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The ArcGIS Imagery Book: 第 6 章

鏡の世界を作る

3D 画像で新たな次元を実現

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画像と 3D を融合させることで、写実的な世界を表現することができます。これを「鏡の世界」と呼びます。この仮想世界の地球では、遠隔的に取得した画像が、世界の真の形状やテクスチャを正確にモデリングするための基盤となります。鏡の世界は、単に見た目が良いだけのモデルだけではなく、正確な 3D マップへと進化を遂げました。これは非常に重要なことで、この進化により、真の 3D フィーチャ抽出、ボリューム解析、そして地球規模から建物内部に至るまで、対話的かつ写実的に地球を可視化できるようになりました。

3D 画像の進化


1990 年代以前は、メインストリームの 3D 画像は、地形の実際の測定値を、2D デジタル表現の地形図に変換するために使用されていました。このデータが 2D で表示されていたのは、3D ビューアーが一般的に普及しておらず、また 3D を扱うには膨大なコンピューティング要件が必要とされていたからです。

1990 年から 2010 年ごろにかけて 3D ソフトウェアが徐々に利用可能になりました。コンピューティング能力はムーアの法則どおりに向上し、反対に価格は下がっていきました。建物などの 3D オブジェクトは、GIS の中で現実世界をモデリングするために使用されるようになりました。3D GIS はまだそれほど導入されておらず、大半の 3D 作業は 2D マップを地形の 3D 表現の上にドレープする形で行われていました。3D オブジェクトは、技術力のあるデータ オペレーターがステレオ画像ペアを使用し、多大な労力を必要とするプロセスを経て作成されていました。この頃、ほとんどのユーザーは、3D オブジェクトを作成する方法をまだ理解していませんでした。

では、現代の技術はどうでしょう。私たちは今や、3D 画像の処理、センサーや画像から 3D 標高モデルの作成、編集、維持、解析や可視化を一気通貫のワークフローで行うことができます、また、没入型の 3D シーンをデスクトップ、ブラウザー、モバイル デバイスで共有できるようにもなりました。このようなタスクをすぐに実行できるようになったのはほんの最近の話です。デスクトップ、エンタープライズ サーバー、Web、モバイル デバイスで ArcGIS を使用することで、画像を利用して GIS を完全に 3D 対応にできるのです。世界的な気候変動、地域的な森林管理計画、持続可能で回復力に富み、住みよい都市の構築、公園や建物内での作業に至るまで、多岐にわたって役立てることができます。

オレゴン州ポートランドの都市開発計画を、既存の建物環境の中で比較します。このシーンでは、3D 地形が使用されている他、周辺の建築物は立ち上げられ、プロシージャル技術によって描画処理された 3D 建築物が示されています。このような可視化は、かつては技術に優れた専門スタッフが何時間もかけて行っていましたが、現在ではたった 1 人でもわずか数分で行えるようになりました。

ArcGIS に組み込まれた 3D


ArcGIS では、画像や GIS データを起点として 3D の世界に入り込むことができます。これは、写実的な体験になることもあれば、解析結果を対話的に操作する方法となったりもするでしょう。プロジェクト サイトをあらゆる角度から表示して探索したり、Web サイト用に 3D Web シーンを公開したり、あるいは新しい 3D レイヤーをゼロから作成するタスクも、ArcGIS では簡単に行うことができます。

大西洋を通過しているハリケーンがどのような経路をたどってきたかを表示したり、建物内部を案内したり、地下設備のフィーチャを見せたりすることもできます。

ArcGIS では、デバイスおよびプラットフォーム間での相互運用が可能です。3D シーンを複数のデスクトップ間で共有したり、Web 上で共有したりすることで、一般ユーザーからプロのプランナーやエンジニアに至るまで、特定のユーザーに応じた情報の詳細レベルを提供することができます。この新しいオープン スタンダードとなるサーバーベースの 3D ストリーミング技術のおかげで、3D 建物を 1 棟でもあるいは数百万棟でも、高機能で使いやすい Web シーンを使用して共有できます。

