溶岩流災害の危険度の調査

溶岩流災害の危険度が高いエリア

火山が噴火した場合、地域の住民が避難するのに必要な時間は、 その時の状況によって異なります。 溶岩流は麓に向かって流れ、急斜面にさしかかると、その流れは加速度を増していきます。 1990 年代の初頭に、ハワイ島南東のプナ地域に位置する町カラパナの住民は、溶岩流が通り過ぎるまで数日間から数週間避難していましたが、結局、町が溶岩流に飲み込まれてしまいました。 一方、1950 年に発生した溶岩流はマウナ ロアの西側の斜面を下り、4 時間程度で海に到達しました。 自然科学者たちはハワイ島の地盤移動を常時監視していますが、噴火地点の麓に居住している住民に対し、どの段階で事前に避難勧告を出せばよいかを把握していません。

緊急時対応要員や政府が計画を立てることができるのは、避難のシナリオです。 溶岩流災害の危険度が高い地域とその地域で暮らしている住民の数がわかれば、緊急時対応要員は緊急避難所を設営して物資を送る場所を特定することができます。 このセクションでは、レイヤーをフィルタリングすることで溶岩流災害の危険度が高いエリアを特定します。

  1. ArcGIS Online グループ「Analyze Volcano Shelter Access in Hawaii」に移動します。
  2. [最新の追加コンテンツ] セクションで、[Shelter Access Analysis] マップのサムネイルをクリックして、このマップを開きます。

    避難所へのアクセスの解析マップ

    ハワイ島のマップが開きます。

    ハワイ島

    凡例に示されているように、ハワイ島は極めて危険度が高い区域から極めて危険度が低い区域まで、溶岩流の危険度の 9 つのカテゴリに分けられています。 部分透過区域では、国勢調査区の人口密度 (1 平方マイル当たりの人口) が灰色の陰影でスタイル設定されています。 このマップには、火山と緊急避難所の場所も表示されています。

    このチュートリアルでは Map Viewer を使用します。

  3. 必要に応じて、リボンの [Map Viewer で開く] をクリックします。
  4. ArcGIS の組織アカウント」にサイン インします。
    注意:

    組織アカウントがない場合は、ソフトウェア アクセスのオプションをご参照ください

  5. [コンテンツ] (暗い背景の) ツールバーにある [レイヤー] ボタンをクリックします。 Lava Flow Hazard Zones レイヤーをクリックして選択します。
  6. [設定] (明るい背景の) ツールバーにある [フィルター] をクリックします。

    フィルター ボタン

  7. [フィルター] ウィンドウで、[式の追加] をクリックします。
  8. [SEVERITYCODE が High Hazard と等しい] という式を作成します。

    SEVERITYCODE が High Hazard と等しいという式を作成します。

  9. [式の追加] をもう 2 回クリックして、[SEVERITYCODE が Very High Hazard と等しい] および [SEVERITYCODE が Extremely High Hazard と等しい] という式を作成します。

    これで、3 つの式が作成されました。 フィルターは現在、すべての式を満たすフィーチャを表示するように設定されています。つまり、各フィーチャには評価が 1 つしかないため、データはまったく表示されていません。 3 つの条件のいずれかを満たす危険区域を特定するため、結果のフィルターを少なくとも 1 つの式に一致に変更します。

  10. [結果のフィルター] で、[すべての式に一致] をクリックし、[少なくとも 1 つの式に一致] を選択します。

    少なくとも 1 つの式と一致するフィーチャを表示するように結果をフィルタリングします。

  11. [フィルター] ウィンドウで [保存] をクリックします。

    溶岩流災害の危険度が最も高い 3 つの区域がマップに表示されます。 これらのエリアを分析します。

    災害の危険度が高い区域、非常に高い区域、極度に高い区域を示す、フィルタリングされたレイヤー

  12. [レイヤー] ウィンドウで、Lava Flow Hazard Zones[オプション] をクリックして [名前の変更] を選択します。

    レイヤー名を変更します。

  13. レイヤー名を「High Lava Flow Hazard Zones」に変更して [OK] をクリックします。

住民の居住エリア

次に、国勢調査データを使用して、島のどの地域に住民が暮らしているかを把握します。 住民の分布や危険度の高い区域で暮らす住民の数がわかれば、緊急避難所が必要となる場所やその規模をあらかじめ計画しておくのに役立ちます。

  1. [レイヤー] ウィンドウで、[Census_Blocks_2020] レイヤーをクリックしてアクティブ化し、[High Lava Flow Hazard Zones] レイヤーの上にドラッグします。

