集中豪雨に関する問題の調査

2011 年 7 月 2 日の夕方、コペンハーゲンの中心街は、1 時間半の間に 136 ミリメートルという降雨 (およそ 5 インチ) に見舞われました。[1] 水没した下水道が氾濫し、その結果、雨水と汚水が混濁した水が何千もの地下室に押し寄せました。この暴風雨の影響で、保険会社は、約 9 万人の保険加入者におよそ 10 億ドルの保険金を支払いました。[2]

デンマーク気象研究所は、異常降雨事象、つまり集中豪雨を、30 分間に 15 ミリメートルの降雨 (約 0.6 インチ) と定義しています。[3] コペンハーゲン市のこの豪雨は、「有り余るほどのバケツの水」と形容されました。

現在、将来、過去

標準の気候モデルは、このような強度の暴風雨の頻度を千年に 1 回と予測しています。[4] それにもかかわらず、最近、同じ地域で別の異常降雨事象が何度も発生しています。2010 年 8 月には、数時間以内に 99 ミリメートルもの雨がコペンハーゲン市に降りました。統計的には、これは 50 年に 1 回の気象事象でした。[5] 2013 年 8 月に、首都から西へおよそ 80 キロメートル離れたホエングの町は、20 分の間に 15 ミリメートルという降雨に見舞われました。付近のライ村は 1 時間に 46 ミリメートルの雨が降りました。[4] 2014 年 8 月 31 日に、コペンハーゲン市は、数時間内に 119 ミリメートルの降雨によって再び洪水になりました。これは 480 年に 1 回の気象事象でした。[4] 気候変動によって標準の予測モデルが狂ってしまったように思われます。ほぼ間違いなく、現在のデンマークでは、集中豪雨をより高い頻度で予測する必要があります。

コペンハーゲン市とデンマークの国全体の両方で、将来の集中豪雨に対する準備が活発化しています。国政レベルと市政レベルで検討または実施されている計画には、雨水を建物から逃がすための新しい地上の水路、下水道の増強、余分な水をポンプで海へ送るためのポンプ場が含まれています。コペンハーゲン市の「Cloudburst Management Plan 2012」では、これらの問題を詳細に検討しています。

簡単だが重要な計画上の留意事項は、水が流れ込む場所ではなく、水が流れ出さない場所を計画に盛り込むことです。凹地、窪地、空洞などいろいろな名称で呼ばれる低地のエリアはどこにもあります。これらの場所は形状も大きさもさまざまです。平らに見える農場や公園、競技場にも、実際には、降雨を貯留する浅い凹地が含まれている場合があります。

サッカー場
雨が降った後のコペンハーゲンのサッカー場 画像 © Thomas Balstrøm.

一部の住宅地は、乾燥した気候条件下で低地の地形が見過ごされている場所に位置しています。この事実は、地面が降雨を吸収できず、下水道で降水を運び去ることができないほど多量の雨が降った場合にのみ明らかになります。道路や他のタイプのインフラ設備 (地下鉄の駅や鉄道線路など) も被害を受けやすい場所です。

水没したタクシー
2014 年 8 月の集中豪雨の後に洪水になった、コペンハーゲンの幹線道路下の道路 画像 © Johanna Sørensen.

耕作地であろうと、造成地であろうと、ほとんどすべての低地がいくらかのリスクにさらされています。農場では、これらの低地が作物や設備の阻害要因になる可能性があります。住宅地では、建物が高い基部または支柱の上に建設されている場合を除き、これらの低地が洪水の原因になります。

凹地に立地していない構造物もリスクにさらされる場合があります。いわゆる流出点で凹地から水があふれ出すほど多量の雨が降った場合は、隣接する地域が洪水になるおそれがあります。

流出点のスケッチ

歴史的に見て、低い地形にある建物のリスクは予測されてきませんでした。あるいは、リスクが存在していなかったのかもしれません。しかし、少なくともデンマークでは、いくつかの開発された地域が、1850 年代以降に排水された土地の上にあります。この種の地域は、かつては湿地帯または小さな湖であり、灌漑または開拓が行われたときに良質の農地に転換されました。排水が効率的に行われていたら、これらの地域は、豪雨が起こらない限り長期間、洪水に見舞われずに済んだ可能性があります。残念ながら、過去数 10 年の間に、多数の住宅造成地がこの種の地域に造られています。現在、これらの地域が、集中豪雨時に降水が溜まる低地のエリアになっています。このような放棄された農地に住む住宅所有者は、洪水が頻発するという課題に直面します。

マップの比較
左: 1860 年の地形図。緑色のエリアは低地の牧草地であり、青色のラインは排水溝です。右: 1990 年には、その同じエリアが、左側の農地がなくなった住宅造成地になっています。このマップ エリアはおよそ 1.2 平方キロメートルです。この画像には、Danish Geodata Agency から提供されたデータが含まれています。

ブルースポット マップ

近年、GPS システムと LIDAR 技術の統合により、詳細な高解像度地形モデルの作成が可能になっています。デンマークの NIRASCOWI の 2 社が、このようなモデルからのブルースポット マップの作成を主導してきました。

「ブルースポット」は、単に地形内の凹地または窪地を表す別の用語ですが、洪水のリスクを特に強調した用語でもあります。ブルースポットは、集中豪雨時に満水になるか、または氾濫が起きる可能性のあるエリアであり、そのエリア内またはエリア付近の構造物を危険にさらします。

ブルースポット
上の画像で示された低地のエリアのブルースポット マップ この画像には、Danish Geodata Agency から提供されたデータが含まれています。

これらのレッスンでは、デンマーク政府が使用しているものと類似したブルースポット マップを作成します。ブルースポット マップの作成方法は、ジオプロセシング モデル、つまり、順次実行される一連の GIS 解析ツールの形式で示されます。自分自身でモデルを構築するのではなく、モデルを調査して実行し、その結果をマップにします。実際には、2 つのモデルが提供されます。これらは、ブルースポットを識別する基本モデル (レッスン 3) と、さらにブルースポットの体積とブルースポットを埋めるために必要とされる降水量を計算する拡張モデル (レッスン 4) です。

どちらのモデルも、第一の価値は低地のエリアの識別にあります。計画者と開発者にとってのブルースポット マップは、建設しない場所や、特別な景観設計によって開発が実施される必要がある場所を、詳細な情報を得た上で決定するために使用できます。すでに開発されているエリアでは、以前に検討されたいくつかの方法で気候変動に対する耐久性を改善するために、エリアに優先順位を付けるためにブルースポット マップを使用できます。

また、ブルースポット マップは他の用途に合わせてカスタマイズできます。たとえば、[ブルースポット満水値の識別 (Identify Bluespot Fill Up Values)] モデルは、そのエリア全体における各ブルースポットのさまざまな深度を計算します。そして、この情報は、ボートが必要なエリアから徒歩で到達できるエリアの識別に役立つ、捜索救助スタッフ用の「ゴム長靴」マップを作成するために使用できます。

