テリトリーの作成
最初に、バランスを調整する国勢調査区テリトリーを格納するフィーチャクラスを作成します。 あらゆる国勢調査に欠かせない情報である、世帯と建物の数の変数を追加することで、これらのテリトリーを用意します。 国勢調査員の進捗状況をオフィスのスーパーバイザーが把握できるように、スーパーバイザーの担当区に対応するテリトリーの 2 つ目のレベルも作成します。
注意:
チュートリアル「国勢調査区を作成するフィーチャの編集」では、編集ツールで国勢調査区を手動で作成する方法を取り上げています。 このチュートリアルでは、ジオプロセシング ツールによる自動作成を取り上げます。
データのダウンロード
まず、グレナダの一部であるカリアク島の建物と道路のデータをダウンロードします。 通常の国勢調査では国全体が調査対象になりますが、処理時間を短くするために、このチュートリアルではカリアク島のみを取り上げます。
- Grenada Census Project プロジェクト パッケージをダウンロードします。
- コンピューター上で、ダウンロードしたファイルを選択します。
注意:
お使いの Web ブラウザーによっては、ダウンロードを開始する前に、ファイルの場所を選択するよう求めるメッセージが表示される場合があります。 ほとんどのブラウザーでは、デフォルトでコンピューターのダウンロード フォルダーがダウンロード先の場所になります。
- コンピューターに ArcGIS Pro がインストールされている場合は、[Grenada_Census_Project.aprx] をダブルクリックしてプロジェクトを開きます。 サイン インを求められたら、ライセンスが割り当てられた ArcGIS アカウントを使用してサイン インします。
注意:
ArcGIS Pro へのアクセス権限または組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください。
プロジェクトにはカリアク島のマップが含まれています。 カリアク島の人口は約 1 万人で、ヒルズボロに人口が密集しています。
[Building Points]、[Major Roads]、[Boundary] の 3 つのレイヤーがこのマップにはあります。 建物ポイントは、国勢調査区で住戸の数のバランスが取れているかを判断するうえで重要になります。一方、主要道路は、国勢調査区を徒歩で調査する場合に国勢調査員が高速道路の反対側に行かなくて済むようにするためのバリアとして使用します。 テリトリーが島の範囲から出ないようにするため、境界は解析結果のマスクとして使用します。
データの理解を深めるため、建物ポイントの属性テーブルを開きます。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Building Points] を右クリックして [属性テーブル] を選択します。
テーブルが表示されます。 建物ポイントに関連付けられている属性データがあります。 これには、建物番号、国勢調査員の名前、建物タイプ、住戸数、入居状況に関するフィールドが含まれます。
これらのフィールドは国勢調査員にとって有用です。 なかでも特に重要なのが [Number of Dwellings] フィールドです。 アパートメントなどの建物には 1 つの構造のなかに複数の住戸が存在する場合がありますが、一軒家の住戸数は通常は 1 つのみです。 国勢調査区のバランスを調整する際には、住戸の数を考慮に入れることが重要です。
- テーブルを閉じます。
建物の検索
今回の国勢調査では、現在入居者がいる居住用建物だけを対象にします。 テリトリーの作成を開始する前に、これらの条件を満たさない建物を除外するフィルター設定を作成します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [Building Points] レイヤーをダブルクリックします。
このレイヤーの [レイヤー プロパティ] ウィンドウが表示されます。
- [フィルター設定] をクリックします。
- [新しい定義クエリ] をクリックします。
クエリには 2 つの句を設定します。 1 つ目の句では入居者がいる建物だけが表示されるようにし、2 つ目の句では居住用建物だけが表示されるようにします。
- [クエリ 1] で [Where 句 Occupancy Status が Occupied と等しい] というクエリを作成します。
- [項目の追加] をクリックします。 [および Building Type が Residential と等しい] という句を作成します。
- [適用] をクリックします。 [レイヤー プロパティ] ウィンドウで、[OK] をクリックします。
クエリが適用されます。 カリアク島の大半の建物は居住用で入居者がいるため、マップ上の変化は顕著ではない場合があります。 ただし、これで国勢調査に関連する建物だけが表示されていることについて確信を持てます。
ヒント:
自身のデータでこのワークフローを実行する場合は、建物レイヤーでポイントとポリゴンのどちらを使用しているかを確認する必要があります。 ポリゴンの場合は、[フィーチャ → ポイント (Feature To Point)] ツールをデータに対して実行して、ポイント レイヤーに変換する必要があります。 チュートリアルに用意されているグレナダのデータを使用する場合、このツールを実行する必要はありません。
テリトリー ソリューションの作成
