領域の定義
保護計画の対象領域を定義するために、ArcGIS Living Atlas of the World から抽出したレイヤーを使用して、種のレンジ サイズ希少度総計 (Summed Range-size Rarity) が高いエリアを特定します。 これらのエリアは、比較的多くの希少種が狭い範囲に生息していることになるため、希少種を最大限保護するための重要な場所となります。 ここでの目的は、オハイオ州で新たにどの 5,000 平方キロメートルの範囲を保護対象とすべきかを定義することです。 すでに保護されている既存の公園や、地代がより高い都市部は対象から除外する必要があります。
ここでは、[領域の特定] ツールで色々試しながら、関係する値が最大化するように、狭い領域を拡張する方法について詳しく見ていきます。
マップを開いて探索
最初に、チュートリアル データをダウンロードします。
- [Identify_Connect.ppkx] プロジェクト パッケージをダウンロードし、ダウンロードしたファイルをコンピューター上で見つけます。
注意:
ほとんどの Web ブラウザーでは、デフォルトでコンピューターのダウンロード フォルダーにファイルがダウンロードされます。
- [Identify_Connect.ppkx] プロジェクト パッケージをダブルクリックし、ArcGIS Pro で開きます。 サイン インを求められたら、ArcGIS 組織アカウントでサイン インします。
注意:
ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください。
プロジェクト パッケージが抽出されるとプロジェクトが開き、地形図ベースマップとオハイオ州のアウトラインを示すマップが表示されます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Range Size Rarity] レイヤーをオンにします。
このレイヤーがマップに表示されます。
マップ上の濃い色のエリアは、地理的に生息範囲が限られた希少種の数が多いエリアです。 生息範囲が小さい種は、保護する機会が少ないため、加重が高くなっています。
このレイヤーは、オハイオ州に沿ってクリップされたローカル ラスター レイヤーで、NatureServe Network によって 2024 年 6 月に作成された Summed Range-size Rarity of Imperiled Species in the United States レイヤーが元になっています。 このレイヤーは、生物多様性の重要度マップ (The Map of Biodiversity Importance) の一部です。
NatureServe は、提供されるすべての知的財産におけるすべての権利を留保しています。 このデータまたはあらゆる知的財産の全体または一部を配布すること、および商用目的でこのデータまたはあらゆる知的財産から派生した生成物を配布することは一切禁止されています。 利用規約の全文をご参照ください。
このレイヤーは許可を得てここで使用しています。
- [Urban Areas] レイヤーと [Parks] レイヤーをオンにします。
これら 2 つのレイヤーは ArcGIS Living Atlas of the World にホストされているレイヤーから派生したものです。 それらはローカル ポリゴン フィーチャ レイヤーであり、オハイオ州に沿ってクリップされています。
Urban Areas (都市部) は、米国国勢調査局の定義に基づいており、グレーのハッチ塗りつぶしで表示されています。
Parks (公園) には、国立公園、州立公園、国有林、州有林に加え、米国国内の郡、広域、地域の公園が含まれています。
これらのレイヤーを使用して、提案される保護対象領域の解析に制限を加えます。 現在の公園用地はすでに保護されているため、解析対象から除外します。 また、都市部の土地取得には高いコストがかかるため、都市部も除外します。
- [Global Human Modification] レイヤーをオンにします。
レイヤーが表示されます。
マップ上で茶色が濃いエリアは、都市化、農業などの人間活動による改変度の高いエリアです。一方、緑色が濃いエリアは、人間活動による改変度の低いエリアです。
都市部はほとんどが陰影付きの暗褐色となっていますが、特にオハイオ州西部には、農業による改変度が非常に高いエリアが大規模に広がっています。
このレイヤーは、オハイオ州に沿ってクリップされたローカル ラスター レイヤーであり、Global Change Biology の Managing the middle: A shift in conservation priorities based on the global human modification gradient という記事において、Kennedy、Oakleaf、Theobald、Baruch‐Mordo、および Kiesecker によって開発された Global Human Modification ラスターが元になっています。
- [Range Size Rarity - No Urban] レイヤーをオンにします。
レイヤーが表示されます。