モデルの仮定と制約

このモデルで生成される結果の精度と確実度は、さまざまな仮定と制約の影響を受けます。これらの要因には、下水道と自然のプロセスによって流し去ることができる水量を決定する水収支式などがあります。これらについては、レッスン 4 で説明しています。このモデルは厳しい審査を受けていますが、エラーが存在することがあります。そのようなエラーが検出された場合は、作成者に連絡してください

作成者と Esri はいずれも、この解析から導き出された結論に対して責任を負いません。具体的に言うと、これらの結果は、プロパティをブラックリストに登録するために使用できません。これらの結果は、集中豪雨時に排水の問題に直面する可能性があるエリアに焦点を絞るために計画者の間で議論を重ねた上で使用する必要があります。

次に、マップ ドキュメントを開き、ゲントフテ市の調査エリアを詳しく調べます。


プロジェクト データの操作

前回は、デンマークで最近発生した集中豪雨および洪水の被害を受けやすいエリアをブルースポット マップがどのように識別するかについて学習しました。今回は、プロジェクトに必要なデータをダウンロードして分析範囲 (コペンハーゲンの近くのゲントフテ市) を調べます。

ゲントフテ

古地図によれば、昔のゲントフテ市の市街地の多くは、水で満たされていたことが明らかにされています。数千年前、それらの場所は、溶けた氷河を海に運ぶ極めて活発な河道でした。開始するデータは、このエリアの高解像度のデジタル標高モデル (DEM) および建物のフットプリントのレイヤーです。

データのダウンロード

プロジェクトのモデルとデータは、ArcGIS Online に保存されています。

  1. Find Areas at Risk of Flooding in a Cloudburst」グループに移動します。
  2. [Cloudburst Models and Data] アイテムのサムネイル画像をクリックしてデータをダウンロードします
    備考:

    データのダウンロード サイズは、約 40 メガバイトです。

    データは、Cloudburst.zip というファイル名でデフォルトのダウンロード フォルダー (たとえば、 C:\Users\<profile>\Downloads) にダウンロードされます。

  3. データを、C:\ ドライブまたは任意のフォルダーに解凍します。

ArcMap の起動

次の手順では、最新版の ArcMap が存在し、ArcGIS Spatial Analyst エクステンションにアクセスできることを確認します。

  1. ArcMap を起動します。
    備考:

    ArcMap をお持ちでない場合、Esri ストアArcGIS Desktop を購入して取得できます。

  2. [ArcMap - はじめに] ウィンドウが開いたら、[空のマップ] をクリックして選択し、[OK] をクリックします。

    [はじめに] ウィンドウ

    備考:

    [はじめに] ウィンドウには、空のマップ テンプレートが含まれています (すでに作成している場合は、最近使用したマップも表示されます)。

    空の無題のマップ ドキュメントが開きます。続行する前に、適切なソフトウェア構成が存在することを確認します。

  3. ArcMap ウィンドウの上部にあるメイン メニューの [ヘルプ] をクリックして、[バージョン情報] を選択します。

    バージョン情報

  4. ArcGIS Desktop のバージョンが 10.3 以降であることを確認します。
    注意:

    ArcMap のバージョンが 10.3 より前である場合、このレッスンを実行することはできません。

  5. [ArcGIS for Desktop について] ウィンドウの [OK] をクリックします。
  6. メイン メニューの [カスタマイズ] をクリックして、[エクステンション] を選択します。
  7. [エクステンション] ウィンドウで、[Spatial Analyst] チェックボックスをオンにして、[エクステンション] ウィンドウを閉じます。

    エクステンション

    注意:

    Spatial Analyst エクステンションを使用できない場合、このレッスンを実行することはできません。

  8. 必要に応じて、ArcMap アプリケーション ウィンドウを最大化します。

プロジェクト データへのフォルダー接続の作成

[カタログ] ウィンドウのフォルダー接続を通じてマップとデータにアクセスします。

  1. ArcMap アプリケーション ウィンドウの右上にある [カタログ] タブをクリックします。
    ヒント:

    または、ArcMap のメイン メニューの [ウィンドウ] をクリックして、[カタログ] を選択します。

  2. [自動非表示] ピンをクリックして、ウィンドウを開いたままにします。

    デフォルトの [カタログ] ウィンドウ

  3. [カタログ] ウィンドウのツールバーにある [フォルダーに接続] ボタンをクリックします。

    [フォルダーに接続] ボタン

  4. [フォルダーに接続] ウィンドウで、[Cloudburst] フォルダーの場所 (コンピューター→ C: → Cloudburst など) を参照します。そのフォルダーをクリックして選択し、[OK] をクリックします。
  5. [カタログ] ウィンドウで、[Cloudburst] フォルダーを展開します。

    Cloudburst フォルダーには、1 つのフォルダー、4 つのジオデータベース、および 4 つのツールボックスが含まれています。

  6. [BluespotModels_Metric] ツールボックスを展開します。

    Cloudburst フォルダーの展開

    このツールボックスには、2 つのジオプロセシング モデルが含まれています。

    • [ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] は、分析範囲内のブルースポットを検出し、ブルースポットの内部または近隣に存在する建物を選択します。このモデルの結果は、集中豪雨の際に増大する洪水の危険に直面している構造物を、極めて一般的なレベルで示します。このモデルは、この危険性を定量化しようとはしません。このモデルは、レッスン 3 で実行します。
    • [ブルースポット満水値の識別 (Identify Bluespot Fill Up Values)] は、同じ解析を実行し、各ブルースポットの体積およびローカルな集水域または貯水池 (ブルースポットに排水する流域) の面積も計算します。この情報から、モデルはブルースポットが満水になる雨量を計算します。このモデルを使用して、洪水のリスクをランク付けすることができます。その他の要因が同じであれば、満水になるために必要な雨量が少ないブルースポットは、より大きい洪水のリスクを建物にもたらします。このモデルは、レッスン 4 で実行します。

    ジオデータベースおよびツールボックスのコンテンツについて、次の表で説明します。

    名前コンテンツ

    Maps and Layers

    入力データと結果を視覚化するためのマップ ドキュメント。結果をシンボル表示するためのレイヤー ファイル。

    Inputs.gdb

    モデルの開始データ。

    Outputs_Bluespots.gdb

    空。[ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] モデルの出力を保持します。

    Outputs_BluespotsFillUp.gdb

    空。[ブルースポット満水値の識別 (Identify Bluespot Fill Up Values)] モデルの出力を保持します。

    ResourceData.gdb

    調査と解析を行うための追加フィーチャおよびラスター データ。

    BluespotModels_Metric.tbx

    レッスン 3 およびレッスン 4 で使用されるジオプロセシング モデル。

    BluespotModels_Metric_NoBuildings.tbx

    建物のフットプリントを使用できない入力データセット用のモデル。

    BluespotModels_US.tbx

    米国の測定単位を使用する入力データセット用のモデル。

    BluespotModels_US_NoBuildings.tbx

    米国の測定単位を使用し、建物のフットプリントが含まれていない入力データセット用のモデル。

Gentofte マップを開く

モデルを実行する前に、分析範囲について理解します。

  1. [カタログ] ウィンドウで、[Maps and Layers] フォルダーを展開します。Gentofte.mxd マップ ドキュメントをダブルクリックして開きます。
    ヒント:

