource を使用し、携帯電話データに対して同行者解析を実行して、容疑者の共犯と考えられる人物を探しました。 実際には、同行者解析は、携帯電話レコードに限らずさまざまなデータセットに対して実行できます。
このチュートリアルの初めにダウンロードしたデータセットには、[Vehicle_Data_All_Vehicle_Data] フィーチャクラス ([Vehicle_Data] フィーチャ データセットに含まれている) が含まれています。 このフィーチャクラスには、経時的な車両の位置が含まれています。 オプション課題として、このフィーチャクラスで同行者解析ワークフローを行ってみてください。
このワークフローを、ArcGIS AllSource で実行できる他のインテリジェンス ワークフローと組み合わせて使用することで、法執行機関や軍関係者は犯罪者や反乱者を追跡できます。
他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。