次に、テリトリー デザイン ツールを使用して国勢調査区のデザインを開始します。 最初にテリトリー ソリューションを作成します。 テリトリー ソリューションとは、テリトリーに関するすべての情報を含むレイヤー (またはレイヤーのグループ) のことです。 作成するテリトリー ソリューションは最初は空です。後で他のツールを実行して情報を追加します。
- リボンの [解析] タブをクリックします。 [ジオプロセシング] グループで、[ツール] をクリックします。
[ジオプロセシング] ウィンドウが表示されます。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの検索バーに「テリトリー ソリューションの作成」と入力します。 結果のリストで [テリトリー ソリューションの作成 (Create Territory Solution) (テリトリー デザイン ツール)] の結果をクリックします。
注意:
このチュートリアルで使用するテリトリー デザイン ツールでは、ArcGIS Pro で Business Analyst エクステンションを有効にする必要があります。 エクステンションを有効にする必要がある場合は、ArcGIS 組織管理者にお問い合わせください。
- [入力フィーチャ] で [Building Points] を選択します。
データにフィルターがあるというメッセージと、処理されるレコードの数が表示されます。
- [テリトリー ソリューションの名前] に「Enumeration Areas」と入力します。
境界レイヤーを使用して、境界マスクも追加します。 このマスクによって、すべての解析結果がカリアク島の境界内に収まるようになります。
- [境界マスク] で [Boundary] を選択します。
その他のパラメーターはそのままにしておきます。 これらのパラメーターの大半では、テリトリー ソリューションのエレメントの名前を設定できます。デフォルト名のままでもかまいません。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行されます。 [Enumeration Areas] グループ レイヤーが [コンテンツ] ウィンドウに追加されます。 このグループ レイヤーには 4 つのレイヤーがあります。 [Building Points] レイヤーがベース レイヤーであり、建物ポイントのコピーが含まれています。 ベース レイヤーとして、これはすべてのテリトリーとレベルのベースとなるベース ジオグラフィです。 [境界 Building Points] レイヤーでは境界マスクを使用してポリゴンを作成します。 各建物ポイントを囲むようにポリゴンがグループになっており、その建物に最も近い国勢調査区が含まれています。
注意:
デフォルトのシンボルはこの画像例とは異なる場合があります。
他の 2 つのレイヤーはデフォルトでは空です。後でこれらに情報を追加します。 [テリトリー] レイヤーにはテリトリーを格納します (今回のケースでは国勢調査区)。 [レベル] レイヤーには別のレベルの他のテリトリーを含めることができ、州や郡などのテリトリー階層の管理に役立ちます。
テリトリーの変数の追加
バランスが取れた国勢調査区を作成するには、国勢調査区のバランスが取れているかどうかの判断に使用できる変数を定義する必要があります。 重要となる変数は、各国勢調査区の住戸の数と建物の数です。 建物ポイント レイヤーではこの情報が属性にあるため、これを使用してテリトリー レイヤーの変数を設定できます。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。
- [レベル変数の追加 (Add Level Variables) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
ヒント:
リボンの [テリトリー デザイン] コンテキスト タブからこのツールや他のテリトリー デザイン ツールにアクセスすることもできます。
ツール名には「レベル」が含まれていますが、このツールを使用してテリトリーまたはレベル レイヤーに変数を追加できます。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。
- [レベル] で [テリトリー[1]] を選択します。
デフォルトでは、[ベース レベル] パラメーターに [Building Points[0]] があらかじめ入力されています。 [0] と [1] の表記は、テリトリー ソリューションの階層内のレイヤーのレベルを表しています。 作成するレベルの数に応じて、ベース レベルは [0]、テリトリー レイヤーは [1] となり、それ以降のレベル レイヤーは [2]、[3]、以下同様とすることができます。
次に、テリトリーに追加する変数を選択します。 これらの変数はベース レイヤーの属性をベースにし、何らかの計算が適用されます。 今回のケースでは、各国勢調査区で住戸の数をほぼ同数に揃えるため、[Number of Dwellings] 属性の合計値を見つける変数を設定します。
- [変数] の下の [統計フィールド] で [Number of Dwellings] を選択します。 [統計情報] で [合計] を選択します。
国勢調査区のバランス調整において住戸の数は最も重要な変数の 1 つですが、重要な変数はこれだけではありません。 建物の数も考慮に入れる必要があります。 作業を完了するために国勢調査員が 50 棟の建物を 1 棟ずつ徒歩で訪問する必要がある場合、1 棟のアパートメントで 50 軒の住戸を担当する国勢調査員よりも負担が大幅に大きくなります。