    ハードウェア アクセラレーションを有効にするように求められた場合は、[はい] をクリックします。

  2. 必要に応じて、[カタログ] ウィンドウを固定解除します。
  3. ArcMap のメイン メニューの [ブックマーク] をクリックし、[Study Area] を選択します。

    Gentofte マップ

    ゲントフテ市内の建物が紫色で描画されます。市の境界が赤色で描画されます。

  4. [Ordrup] ブックマークにズームします。

    Ordrup

    分析範囲は、高度に開発されていますが、多くの水域、公園、および緑地を含んでいます。

  5. 必要に応じて、[ツール] ツールバーの [画面移動] ツールをクリックしたり、[定率拡大] ボタンおよび [定率縮小] ボタンをクリックして、分析範囲の周辺を移動します。

    [画面移動] ツール

  6. 準備ができたら、[Study Area] ブックマークにズームします。
  7. [コンテンツ] ウィンドウで、[DEM] レイヤーのチェックボックスをオンにしてレイヤーを表示します。

    DEM

    デジタル標高モデル (DEM) は、分析範囲の標高値を表示します。[コンテンツ] ウィンドウで、標高値が -3.23 メートルの低位置から 56.58 メートルの高位置までであることを確認します。これらの値は、茶色のカラー ランプでシンボル表示されます。茶色の影が明るいほど、標高が高くなります。

  8. [Gentofte Lake] ブックマークにズームします。
  9. [ツール] ツールバーで、[個別属性] ツールをクリックします。

    個別属性ツール

  10. マップ上の任意の位置をクリックします。

    [個別属性] ウィンドウが開き、Municipal Boundary レイヤー ([コンテンツ] ウィンドウ内の最上位レイヤー) を識別します。これは、目的のレイヤーではありません。調べたいのは、DEM レイヤーです。

  11. [個別属性] ウィンドウの上部で、[レイヤー] の設定を [DEM] に変更します。
  12. マップ上で、ゲントフテ湖内のいくつかの位置をクリックします (必要に応じて、[個別属性] ウィンドウを邪魔にならない場所にドラッグします)。

    DEM の識別

    どの位置をクリックしても、DEM レイヤー内の標高値が表示されます。湖をクリックすると、湖面の標高が一定であるため、同じ値 16.82 (メートル) が表示されるはずです。

  13. 湖の縁の周辺の、その他の位置をクリックします。

    結果は、クリックした場所に応じて変わります。建物をクリックした場合、値は、その場所の地面の標高を表します。

  14. [個別属性] ウィンドウを閉じて、[Study Area] ブックマークにズームします。

DEM のメタデータおよびレイヤー プロパティの表示

DEM はラスター データセットであり、言い換えれば、デジタル画像のようなセルまたはピクセルのグリッドです。ArcGIS の水文解析ツールを使用して DEM を解析し、ブルースポットを検出したり、それらのサイズと体積を計算したり、集中豪雨の際にブルースポットに水流を供給するエリアを描画することができます。

ゲントフテ市内のブルースポットの位置を調査するには、市の境界よりも広い範囲まで DEM を解析する必要があります。これは、一部のブルースポットとそれらのローカルな集水域が、隣接する自治体に部分的に存在する可能性があるためです。すべてのブルースポットと集水域を確実に正しく識別するために、ゲントフテ市の DEM は、5 キロメートルのバッファー ゾーンで拡大されています。

この DEM の特定のプロパティを学習するために、そのメタデータとレイヤー プロパティを調べることができます。

  1. [コンテンツ] ウィンドウで、[DEM] レイヤーの名前を右クリックして [データ] をポイントし、[アイテム説明の表示] を選択します。

    DEM のアイテム説明

    [説明] の見出しの下に、DEM の解像度が 1.6 メートルであり、垂直方向の精度が 0.05 メートルであることが記載されています。つまり、データセット内の各セルは 1.6 平方メートルの地面を表し、各セルの標高値の精度は 0.05 メートル以内です。この高解像度のデータは、LIDAR を使用して収集されました。

  2. アイテム説明を閉じます。
  3. [コンテンツ] ウィンドウで、[DEM] レイヤーの名前を右クリックして [プロパティ] を選択します。
  4. [レイヤー プロパティ] ダイアログ ボックスの [ソース] タブをクリックします。[空間参照] の見出しまで下にスクロールします。

    DEM 空間参照

    他のレッスンのデータと同様に、DEM データセットは、ETRS 1989 測地基準系 (デンマークで最も頻繁に使用される空間参照) に基づいて、ユニバーサル横メルカトル図法の座標系に投影変換されます。この空間参照の座標系は、モデルの入力データと出力データで使用されます。

  5. [レイヤー プロパティ] ダイアログ ボックスを閉じます。
  6. [標準] ツールバーの [保存] ボタンをクリックして、マップを保存します。

次回は、[ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] モデルを調べて実行します。ModelBuilder を使用した経験があり、水文解析ツールに習熟している場合、またはインストラクターとともにクラスルームで作業している場合は、「建物に対する洪水のリスク評価」に直接進むことをお勧めします。


ブルースポットおよび影響を受ける建物の検出

前回は、ゲントフテの分析範囲を調べました。このレッスンでは、[ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] ジオプロセシング モデルを調べて実行します。このモデルは、水文解析ツールを使用して DEM を解析し、ブルースポットを検出します。その後、ブルースポットの位置を既存の建物の位置と比較し、ブルースポットの内部または近隣に存在する建物を選択します。一般に、これらの建物は、集中豪雨の際に洪水になる危険性がより高い場所にあります。

ジオプロセシング モデルは、ワークフローとしてまとめられた入力データとツールのコレクションで、1 つの処理として実行されます。

モデルを開いて編集

モデルはツールボックスに保存されます。モデルは、編集するか、開くことによって操作できます。モデルを編集する場合、[ModelBuilder] ウィンドウを開きます。[ModelBuilder] ウィンドウでは、モデルを完全に操作できます。このウィンドウでは、モデルの作成、構成、表示、テスト、および実行を行うことができます。モデルを開くと、モデルをジオプロセシング ツールとして実行できるダイアログ ボックスが開きます。次に、モデルを [ModelBuilder] ウィンドウで操作します。

  1. 必要に応じて ArcMap を起動し、Gentofte マップ ドキュメントを開きます。
    ヒント:

    新しい ArcMap セッションを開始する場合、マップ ドキュメントは、[ArcMap - はじめに] ウィンドウに、最近使用したマップとして表示されることがあります。

  2. [カタログ] ウィンドウを開きます。必要に応じて、[Cloudburst] フォルダーと [BluespotModels_Metric] ツールボックスを展開します。
  3. [ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] モデルを右クリックして、[編集] を選択します。

    モデルの編集

    [ModelBuilder] ウィンドウが表示されます。モデル内のデータとツールは、接続されてワークフローを作成する、色付きの幾何学的形状で表されます。

    モデルの基本的な処理単位はプロセスです。プロセスは、入力データセット (青色) がツール (黄色) に接続され、さらにそれが出力データセット (緑色) に接続されたものです。入力モデル エレメントおよび出力モデル エレメントは変数です。これらのエレエレメントでは、プロパティを開いてパス名を変更できます。

