対話形式のアプリの探索
マップとアプリの比較
マップにはそれぞれ異なる目的があり、そのため、メッセージを伝える上での課題も異なります。 マップの目的に合わせたユーザー エクスペリエンスを提供するために、Web マップをアプリケーション (アプリ) 内に埋め込むことができます。 アプリはそのマップとユーザーのニーズに特化したコントロールと情報を提供できます。
以下、Web マップと、その Web マップ用に作成されたアプリを見ていきます。
- Wildfire Aware マップを開きます。
このマップは Esri の ArcGIS Living Atlas of the World チームによって作成されました。 このマップには、現在発生している山火事、天気、以前に焼失したエリア、その他多くの情報が含まれています。 また、マップの周囲に多くのコントロールがありますが、これらはマップ作成者か、少なくとも GIS に詳しいユーザー向けのものです。 このマップの対象ユーザーである一般市民にはあまり役に立つものではありません。
- Wildfire Aware アプリに移動します。
先ほどと同じマップですがアプリ内に埋め込まれており、すべての情報がよりわかりやすく提示されています。 配置されているコントロールは、専門知識を持たないユーザーでも容易に確認して理解できるマップになるよう設計されています。 これから、このアプリの機能の一部を詳しく見ていきます。
デフォルトでは、各インシデントを担当した隊員の数の順に山火事が並べ替えられています。 これを焼失面積の順に並べ替えます。
- サイド パネルで、[Size] タブをクリックします。
火災が面積の大きい順に一覧表示されます。
- リストの一番上の火災名をクリックします。
注意:
マップ データは常に更新されるため、現在のリストの一番上にある火災はこのチュートリアルの画像で示す火災とは異なります。 表示される火災の面積が画像とは大きく異なっている可能性もあります。
マップ上で、焼失面積が最大の火災発生場所が拡大表示されます。 選択した火災と近隣の他の火災がマップ上でラベル付きで表示されます。 火災の境界もマップ上で透過の赤色で表示されます。
また、サイド パネルが更新され、選択した山火事に関する詳細情報 (発生日時、焼失面積、火災現場の現在の天気など) が表示されます。
- マップの左下隅にある [Map Layers] ボタンをクリックします。
対話形式の凡例が表示されます。 凡例項目の一部は使用できません。
- マップを縮小表示します。
使用できる凡例項目の数が増えます。 このアプリでは、レイヤーが適切な縮尺でしか表示されないよう、レイヤーが制限されています。 この仕組みにより、多くの種類のデータが含まれている場合でもマップが情報過多にならないようにしています。
- 凡例で [Fire burned areas] のチェックボックスをオンにします。
グレーと黒色の地域がマップ上に表示され、現在の火災と過去の焼失エリアが重なる地域を確認できるようになります。
このアプリによりマップ情報の探索や調査が容易になります。 たとえば、火災を異なる基準で並べ替える、レイヤーのオン/オフを切り替えるといった対話的なマップ操作手段が得られます。 使用できるコントロールは Map Viewer よりも少ないですが、このマップの目的に特化して絞り込まれたコントロールです。 Map Viewer のコントロールはマップの作成者を対象にしています。 このアプリのコントロールはマップの利用者を対象にしています。
- 凡例で [Fire burned areas] のチェックボックスをオフにします。
注意:
アプリによる Web マップの拡張について他の例を確認するには、Census Self-Response Participation and Voter Turnout の マップとアプリをご参照ください。 この例のアプリでは、マップの横にチャートが表示されます。
アプリは、マップのメッセージや対象ユーザーに合わせてコントロールやコンテキスト情報を絞り込むことによって、より明確なユーザー エクスペリエンスを Web マップにもたらします。 Web マップを一般公開している場合は、アプリ内への埋め込みを検討することをお勧めします。
Wildfire Aware アプリは ArcGIS API for JavaScript を使用して作成されましたが、ArcGIS Instant Apps、ArcGIS Dashboards、ArcGIS StoryMaps、または ArcGIS Experience Builder を使用すれば、コードを一切記述することなくアプリを作成できます。 独自アプリの作成方法の詳細については、「アプリの作成」のチュートリアルをご利用ください。
多様なデータ ソースの探索
Wildfire Aware アプリの目標は、公式の地図に取って代わることでも避難情報を提供することでもなく、山火事や、その影響が及ぶエリアについて広く最新情報を提供することでした。 アプリの開発者は、山火事データや提供可能な情報を念頭に置いてアプリを設計するのではなく、想定されるユーザーの疑問点を念頭に置いてアプリを設計しました。たとえば以下のような疑問点です。
- 火災はどこで、どの程度の規模で発生しているか?