各ポイントが 1 棟の建物を表すため、建物ポイント レイヤーには建物の数に関する属性がありません。 建物の数の変数を設定するには、建物ポイント レイヤーの一意の ID フィールドを数える変数を設定します。 それぞれの建物に一意の識別子があるため、この変数では各国勢調査区の建物の数を正確に把握できます。
- 最初の変数の下で [他を追加] をクリックします。
- [統計フィールド] で [OBJECTID] を選択します。 [統計] で [個数] を選択します。
わかりやすくするために、この変数のフィールド名とエイリアスも変更します。
- [フィールド名] に「num_buildings」と入力します。 [フィールドのエイリアス名] に「Number of Buildings」と入力します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行されます。 マップは変更されませんが、[テリトリー] レイヤーの属性テーブルに変数が追加されています (必要であれば、テーブルを開いて確認できます)。
別のレベルの作成
テリトリー ソリューションでは複数のレベルを作成できます。 最初のレベルである [1] は国勢調査区用です。 国勢調査区のバランス調整を続ける前に、別のレベルを作成します。 このレベルはスーパーバイザーの担当区用です。
スーパーバイザーは各国勢調査区の結果を確認する、正確な国勢調査を実現するうえで非常に重要な存在です。 多くの場合、1 人のスーパーバイザーが複数の国勢調査区を担当するため、スーパーバイザーの担当区の方が国勢調査区より階層レベルが高くなります。 国勢調査の報告体制に応じて、スーパーバイザーの複数の階層レベルを作成できます。 ただし、このチュートリアルでは、1 つだけ追加のレベルを作成します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。
- [テリトリー レベルの追加 (Add Territory Level) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。 [レベル名] に「Supervisor Areas」と入力します。
デフォルトのテリトリー名は [テリトリー %Number%] です。つまり、テリトリーの名前はテリトリー 1、テリトリー 2、以下同様となります。 他のテリトリー レイヤー (国勢調査区用のレイヤー) と混同しないようにするために、名前を変更します。
- [デフォルト テリトリー名] に「Supervisor Area %Number%」と入力します。
- [基本フィーチャクラス] で [テリトリー境界] を選択します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行されます。 新しいテリトリー レベルが作成され、[コンテンツ] ウィンドウに追加されます。 国勢調査区テリトリー同様、スーパーバイザーの担当区の定義に使用できるレベル変数を追加します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックします。 [レベル変数の追加 (Add Level Variables) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。 [レベル] で [Supervisor Areas[2]] を選択します。
追加する変数は、国勢調査区に追加したものと似たようなものになります。 スーパーバイザーの各担当区の住戸の合計を見つける変数を追加します。 建物の数を見つける変数の代わりに、国勢調査区の数を見つける変数を追加します。 スーパーバイザーの各担当区で国勢調査区の数を均等にし、住戸の数も均等にします。
- [変数] の下の [統計フィールド] で [Number of Dwellings] を選択します。 [統計情報] で [合計] を選択します。
国勢調査区レイヤーの住戸に使用したフィールドと区別するために、出力フィールドの名前を変更します。
- [フィールド名] に「num_dwellings_sa」と入力します。 [フィールドのエイリアス名] に「Number of Dwellings (Supervisor Areas)」と入力します。
建物の数をカウントした変数同様、ID フィールドを使用して国勢調査区の数をカウントする変数を作成します。
- [他を追加] をクリックします。 次のパラメーターで変数を追加します。
- [統計フィールド] で [ID] を選択します。
- [統計] で [個数] を選択します。
- [フィールド名] に「num_eas」と入力します。
- [フィールドのエイリアス名] に「Number of Enumeration Areas」と入力します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、変数が [Supervisor Areas] レイヤーに追加されます。
- [クイック アクセス ツールバー] の [保存] ボタンをクリックします。
建物ポイント、およびテリトリー (国勢調査区) とスーパーバイザーの担当区の 2 つのレベルのベース レイヤーがあるテリトリー ソリューションはこれで完成です。 各テリトリーの定義とバランス調整に役立つレベル変数も追加しました。 次に、テリトリーのバランスを調整します。
テリトリーのバランス調整
現在、テリトリーは空のフィーチャクラスです。 設定した変数を使用してこれらのバランスを調整します。 また、徒歩で移動する国勢調査員が高速道路の反対側に行くのは難しい可能性があるため、主要道路をバリアとして使用します。