  4. [ModelBuilder] ウィンドウ上部の [ウィンドウ] メニューをクリックし、[概観図] を選択します。

    [概観図] ウィンドウ

    [概観図] ウィンドウが開き、モデルのダイアグラム全体のどの部分が [ModelBuilder] ウィンドウに表示されているかを確認できます。[概観図] ウィンドウは、必要に応じて開いたままにしておくことも、閉じることもできます。

    概念的には、このモデルは、主に以下の 3 つのことを実行します。

    • DEM 上のブルースポットを検索します。
    • データが空間選択を行うのに適した形式になるように、検索結果および Buildings レイヤーを処理します。
    • ブルースポットの内部または近隣に存在するマップ上の建物を選択します。

    モデルの 3 つの部分

    各ツールの基本機能が、モデル上にラベリングされています。ワークフローの詳細については、モデルの概観図をご参照ください。

    ヒント:

    モデルのナビゲートには、[ModelBuilder] ウィンドウのスクロール バーまたは画面移動/ズーム ツールを使用できます。また、[概観図] ウィンドウで青色の枠をドラッグすることもできます。

モデル エレメント設定の確認

モデルを実行する前に、モデルの動作と出力に影響を与えるモデル エレメントの設定の一部を調べます。

  1. モデルの左側にある [DEM] 入力データ エレメントを右クリックし、[開く] を選択します。

    DEM を開く

    [DEM] ダイアログ ボックスに、ディスク上のデータセットのパスが表示されます。データを C:\ ドライブに展開している場合、パスは図に示されたパスと一致します。データを別の場所に展開している場合、パスは図に示されたパスとは異なります。

    DEM のパス
    ヒント:

    別の DEM を入力として使用するには、それをダイアログ ボックスから参照します。

  2. [キャンセル] をクリックして [DEM] ダイアログ ボックスを閉じます。

    [DEM] エレメントは、矢印で 2 つのツール ([サーフェスの平滑化 (Fill)] ツールおよび [サーフェスの平滑化 (Fill) (2)] ツール) に接続されています。これらは、同じツールの 2 つのインスタンスです (モデルでは、それらのインスタンスが一意の名前を持つ必要があります)。ツールの下のグレーのラベルは、ツールの機能を説明しています。

  3. [サーフェスの平滑化 (Fill)] ツールを右クリックして、[開く] を選択します。

    [サーフェスの平滑化 (Fill)] ダイアログ ボックス

    入力データセットは DEM です。出力データセット名は SmallSinksFilled です。出力パスを設定するには、インライン変数 %出力ワークスペース% (後述) を使用します。インライン変数を使用してパス名を 1 回定義するだけで、そのパス名をモデル内のすべての出力データセットに適用できます。出力パスを変更する場合、1 カ所の出力パスを変更するだけで済みます。

    モデルは、入力データ変数および出力データ変数に加えて、値の変数を持つこともできます。値の変数は、異なるデータを使用してモデルを実行する場合に変更できる、通常のツール パラメーターです。たとえば、[サーフェスの平滑化 (Fill)] ツールの [Z 制限] パラメーターは、特定の値ではなく、変数を使用して設定されます。[垂直方向の精度 (メートル)] 変数にどのような値を設定しても、ツールはその値を使用します。

  4. [キャンセル] をクリックして [サーフェスの平滑化 (Fill)] ダイアログ ボックスを閉じます。
  5. [出力ワークスペース] エレメントを右クリックして、[開く] を選択します。

    出力ワークスペース

    これは、モデル内のすべてのデータセットの出力パスを定義する変数です。この変数名 (%出力ワークスペース%) を明示的なパス名の代わりにどの場所で使用しても、出力場所は、その変数に格納されたパス名で置き換えられます。このパス名を変更すると、この変数を参照しているすべての出力データセットのパス名が変更されます。

  6. [出力ワークスペース] ダイアログ ボックスを閉じます。
  7. [垂直方向の精度 (メートル)] エレメントを開きます。

    垂直方向の精度

    これは、[サーフェスの平滑化 (Fill)] ツールの Z 制限値を定義する変数です。この変数は、レッスン 2 の DEM アイテムの説明で示されたように、Gentofte DEM に適した値である 0.05 メートルに設定されています。

  8. [垂直方向の精度 (メートル)] ダイアログボックスを閉じます。

    モデルをジオプロセシング ツールとして実行する場合、変数をモデル パラメーター (大文字の P で識別されます) として指定します。

    パラメーター

    モデルがジオプロセシング ツールとして実行されると、これらの変数がツール ダイアログ ボックスで公開されます。

  9. [カタログ] ウィンドウが見えるように、[ModelBuilder] ウィンドウを移動します。
  10. [ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] モデルを右クリックして [開く] を選択します。

    4 つのパラメーターを含む [ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] ツールのダイアログ ボックスが開きます。それらのパラメーターが、大文字の P のマークが付いたモデル内の変数と一致していることに注目してください。これらは、ジオプロセシング ツールとしてモデルを実行する前にユーザーが変更できる値です。

  11. [キャンセル] をクリックしてツールを閉じます。
  12. モデル ウィンドウの [DEM] エレメントを右クリックします。

    モデル パラメーター

    エレメントは、[モデル パラメーター] メニュー コマンドを切り替えることによって、モデル パラメーターとして設定されます。

  13. モデルの空白スペースをクリックして、メニューを閉じます。
  14. [満水になった小さい窪地] エレメントを開きます。

    小さい窪地

    出力データ変数は、パス名とファイル名を保持します。

  15. [満水になった小さい窪地] ダイアログ ボックスを閉じます。
    ヒント:

    [選択] をツールを使用して、それらの上にポインターを置くことで、ツールと変数の値を表示することもできます。

  16. [満水になった小さい窪地] エレメントを右クリックします。

    小さい窪地のメニュー

    デフォルトでは、モデルの最後の出力を除く出力データセットは、中間としてフラグが設定されます。中間データは、モデルの結果が得られた後に不要になるデータです。モデルをジオプロセシング ツールとして実行した場合、中間データは自動的に削除されます。モデルを [ModelBuilder] ウィンドウから実行した場合は、中間データを [モデル] メニューから削除できます。

    [満水になった小さい窪地] データセットは、表示に追加されるようにフラグが設定されていません。表示に追加されるようにフラグが設定された場合、モデルの実行が終了したときに、ArcMap の [コンテンツ] ウィンドウにレイヤーが追加されます。

  17. 必要に応じて、モデルの空白スペースをクリックしてメニューを閉じます。

モデル環境設定の確認

個別のエレメントの設定とは別に、モデル全体に適用される環境設定があります。

  1. [ModelBuilder] ウィンドウの上部にある [モデル] メニューをクリックし、[モデル プロパティ] を選択します。
  2. [ブルースポットの識別 (Identify Bluespots) プロパティ] ダイアログ ボックスの [環境] タブをクリックします。