ArcGIS Pro は、プラットフォームの主要 3D 製品です。ローカルのデスクトップにインストールでき、直感的な環境で 2D レイヤーと 3D レイヤーを作成し、管理できます。ArcGIS Pro のパワフルな分析ツールを利用すると、独自の 3D 調査を実施できます。たとえば、屋上太陽光システムのポテンシャルの評価、冬至と夏至の日影による影響調査、建物内のさまざまな位置からの眺望を解析することで不動産を正確に査定するなどといったことが可能です。

最大のインパクトを引き出すために、ルールベースのプロシージャル モデリングを使用し、自分のアイデアやデザインを写実的な 3D で表現することができます。たとえば、未来の沿海都市や沿海地域を思い描く場合、自然を取り入れたデザインにするには、人口的に岩礁を作成する必要があるかもしれません。

こうした 3D コンテンツはすべて ArcGIS Online に格納し、簡単に共有して活用することができます。

3D の縮尺


2D マップでは、視点は上から下方向に固定されており、縮尺もマップ単位と実世界の単位との数値的な関係によって表されます (1:1,000 など)。3D の世界では、標高と画像がさらに独特で複雑な方法で組み合わせられており、1 つのビューには異なる複数の縮尺 (実際には距離) が存在することになります。表示中のウィンドウで前方にあるフィーチャは、後方にあるフィーチャに比べると近くに位置するため、縮尺も大きくなります。

3D の世界では、縮尺を表すために幅広い縮尺カテゴリが使用されます。これらのカテゴリは、地球全体を捉える大きなグローバル ビューから、極めてローカルな地域スケールまで、共通のデータ パターンや作業の種類に応じて定義され、マップ単位と実世界の単位との正確な数値的関係に依存するものではありません。

ArcGIS の 3D はあらゆる縮尺での表示が可能です。地球全体を見渡すことも、大陸、地域を見ることも、あるいは都市、街、建物やサイトなどの内部を見ることもできます。

地球全体から屋上までを可視化


グローバル

グローバル レベルの縮尺では、球形の地球で表現されるような大陸規模の現象やその状況を理解するために、3D シーンが使用されます。広範囲にわたるデータセットの一般的な例としては、気候、気象、海洋、地球規模の輸送、国や大陸に関する表現などが挙げられます。この縮尺では標高サーフェスははっきりと見分けることができず、画像の解像度も比較的粗くなります。

地域

地域レベルの縮尺には郡や省から、最大では国規模の領域が含まれますが、峡谷や山脈など、地形の表面で非常に大きな変化を見ることができます。データセットは幅広い範囲を網羅しますが、グローバル レベルの縮尺に比べるとより細かく、解像度も高くなります。

ローカル

ローカル レベルの縮尺では、建物などの 3D フィーチャが見られるようになり、テクスチャや建物環境、自然環境の範囲も明確に区別できるようになります。都市の計画や可視化、農業や農園の管理にはこの縮尺が使われることがほとんどで、 高解像度画像によって見やすさも向上します。また、細部にわたるローカルの標高サーフェスが追加されることが多いため、3D データと地形をさらに正確に配置できます。

サイト

サイト レベルの縮尺は、区画、キャンパス、地域の公園、並木など、複数の建物で構成されるエリアをカバーするデータセットを可視化するものです。屋内マップを 3D で表示することもできます。この縮尺では、正確で高解像度の標高データが不可欠であり、また、多くの場合は高解像度画像が使用されます。カスタム ベースマップを追加すると、建物内部の部屋やフロアにもズームすることができます。

LIDAR とレーダーによる標高データの取得


3D の作業では、地表面の形状が自然の基盤として使用されます。オブジェクトは地形表面の上、またはその下に配置されるからです。GIS では地表面はラスター形式の標高モデルか、場合によっては TIN (不規則三角形網) で表現されます。ラスター標高モデルは一般的に TIN に比べて使用される頻度が高く、地表を一定間隔のグリッドに分割し、それぞれのグリッド セルに 1 つの標高値が含まれるようにします。一方 TIN は、空間上の 3D ポイントの位置をサイズが不規則な三角形 (面) でつなげ、この小面内の任意の場所に対して一意の標高値を内挿することができます。