変数への重み付け
まず、テリトリーのバランスを決定するために、各変数の加重を設定します。 国勢調査区には、建物の数と住戸の数の 2 つの変数があります。 国勢調査員の間で調査対象世帯数を均等にする必要があるため、住戸の数の方が重要です。 1 つの建物で複数の住戸を調査するよりも、建物を 1 つずつ徒歩で移動する方が時間がかかるため、建物の数も重要ですが、住戸の数よりは重要度が低くなります。 この違いを考慮に入れたうえで各変数の加重を設定しましょう。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [バランス調整変数の設定 (Set Balance Variables) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。 [レベル] で [テリトリー[1]] を選択します。
次に、各変数に加重を設定します。 加重は 0 ~ 100 の数字で表され、100 が最高です。 パーセントと同じように、すべての加重を合計した時の数字が 100 になるようにする必要があります。
- [バランス調整変数] の [変数] で [Number of Buildings] を選択します。 [加重] に「10」と入力します。
- 次の変数として [Number of Dwellings] を選択します。 [加重] に「90」と入力します。
合計で 100 になる、10 と 90 という 2 つの加重。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、加重が設定されます。
制限の設定
次に、バランスが取れていると見なされる各変数の値を決定します。 バランスが取れていると見なされるには、各国勢調査区の住戸と建物の数が正確にいくつである必要があるでしょうか? テリトリー属性制限を設定することで、各変数に理想的な値を定義できます。理想的な値が実現不可能な場合の最小許容値と最大許容値も設定できます。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [テリトリー属性制限の設定 (Set Territory Attribute Constraints) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。 [レベル] で [テリトリー[1]] を選択します。
追加した 2 つの変数とその加重が [制限] セクションに自動的に入力されます。
建物の数については、目標値を空のままにしておきます。 調査区が都市部と農村部のどちらなのかによって建物の数は大幅に変わる場合があるため、すべての調査区に適した理想的な値というものは存在しません。 国勢調査員が訪問する建物の数が多くなりすぎないようにするために、最小値と最大値を設定しましょう。
- [Number of Buildings] の [最小値] に「1」と入力します。 [最大値] に「50」と入力します。
住戸の数については、国勢調査員 1 人あたりが調査する住戸が 80 軒になるのが理想的です。 ただし、すべての国勢調査区で調査対象の住戸数を 80 軒ちょうどにするのは不可能である場合があるため、ハードな制限として最小値と最大値を追加します。 住戸の最小値を 30、最大値を 100 にします。
- [Number of Dwellings] で次のパラメーターを設定します。
- [最小値] に「30」と入力します。
- [最大値] に「100」と入力します。
- [目標値] に「80」と入力します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行されます。 さきほど同様、マップ上には変化が見えません。 ただし、テリトリーを作成するときに、選択した値が使用されます。
バリアの追加
国勢調査員は徒歩で調査を行うため、主要な道路と高速道路の反対側に移動するのが困難な場合があり、国勢調査の進行の妨げにもなりかねません。 この問題を回避する最善の方法は、主要道路をまたがらない国勢調査区をデザインすることです。 プロジェクト パッケージに同梱されていた主要道路レイヤーをバリアとして追加してテリトリーをデザインしましょう。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [テリトリー バリアの追加 (Add Territory Barriers) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。 [レベル] で [テリトリー[1]] を選択します。
- [入力バリア フィーチャ] で [Major Roads] を選択します。
次のパラメーターでは、入力フィーチャがどのタイプのバリアかを定義します。 オプションは、バリアを超えてテリトリーが広がることを制限するインピーダンスと、テリトリーの作成を完全に防ぐ制限範囲のいずれかです。 国勢調査員が道路の反対側に行く必要がないようにすることだけが懸念事項であるため、道路はインピーダンスです。
- [バリア タイプ] で [インピーダンス] が選択されていることを確認します。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、バリアが [ライン バリア テリトリー] レイヤーとしてマップに追加されます。
テリトリーの解析