    [出力座標]、[処理範囲]、および [ラスター解析] に対して環境設定が適用されています。

  3. [値] ボタンをクリックします。
  4. [環境設定] ダイアログ ボックスで [出力座標] の見出しをクリックして展開します。

    出力座標

    モデルによって作成された出力データセットは、入力データセットと同じ座標系に投影変換されます。Gentofte データの場合、座標系は、ETRS 1989 測地基準系に基づく UTM ゾーン 32 北になります。

    ヒント:

    モデルで独自のデータを使用する場合、環境設定を行う良い方法は、適切な値を含むレイヤーまたはデータセットを指定することです。たとえば、[出力座標系] の矢印をクリックすると、開いている ArcMap ドキュメント内のレイヤーのリストが表示されます。これらのレイヤーのいずれかを選択すると、そのレイヤーの座標系が環境設定に適用されます (ディスク上のデータセットを参照することもできます)。同様に、リストからレイヤー、データセット、またはモデル変数を選択して、その他の環境設定を行うこともできます。

  5. [出力座標] の見出しをもう一度クリックして折りたたみます。
  6. [処理範囲] の見出しをクリックして展開します。

    処理範囲

    モデルによって作成されたすべてのラスター データセットには、ボックス内に表示される境界座標が含まれます (これらは、DEM データセットの境界座標です)。また、それらの左下隅は、DEM の左下隅にスナップされ (つまり、揃えられ) ます。

  7. [処理範囲] の見出しをもう一度クリックして折りたたみます
  8. [ラスター解析] の見出しをクリックして展開します。

    ラスター解析

    モデルによって作成されたラスター データセットは、1.6 メートルのセル サイズを持ちます。この設定を [処理範囲] 設定とともに使用すると、モデル内のすべてのラスター データセットが整列し、空間的に一致するセルを使用することを保証します。これは、複数のラスターを含む計算にとって重要です。

    別の入力データを使用してこのモデルを実効する前に、データに合わせて環境設定を適切に変更する必要があります。

  9. [環境設定] ダイアログ ボックスおよび [ブルースポットの識別 (Identify Bluespots) プロパティ] ダイアログ ボックスを閉じます。

モデルの実行

ここで、モデルを実行することができます。モデルの実行が終了すると、2 つのレイヤーが、開かれている Gentofte マップ ドキュメントに追加されます。1 つはブルースポットのレイヤー、もう 1 つはブルースポットの内部または近隣に存在する建物のレイヤーです。

  1. [ModelBuilder] ツールバーの [すべてのモデルを整合チェック] ボタンをクリックします。

    [整合チェック] ボタン

    モデルの整合チェックは、すべてのプロセスを実行する準備ができているかどうかを確認します。

    モデルのプロセス (および、拡大すればモデル全体) は、4 つの状態のいずれかになります。プロセスを実行する準備ができている場合、そのエレメントは矢印で接続され、塗りつぶし色で塗りつぶされます。プロセスを実行する準備ができていない場合、ツール エレメントと出力エレメントは白色になります。これは、ツール パラメーターなどの必要な情報の一部が欠落していることを意味します。プロセスの実行中、ツール エレメントは赤色になります。プロセスの実行が完了すると、プロセスのツールと出力エレメントは影が付きます (モデルがすでに実行されている場合、整合チェックは、モデルを再実行するための準備をします)。

  2. [実行] ボタンをクリックします。

    [実行] ボタン

    モデルが実行されている間、ウィンドウに進行状況が表示されます。現在実行中のツールは、[ModelBuilder] ウィンドウ内で赤色に変わります ([サーフェスの平滑化 (Fill)] の処理には数分かかります)。

    プロセスの状態

    モデルの実行が完了すると、進行状況ウィンドウにメッセージが表示されます。

    [進行状況] ウィンドウ

  3. [進行状況] ウィンドウを閉じます。

    [ModelBuilder] ウィンドウで、プロセスに影が付き、実行が完了していることを示します。

  4. [ModelBuilder] ツールバーの [保存] ボタンをクリックします。[ModelBuilder] ウィンドウを最小化するか、[ArcMap] ウィンドウから移動して切り離します。
  5. 必要に応じて、[カタログ] ウィンドウを開き、[Cloudburst] フォルダーを展開します。
  6. [Outputs_Bluespots.gdb] を右クリックし、[更新] を選択します。必要に応じて、ジオデータベースを展開します。

    Outputs_Bluespots ジオデータベース

    出力データは、モデルの [出力ワークスペース] 変数の指定に従って、Outputs_Bluespots ジオデータベースに書き込まれています。2 つの重要なデータセットは、Bluespots および BuildingsTouchBS (Buildings Touching Bluespots) です。これらは、ゲントフテ内のブルースポットが存在する場所、およびそれらの内部または近隣にある建物を表示します。

    ArcMap の [コンテンツ] ウィンドウの上部に、2 つの新しいレイヤー (Buildings Touching Bluespots および Bluespots) が表示されます。

    [コンテンツ] ウィンドウ

  7. 2 つの新しいレイヤーがマップに自動的に追加されない場合、[Bluespots] および [BuildingsTouchBS][Outputs_Bluespots] ジオデータベースからマップにドラッグします。[BuildingsTouchBS] レイヤーの名前を「Buildings Touching Bluespots」に変更します。

結果のマッピング

Buildings Touching Bluespots 属性テーブルを調べ、分析範囲内の危険性が高い建物の数を確認します。ブルースポットに接している建物に注目を集めるために、マップ レイヤーをシンボル表示します。お好みの方法でマップをシンボル表示できます。参考として以下の手順を紹介します。背景に気が取られるのを最小限に抑えるために、[キャンバス (ダーク グレー)] ベースマップが使用されていますが、エリアを詳細に調べる場合は、画像ベースマップを使用することをお勧めします。

  1. 必要に応じて、ArcMap で [分析範囲] ブックマークにズームします。
  2. [コンテンツ] ウィンドウ[Buildings Touching Bluespots] レイヤーを右クリックし、[属性テーブルを開く] を選択します。

    テーブル

    12,000 を超える建物が、ブルースポットの内部または近隣に存在しています。Buildings レイヤーの属性テーブルを開くと、ゲントフテ内に約 31,000 の建物があることがわかります。つまり、建物の約 40% は、集中豪雨の際にある程度の洪水の危険があるということです。

  3. 属性テーブルを閉じます。
  4. [コンテンツ] ウィンドウの下部にある [Basemap] レイヤーを右クリックして、[削除] を選択します。
  5. [DEM] レイヤーも同様に削除します。
  6. [Buildings] レイヤーは、オフにしますが、削除しません。
  7. [標準] ツールバーの [データの追加] ボタンの横にある矢印をクリックし、[ベースマップの追加] を選択します。

    ベースマップの追加

  8. [ベースマップの追加] ウィンドウで、[キャンバス (ダーク グレー)] ベースマップをクリックし、[追加] をクリックします。[地理座標系] の警告を閉じます。
  9. [コンテンツ] ウィンドウ[Buildings Touching Bluespots] レイヤーのシンボルをクリックして、[シンボル選択] を開きます。
  10. [シンボル選択] で、[塗りつぶし色][ユッカ イエロー] に変更し、[アウトライン幅]0 に変更します。[OK] をクリックします。

