スペクトル プロファイルを使用してオアシスを調査
すでに「アフリカの衛星画像の探索」チュートリアル シリーズで、マルチスペクトル画像を使用してエジプトのエル ファイユーム オアシスについて学習し、 水、植生、開発地 (村や道路) など、異なる土地被覆タイプを識別しました。 ここでは、この例をさらに詳しく調査して、マルチスペクトル画像から土地被覆タイプを識別できる理由を理解します。 また、スペクトル プロファイルとスペクトル シグネチャについても学習します。
注意:
スペクトル画像とスペクトル バンドについて復習したい場合は、このシリーズの最初のチュートリアルである「アフリカの衛星画像の操作方法」をご参照ください。
画像の設定と探索
まず、アプリを開いて、対象の場所を設定し、最も関連性が高い画像を選択します。
- Digital Earth Africa Explorer アプリを開きます。
- アプリが開き、アフリカ大陸全体が表示されます。
- 検索ボックスに「El Fayoum, Egypt」と入力して Enter キーを押します。
マップが更新され、新しい場所が表示されます。
- これ以降、[Search result] ウィンドウは使用しないので閉じておきます。
- [Zoom Out] ボタンを 3 回クリックします。
- 必要に応じて、マップをドラッグして位置を調整します。
次のサンプル画像とほぼ同様に表示されるはずです。
エル ファイユームは、古代エジプト時代から存在している巨大なハート型のオアシスです。 このオアシスはサハラ砂漠の中にあり、植生と水の宝庫となっています。 東側では、マップを斜めに横切るナイル渓谷も確認できます。 人口の運河を通ってナイル川からオアシスに水が供給されます。
- サイドバーで [画像の探索] ボタンをクリックします。
- [Explore Imagery] ウィンドウで、次のパラメーター オプションを設定します。
- [Layer] で、[Sentinel-2 Annual GeoMAD] が選択されていることを確認します。
- [Rendering] で [Agriculture with DRA] を選択します。
- [Date] で、[January 1, 2020] が選択されていることを確認します。
マップが更新されて、新しいレンダリングが表示されます。
注意:
Sentinel-2 は、欧州宇宙機関が 2015 年に立ち上げた地球観測衛星プログラムであり、地球全体の高品質なマルチスペクトル画像を提供しています。 Sentinel-2 プログラムの詳細をご覧ください。
現在の画像レイヤーである [Sentinel-2 Annual GeoMAD] では、雲のような小さな障害物を取り除いた Sentinel-2 画像を 1 年ごとにまとめて提供しています。 GeoMAD レイヤーがどのように作成されているかについては、Digital Earth Africa のドキュメントをご参照ください。
[Agriculture] バンド割り当てでは、短波赤外、近赤外、青の 3 つのスペクトル バンドを使用します。 これにより、さまざまな特徴が明確にハイライト表示されるため、レンダリングの汎用性が高くなります。 [DRA] は Dynamic Range Adjustment (ダイナミック レンジ調整) の略語で、画像のコントラストを向上するテクニックです。
注意すべき点として、Sentinel-2 画像は 13 個のスペクトル バンドで構成されています。 これらのバンドには、人間の目で見える光 (青、緑、赤など) を捉えるものと、人間の目で見えない光 (レッド エッジ、近赤外、短波赤外など) を捉えるものがあります。 13 個のバンドが電磁スペクトルのどこに位置するかを次の図に示します。
バンド番号とその名前を以下のリストに示します。
- バンド 1 - コースタル エアロゾル
- バンド 2 - 青
- バンド 3 - 緑
- バンド 4 - 赤
- バンド 5 - レッド エッジ 1
- バンド 6 - レッド エッジ 2
- バンド 7 - レッド エッジ 3
- バンド 8 - 近赤外 (NIR 1)
- バンド 8A - 近赤外ナロー (NIR 2)
- バンド 9 - 水蒸気
- バンド 10 - 短波赤外 (巻雲)