現在の標高モデルは、一般的にレーザーやレーダーを使用するリモート センシング技術を使用して作成されています。干渉合成開口レーダー (IFSAR) では、レーダー画像のペアを使用し、標高値を取得します。たとえば、2001 年の NASA Shuttle Radar Terrain Mapping (SRTM) ミッションでは、レーダーを使用して 30 メートルの分解能で地球全体の標高をマッピングしました。

LIDAR は高解像度標高モデルを作成する標準として、急速に導入されつつあります。LIDAR では定期的にレーザーをパルス照射して、非常に高精度、高密度の標高ポイントの「点群」を生成し、数値表層モデル (DSM)、数値地形モデル (DTM)、三角形メッシュ (TIN) などさまざまな情報を作成できます。

LIDAR は能動的なリモート センシング技術で、レーザーを使用して地物 (この例ではグランド クーリー ダム) に照射し、反射したパルスを記録してオブジェクトの 3D モデルを生成します。この場合、データは水、セメント、送電線などの LAS クラスにより色付けされています。
ルクセンブルグのヴィアンデン城について実施したこの 3D 調査およびドキュメンテーションは、この種の史跡に対してドローンベースの空中レーザー スキャンおよび写真測量で作成された 3D モデルとしては、これまでで最も詳細なものでしょう。

3D GIS の基盤

ベース標高


フィーチャの主要な 3D 属性の 1 つとして挙げられるのが垂直位置、すなわちベース標高です。これは建物や樹木などのオブジェクトの下辺部分が、いわゆる「地表面」の標高と接する場所です。視覚的な観点から、地形との整合性が重要です。地表と同一平面上に配置されるべきフィーチャが浮かんだり、埋没したりしないようにする他、3D 解析において、相対的な垂直位置を正確に捉える必要があるからです。

地表の数値地形モデル (DTM) は通常、フィーチャ (ポイント、線、ポリゴン、マルチパッチ (ボリューム)) に対して正しい Z 値を与えるためにサンプリングされます。単一の Z 値を適用し、フィーチャの位置を上下に垂直方向にシフトしたり、フィーチャを標高サーフェスにドレープすることもできます。

DEM

実質的には、地表の数値標高モデル (DEM) は、数値地形モデル (DTM) と同義語として使用されます。DEM プロダクトの品質は、標高の精細さ (つまり、各ピクセルの地上でのサイズ)、形状の正確さ、言い換えると、Z 軸方向の精度によって評価されます。

DSM

数値表層モデル (DSM) は、地表の樹木や建築物など、地表から突き出た地物の高さを含む標高モデルを表します。

3D GIS の基盤

主な標高モデル


DSM: 数値表層モデル

サーフェス モデルには、地形図や地表にあるすべてのオブジェクト (樹木や建物など) が含まれています。DSM の上に画像をドレープすると、シンプルな仮想世界を再現できます。あるいは、専用ツールを使用すれば樹木や建物などのフィーチャを新たに自分の GIS に追加することもできます。LIDAR では、一般的にファースト リターン データと呼ばれる最初に戻るレーザー パルスの標高値を使用して DSM を生成します。

DTM: 数値地形モデル

「地盤高」とも呼ばれる地形モデルは、建物や樹木などを削除した状態を指します。DTM を使用し、陰影起伏を生成、地形図の傾斜や太陽に対する向きを決定、地表水の流れを計算、建物などのフィーチャのベース高度を設定できます。

DHM: 数値高度モデル

高度モデルは使用頻度は高くありませんが、GIS を 3D 対応にするために欠かすことができません。建物や樹木などのフィーチャの、地表からの高さを計算するために使用されます。高度モデルは、地形モデルと表層モデルとの差を計算することで作成されます。LIDAR は、DHM 生成に使用されることが増えています。ダグラス ファー原生林の樹冠の高さを表すこのプロファイルも、その一例です。