    ユッカ イエロー

  11. [Bluespots] レイヤーについては、[塗りつぶし色][スチール ブルー] に変更し、[アウトライン幅]0 に変更します。[OK] をクリックします。

    スチール ブルー

  12. [Municipal Boundary] レイヤーの [シンボル選択] を開いて、[シンボルの編集] をクリックします。
  13. [シンボル プロパティ エディター] ダイアログ ボックスの [アウトライン] をクリックします。
  14. [シンボル選択] で、シンボルのリストを下にスクロールし、[境界 市] のシンボルをクリックします。

    境界線

  15. [色] を [グレー 10%] に変更し、[幅]1.5 に変更します。[OK] をクリックします。
  16. [シンボル プロパティ エディター][OK] をクリックし、[シンボル選択][OK] をクリックします。
  17. [コンテンツ] ウィンドウで、[Municipal Boundary] レイヤーを [Buildings Touching Bluespots] レイヤーの上にドラッグします。

    最終的な [コンテンツ] ウィンドウ

  18. メイン メニューの [ファイル] をクリックして、[名前を付けて保存] を選択します。
  19. [Cloudburst] フォルダー → [Maps and Layers] フォルダーを参照します。マップを「Gentofte Bluespots」として保存します。

    最終的なマップ

  20. [ModelBuilder] ウィンドウを復元し、モデルを保存します。
  21. [ModelBuilder] ウィンドウを閉じます。

マップを眺めると、ブルースポットに接している建物は、特定のエリアに集中しているのではなく、ゲントフテ市全体に存在していることがわかります。洪水は、建物だけでなく、その他の種類のインフラにも影響を与える場合があることに注意してください。ResourceData ジオデータベースから、道路や鉄道などのいくつかのデータセットを追加し、それらがブルースポットに対してどの位置にあるかを調べることをお勧めします。

[ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] モデルは、建物への危険度を評価しません。しかし、すべてのブルースポットが同じ危険性をもたらすわけではありません。集中豪雨の際にブルースポットが一杯になってあふれまでの速さは、ブルースポットの深さ、ブルースポットの面積、貯水池のサイズ、またはブルースポットに雨水をもたらすローカルな集水域によって変わります。

次に、各ブルースポットがいっぱいになって流出点に達する降水量を推定する、さらに洗練されたモデルを実行します。この情報は、建物への危険性をより適切に推定するのに役立ちます。

異なる入力データセットを使ってモデルを実行する場合は、提供されているモデルの中から適切なモデルを選択してください。両方のモデルのバージョンは、米国標準単位で使用するために作成されています。さらに、建物のフットプリントが入手できないシナリオ用のバージョンも作成されています。

モデルを実行する前に完了する必要のある基本的な手順を以下に示します。

  • 独自のデータセットが入力レイヤーになるように指定します。
  • 出力ワークスペース変数を設定します。
  • 垂直方向の精度変数を設定します (垂直方向の精度を取得するには、使用する DEM のメタデータを確認する必要があり、場合によっては、どのようにしてソース データが作成されたかをさらに調査する必要があります)。
  • モデル環境設定を調べて、出力座標、処理範囲、ラスター解析の各設定が適切であることを確認します。

建物に対する洪水のリスクの評価

前のレッスンでは、ブルースポットを識別するためのモデルを実行しました。このモデルは、DEM 上のブルースポットを識別するだけではなく、集中豪雨時に各ブルースポットが満水になるまでに必要とされる降雨量を計算します。この知識を利用すると、洪水のリスクをより適正に評価できます。すぐに満水になるブルースポット内に位置する建物は、ゆっくりと満水になるブルースポット内の建物と比べてはるかに高いリスクにさらされるからです。

このモデルは、地形内の窪地 (ブルースポット) ごとに集水池または地域の集水域 (そのブルースポットのみに水流を供給するエリア) が存在するという、水文解析の概念に基づいています。ブルースポットの体積とその集水域の面積を計算することで、ブルースポットを埋めるのに必要とされる降水量を求めます。つまり、体積を面積で除算します。たとえば、ブルースポットの体積が 500 m3、その集水域が 10,000 m2 とすると、ブルースポットを流出点まで埋めるのに必要とされる降水量は 500 m3 / 10,000 m2 = 0.05 m = 50 mm です。

実際には、完全な流出条件は存在しないため、集水域に降る降水量の全部がブルースポットに流れ込むわけではありません。ただし、集中豪雨時の流出条件は、極めて完全に近くなります。水収支式「P = I + E + Ao + Au + Q」は、降水量 (P) が、植生による遮断量 (I)、蒸散量 (E)、地表流出量 (Ao)、土壌浸透量と下水道処理量 (Au)、地域の貯水池の貯留量 (Q) をすべて足したものに等しいことを表します。このコンテキストでは、地域の貯水池がブルースポットを意味します。

集中豪雨時には、遮断量、蒸散量、土壌浸透量は 0 と見なすことができます。デンマークの住宅地の下水道の最大処理量は、1 日あたり約 40 ミリメートルの降雨量です。関心の対象を 1 時間の降水量に絞り、1 日あたりの処理量を実際には 1 時間以内に処理できると大胆に仮定すれば、Au の値を 40 に設定できます。余剰の流出量 (Ao) は、ブルースポットが満水になるまで水収支式の因数にはなりません。したがって、満水値を計算するために、数式を「P = 40 + Q」、すなわち「Q = P – 40 ミリメートル/時間」に簡略化できます。1 時間に 90 ミリメートルの雨が降った場合、下水道が 40 ミリメートルを運び去り、その一方で、50 ミリメートルがブルースポットに流れ込んで、ブルースポットの一部または全部が埋められます。ブルースポットが流出点まで埋められると、流出量 (Ao) が下流の次の窪地、湖、川、海に流入します。

このモデルはリスクに対するより適正な評価を提供しますが、依然として多くの要因が除外されたままです。たとえば、下流のブルースポットへの余剰流出量の供給は考慮されません。また、ブルースポット内の建物のベース標高も考慮されません。たとえば、建物がブルースポットの底面近くにある場合、その建物は、ブルースポットが満水になる前に洪水になる可能性があります。さらに、建物に地下室があるかどうか、または建物の基礎が高いかどうかなどの構造上の要因も考慮されません。

モデルを開いて編集

モデルを [ModelBuilder] ウィンドウで操作します。

  1. 必要に応じて、ArcMap を起動し、(Gentofte Bluespots ではなく) Gentofte マップ ドキュメントを開きます。
  2. カタログ ウィンドウを開きます。必要に応じて、[Cloudburst] フォルダーと [BluespotModels_Metric] ツールボックスを展開します。
  3. [ブルースポット満水値の識別 (Identify Bluespot Fill Up Values)] モデルを右クリックして [編集] を選択します。

    モデルが [ModelBuilder] ウィンドウに開きます。モデルは一部しか表示されません。

  4. [ModelBuilder] ウィンドウ上部の [ウィンドウ] メニューをクリックし、[概観図] を選択します。

    [概観図] ウィンドウが開き、モデルのダイアグラム全体のどの部分が [ModelBuilder] ウィンドウに表示されているかを確認できます。[概観図] ウィンドウは、必要に応じて開いたままにしておくことも、閉じることもできます。