- バンド 11 - 短波赤外 (SWIR 1)
- バンド 12 - 短波赤外 (SWIR 2)
このセクションでは、アプリを開いて、対象の場所を設定し、特定の画像レイヤーとレンダリングを選択しました。 これで、エル ファイユーム オアシスを探索する準備ができました。
スペクトル プロファイル チャートの視覚化
ここでは、画像内の複数のピクセルのスペクトル プロファイルを視覚化します。 スペクトル プロファイルは、特定の画像ピクセルのスペクトル バンドごとに値をプロットするチャートです。 まず、植生を表すピクセルから始めます。
エル ファイユーム オアシスの一般的な植生は主に、綿花、クローバー、穀物などの作物の耕作地で構成されており、ヤシの木もいくつか景観に点在しています。
- [Explore Imagery] ウィンドウの [What do you want to do?] で [Explore spectral profiles] を選択します。
- マップ上で、植生で覆われているように見えるオアシス内のポイント (薄い緑色) をクリックします。
マップ上で、選択した位置に赤色のドットが表示されます。 [Explore Imagery] ウィンドウで、スペクトル プロファイル チャートが更新されます。
- スペクトル プロファイル チャートを確認します。
このチャートの X 軸 (水平) は、それぞれのスペクトル バンドを表します。 Y 軸 (垂直) は、選択したピクセルの各バンドの値を表します。 各バンドの値は赤色のドットで表されます。 アプリには、各バンドの名前を書き込める十分なスペースがありませんが、次の展開図で詳細を確認できます。
この Sentinel-2 Annual GeoMAD 画像には、元の 13 個の Sentinel-2 バンドのうちの 10 個が表示されています。 人間の目で見えるのは最初の 3 つのバンド (青、緑、赤) だけであり、残りの 7 つのバンドは人間の目で見えません。 バンドが多数存在すると、地表のフィーチャに関して豊富な情報 (人間の目で捉えられる情報よりもはるかに多くの情報) がもたらされます。
注意:
このチャートの右端にある最後の 4 つのバンドは、このチュートリアルの適用範囲外である高度な補足情報を表します。 これらのバンドは無視します。
- [Explore Imagery] ウィンドウの右側にある [Typical Spectral Profiles] のリストに注目してください。
[Lush Grass]、[Water]、[Desert] など、特定タイプの土地被覆の標準スペクトル プロファイルは常に同じになる傾向があります。 これをスペクトル シグネチャと呼びます。 画像ピクセルのスペクトル プロファイルを標準スペクトル シグネチャと比較すると、そのピクセルの土地被覆タイプを自動的に識別することができます。
現在のピクセルのスペクトル プロファイルが [Desert]、[Dry Grass]、[Lush Grass]、[Urban]、[Rock]、[Forest]、[Water] のスペクトル シグネチャと比較されて、[Lush Grass] に最も近いことが判明しました。 このことは、さまざまな作物と草地を含む植生エリアにまさに最適であると思われます。
ヒント:
ピクセルが [Lush Grass] として識別されなかった場合は、いくつかの建物や地表を含むピクセルを選択した可能性があり、スペクトル プロファイルが不明確になっています。 この場合には、[Lush Grass] として識別されるまで、植生を表す 1 つまたは複数のピクセルをクリックします。
このチャートでは、[Lush Grass] の標準スペクトル シグネチャが薄いピンク色のラインで表されており、そのスペクトル シグネチャがピクセルのスペクトル プロファイルに比較的似ていて、[Red Edge 2]、[Red Edge 3]、[NIR 1]、および [NIR 2] が大きい値を示していることがわかります。
次に、水を表すピクセルのスペクトル プロファイルを確認します。 オアシスの北部に沿って、主要な湖であるカルン湖をはじめ、オアシスを取り囲むようにいくつかの湖が存在します。 この場所で、水を表すピクセルを選択します。