測深学

海底または湖底の地形図は海底地形と呼ばれ、陸上での地形データと同じ方法で使用されます。海底地形データは一般的にソナーを使用して収集されます。ソナーは、アクティブ型センサーとしては LIDAR に似ていますが、測量は水面の船舶から行われます。沿岸の浅瀬の海底地形データは、航空機から収集されることもあります。

Web シーン

GIS データの 3D 化


ArcGIS では、3D マップはシーンと呼ばれ、Web やブラウザーで使用される 3D マップは Web シーンと呼ばれます。基盤としては地形を使用します。すべての 3D シーンの作成は、必要な数の 2D マップをサーフェスの標高カバレッジにドレープすることから始まります。3D 化するための最も簡単で迅速な方法は、画像やベースマップをベースの標高サーフェスにドレープすることです。GIS レイヤーの多くはすでに 3D に対応しており、また 3D 対応していないレイヤーもわずか数ステップで 3D 化することができます。この事実は多くの GIS ユーザーにとって驚きに違いありません。

画像を 3D 表示にすると、写実的な Web シーンをすぐに基盤として使用できます。Web シーンには 2D レイヤーや 3D レイヤーを簡単に追加できるため、3D GIS の没入型のエクスペリエンスを実現できます。
標高を基盤にすることで、実質的にどの 2D マップ レイヤーでも魅力的な 3D シーンに変換でき、素晴らしいユーザー エクスペリエンスを提供することができます。この基盤は、3D マッピングで表現できることの最初の 1 つにすぎません。

正確な基盤の作成


高解像度の標高データの収集 3D ベースマップの作成 2D フィーチャを 3D に変換

高解像度の標高データの収集

大縮尺に拡大して使用するための高解像度の標高データが必要な場合、比較的新しい 2 つのソースを使用することで、詳細レベルを向上させることができます。たとえば LIDAR 測量やドローン空撮などです。いずれも、高解像度のサーフェス標高データを生成するために使用されます。高解像度 LIDAR 測量は急速に発展してきており、3D GIS をまったく新しい用途で活用できるようになっています。

ドローン空撮を使用して、撮影した写真からピクセルごとに標高値を生成することもできます。これで、地表での標高の読み取りだけでなく、観察されたすべてのフィーチャの高度ので数値表層モデルを生成することができます。

この画像は、地盤高と植生バイオマスの標高モデルを分離した様子です。バイオマスと表層の高さは、シグナルのファースト リターンの一部として捕捉されます。一方で地盤高は、LIDAR の反射データを解析して計算され、DTM 標高モデルとして抽出されます。
ここでは、一般ユーザー向けのドローンで収集し、Drone2Map で処理された数値表層モデルと、真上から見た状態に投影したオルソモザイク画像を横に並べて比較しています。

3D ベースマップの作成

ArcGIS には、世界のほとんどの場所の標高を 30 メートルの解像度で表示できるグローバル標高ソースがあらかじめ用意されています。LIDAR やドローンの撮影画像など、より解像度の高い標高ソースがある場合は、対象の領域にズームしたときにのみ利用できる形で詳細な標高モデルデータを追加することで、大縮尺の 3D マッピング レイヤーを独自に作成できます。

三次元のサーフェスにドレープされたデータには、新たな視点がもたらされます。ヒマラヤ山脈の画像データであれ、ナショナル ジオグラフィック風のベースマップであれ、ラスター データは 3D で新たな形に生まれ変わります。