- このエリアで過去に火災が発生したことはあるか?
- 火災発生地域の天気は?
- 近隣に住民はいるか?また、町はあるか?
- このエリアにはどのような生態系や植生が見られるか?
- どのような環境影響が考えられるか?
これらの疑問点に答えるために、現在の山火事の位置以外のデータが必要になりました。 次に、疑問点に答えるために、アプリで多様なソースからデータを合成する方法を確認します。
- マップの右上隅にある [デフォルト マップ ビュー] ボタンをクリックします。
マップが縮小表示され、米国全土が表示されます。
- 凡例で [Air Quality today] レイヤーをオンにします。
大気の状態が悪いエリアがマップ上に表示されます。
この情報は山火事データには含まれていませんが、この山火事のストーリーとの関連性が高い情報です。火災発生地域の遠方にいる住民でも、煙による大気汚染の影響を受ける可能性があるからです。 対話形式のマップでは、ユーザーが必要に応じてレイヤーのオン/オフを切り替えることができるため、このような関連性の高い情報レイヤーを提供できます。
- マップ上で、いずれかの炎のシンボルをクリックします。
サイド パネルが更新され、選択した火災の詳細が表示されます。
- サイド パネルで下にスクロールします。
火災に関する情報の他に、このアプリでは、火災境界内の天気、人口、住宅、生態系に関する情報も表示されます。
注意:
境界のない火災を選択した場合は、火災を中心とした半径 2 マイルのエリアの集計情報が表示されます。このエリアはマップ上で黄色の点線の円で示されます。
- サイド パネルの情報を詳しく確認します。
この情報は複数のデータ ソースから取得されています。 このアプリがない頃は、これらすべての情報を探すために多くのソースを調査する必要があったでしょう。
このアプリでは、ユーザーが検索して異なるマップ間で比較する必要のないように、多くのソースから関連情報が集計されています。
- パネルの最上部にある情報ボタンをクリックします。
アプリに関する情報を示すウィンドウが表示されます。
- ウィンドウの下部にある [Sources] 見出しまでスクロールします。
このアプリで参照できる情報は、アメリカ国立気象局、アメリカ国勢調査局、NatureServe などのソースから取得した 22 のデータ レイヤーから合成されています。
- [Source] リストのいずれかのリンクをクリックします。
その Web レイヤーのアイテム ページが表示されます。 すべてのソース データ レイヤーは ArcGIS Living Atlas で個別に参照できますが、Wildfire Aware アプリではそれらを一か所に集めています。
- アイテム ページ タブを閉じ、Wildfire Aware アプリに戻ります。
- このウィンドウで、[Close] ボタンをクリックします。
Wildfire Aware アプリで使用されているデータ ソースはすべて公開されています。 独自のマップやアプリを作成するときにも、これらのデータセットを組み込むことができます。 このマップから Wildfire Aware Incident, Population, and Environment Enriched Layer を再利用することもできます。このレイヤーには、多彩なソースから集計したすべてのデータが含まれています。
注意:
多くのデータ ソースを組み合わせた別のアプリの例については、「What’s going on here?」をご参照ください。 このアプリに表示されるマップは、情報がないように見えますが、クリックすると、選択した国勢調査地区に関する複数のソースの集計情報が表示されます。
Web GIS により、多くのソースのデータにアクセスして独自のマップやアプリで使用することが容易になります。 ArcGIS Online では数百万ものマップ、レイヤー、アプリが共有され、その多くは公開されています。 ArcGIS Living Atlas of the World では、ソースの信頼性とデータ品質を重視した上で、これらのレイヤーの中から厳選されたサブセットを提供しています。 独自のマップやアプリで ArcGIS Living Atlas データを活用する方法の詳細については、「はじめての ArcGIS Living Atlas of the World」のチュートリアルをご利用ください。 多くの組織がデータを共有しているため、共同的な Web GIS が実現しています。Esri はそのようにデータを共有している組織に感謝いたします。
分析結果の確認
Wildfire Aware アプリは複数のソースからの情報をただ提供するのではなく、その共有の前にアプリ内でデータの分析を行います。
- サイド パネルの下部にある [Potential Carbon Loss] 見出しまでスクロールします。
注意:
選択した火災で [Potential Carbon Loss] 見出しが表示されない場合は、縮小表示してから、森林地域内の別の火災をクリックします。