この写真は、カルン湖の景観を示しています。 - カルン湖の中のポイント (濃い青色) をクリックします。
スペクトル プロファイル チャートが更新されます。
すべてのバンドが非常に小さい値になり、このピクセルが [Water] として識別されます。
ここで、砂漠を表すピクセルのスペクトル プロファイルを確認します。
この写真は、エル ファイユーム地域の砂漠の景観を示しています。 背景に湖も見えています。 - オアシスの真北にある砂漠の中のピクセルを選択します。
スペクトル プロファイル チャートが更新されます。
特に SWIR 1 バンドと SWIR 2 バンドで、ほとんどの値が大きくなります。 このピクセルは [Desert] として識別されます。
ヒント:
このピクセルが [Rock] として識別されている可能性があります。 この場合には、砂漠として識別されるまで、それ以外の 1 つまたは複数のポイントを試します。
次に、樹木で覆われたエリアを調査します。
- オアシスの中心に向かっている濃い緑色のエリアを識別します。
このエリアには、オリーブ林や果樹園などの樹木密集地があり、いくつかのヤシの木も含まれています。
この写真は、樹木密集地を背景にしたエル ファイユームの耕作地の景観を示しています。 - オアシスの中心にある樹木に富んだ濃い緑色のエリア内のピクセルを選択します。
スペクトル プロファイルが更新され、このピクセルが [Forest] として識別されます。 最後に、都市の土地被覆を表すピクセルを確認します。
- エル ファイユームの町の中にあるピクセルを選択します。
スペクトル プロファイルが更新され、このピクセルが [Urban] として識別されます。
- [画像の探索] ウィンドウを閉じます。
このワークフローでは、画像内の複数のピクセルのスペクトル プロファイルを視覚化しました。 スペクトル プロファイルを標準スペクトル シグネチャと比較すると、土地被覆タイプを識別できることを学習しました。
ほとんどの画像解析手法で、これらのスペクトル プロファイルの変化が活用されています。 たとえば、これまでのチュートリアルで使用した植生指数では、バンド値間の標準的な差異と比率に応じて、健全な植生と健全でない植生が区別されます。
スペクトル散布図を使用してマングローブ林を識別
スペクトル データをさらに詳しく探索するために、スペクトル バンド値を調査するもう 1 つの方法であるスペクトル散布図についてここで学習します。 この調査は、ザンジバル諸島のマングローブ林とそれ以外の土地被覆を視覚化しながら行います。
ザンジバルはインド洋に位置する諸島であり、タンザニア連合共和国に属しています。 マングローブ林は密生した樹本と低木からなり、塩水と淡水が入り混じった沿岸部で生育します。 マングローブ林は、ザンジバル諸島の生態系に重要な役割を果たしています。 生物の多様性に富んでいるだけでなく、マングローブ林は、沿岸部の浸食を防止し、異常気象から内陸部を保護する上でも必要不可欠となっています。 さらに、現地の漁業にとって不可欠な魚介類の繁殖にも重要な役割を担っています。 ただ残念なことに、ザンジバルのマングローブ林は、人口圧迫、農業開発と都市開発、気候変動によって危機にさらされいます。
衛星画像を使用してマングローブ林を監視することは、その生態系を回復させて継続維持する上で重要な役割を果たします。
画像の設定と探索
ザンジバルの本島であるウングジャ島のマコバ湾を調査の主な対象とします。 まず、その場所をマップの中心にして、画像を設定します。
- 検索ボックスに「Makoba, Zanzibar」と入力して Enter キーを押します。
マップが更新され、新しい場所が表示されます。
- これ以降、[Search result] ウィンドウは使用しないので閉じておきます。
- [Zoom In] ボタンを 3 回クリックします。
- 必要に応じて、マップをドラッグして位置を調整します。
次のサンプル画像とほぼ同様に表示されるはずです (黄色のラベルはマップ上に表示されるわけではなく、 わかりやすくするために、ここに付記されています)。
この範囲は、ウングジャ島の一部を表しており、島の西側にインド洋、北側にマコバ湾が存在し、1 本の川が河口域を通って湾に流れ込んでいます。