2D フィーチャを 3D に変換

2D GIS フィーチャの一部は、各 2D フィーチャに属性をいくつか追加することでクリエイティブに表現し、3D GIS で使用することができるようになります。

樹木の位置は、ポイント フィーチャとして収集できます。シンプルな属性 (種類、一般名、高さ、樹冠部の幅など) を追加することで、現実的な特性をシンボル化し、樹木のシンボルのカタログから樹木を表現し、サイズを調整して樹木のポイント位置に配置できます。
建物は、高さまたはフロア数に応じて立ち上げることができます。また、必要に応じて詳細レベルを変えてモデル化することも可能です。2D の建築物のフットプリント (左) はブロック状の建物 (中央) として単純に立ち上げるか、各壁面に細部を構築することでモデル化できます (右)。

建物と樹木の高さのモデリング


3D フィーチャの高さは、フィーチャと地表サーフェスとの交差部分と、フィーチャの高さが最も高いポイントとの距離を測定することで決定されます。この基本的な Z 値情報を使用して、2D フィーチャを立ち上げたり、既存の 3D モデルを適切な高さまで伸張することができます。

分類された LIDAR データを使用すると、これから生成される数値地形モデル (DTM) を数値表層モデル (DSM) から除算して、「地表からの高さ」ラスター、または正規化数値表層モデル (nDSM) を生成することができます。次にこの nDSM ラスターの値は、2D または 3D GIS フィーチャ内でサンプリングされ、立ち上げまたは垂直方向のスケーリングの際にジオメトリに適用される高さの最大値を決定することができます。

建物

建物のフットプリントはまず、テレイン サーフェスに位置合わせされます。次に、高さの値まで立ち上げられ、最後に属性 (フロア数など) に合わせてテクスチャ処理を行います。

樹木

樹木も、画像や LIDAR から抽出されるフィーチャです。樹木の高さは、建物のベース標高と最大高さを決定するときと同じ手順により、手動または自動で抽出することができます。次に樹木の種類 (オークなど) に応じた詳細の 3D シンボルを適用し、各樹木の高さに応じて垂直方向に、そして樹冠部の幅に応じて水平方向にスケーリングして、写実的なシンボルを作成することができます。

LIDAR から高さの属性と樹冠部の幅の属性を取得することで、写実的な 3D 樹木モデルをスケーリングすることができます。

3D 建物の表現


3D 建物は、詳細レベルまたは精度の範囲内で表現できます。この範囲は通常、これらの建物を収集するときに使用される手法やソース データによって決まります。以下に示した詳細レベル (LoD) は、仮想的な 3D 都市モデルの表現手法である CityGML によって普及したもので、実世界の 3D 構造物の抽象化の度合いを表しています。各 LoD はテクスチャ処理された形でも、テクスチャ処理されていない形でも適用でき、選択した詳細レベルの妥当性は、建物のジオメトリを抽出する元データと、3D 可視化と解析の具体的なユース ケースが得られるかどうかによって異なります。たとえば、LoD1 の建物は、屋根の形状を正確に捉えられないため、日影による影響や屋上太陽光の解析には適していません。同様に、写実的にテクスチャ処理された LoD4 の建物は、概観を使用する 3D 解析では必要とされないような細部も含まれています。

LoD0 - 詳細レベル 0 の建物は、単なる 2D フットプリントであるかベース標高情報を含むポリゴンです。言い換えると、地表サーフェスと何らかの形で垂直方向に位置合わせされている状態です。

LoD1 - LoD1 の建物は、一定の高さに立ち上がっているポリゴンで、水平面と垂直面でのみ構成される閉じられた 3D 外殻構造になります。LoD1 の建物は簡単に作成でき、相対的な高さも表示できますが、ジオメトリが簡素化されているため、3D 解析よりも 3D 可視化に適しています。

LoD2 - LoD2 の建物の外殻構造には、垂直の壁面に加え、屋根のジオメトリが含まれる他、煙突や屋根窓といった細部が含まれることもあります。LoD2 建物は、日影による影響、見通し、屋上太陽光パネルのポテンシャルなど、さまざまな 3D 解析に適しています。

LoD3 - LoD3 建物の外殻構造には、LoD2 建物と同じように細部にわたる壁面および屋根のジオメトリが含まれますが、窓、扉、柱など構造上の細部がさらに追加されています。LoD3 建物は、ストリートレベルの可視化や、的を絞ったサイトの解析など、近づいたときの写実感が重視される場合に適しています。