テリトリーを作成する準備はこれで完了です。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [テリトリーの解析 (Solve Territories) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
さきほど設定した変数の加重や制限を後で変更することにした場合、このツールではテリトリーの作成と既存テリトリーの調整の両方が実行されます (加重と制限の設定については、ニーズに最適なテリトリーを作成する値が見つかるまでテストを行うことをおすすめします)。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。 [レベル] で [テリトリー[1]] を選択します。
作成されるテリトリーの数は 2 つの方法で定義できます。 [ユーザー定義] を選択した場合は、テリトリーの数を自分自身で設定します。 [最適] の方法では、ツールで加重変数と属性制限を使用することで、国勢調査区の最もバランスが取れた数を数学的に求めます。
このシナリオでは、最大で 700 人の国勢調査員を雇用できることがわかっているため、テリトリーの数がこれを超えないようにする必要があると想定します。 この場合、テリトリーの数を自分自身で定義することをおすすめします。 雇用できる国勢調査員の人数がわからない場合は、他の方法の方が適している可能性があります。
- [テリトリー数を決定する方法] で [ユーザー定義] が選択されていることを確認します。
- [テリトリー数] に「700」と入力します。
- [実行] をクリックします。
注意:
このツールではすべてのデータが処理されてテリトリーが作成されるため、実行が完了するまで数分かかる場合があります。 建物ポイントの数が多い場合はそれ以上かかります。
ツールが実行されます。 処理が完了すると、[テリトリー] レイヤーに 700 個のテリトリーが反映され、複数の色のポイントとしてマップに表示されます。
ツールの実行が終了しましたが、警告が発生しました。 次に進む前にこれらの警告を調査します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウの下部にある [テリトリーの解析 (Solve Territories) が警告とともに完了しました] で [詳細の表示] をクリックします。
実行したツールに関する情報を含むウィンドウが表示されます。 設定した制限の要件を一定数のテリトリーが満たしていないという警告があります。
この警告によると、作成した 700 個のテリトリーのうち、一部が建物と住戸の数に関する最小要件と最大要件を満たしていません。 他のテリトリーは作成されましたが、空であるか、建物が含まれていません。 制限かテリトリーの数を変更してツールを再度実行することで、この警告が解消される場合があります。
- ウィンドウを閉じます。
次に、マップ上でテリトリーを確認します。 今のズーム レベルでは多数のポイントが重なり合っているため、結果を完全に理解するのが困難になる場合があります。
- リボンの [マップ] タブをクリックします。 [ナビゲーション] グループで [ブックマーク] をクリックして [Hillsborough] を選択します。
カリアク島の中央北部の海岸にあるポイント郡がマップ上で拡大されます。
このエリアの名前は Hillsborough で、この島で特に人口が密集しているエリアです。 このズーム レベルでは各ポイントを簡単に区別できます。 各ポイントが 1 つの建物ポイントに対応しています。 同じ色のポイントが同じテリトリーにあります。
- マップ上の任意のポイントをクリックします。
クリックしたポイントのテリトリーにあるすべてのポイントが点滅し、ポップアップが表示されます。 テリトリー内の住戸と建物の合計数がポップアップに表示されます。
- 別のテリトリーのポイントもいくつかクリックしてみましょう。 調査するテリトリーごとに、そのテリトリー内の住戸と建物の数をメモしてください。
一部のテリトリーでは設定した最小住戸数よりも住戸数が少なくなっていますが、これらのテリトリーがツールの警告の対象になったテリトリーです。
- [コンテンツ] ウィンドウで [テリトリー] レイヤーを右クリックし、[属性テーブル] を選択します。
各テリトリーの住戸と建物の数などの情報が属性テーブルに反映されます。 [テリトリー検証エラー] フィールドにはテリトリーで発生したエラーが一覧表示されます。
サンプル画像では、7 つ目のエントリーに [空] のエラーがあります。 テリトリーに住戸または建物がない場合にこのエラーが発生し、[Number of Dwellings] フィールドと [Number of Buildings] フィールドでこれを確認できます。
他のエントリには [MinLimit] エラーがあります。 テリトリーの制約を設定した時に選択した下限 (30) をテリトリーの数が下回っている場合にこのエラーが発生します。
テリトリーが上限を上回っているため、エラーはありません ([MaxLimit])。 つまり、テリトリーの数が少なすぎるのではなく、多すぎるということになります。 テリトリーの合計数を調整することで、これらのエラーを解決できます。
- 属性テーブルを閉じ、開いているポップアップがあればそれも閉じます。 リボンの [ブックマーク] をクリックし、[Carriacou] を選択します。
島全体が表示される画面に戻ります。