- サイドバーで [Explore Imagery] ボタンをクリックして、[Explore Imagery] ウィンドウをもう一度開きます。
- [Explore Imagery] ウィンドウで、次のパラメーター オプションが選択されていることを確認します。
- [Layer] で、[Sentinel-2 Annual GeoMAD] が選択されていることを確認します。
- [Rendering] で、[Agriculture with DRA] が選択されていることを確認します。
- [Date] で、[2020 年 1 月 1 日] が選択されていることを確認します。
現在のベースマップには、道路を表すラインがいくつか表示されています。 ベースマップを変更して、これらのラインとその他のマークをすべて削除し、画像の表示が遮られないようにします。
- サイドバーで [Basemap Gallery] ボタンをクリックします。
- [Basemap Gallery] ウィンドウで [Imagery] を選択した後、このウィンドウを閉じます。
道路を表すラインが表示されなくなります。
このセクションでは、対象の場所、画像、ベースマップを設定します。 これで、ウングジャ島のマコバ湾を探索する準備ができました。
スペクトル散布図の探索
今から、対話形式のスペクトル散布図を作成して対象地域を探索します。 スペクトル散布図は、2 つのスペクトル バンドの関連性を調査し、これらのスペクトル バンドが地表のフィーチャおよび土地被覆の種類とどのように関係しているかを確認するために使用されるグラフです。 まず、散布図を設定します。
- 必要に応じ、[Explore Imagery] ウィンドウを再度開きます。 [Explore Imagery] ウィンドウの [What do you want to do?] で [Create spectral scatterplot] を選択します。
デフォルト設定の散布図が表示されます。 2 つのスペクトル バンドが散布図に表示されるように設定できます(1 つを X 軸、もう 1 つを Y 軸)。 NIR 1 と SWIR 2 が表示されるように設定します。
- [X] で [NIR_1 (7)] を選択し、[Y] で [SWIR_2 (10)] を選択します。
散布図グラフが更新されます。 マップ上に現在表示されている各画像ピクセルが NIR 1 と SWIR 2 の値に基づいて散布図で表されます。 一見しただけで、NIR 1 の値が 0.01 ~ 0.70 で変化し、SWIR 2 の値が 0.01 ~ 0.54 で変化する可能性があることがわかります。 色は頻度を示し、散布図でピクセルが最も多い場所が明るい赤色で表示されます。
注意:
マップ範囲の正確さに応じて、散布図の表示が若干異なる場合があります。
ここで、散布図を操作して、表示内容をわかりやすくします。
まず、水を表すピクセルが散布図のどこに表示されるかを確認します。 これは、海、湾、河口域、または川の水である可能性があります。
この写真はインド洋に沿ったザンジバルの海辺の景観を示しています。 - マップ上で、水を表すピクセル (島の西側の海にある濃い青色のピクセル) をクリックします。
そのピクセルが散布図のどの場所に存在するかを示す十字が表示されます。
- マップ上で水を表すピクセルをさらにいくつかクリックします。
これらのピクセルはいずれも、散布図の左下の同じエリアに表示されます。 これらの位置から判断すると、水を表すどのピクセルでも、NIR 1 と SWIR 2 が非常に小さい値になると思われます。 次に、これらのピクセルをすべて選択して、マップ上でハイライト表示します。
- 次のサンプル画像に示されているように、散布図で水を表すピクセルが集中しているエリアをクリックしてドラッグし、丸で囲みます。
これで、選択セットに含めたピクセルがマップ上にシアンでハイライト表示されます。
これらのピクセルはいずれも、海、湾、河口域、または川の水を表しています。 川の南東に位置する内陸部の小さい池もここに含まれていることに注目してください。
- 必要に応じて、結果に満足がいくまで、散布図で図形を描画し直すことができます。