このマップは、豊富さと希少度を示すレイヤーから都市部を除外して表示しています。 この処理ステップは、[マスクで抽出] ツールを使用し、都市ポリゴンの外側のエリアのみを新しいラスターにコピーすることで実行されました。 このレイヤーには [Range Size Rarity - No Urban] という名前が付いています。
生息範囲の希少度総計値が最も高い地域の特定
ここでは、最初にツールを実行して、生息範囲の希少度総計値が最も高い、5,000 平方キロメートルの広さがある 1 か所の領域を特定します。
- リボンの [解析] をクリックします。 [ジオプロセシング] セクションで、[ツール] をクリックします。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの検索ボックスに「領域の特定」と入力します。 検索結果で、[領域の特定] ツールをクリックします。
- [領域の特定] ウィンドウの [入力ラスター] で、[Range Size Rarity - No Urban] レイヤーを選択します。
[領域の特定] ツールでは、パラメーター化された領域拡張アルゴリズムを使用して、入力パラメーターによる制限をかけた上で、入力ラスターの値が高いセルを特定し、それらの値が最大化するように領域を拡張します。
このケースでは、値は [Range Size Rarity - No Urban] レイヤー内の各セルの生息範囲の希少度総計です。 このツールは、ラスター全体で高い値となる位置に、候補となるシードセルを配置し、さらに隣接セルを追加して領域を拡張します。 都市部が入力ラスターから除外されているため、提案される領域は都市部の周辺に広がります。
[入力ラスター] パラメーターの横に通知ボタンが表示されます。
- 通知アイコンをクリックします。
この警告は、ラスターに 500,000 個を超えるセルが含まれているため、リサンプリングされたバージョンが使用されるということを示しています。
- メッセージを閉じます。
- [合計面積] に「5000」と入力します。
- [面積単位] の値はデフォルトの [平方キロメートル] をそのまま使用します。
この設定により、面積が 5,000 平方キロメートルに達するまで、領域にセルが追加され続けます。
- [出力ラスター] に「Cons_region_opt_1」と入力します。
この名前は、この探索プロセスで生成する 1 つ目の保護対象領域オプションであることを示しています。
- [領域の数] の値はデフォルトの「1」をそのまま使用します。
この設定により、レンジ サイズ希少度ラスターの数値が最大になる 1 か所の領域が定義されます。
- [領域の形状] の値はデフォルトの [円] をそのまま使用します。
この設定により、領域拡張アルゴリズムによる各セルの計算時に、全体的に大まかな円形になるように、セルの値が有用性に対して加重されます。 領域の形状の度合いは [形状/ユーティリティのトレードオフ (%)] パラメーターにより制御され、デフォルト値は 50% です。
- その他のデフォルト値をそのままにして、[実行] をクリックします。
ツールが実行され、州の中南部に 1 か所の領域が生成されます。
- グレーの領域レイヤーの南側を拡大します。
この提案された領域には、既存の公園と重なるセルがあります。 そのため、既存の公園を考慮するように変更を加えて、ツールを再度実行します。
公園を回避した領域の特定
都市部はクリップにより除外され、NoData 値に設定されていたため、回避されました。 ここでは、公園を回避するようにツールの入力パラメーターを調整して、ツールを再度実行します。
- [領域の特定] ツールで、[出力ラスター] の名前を編集し、「Cons_region_opt_2」とします。
- [既存の領域の入力ラスターまたはフィーチャ] パラメーターで [Parks] レイヤーを選択します。
- [実行] をクリックします。
[Cons_region_opt_2] レイヤーがマップに追加されます。
- [Cons_region_opt_1] レイヤーをオフにします。
[Cons_region_opt_2] レイヤーは公園と重ならなくなり、北方向と東方向に少し広がりました。
- リボンの [マップ] タブの [ナビゲーション] セクションで、[ブックマーク] をクリックしてから [Ohio] を選択します。
マップがズームし、オハイオ州全域が表示されます。
複数の領域の特定
この領域は、種の希少度総計の値が高い領域の一部をカバーしていますが、その外側にも値の高いエリアが多く存在しています。 ここではツールを再度実行して、複数の領域を拡張し、州全域のカバー率を改善します。
- [領域の特定] ツールで、[出力ラスター] の名前を編集し、「Cons_region_opt_3」とします。
- [領域の数] に「10」と入力します。
[領域の数] パラメーターの横に通知アイコンが表示されます。
- 通知アイコンをクリックします。
[領域の数] パラメーターが 8 より大きい場合、このツールでは [連続] 選択方法が使用されます。 領域の数が小さい場合、計算量の多い [結合演算] 選択方法がデフォルトで使用されます。
- 通知を閉じます。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、レイヤーがマップに追加されます。