テリトリーの数を減らして [テリトリーの解析 (Solve Territories)] ツールを再実行することで、さきほどのエラーを解決できます。 ツールの実行には長時間かかるため、このチュートリアルでは次のステップをスキップしてもかまいません。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [テリトリー数] を「550」に変更します。 [実行] をクリックします。
ツールの実行が完了すると、3 つのテリトリーが制限要件を満たしておらず、6 つの空のテリトリーが作成されたという警告が表示されます。 テリトリー数を 700 個に指定してツールを実行した時よりも数は大幅に減っています。 テリトリーの数をさらに調整することで残りのエラーも解消される場合がありますが、このチュートリアルでは 550 個のテリトリーで十分です。
テリトリー レベル オプションの設定
さきほど、スーパーバイザーの担当区用のテリトリー ソリューションに 2 つ目のレベルを作成しました。 国勢調査区の特定のコンパクト性に基づいてスーパーバイザーの担当区を後から計算できるツールを実行しましょう。 スーパーバイザーの担当区ごとに必要な国勢調査区のコンパクト グループの数を増やすことで、国勢調査の効率を上げることができます。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [テリトリー レベル オプションの設定 (Set Territory Level Options) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
このツールにはテリトリー レベルの設定方法を定義するためのオプションがいくつかあります。 今回注目するのはコンパクト性を決めるフィールドです。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。 [レベル] で [テリトリー[1]] を選択します。
コンパクト性の範囲は 0 ~ 100 で、0 が最もコンパクト性が低く、100 が最も高くなります。 デフォルト値は 75 ですがこれを増やします。
- [コンパクト性] に「90」と入力します。
[分析範囲を自動的に埋める] パラメーターによって、フィーチャが最も近いテリトリーに自動的に割り当てられます。 このパラメーターをオンにしてもコンパクト性が増加します。
- [分析範囲を自動的に埋める] をオンにします。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行され、オプションが設定されます。
テリトリーの仕上げ
バランスを調整したテリトリーの作成に必要なパラメーターの設定はこれですべて完了です。 次に、国勢調査員に送信できる、完成したテリトリー境界を含むフィーチャクラスを作成します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [テリトリー レベル フィーチャクラスの作成 (Create Territory Level Feature Classes) (テリトリー デザイン ツール)] ツールを検索して開きます。
- [入力テリトリー ソリューション] で [Enumeration Areas] を選択します。 [レベル] で [テリトリー[1]] を選択します。
作成するフィーチャクラスのタイプを選択できます。 各国勢調査区をカバーするポリゴンを含むフィーチャクラスが作成されるテリトリー境界、および各テリトリーの中心にあるポイントを含むフィーチャクラスが作成されるテリトリーの中心がオプションとして用意されています。 境界を表示するフィーチャクラスを作成します。
- [フィーチャクラス] で [テリトリー境界] をオンにします。
- [実行] をクリックします。
ツールが実行されます。 テリトリー境界が [テリトリー境界] レイヤーとしてマップに追加されます。
注意:
使用したテリトリーの数によっては、サンプル画像と結果が異なる場合があります。
過疎がさらに進んでいる一部のエリアでは、Hillsborough で人口密度が高いエリアに比べて各テリトリーがカバーするエリアが大きくなります。 バランスを調整したテリトリーでもこのサイズの相違を回避するのは困難です。それでも、バランスを調整しなかった場合に比べれば結果ははるかにバランスが取れています。
注意:
必要に応じて、作成したテリトリーの 2 つ目のレベル (スーパーバイザーの担当区) でこのモジュールのワークフローを繰り返してください。 テリトリーを解析する前に、スーパーバイザーの各担当区における適正な数の国勢調査区に基づいて変数の加重を設定し、制限を設定して関連するバリアを追加できます。
- プロジェクトを保存します。
このチュートリアルでは、国勢調査用のテリトリーを作成しました。 建物ポイント データを使用することでテリトリー ソリューションを作成し、関連する変数を追加してテリトリーのバランス調整方法を定義しました。 次に、変数の加重設定、制限の設定、バリアの追加を実行しました。 テリトリーを解析して問題を調査した後、テリトリーを新しいフィーチャクラスとしてエクスポートしました。
各建物の住戸数に関する正確なデータを含む建物ポイント情報があれば、このワークフローを使用してどの対象地域でも国勢調査区を作成できます。 設定する制限と作成するテリトリーの数は、雇用できる国勢調査員の人数に応じて異なります。 国勢調査区を作成する際のバリアとして使用できる、山や川などといった自然のバリアが調査区に存在する場合もあります。
他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。