この数値はどこかのテーブルにあるものではなく、このアプリのバックグラウンドで計算されたものです。 まず、1 平方マイルずつの六角形の配列で地表を覆います。 次に、米国森林局の炭素モデルを使用して、各六角形の炭素量を計算します。 最後に、火災境界内または半径 2 マイルのエリア内にあるすべての六角形の炭素量を加算して、このアプリに表示する潜在的な炭素損失量を算出します。
この六角形に基づく分析は、土地被覆チャート、住宅価格の中央値、人口統計値など、サイド パネル内にある多くの数値の計算に使用されています。
- 米国にお住まいの場合は、ズームして自宅まで画面移動し、マップ内で自宅周辺をクリックします。 米国以外にお住まいの場合は、米国内の現在火災が発生していない地域をクリックします。
サイド パネルが更新され、指定した位置から半径 2 マイル内のデータが集計されます。 この分析結果は米国内のどこでも取得でき、現在の火災の影響を受けるエリアに関する情報だけでなく、任意のエリアで山火事が発生した場合に起こりうる影響についても確認できます。
注意:
アプリ内の分析について他の例を確認するには、School Districts and Socioeconomic Information アプリにアクセスしてください。任意の郡をクリックすると、就学に関する統計情報や社会経済的インジケーターが表示されます。
対話形式のマップまたはアプリの分析結果は、事前に計算したもの、ユーザーの操作に基づいてリアルタイムで生成したものを問わず、マップの関連性を高め、疑問点により的確に答えるのに役立ちます。 ArcGIS Online で分析を始めるには、空間的問題の解決のチュートリアルをご利用ください。
リアルタイム データの探索
前のセクションで確認した分析結果は更新頻度が高いため、特に有益な情報です。 静的マップでは、マップの作成前に収集されたデータしか提示できません。 更新情報を追加するには、静的マップを手動で更新し、再公開する必要があります。 しかし、世界は絶えず変化しています。 対話形式のマップならその変化に遅れることなく、動的な現象をマッピングできます。
- 現在発生中の火災フィーチャが表示されるまでマップを縮小表示します。 いずれかの火災のシンボルをクリックします。
- サイド パネルで、[Fire Information] 見出しの下に表示されている日付を読み取ります。
このマップのデータはライブ フィード レイヤーであり、定期的に (このケースでは 1 時間ごとに) 自動更新されます。 山火事の状況はすぐに変化するため、追跡しているユーザーにとっては最新情報が極めて重要です。
- サイド パネルで、[Landcover] チャートまで下にスクロールします。
それぞれの土地被覆タイプのパーセンテージは、火災境界内または半径 2 マイルのエリアに対して計算されます。 土地被覆データが変更される頻度は非常に低いですが、火災境界は 1 時間ごとに更新されます。 それはつまり、このエリアの低木地、森林、その他の土地被覆タイプのパーセンテージも 1 時間ごとに変化する可能性があるということです。 このアプリは、ライブ フィード ルーチンを使用して、1 時間ごとに火災境界に対する土地被覆、人口統計、その他のデータを自動的に集計しています。そのため、山火事データに加え、分析結果も常に最新のものになっています。
注意:
ライブ フィード データを使用したアプリの別の例については、Hurricane Aware をご参照ください。 このマップは、季節によっては情報が表示されませんが、ハリケーンのシーズン中は暴風の進行状況を追跡するために不可欠になります。
世界は絶えず変化しており、その変化に遅れずについていけるマップが必要です。 ライブ フィード データを使用した対話形式のマップなら、変化中の現象を描写し、常に最新状態のマップを提供できます。
Wildfire Aware は対話形式のマップとアプリが持つ多くのメリットを示す良い事例の 1 つです。 このチュートリアルでは、Web マップをアプリに埋め込み、複数のソースのデータを組み合わせ、対話形式のアプリを通じて分析を実行し共有することで、Web マップを拡張する方法について学習しました。また、ライブ フィード データにより、決して古くならないマップを作成する方法についても学習しました。
Wildfire Aware アプリの詳細については、ブログ記事の Be Wildfire Aware with this new application と Wildfire Aware App Design and Implementation もご参照ください。 このアプリの多くの機能はバックグラウンドで ArcGIS Arcade の式により動作しています。 このシリーズの次のチュートリアル「Web マップの Arcade 式を探索する」では、Web マップでの Arcade の役割について学習できます。