    レイヤー ウィンドウで Census Blocks レイヤーを並べ替えます。

  2. [設定] (明るい背景の) ツールバーで、[シンボル] をクリックします。

    このレイヤーは、現在は [Total Population] 属性によってスタイル設定されています。

  3. [スタイルの選択] で、[点密度] スタイルを選択します。

    点密度スタイルを選択します。

    点密度スタイルを使用してレイヤーが再描画されます。 このスタイルでは、同じ国勢調査区ポリゴン エリアが使用され、1 つの点で一定数のフィーチャを表します。 たとえば、1 つの点で 40 人を表すことができます。 点密度スタイルでは各フィーチャがポリゴン内のどの場所に実際に存在するかは示されず、点がポリゴン全体にランダムに分散します。

    点密度を使用してスタイル設定された総人口を示すマップ。

    島の人口の大部分が島の外周部で暮らしており、西はカイルア・コナ、東はヒロに居留区が集中しています。 次に、危険度が高い区域で暮らす住民の数を調べます。

  4. [完了] をクリックします。
  5. [コンテンツ] ツールバーで [保存して開く] をクリックします。 [名前を付けて保存] をクリックします。
  6. [マップの保存] ウィンドウで、[タイトル] に「Hawaii Shelter Access Analysis」と入力してイニシャルを追加します。
  7. [マップの保存] ウィンドウで [保存] をクリックします。


緊急避難所へのアクセスの分析

火山避難所にアクセスしやすい地域はどこか?

次は、緊急避難所の周囲に到達圏レイヤーを作成することでアクセシビリティを解析します。 移動エリアの解析では、道路網に基づく距離または予想移動時間を使用して、特定の場所または一連の場所から到達圏内にある地域を表示します。 到達圏の値を 15 分に設定して、アクセスしやすい避難所を定義します。 この数値は任意に選択された値であるため、これ以外の値を使用して後から解析を繰り返し実行して、結果がどのように変わるかを確認することもできます。

この解析は、緊急事態のモデル化を目的として実行するものではありません。 実際の緊急事態では、どのようなことが起きるかわかりません。 避難経路が溶岩流で封鎖されたり、交通渋滞が発生したり、緊急避難所自体が溶岩流の通過点上にあったりすることが考えられます。 その一方で、島内のどの地域が避難所にアクセスしやすく、どの地域がアクセスしにくいかを把握しておくことは有効な事前対策にもなります。

  1. [設定] (明るい背景の) ツールバーで [解析] をクリックします。

    分析ボタンをクリックします。

  2. [解析] ウィンドウで、[ツール] をクリックし、[移動エリアの生成] を検索して [移動エリアの生成] ツールを選択します。

    移動エリアの生成ツール

    移動エリアの生成ツールは、道路ネットワークに沿って一定の移動時間または移動距離内に到達できるエリアを計算します。 この場合、避難所まで 15 分の到達圏を計算します。

  3. [入力レイヤー] で、[レイヤー] をクリックして [Emergency Shelters] を選択します。

    危険度が高い区域にあるシェルターを入力レイヤーとして選択します。自動的に生成されたグラフィカル ユーザー インターフェイス、アプリケーションの説明

  4. [移動モード] で、[運転時間] が選択されていることを確認します。
  5. [カットオフ] に「15」と入力し、[追加] をクリックします。[カットオフ単位][分] に設定されていることを確認します。

    移動モードとカットオフを設定します。

  6. [移動方向] で、[入力位置から] をクリックし、[入力位置へ] を選択します。

    住民は避難所に移動するため、[到着時間] パラメーターを [時間が指定されていません] に設定したままにすると、交通の流れが円滑であり、運転者が制限速度を守っているとして解析されます。 このような交通状況は緊急事態には当てはまらず、もっとも特定の日時の基準となる交通状況とも言えません。

  7. [重なりポリシー] で、[オーバーラップ] をクリックし、[ディゾルブ] を選択します。

    移動方向と重なりポリシーのパラメーターを設定します。

    デフォルト設定の [オーバーラップ] オプションでは、避難所ごとに一意の到達圏レイヤーが作成されます。 地域をディゾルブすると、複数ではなく 1 つの出力フィーチャだけが作成されます。 同じ地域全体が対象となります。

  8. 生成されたレイヤーに「Shelter in 15 minutes」という名前を付けて、そのレイヤー名が組織内で一意になるように、末尾に自分の名前またはイニシャルを付加します。
  9. [クレジットの推定] をクリックします。