LoD4 - 建物の外殻構造には、細部にわたる概観の特徴だけでなく、インテリアの壁、フロア、扉、什器類なども含まれます。LoD4 建物は、屋内の GIS や可視化に適しています。

3D 屋根形状の抽出


これまで、写実的な 3D 建物は、ほとんどの自治体や都市計画者の技術力では作成不可能とされ、GIS 技術者が最も役に立つ場面でした。このようなデータの作成には法外なコストがかかることも珍しくありませんでした。しかし、高解像度の LIDAR や写真測量で測量される市街地が増えてきたことから、細部にわたる 3D 情報を入手しやすくなりました。そのデータを基に、建物のモデリングに必要な高さ情報だけでなく、屋根の形状も正確に把握できるようになったのです。

プロシージャル技術によりモデリングするうえで重要なのは、建物の屋根のジオメトリを正確に表現することです。このジオメトリを捕捉するために必要な属性は、以下のとおりです。

高さの合計 - 建物の最も高い部分の高さ (つまり屋根の棟)。

ひさしの高さ - 建物の屋根形状の主要なひさしの高さ。

屋根形状 - 屋根形状 (陸屋根、切妻、寄棟など)。

屋根の方向 - 屋根の棟の向き。

これらの属性は、技術者が建物を検証して手動で入力することもできますが、自動処理を使用して ArcGIS の標準ツールに基づく屋根形状情報を抽出することもできます。このプロセスについては、本章末尾の「Learn ArcGIS のレッスン」をご参照ください。

プロシージャル技術により 3D 建物を作成するための基本的な属性
数値表層モデル ラスターに重ね合わせた建物のフットプリント ポリゴン (左) と、傾斜角と傾斜方向で分類された屋根

オピニオン リーダー: Pascal Mueller

都市の将来をマッピングする


現在、世界の人口の半分以上が都市部に住んでおり、その割合は増え続けています。2050 年になっても農村人口の規模は現在と同程度と予測されていますが、都市部の住民の総数は倍増し、70 億人に上るとされています。その結果、都市は面積が著しく拡大し、高さも増すでしょう。

3D GIS は、このような都市部の未来を形作る重要なツールです。都市空間には 3D の建物が複雑に寄り集まっており、住居、ビル、区画、ブロック、地区に整理されています。これらの構造物は、道路、歩行者ルート、地下鉄などの各種輸送網でつながっており、複数のエネルギー網および公共設備網に接続されています。ArcGIS などの 3D GIS はさまざまなツールを提供しており、このような既存の構造物のモデリングと管理に使用することができます。このような都市形成は、いわゆるスマート シティに発展します。つまり、すべての部門が互いに接続され、インフラストラクチャのパフォーマンスと都市サービスの質がリアルタイムにモニタリングされます。

これまでは、3D での都市空間のモデリングと計画の大半は手動で行われており、大量のリソースが投入されてきました。しかし、都市の 3D コンテンツの要件が質量ともに増えていることから、迅速かつ半自動的な都市モデリング、設計、シミュレーションが可能な、代替的なソリューションのニーズが高まっています。その例として、2D フットプリントから 3D 建物の外殻構造の可視化、高層マンションの 3D 地籍記録の維持、3D による区画規制の管理と、区画改正による経済的影響の調査の他、マスタープラン作成が挙げられます。マスタープランでは、都市再開発の遂行 (通常は高密度化のシナリオ) における空間の需要、交通渋滞の影響、持続可能なエネルギーの利用、生活の質がシミュレーション、解析、最適化されます。

3D の機能は ArcGIS 全体で使用できます。これによりスマート シティと市民が効果的かつ活発に関わりを深めることができます。こうして 3D 情報を簡単に広く共有できるようになるため、決定したデザインを効果的に周知したり、都市に関するビッグ データを 3D を背景として可視化したりすることが可能になります。