    概要

    このモデルは、[ブルースポットの識別 (Identify Bluespots)] モデルよりも多くのことを実施するため、当然ながら所要時間が長くなります。モデルでは、ブルースポットを検索した後、ブルースポットの容量と集水域を計算します。次に、この情報を使用して、それぞれのブルースポットを埋めるのに必要とされる降水量を求めます。このモデルのプロセスの多くはテーブルの操作 (フィールドの追加、フィールドの結合、フィールド値の計算) であることがわかると、このモデルがそれほど複雑ではないと感じられるでしょう。

    各ツールの基本機能が、モデル上にラベリングされています。ワークフローの詳細な内容については、「モデルの概要」をご参照ください。

    ヒント:

    モデルのナビゲートには、[ModelBuilder] ウィンドウのスクロール バーまたは画面移動/ズーム ツールを使用できます。また、[概観図] ウィンドウで青色の枠をドラッグすることもできます。

モデルの実行

レッスンのこの段階では、受講者の皆さまが ModelBuilder の機能を十分に理解していることを前提とします。変数、インライン変数置換、モデル パラメーター、モデル環境設定などがよくわからない場合は、前のレッスンをご参照ください。

  1. [ModelBuilder] ツールバーの [すべてのモデルを整合チェック] ボタンをクリックします。

    [整合チェック] ボタン

  2. [実行] ボタンをクリックします。

    [実行] ボタン

    モデルが実行されている間、ウィンドウに進行状況が表示されます。モデルが完了すると、[進行状況] ウィンドウにメッセージが表示されます。

    [進行状況] ウィンドウ

  3. [進行状況] ウィンドウを閉じます。
  4. [ModelBuilder] ツールバーの [保存] ボタンをクリックします。[ModelBuilder] ウィンドウを最小化するか、[ArcMap] ウィンドウから移動して切り離します。
  5. 必要に応じて、[カタログ] ウィンドウを開き、[Cloudburst] フォルダーを展開します。

    出力データは、Outputs_BluespotsFillUp ジオデータベースに書き込まれています。

  6. [Outputs_BluespotsFillUp.gdb] を右クリックして [更新] を選択します。必要に応じて、ジオデータベースを展開します。

    出力

    ArcMap では、3 つの新しいレイヤーも Gentofte マップ ドキュメントに追加されました。これらのレイヤーは、ブルースポットのレイヤー、ブルースポットに接触している建物のレイヤー、建物に接触しているブルースポットのレイヤーです。

    [コンテンツ] ウィンドウ

  7. 新しいレイヤーがマップに自動で追加されていない場合は、それらのレイヤーを Outputs_BluespotsFillUp ジオデータベースから追加します。データセット名は次のとおりです。
    • BSPolyDissolved
    • BuildingsTouchBS
    • BSTouchBuildings

結果のマッピング

ブルースポットの満水値を調べ、これらの値に基づいて Bluespots Touching Buildings レイヤーをシンボル表示します。より速く満水になるブルースポットほど、リスクが高レベルであることをシンボルによって表します。レッスンのこの段階では、受講者の皆さまが ArcMap の使用方法を十分に理解していることを前提とします。

  1. 必要に応じて、ArcMap で [分析範囲] ブックマークにズームします。
  2. Bluespots Touching Buildings レイヤーの属性テーブルを開きます。

    テーブル

    [Volume] フィールドには、各ブルースポットの体積 (立方メートル単位) が格納されています。[FillUp] フィールドには、集中豪雨時に各ブルースポットを埋めるのに必要とされる降雨量 (ミリメートル単位) が格納されます。

  3. [FillUp] フィールドを昇順に並べ替えます。

    一般に、満水値が小さいほど、リスクが大きくなります。ただし、満水値が極端に小さいブルースポットは、通常、底が浅い小さなエリアです。このようなブルースポットは、下流にある次のブルースポットへとあまりに速く水があふれ出す可能性があるため、なかなか目に留まりません。

  4. [FillUp] フィールドの統計情報を表示します。

    統計

    [統計情報] ウィンドウには、最小値と最大値が表示されます。[度数分布] チャートでは、ほぼすべての満水値が範囲の下限にあることを確認できます。

  5. [統計情報] ウィンドウを閉じて、属性テーブルを閉じます。
  6. [コンテンツ] ウィンドウで、[Basemap][DEM][Buildings][Bluespots] の各レイヤーを削除します。
  7. [Buildings Touching Bluespots] レイヤーはオフにしますが、マップ内にそのまま残しておきます。
  8. [キャンバス (ライト グレー)] ベースマップを追加します。[地理座標系] の警告を閉じます。
  9. [Bluespots Touching Buildings] レイヤーの上に [Municipal Boundary] レイヤーをドラッグします。
  10. [Municipal Boundary] レイヤーの [シンボル選択] を開いて、[シンボルの編集] をクリックします。
  11. シンボルのアウトラインを [境界 市] に変更します。シンボルの色を [グレー 60%] に変更し、幅を「1.5」にします。

    新しいシンボル

    これらのブルースポット満水値は、すべての事実を物語っているわけではありません。前に述べたように、下水道は、あふれ出た水のうちの相当量を運び去ります。このモデルでは、下水道が 1 時間に 40 ミリメートルを処理できると仮定していますが、この仮定はあまりに大胆すぎると考えられます。独自のデータを使用してこのモデルを実行する場合は、この要素について、お住まいの地域の下水道の処理容量を考慮に入れて (該当する場合)、信頼できる値を推算してください。

    備考:

    40 ミリメートルという値は最大効率を表しています。下水道の一部では、この値が達成不可能である可能性があります。さらに、前から存在する妨害物、または集中豪雨時の土石流によってできた妨害物によって下水道の処理能力が低下している可能性もあります。

    Bluespots Touching Buildings レイヤーをシンボル表示するには、レイヤー ファイルからシンボルをインポートします。

  12. [Bluespots Touching Buildings] レイヤーのレイヤー プロパティを開きます。[シンボル] タブで [インポート] をクリックします。
  13. [シンボルのインポート] ダイアログ ボックスで、[Cloudburst][Maps and Layers] フォルダーの順に参照します。[Adjusted Fill Up Values.lyr] を追加します。
  14. [シンボルのインポート] ダイアログ ボックスで、[OK] をクリックします。
  15. [インポート シンボルのマッチング] ダイアログ ボックスで、[値] フィールドが [FillUp] に設定されていることを確認して [OK] をクリックします。

    シンボルのインポート

    [レイヤー プロパティ] ダイアログ ボックスの [シンボル] タブでは、ラベルの値が、属性テーブルの実際の範囲値よりも 40 ミリメートル高くなっていることに注目してください。

    ブルースポットのシンボル

    満水値のラベルは、下水道の処理容量に相当する 40 ミリメートルで調整されています (すなわち、[FillUp] フィールドの値 0 ~ 20 mm は、シンボルが適用された場合、40 ~ 60 mm というラベルが付けられます)。また、Bluespots Touching Buildings レイヤーにフィールドを追加して、そのフィールド値を [FillUp] + 40 として計算することもできます。