次に、マングローブ林で同じ操作を実行します。 対象地域で、マングローブ林は主に湾と河口干潟に沿って存在し、画像に濃い緑色で表示されます。 試行錯誤によって、マングローブ林を表すピクセルはすべて、散布図の下部にある細長いバンド内に表示されることがわかりました。 そのエリアを丸で囲んで、マップ上でマングローブ林を表すピクセルをハイライト表示します。
- 散布図の任意の場所を 1 回クリックすると、これまでのハイライト表示が解除されます。
- 次のサンプル画像に示されているように、散布図でマングローブ林を表すピクセルをクリックしてドラッグし、丸で囲みます。
これらのどのピクセルでも、SWIR 2 が非常に小さい値になり、NIR 1 が中程度から大きい値になります。 これで、マングローブ林を表すピクセルがすべて、マップ上にシアンでハイライト表示されます。
反対に、マングローブ以外の植生を表すピクセルをハイライト表示することもできます。 試行錯誤によって、どのピクセルでも、NIR 1 が中程度から大きい値になり、SWIR 2 が中の小から中の大の値になることがわかりました。
- 散布図の任意の場所を 1 回クリックすると、これまでのハイライト表示が解除されます。
- 次のサンプル画像に示されているように、散布図でマングローブ以外の植生を表すピクセルをクリックしてドラッグし、丸で囲みます。
注目すべき点として、マングローブ以外の植生を表すどのピクセルでも、SWIR 2 がマングローブを表すピクセルより大きい値になります。 この違いは、2 種類の植生を明確に区別できることを意味します。
これで、マングローブ以外の植生を表すピクセルがすべて、マップ上にシアンでハイライト表示されます。
マングローブ以外の植生がこの地域全体に広がっていることがわかります。 この植生では主に、低層植物 (キャッサバやサツマイモなど) と香辛料の生産用の植物 (チョウジ、ナツメグ、シナモン、黒コショウなど) が混在しており、ヤシの木も一部含まれています。
最後に、地表を表すピクセルをハイライト表示します。これらのピクセルは、散布図の右上隅に集中しています。
- 散布図の任意の場所を 1 回クリックすると、これまでのハイライト表示が解除されます。
- 次のサンプル画像に示されているように、散布図で地表を表すピクセルをクリックしてドラッグし、丸で囲みます。
これらのピクセルでは、SWIR 2 が非常に大きい値になり、NIR 1 が中程度から大きい値になる傾向があります。
これで、地表を表すピクセルがすべて、マップ上にシアンでハイライト表示されます。
- 必要に応じて、引き続き散布図を試してみてください。
たとえば、マップ上のピクセルをさらにいくつかクリックして、これらのピクセルが散布図のどこに表示されるかを確認したり、散布図に図形をさらにいくつか描画して、マップ上でどのピクセルがハイライト表示されるかを確認したりすることができます。
スペクトル散布図は、2 つのスペクトル バンドに基づいて異なる種類の土地被覆を区別する方法を理解するのに役立ちます。 これにより、土地被覆の種類ごとに値の範囲を識別できるようになります。 また、これらの数値をさらに高度な解析に使用することもできます。
注意:
このワークフローでは、NIR 1 および SWIR 2 散布図を探索しました。 これらのバンドは、試行錯誤によってマングローブ林を他の種類の土地被覆と区別するのに適していることが判明しているので選択されました。 これ以外のバンド割り当て (青色と緑色など) では、これらを明確に区別することができません。
必要に応じて、散布図でこれ以外のバンド割り当てを探索して、どのバンド割り当てが最適であるかを判別できます。
画像解析では、マングローブ林を識別し、経時的に監視して、マングローブ林が成長しているか退行しているかだけでなく、成長/退行の速度も把握することができます。 タンザニア政府は、この重要な生態系を回復させて保護するための対策を取っているので、画像解析を使用して進捗状況を測ることもできます。
このチュートリアルでは、スペクトル散布図を理解することに重点が置かれていましたが、画像を使用してマングローブ林を識別する方法はこれ以外にも多数存在します。 たとえば、ザンジバル州立大学が Digital Earth Africa の画像データを使用してザンジバルのマングローブ林を監視した方法については、「ザンジバルでのマングローブ林の保護」をご参照ください。