Pascal Mueller は、ArcGIS の 3D ソフトウェアと、アカデミー賞にもノミネートされた手続き的な都市モデリング ツール City Engine が開発された Esri R&D Center Zurich (チューリッヒ) の所長を務めています。
Pascal と CityEngine 開発チームのご紹介

テクスチャ処理


画像を建物などのフィーチャに適用すると、空白の 3D ジオメトリを写実的な、詳細にわたる 3D モデルに変換できます。航空画像や低角度の斜め撮影 (またはストリートレベル) 画像は、写実的またはプロシージャル技術によって、個々の建物の面に貼り付けることができます。

写実的なテクスチャ

写実的なテクスチャは、航空写真や斜め撮影写真から生成され、実際の建物や地物を 3D モデリングする際に使用されます。建物のすべてのサーフェスには固有のテクスチャが適用され、実世界での個々の面や屋根のサーフェスを表現します。このアプローチでは、データ取得にかかるコストと労力が多くなりますが、非常に写実的な 3D シーンを作成できます。たとえば、見慣れた建物や有名建築物を、構造的な細部まで写実的に再現できます。

プロシージャル テクスチャ

プロシージャル テクスチャ処理では、3D 建物形状に対し、地理的または構造的に典型的な外観や屋根のテクスチャを適用します。これらのテクスチャは、テクスチャ処理されていない既存の 3D 建物モデルに適用することもできますが、2D フットプリントをテクスチャ処理済みの 3D 建物に変換する、手続き的なモデリング処理の一環として適用することもできます。

プロシージャル テクスチャは、各建物のテクスチャのタイプや、テクスチャを繰り返す回数を決定するルールに従って適用されます。テクスチャは通常、斜め撮影写真またはストリートレベルの画像から収集されます。その後、その画像には、建物やフロアの壁面に沿ってシームレスに繰り返すことができるように幾何補正や編集が行われます。

非常に写実的な 3D 建物を作成するために、テクスチャ ライブラリをグループ化し、建物の土地利用タイプ、高さ、フロア数、地域的な建築様式に合わせて適用できます。多くの場合、テクスチャ ライブラリは 1 階部分 (通常は他のフロアよりも天井が高く、エントランス ドアや店舗の軒先がある) と、2 階から上の部分 (均一的に繰り返される) の 2 つのグループに分かれています。

プロシージャル テクスチャ処理が施された建物のテクスチャは、実世界のテクスチャと完全に一致するわけではありませんが、さまざまな建築様式の外観に似せたテクスチャを安価に生成することができます。プロシージャル技術により作成された建物は、建物の高さや様式を簡単に変更でき、さまざまなシナリオを検討できることから、都市計画でも非常に便利です。

写真によりテクスチャ処理された、写実的なフレンチ アルプスのモンブラン
正確にテクスチャ処理された、インディアナ州インディアナポリス中心部の写実的な 3D 建物モデル
プロシージャルによりテクスチャ処理された、サウスカロライナ州グリーンビル中心部の 3D 建物

3D データの収集

ドローンで 3D データを取得するには


現在の技術革新時代において最大の奇跡の 1 つとして挙げられるのは、ドローン画像や Drone2Map (Esri の新しいアプリケーション) を使用し、小規模な調査エリアの 3D マップを生成できるようになったことです。ここで示す基本的な建物調査ワークフローでは、ドローンはあらかじめプログラミングされた経路を飛行し、一連の斜め撮影画像を撮影します。その後、ソフトウェアを使用して 3D シーンを作成します。