- [Cons_region_opt_2] レイヤーをオフにします。
これらの領域は州内でほぼ南北の帯状に分布しており、値が高いエリアをより広くカバーしています。 州の北部では領域が広い範囲に分かれている傾向があり、南部の一部の領域は狭い範囲でまとまっています。
1 の領域のグレー パッチはやや見づらくなっています。 その領域の色を変更します。
- [コンテンツ] ウィンドウの [Cons_region_opt_3] レイヤーで、値 1 の領域のグレー カラー パッチを右クリックします。 カラー パレットで、[アメジスト] などの薄い紫色を選択します。
ここでは、データを探索し、都市部以外で、種の希少性が高いと推定されるエリアをカバーする領域を生成しました。 次に、これらの領域間の接続経路を定義します。
領域の接続
州内に分布した複数の領域を特定したので、次のステップとして、その領域間にある接続経路を見つけます。 [Global Human Modification] レイヤーをコスト サーフェスとして使用し、人間活動による改変の影響が最も少ない領域間経路を特定します。 大きく改変されているエリアでは横断するコストが高くなり、あまり改変されていないエリアでは横断するコストが低くなります。 ツールにより、コストが最小となる領域間経路を見つけます。
接続経路の特定
[最適領域接続] ツールを使用して、定義済み領域間の最適な経路を見つけます。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの検索ボックスに「最適領域接続」と入力します。 検索結果で、[最適領域接続] ツールをクリックします。
- [入力ラスター/フィーチャ領域] パラメーターで、[Cons_region_opt_3] レイヤーを選択します。
- [出力最適接続ライン] パラメーターに「Optimal_path_1」と入力します。
- [入力ラスターまたはフィーチャ バリア] パラメーターは空のままにします。
- [入力コスト ラスター] パラメーターで、[Global Human Modification] レイヤーを選択します。
- その他のパラメーターはデフォルトのままにし、[実行] をクリックします。
ツールが実行され、領域間を接続するラインの [Optimal_path_1] レイヤーがマップに追加されます。 ツール ウィンドウには警告も表示されます。
- [詳細の表示] をクリックします。
この警告は、一部のラインが、NoData のエリアを通過しているかデータ範囲を超えているため、接続されなかった可能性があることを示しています。
- 警告を閉じます。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Optimal_path_1] レイヤーのライン シンボルをクリックします。
- [シンボル] ウィンドウで、[1.5 ポイント] の黒色のライン シンボルを見つけてクリックします。
シンボルがマップ上で更新されます。 このシンボルにより、領域間の接続経路が見やすくなります。
- [コンテンツ] ウィンドウで、[Global Human Modification] レイヤーをオフにします。
- [シンボル] ウィンドウを閉じます。
領域間を接続しているこれらのラインは、人間活動による改変の通過コストが最小となる、最も直接的な経路です。 ただし、一部の経路は都市部を通過しています。
都市部を回避した接続経路の特定
種によっては、都市部の横断が困難ではないこともあります。 しかし、希少性の高い絶滅危惧種の多くにとって、横断は難しいか、不可能です。 ここでは、都市部をバリア フィーチャとして使用して、ツールを再度実行します。
- [最適領域接続] ツールで、[出力最適接続ライン] パラメーターを [Optimal_path_1] から「Optimal_path_2」に変更します。
- [入力ラスターまたはフィーチャ バリア] パラメーターで、[USACensusUrbanAreas_Ohio] レイヤーを選択します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、領域間を接続するラインの [Optimal_path_2] レイヤーがマップに追加されます。
- レイヤーのシンボルを [3.0 ポイント] の黒色ライン シンボルに変更します。
新しいラインは都市部を回避しています。
これらのフィーチャは、希少性の高い絶滅危惧種が保護エリア間を移動するための、より安全な経路を表しています。 生息地の接続性を改善するために、これらの地域の保護に一部のリソースを投入することもできるでしょう。
また、一部の種には、移動のために広大なコリドー (移動経路) が必要になります。 そのため、これらのラインを保護してコリドーを特定したり、[最適コリドー接続] ツールを使用してコリドーを作成したりすることもできるでしょう。
- プロジェクトを保存します。
ここでは、[領域の特定] ツールを使用して、希少性の高い絶滅危惧種を保護するための値がより高い領域を特定しました。 [最適領域接続] ツールを使用して、それらの領域間で移動が可能となる経路を見つけました。
他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。