都市の探索と空間解像度の学習
ここでは、画像に関するもう 1 つの重要な概念である空間解像度に目を向けます。 さまざまな空間解像度の例を見ながら、南アフリカのケープタウン市を調査します。
ケープタウンは南アフリカで 2 番目に大きい都市であり、南アフリカの立法上の首都として機能しています。 アフリカの大西洋側の最南端に位置し、目を見張る自然のランドマーク (テーブル マウンテンやシグナル ヒルなど)、港、風光明媚な海岸線が有名です。
画像の設定と探索
まず、ケープタウン市をマップの中心にします。
- 検索ボックスに「Cape Town, South Africa」と入力して Enter キーを押します。
マップが更新され、新しい場所が表示されます。
- これ以降、[検索結果] ウィンドウは使用しないので閉じておきます。
- [拡大] ボタンを 3 回クリックします。
- 必要な場合は、マップの位置を調整して、次のサンプル画像とほぼ同様に表示されるようにします。
Agriculture with DRA でレンダリングされた Sentinel-2 Annual GeoMAD レイヤーの画像がまだ表示されています。 このレンダリングを使用すると、開発地 (建物と道路) を紫色で識別し、シグナル ヒルとテーブル マウンテンを茶色の色調で識別することができます。 北側には、明るい緑色で表示されたグリーン ポイント パークと紫色で表示されたドーナツ形状のケープタウン スタジアムがあり、東の端には港があることがわかります。
このセクションでは、ケープタウン市をマップの中心にして、その場所に方向を合わせました。
異なるデータセットの空間解像度を比較
空間解像度は、画像内のピクセルで表される距離を意味します。 たとえば、30 メートルの解像度で画像がキャプチャされた場合、各ピクセルは地上の 30 メートル四方の正方形を表します。 画像の解像度が高い場合は、細かい部分まで区別できるため、小さい特徴が認識しやすくなります。 画像の解像度が低い場合は、表示が粗くなりますが、格納しやすい小規模なファイルが生成されます。 さまざまな空間解像度レベルの例を次の図で確認してください。
[Compare Imagery] ツールを使用して、それぞれの画像データセットの空間解像度を比較します。
- サイドバーで [Compare Imagery] ボタンをクリックします。
[Compare Imagery] ウィンドウが表示されます。 このツールでは、マップの左側と右側に表示する 2 つの画像を指定し、その間をスワイプして切り替えることができます。
- [Compare Imagery] ウィンドウで、左側の画像について次のオプションを設定します。
- [Left Image] が選択されていることを確認します。
- [Layer] で、[Sentinel-2 Annual GeoMAD] が選択されていることを確認します。
- [Rendering] で、[Agriculture with DRA] が選択されていることを確認します。
- [Compare Imagery] ウィンドウで、右側の画像について次のオプションを設定します。
- [Right Image] をクリックして選択します。
- [Layer] で、[Landsat 8 Annual GeoMAD] が選択されていることを確認します。
- [Rendering] で、[Agriculture with DRA] が選択されていることを確認します。
注意:
Landsat 8 Annual GeoMAD 画像レイヤーは、Sentinel-2 Annual GeoMAD と同じ方法で生成されますが、Landsat 8 画像から取得されます。 GeoMAD レイヤーがどのように作成されているかについては、Digital Earth Africa のドキュメントをご参照ください。
Landsat は、マルチスペクトル画像を生成する米国の地球観測衛星プログラムです。 Landsat 8 は 8 番目の Landsat ミッションであり、2013 年に打ち上げられました。 詳細については、「Landsat 8」をご参照ください。
- マップでスワイプ ハンドルを使用して左右に繰り返しスワイプし、2 つの画像を比較します。