    解析ツールを実行すると、クレジットを消費します。 クレジットは、ArcGIS Online で使用される通貨です。 クレジットは、解析の実行、フィーチャの保存、ジオコーディングなど、特定の処理を行う際に消費されます。 解析を実行する前に、消費されるクレジットの数を確認することをお勧めします。 解析ツールの実行中、クレジット コストは通常、フィーチャの数にツールのクレジット コストを乗算することで計算されます。 この解析では 15 クレジットが消費されます。

    注意:

    15 クレジットがないか消費したくない場合、Learn_ArcGIS が所有する Shelter in 15 minutes レイヤーを追加し、ステップ 12 にスキップします。

  10. [実行] をクリックします。

    移動エリアの生成の結果

  11. [解析] ウィンドウの [履歴] タブをクリックします。

    履歴タブをクリックします。

    ツールのステータスがここに表示されます。 ツールが完了すると、出力がマップ上に表示されます。 このマップには、避難所まで 15 分以内で到達できる島内の地域が表示されます。

    15 分の到達圏内に避難所がある地域を特定した後は、これ以外の地域に注目します。 15 分の到達圏内に避難所がない災害危険度の高い地域を特定するため、[レイヤーのオーバーレイ] ツールの [イレース] を使用します。 [レイヤーのオーバーレイ] ツールは、3 つの空間条件 (インターセクト、ユニオン、イレース) のうちの 1 つを使用して 2 つのレイヤーを 1 つのレイヤーに結合します。

  12. [ツール] タブをクリックします。 [データの管理] カテゴリで、[レイヤーのオーバーレイ] をクリックします。
  13. [入力フィーチャ][High Lava Flow Hazard Zones] を選択し、[オーバーレイ フィーチャ][Shelter in 15 minutes] を選択します。
  14. [オーバーレイ タイプ][イレース] を選択し、出力レイヤーに「High risk areas without shelter」という名前を付けます。
  15. [実行] をクリックします。
  16. [レイヤー] ウィンドウで、[High risk areas without shelter] 以外のレイヤーをすべて非表示にします。

    High risk areas without shelter レイヤー

    避難所への移動に 15 分以上かかる地域を特定した後は、レイヤーへの情報付加ツールを使用して、それらの地域で暮らす住民の数を計算します。 レイヤーへの情報付加ツールは、データの割り当てアルゴリズムを使用して、国勢調査細分区グループなどの標準国勢調査地区の人口やその他のデータを入力ポリゴン フィーチャに配分し直します。

    危険区域の人口を推定するもう 1 つの方法として、エリア内での集計ツールを使用して、危険度が高い区域別に各国勢調査細分区の人口を合計します。 一部の国勢調査地区は複数の危険区域にまたがっているため、ここでは、レイヤーへの情報付加ツールを使用してさらに精度の高い結果を生成します。

  17. [分析] ウィンドウの戻るボタンをクリックします。 [ツール] ウィンドウで、[レイヤーへの情報付加] ツールを検索して選択します。
  18. [入力フィーチャ] で、High risk areas without shelter レイヤーを選択します。
  19. [情報付加データ] で、[変数] をクリックします。

    ポリゴン レイヤーに情報を付加する変数を選択します。

  20. [データの参照] ウィンドウで、[At Risk] をクリックします。 [At Risk Variables] で、2023 Total Population (Esri) を選択します。

    2022 Total Population 変数を選択します。

    この変数が、右上隅にある [選択した変数] の数に加算されます。

    注意:

    [At Risk] カテゴリには、災害対応や避難計画に関連するその他多数の人口統計変数が含まれています。 必要に応じて、貧困、身体障害等級、年齢依存性、車の利用しやすさなど、対象の母集団を理解する上で重要なその他の指標を必要に応じて追加することができます。 変数を追加すると、以下で見積もられるクレジット コストが増えます。

  21. [データの参照] で、[選択] をクリックします。
  22. 結果レイヤーに「Population in high risk areas without shelter access」という名前を付け、自分のイニシャルを付加します。

    この解析には 0.11 クレジットが必要です。

    注意:

    データ変数を追加した場合は、推定クレジットの計算を確認してください。

  23. [実行] をクリックします。

解析が完了すると、そのレイヤーがマップの上に重ねて描画されます。

緊急避難所へのアクセスのスタイル設定

最後に、データのスタイルを設定して、多くの人々が自宅から 15 分以内で火山避難所に移動できない区域を表示します。 最後のセクションでは、レイヤーへの情報付加ツールを使用して、危険度が高い区域の人口を計算しましたが、この区域に人口が均等に分散しているわけではありません。 これらの区域のどの場所で住民が暮らしているかを視覚化するため、レイヤーのオーバーレイ ツールを使用して、国勢調査細分区レイヤーを、危険度が高く避難所への移動に時間がかかる区域のレイヤーにクリップします。

  1. [分析] ウィンドウの戻るボタンをクリックします。 [データの管理] カテゴリで、[レイヤーのオーバーレイ] をクリックします。
  2. [入力フィーチャ]Census_Blocks_2020 レイヤーを選択し、[オーバーレイ フィーチャ][Population in high risk areas] レイヤーを選択します。
  3. [オーバーレイ タイプ] で、[イレース] を選択します。
  4. 結果レイヤーに「Population distribution」という名前を付けて [実行] をクリックします。

    Population distribution レイヤーが [レイヤー] ウィンドウに追加されます。 これは複数の国勢調査地区を結合した結果であり、一連の青色のポリゴンとして描画されます。 すべてのデータがマップ上に配置されたので、これらのスタイルを設定します。

  5. [レイヤー] ウィンドウで、レイヤーのオン/オフを切り替えて順序を変更することで、次のレイヤーが示されている順序でマップ上に描画されるようにします。

    • Volcanos
    • Emergency Shelters
    • Population distribution
    • Population in high risk areas without shelter access

    レイヤーの順序を変更します。

    通常は、ポイント フィーチャをマップの一番上、ライン フィーチャをその下、ポリゴン フィーチャを一番下にしてベクター データを描画することをお勧めします。

  6. [レイヤー] ウィンドウで、[Population distribution] をクリックして選択し、[スタイル] ウィンドウを開きます。

    このレイヤーは元の国際調査レイヤーで行ったように点密度を使用してスタイル設定しますが、ここではそれより濃い色を使用します。

  7. [属性の選択] で、[フィールド] をクリックし、[2020 Total Population] を選択します。 [追加] をクリックします。
  8. [スタイルの選択] で、[点密度] をクリックし、[スタイル オプション] をクリックします。
  9. [シンボル スタイル] をクリックします。 [ドットの色] で、濃い青色のカラー ランプを選択し、[完了] をクリックします。

    濃い青色のカラー ランプ

  10. [シンボル スタイル] ウィンドウを閉じて [完了] を 2 回クリックします。
  11. [レイヤー] ウィンドウで、[Population in high risk areas without shelter access] をクリックして選択し、[スタイル] ウィンドウを開きます。
  12. [属性の選択] で、[フィールド] をクリックし、[SEVERITY] を選択します。[追加] をクリックします。
  13. [タイプ (個別値シンボル)] で、[スタイル オプション] をクリックします。
  14. [スタイル オプション] ウィンドウで、High Hazard のシンボルをクリックします。

    (分類) High Hazard のシンボルをクリックします。

  15. [シンボル スタイル] ウィンドウで、[塗りつぶし色] をクリックし、16 進数コード # ff2e14 を入力します。
  16. Very High HazardExtremely High Hazard のシンボルをそれぞれ # ff7d00 と # ffc800 に変更します。

    最終的なマップ

    危険区域が元のレイヤーと同じスタイルになりますが、レイヤーに適用されている透過表示が異なるため、少し明るくなります。

  17. [スタイル オプション] ウィンドウで [完了] をクリックします。 [設定] ツールバーにある [プロパティ] をクリックします。 [表示設定] グループで、[透過表示]50% に設定します。

    レイヤーの透過表示を 50% に設定します。

  18. マップを保存します。

このチュートリアルでは、溶岩流災害の危険度と人口について分析し、住民が火山避難所まで 15 分以内で移動できないハワイの地区を表示しました。 この分析に基づいて、住民が既存の避難所に 15 分以内に移動できない地区の近くにより多くの避難場所を設定することが有益となります。 分析にさらに磨きをかけるため、その他の到達圏を計算したり、避難時に支援を必要とする住人が暮らす地区を緊急時対応要員が容易に特定できるように人口危険因子を追加したりすることもできます。

現在の島の分析に使用した条件は災害発生時と同じではないかもしれませんが、このような分析は地方自治体や緊急時対応要員が十分な備えをするのに役立ちます。

他のチュートリアルについては、チュートリアル ギャラリーをご覧ください。