1. 飛行ミッションの実施

この建物を査察するため、ドローンはほぼ完ぺきな円形 (黄色) で飛行しています。撮影ポイントを青の点で示します。

2. 斜め撮影写真の撮影

ここでは、ドローンの高解像度カメラで撮影された 40 枚の斜め撮影写真のうち 4 枚を示しています。

3. 3D シーンの作成

Drone2Map の出力形式の 1 つとして、3D PDF があります。これは、3D シーンを GIS ユーザー以外の人々に確実に共有する方法として最適です。

ケース スタディ: Oatlands House のミッション


200 年前、ジョージ・カーター氏はバージニア州リーズバーグの Oatlands Historic House and Gardens を設計、建築を手掛けました。今日、Oatlands House は歴史的建造物として保存されています。施設管理者は、ドローン画像を基に、精度の高いデータを迅速に、かつ大量に取得することができました。これには、細部にわたる 3D モデルが含まれ、地形の変更案 (樹木を大量に伐採するなど) を可視化するために使用できます。

ミッションに関するビデオを見る

3D シーン

この 3D Web シーンは、一般ユーザー向けの個人用ドローンを使用して収集された点群から生成されています。このシーンは、ドローン ミッションの完了後、30 分以内にオンラインで使用可能になりました。

メッシュ

メッシュとは、地理空間を重なり合わない連続する三角形に分割したデータ構造で、RGB 値で描画することができます。

数値表層モデル

同じ場所の数値表層モデルでは、情報量が多く、詳細な標高データによって、印象的な画像となっています。

クイックスタート

画像を 3D で表示できる ArcGIS アプリ


City Engine クイックスタート

シーン ビューアー

シーン ビューアーは ArcGIS Online Web サイトに組み込まれたアプリで、3D シーンの作成と操作に使用します。シーン ビューアーは、ほとんどの最新のブラウザーに組み込まれている WebGL という 3D グラフィックスをレンダリングのための Web 技術標準をサポートするデスクトップ Web ブラウザーで動作します。サイン インすれば、独自のシーンを作成することもできます。

Drone2Map

Drone2Map for ArcGIS は、ドローンで撮影した未加工の静止画像を ArcGIS でオルソモザイク画像、3D メッシュ、タイル画像などに変換することができます。アクセスしにくい地物やエリアの 2D マップや 3D マップを作成します。

ArcGIS Earth

ArcGIS Earth は無料で提供される軽量のデスクトップ用アプリで、誰でも 3D マップを簡単に表示できます。ArcGIS Earth は Windows デスクトップおよびタブレット向けに提供されています。

CityEngine

CityEngine は、シナリオ主導型の都市設計をしたり、プロシージャル技術により構築されるデータを作成するためのルールを開発できる高度なツールです。

Learn ArcGIS のレッスン

自治体のグリーン・イニシアティブ評価のための屋根形状の抽出


概説

オレゴン州ポートランド市役所は、市中心部周辺の建物が、市が新たに制定した環境イニシアチブに則しているかどうかを評価することにしました。この評価には、太陽光および日影の解析など、地域の 3D シーンや建物の写実的な屋根形状を必要とするさまざまな指標が含まれます。基本的な 3D シーンは、詳細レベル (LoD) 1 建物、すなわち、建物のフットプリントが均一の高さで立ち上がっているものを使用します。市役所では、ひさし、切妻、傾斜などの屋根形状の属性を表す LoD2 建物を使用することにしました。

ここでの目的は、LoD2 建物でポートランドの一地域の 3D シーンを作成することです。ArcGIS Pro タスクを活用し、LIDAR データから生成した点群データセットを作成し、それを基に地域のデジタル標高モデルを作成します。標高モデルのパターンに基づき、屋根形状に関する属性データを建物のフットプリントに追加し、ルール パッケージを使用してフットプリントを 3D でシンボル化します。最後に、建物にエラーがないことを確認し、不正なフィーチャを修正してからデータをマルチパッチ フィーチャクラスに変換します。こうすると、市役所とも共有しやすくなります。

このレッスンで習得できるスキル:

  • ArcGIS Pro のタスクを使用したワークフローの実行
  • LIDAR データからの LAS 点群データセットの作成
  • 3D シーン用の LoD2 建物の作成
  • 3D フィーチャの編集

必要なもの:

  • ArcGIS Pro 1.2.0 以上
  • 所要時間: 1 時間 20 分
レッスンの開始

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Turning Imagery into Information

Analyzing imagery to create understanding

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