Sentinel-2 Annual GeoMAD レイヤー (左) の空間解像度は 10 メートルですが、Landsat 8 Annual GeoMAD レイヤー (右) の空間解像度は 30 メートルです。 レイヤーの解像度を高くして、フィーチャをより詳細かつ正確に表示できるようにする方法を確認します。
ここでは、[Sentinel-2 Annual GeoMAD] データセットと [Imagery] ベースマップの空間解像度を比較します。
- [Compare Imagery] ウィンドウで、右側の画像について次のオプションを設定します。
- [Right Image] が選択されていることを確認します。
- [Layer] で [None] を選択します。
[Landsat 8 Annual GeoMAD] レイヤーが表示されなくなり、基の [Imagery] ベースマップが表示されたままになります。
このベースマップは Esri の衛星画像ベースマップです。 このベースマップには、TerraColor、Maxar、コミュニティが提供するデータなど、複数のソースから取得された画像が含まれています。 この画像には、さまざまな空間解像度があり、通常は非常に高く、0.3 メートルより高くなることもあります。
[Imagery] ベースマップにもっと類似するように [Sentinel-2 Annual GeoMAD] レイヤーのバンド割り当てを変更します。
- [画像の比較] ウィンドウで、左側の画像について次のオプションを設定します。
- [Left Image] をクリックして選択します。
- [Layer] で、[Sentinel-2 Annual GeoMAD] が選択されていることを確認します。
- [Rendering] で [Natural Color with DRA] を選択します。
左の画像が更新され、[Natural Color with DRA] の [Sentinel-2 Annual GeoMAD] レイヤーが表示されます。 DRA を使用した自然色では、青、緑、赤のバンドが組み合わされ、人間の目で見える色に近い色が表示されます。
- マップでスワイプ ハンドルを使用して左右に繰り返しスワイプし、2 つの画像を比較します。
レンダリングに関して 2 つのレイヤーは比較的似ていますが、右のベースマップの空間解像度がはるかに高くなっています。
- [Zoom In] ボタンを 1 回クリックして、繰り返しスワイプします。
このズーム レベルでは、空間解像度の違いがより明確にわかります。
- [Zoom In] ボタンを 4 回クリックして、繰り返しスワイプします。
このズーム レベルでは、空間解像度の違いがはっきりします。 左側はかなりぼやけていますが、右側では個々の家と車が鮮明に表示されています。
画像データセットを選択する場合には、その空間解像度を考慮して、目的に最も合ったデータセットを選択することが重要となります。 ただし、このことが唯一の考慮事項ではありません。 たとえば、Imagery ベースマップは、空間解像度が高いので場所の詳細な探索に効果的ですが、他の制限事項があります。 画像ベースマップは、3 つのスペクトル バンド (青、緑、赤) しか存在しないため、 スペクトル解析には使用できません。 Imagery ベースマップと比べて、Sentinel または Landsat から取得された画像レイヤーは、バンドが多数存在するため、スペクトル情報がはるかに豊富です。 画像データセットのスペクトル情報の豊富さのレベルをスペクトル分解能と呼びます。 空間解像度と同様に、スペクトル分解能を考慮して、画像データセットが目的に合っているかどうかを判断することが重要となります。
空間解像度、スペクトル分解能、その他の画像プロパティの詳細については、画像のタイプに関するドキュメントをご参照ください。
このチュートリアルでは、アフリカのさまざまな場所を探索しながら、スペクトル プロファイル、スペクトル シグネチャ、スペクトル散布図、空間解像度など、画像の基本概念について学習しました。 これで、画像を理解してプロジェクトで活用するための準備が整いました。
「アフリカの衛星画像の探索」シリーズで同様のチュートリアルをご覧になれます。