  16. [レイヤー プロパティ] ダイアログ ボックスの [OK] をクリックします。

    ブルースポットのリスク

    2011 年 7 月にコペンハーゲンで発生した当然の豪雨では、1 時間半内に 136 ミリメートルの雨が降りました。これは、1 時間あたり約 90 ミリメートルに相当します。同程度の気象事象が再度発生した場合は、リスクが最高レベルの 2 つまたは 3 つのカテゴリ (赤色、暗いオレンジ色、オレンジ色) に属するブルースポットが満水になります。

  17. [Buildings Touching Bluespots] レイヤーを [Bluespots Touching Buildings] レイヤーの上にドラッグし、オンにします。
  18. シンボルのアウトライン幅を 0 に変更します。デフォルトの塗りつぶし色を使用するか、別の色を選択します。
  19. マップのさまざまな場所を拡大表示して、建物とブルースポットを比較します。

    建物 (複数)

    洪水の被害を受けやすいように見える地域がいくつか表示されます。また、建物は存在しているが、ブルースポットがはっきりと目に見えない地域も表示されます。それらの場所には実際にはブルースポットが存在していますが、調整後に満水値が 140 ミリメートルを超えるため、それらのブルースポットはシンボル表示されていません。集中豪雨が起きた際にも、これらのブルースポットで氾濫が起きる可能性はほとんどないからです。

    備考:

    計算ではすべてのブルースポットが空であると仮定していますが、これが常に当てはまるわけではありません。ブルースポットの中には、ゲントフテ湖のような永久的な水域があります。

  20. [分析範囲] ブックマークにズームします。
  21. [Cloudburst][Maps and Layers] フォルダーの順に開いて、マップを「Gentofte Bluespots Fill Up」という名前で保存します。

リスク レベルが異なるブルースポットに接触している建物の数を求めるために、さらに解析を実行することもできます。たとえば、Bluespots Touching Buildings レイヤーに対して属性クエリ "FillUp >= 0 AND FillUp <= 20" を使用して、最高リスクのカテゴリに属するブルースポットを選択できます。その後、[空間検索] を使用して、選択したブルースポットのセットと交差する建物を選択することができます。

また、Watersheds レイヤーを追加して、ブルースポットと、それらのブルースポットに水流を供給するエリアとの関係を調べることもできます。Watersheds レイヤーをシンボル表示するには、不連続カラー レンダリングを使用することをお勧めします。

集中豪雨は、インフラ設備の低位部分と建物に影響を及ぼします。このモデルはインフラ設備を入力として使用しませんが、道路や線路のレイヤーを簡単にマップに追加できます。道路と線路のフィーチャクラスは ResourceData ジオデータベースに含まれています。

洪水になった道路
2014 年 8 月の集中豪雨後に洪水になったコペンハーゲンの道路 画像 © Johanna Sørensen.

このモデルは、テレイン サーフェスの簡単な調査と建物の位置を基準にしているため、世界的規模で適用することができます。DEM が信頼性の高いフロー方向サーフェスを生成するという前提が根底にあります。この前提の根拠は、DEM の解像度が高いほどはっきりします。

異なる入力データセットを使ってモデルを実行する場合は、提供されているモデルの中から適切なモデルを選択してください。米国の標準単位で使用するためのバージョンが作成されています。さらに、建物のフットプリントが入手できないシナリオ用のバージョンも作成されています。

独自のデータによってこのモデルを使用する際の必須の基本手順を次に示します。

  • 独自のデータセットが入力レイヤーになるように指定します。
  • 出力ワークスペース変数を設定します。
  • 垂直方向の精度変数を設定します (垂直方向の精度を取得するには、使用する DEM のメタデータを確認する必要があり、場合によっては、どのようにしてソース データが作成されたかをさらに調査する必要があります)。
  • モデル環境設定を調べて、出力座標、処理範囲、ラスター解析の各設定が適切であることを確認します。

[ブルースポット満水値の識別 (Identify Bluespot Fill Up Values)] モデルは、地形の窪地 (ブルースポット) を識別し、集中豪雨時における建物の洪水リスクを定量的に評価するためのワークフローを実施します。

このモデルでは、ArcGIS ジオプロセシング ツールを使用して、ブルースポットと地域の集水域を生成します。ブルースポットの体積を集水域の面積で除算することで、満水値を計算します。また、あふれ出した水のうちどれだけの量を下水道で処理できるかについての仮定も行われます。これらの値と仮定は、ある程度の注意を払って考察する必要があります。

モデルの結果は、個々の建物について危機的な洪水リスク閾値を識別するのに十分ですか? 答えは、はいでもあり、いいえでもあります。建物の属性がない場合、建物の危機的な洪水位はそのベース標高にあると仮定して、最悪のシナリオを設定することが最善策です。実際に、これは、多くの住宅、倉庫、スーパーマーケット、オフィスビルに当てはまります。ただし、これが当てはまらない建物もあります。実際の流入水位は、基礎が高い建物や、地表よりも上の位置に建てられている建物の場合、仮定されたよりも高い場合があります。反対に、地下室がある建物の場合、実際の流入水位が仮定よりも低い場合があります (Danish Building and Dwelling Register (デンマークの建物と住居の登記簿) には建物に地下室があるかどうかに関する情報が記載されていますが、この情報は [建物 (複数)] 属性テーブルには含まれていません。また、通常、このテーブルには、建物の基準高度に関する情報はありません)。建物の属性をモデルに組み込むと、モデルの結果が改善されます。

もう 1 つの不確実性の要素は、建物の流入水位が、ブルースポット内でのその建物の正確な垂直方向の位置によって決まることです。他の条件が同じならば、ブルースポットの底面または底面近くにある建物は、ブルースポットの斜面にあるより高い位置の建物よりも速く洪水になります。

このレッスンの冒頭で述べたように、完全な流出条件が実生活で存在することはまれですが、集中豪雨時には、基本的な水文解析的前提が緩和されることがあります。標準土壌浸透量は無意味になり、下水道は極めて短時間のうちに最大処理容量に達するおそれがあります。このような事態が起きると、降雨が、高速の地表流となり、ブルースポットの一部または全部を水没させます (ここで提供されるモデルは、排水溝や排水管、その他の水路を経由する地表面流出の分岐を考慮しないことに注意してください)。

[ブルースポット満水値の識別 (Identify Bluespot Fill Up Values)] モデルの機能強化については、いくらか検討の余地があります。サーフェスの堅さ、特に地域の集水域の大半が舗装されているかどうかに関する調査を行うと、個々の建物に関するリスク評価を改善できます (サーフェスの舗装部分が大きいほど、流出速度が速くなります)。ゲントフテ調査エリアの固体表面の割合を示すラスター データセットは、ResourceData ジオデータベースに格納されています。集水域内の斜面と流長の調査も、どの建物が集中豪雨時に最初に被害を受けるかを特定するのに適しています。

その他のレッスンについては、「Learn ArcGIS Lesson ギャラリー」をご参照ください。