非常に大規模なコレクションの管理
左側は、ミシガン州、イリノイ州、ウィスコンシン州の周辺エリアのモザイク概要で、右側は農地のビューです。NAIP (National Agriculture Imagery Program) によるこのモザイク データセットは、400,000 をはるかに超える個別の画像タイルを含み、米国本土をカバーします。このモザイク データセットには、各 NAIP 画像の複数のバンドにわたる完全な情報、および複数の縮尺で画像を操作するための概要が含まれています。
プロフェッショナル ユーザーにとって、画像と GIS は、デジタル ジオグラフィの分野を互いに補い合うものとして密接に関連した概念でありながら、それぞれ独立したものと認識されてきました。ユーザーは GIS と画像処理にそれぞれ別のシステムを導入してきました。これら 2 つのシステムを ArcGIS 内で本質的に統合するという素晴らしいアイデアが生まれ、従来ベクター中心だった GIS の世界で画像の利用が広範囲にわたって急激に広がってきています。
画像は長い間、GIS の応用分野において幅広く相乗的に寄与する GIS の基盤となってきました。実際のところ、この数十年の間に GIS が幅広く着実に普及してきた背景には、画像とリモート センシングの貢献がありました。画像は、写真ベースマップの作成や、地理フィーチャを抽出、トレース、あるいはデジタイズする基礎となる情報を作成でき、ポイント、ライン、ポリゴンを使用して地理情報を表すベクター GIS とは互いに補完し合う関係にあります。
包括的に画像を統合する装置である ArcGIS は、世界中で絶え間なく取得されている航空機や衛星、ドローン、そして地上からの撮影を行う画像センサーの活用への扉を開いてくれます。デジタルで取得されたこのような観測データは、地理空間に位置合わせされ、タイムスタンプが付与されることで時系列のアプリケーションでも使用できます。こうして作成された情報レイヤーは、世界中で蓄積されている GIS ナレッジに絶えず追加され、地理情報を使用して作業する人々は、さらに多くの作業をより迅速に行い、より広範な影響を及ぼすことができるようになるのです。
ArcGIS は、従来の GIS 機能に加えて、画像とリモート センシングの適用、使用、統合をサポートする包括的な画像処理システムも組み込んでいます。
この統合の基礎となっているのは、画像と GIS を結び付ける、重要な統一的概念です。この章では、これらの重要な概念について、GIS 内での画像の能力を示す例を挙げながら説明します。
地球観測画像には、デジタル写真のように、ArcGIS での情報のインテリジェントな活用を可能にする重要なメタデータが含まれています。ソフトウェア アルゴリズムは、この情報を使用して、かつては煩雑であった画像ジオリファレンスの技術的手順の多くを自動化します。
GIS データの特徴となっている性質は、すべてのレイヤーが地球 (または他の惑星が調査エリアの場合はその惑星) の表面を基準とするということです。画像データにも、他のあらゆる GIS レイヤー タイプと重ね合わせたり一緒に使用したりするための空間参照が含まれます。これにより、ArcGIS が完全な画像統合プラットフォームとなります。
画像は、GIS レイヤーでもあります。すべての地理情報と同様に、画像は地球上の場所にジオリファレンス、つまり、GIS 上で他の地理レイヤーに位置合わせされます。このような重ね合わせは、GIS の基本となる概念です。画像は、他のマッピング可能データと重ね合わせることにより、単なるきれいな絵ではなく、真の情報ソース、つまり、同じエリアの他のデータ レイヤーと結合、比較、解析可能なデータとなります。
ラスターが地理的に位置合わせされた画像ファイルであることが理解できると、そのことが汎用的に適用可能でシンプルなデータ形式の基礎であることがわかります。すべての画像は、ラスターの集合としてシンプルに管理できます。同様に、すべての GIS データセット (ベクター フィーチャ、連続サーフェス、時系列情報) も仮想的にラスターの形式で表現することができます。
このように、GIS は画像の構成と理解に役立ちます。ある地理的な広がり (縮尺と範囲) を持った個別のデータセットを積み重ねて多層のレイヤー (データ キューブとも呼ばれる) を形成することができるため、さまざまな独立したレイヤーを無限に統合することも可能です。その結果、画像は GIS で多くのレイヤーを提供し、驚くべき力を生み出します。
画像には大量の情報が含まれますが、未処理の航空画像や衛星画像を GIS で使用できるようにするには、すべてのピクセルが地表で正確な (x,y) 位置となるように処理しなければなりません。写真測量は、画像を処理して、オルソ幾何補正された画像と呼ばれる正確にジオリファレンスされた画像 (単にオルソ画像とも呼ばれる) を生成するために、何十年にもわたって開発されてきた分野です。オルソ幾何補正された画像は、センサー システムからの光学的な歪みと、センサーの視野角と地形の関係による地上物体の位置ずれを補正するように処理されています。
オルソ幾何補正プロセスには、センサーの正確なパラメーター (通常は、センサー モデルと呼ばれる)、センサーの位置と各画像の向きに関する詳細な情報、および正確なテレイン モデル (ArcGIS Online から利用可能な World Elevation サービスなど) が必要です。オルソ幾何補正された画像は、GIS 内で使用して、他のデータ レイヤーと正確に重ね合わせることができます。
リモート センシングによって収集される最も特徴的な画像タイプの 1 つは、マルチスペクトル画像です。各画像は、電磁スペクトル上の特定の波長領域 (バンド) を観測する一連のオンボード センサーで取得されたデータで構成されます。以下の表は、Landsat 8 画像によって観測される波長 (バンド) の全リストです。各バンドによって取得される内容が異なります。以下の画像は、さまざまなバンドを組み合わせて赤、緑、青のディスプレイ表示またはハードコピー印刷に出力することによって何が「見えるか」を示した例です。
画像を管理および処理するために ArcGIS 内で推奨されるデータ構造は、モザイク データセットです。モザイク構造では、大規模な (巨大でさえある) 画像コレクションに対する重要なビッグ データ機能が利用できるようになります。各モザイクは、多数の関連するラスター データセットで構成されているため、元の個別の画像ファイルをディスクに保存しておき、大規模な統合された 1 つのコレクションの一部としてそれらにアクセスできます。モザイクは、広いエリアにわたる連続画像サーフェスの作成に使用されます。たとえば、モザイクを使用して、数あるシナリオの中でも特に、大陸全体の非常に高解像度な画像ファイルのカバレッジを処理できます。また、ある国の古地図シリーズ全体を、年ごとおよびマップ縮尺ごとに管理できます。さらに、地球観測および気象予報モデリングの時系列情報の巨大な多次元コレクション (多くの場合 4D と呼ばれる) を管理することもできます。モザイクの作成は簡単です。ジオリファレンスされた一連のソース画像ファイルをポイントすることで、各画像がコレクション内でタイルとして機能するモザイクを数分で自動的に構築できます。
左側は、ミシガン州、イリノイ州、ウィスコンシン州の周辺エリアのモザイク概要で、右側は農地のビューです。NAIP (National Agriculture Imagery Program) によるこのモザイク データセットは、400,000 をはるかに超える個別の画像タイルを含み、米国本土をカバーします。このモザイク データセットには、各 NAIP 画像の複数のバンドにわたる完全な情報、および複数の縮尺で画像を操作するための概要が含まれています。
画像のモザイク処理は、ArcGIS Online でモザイク画像としてアクセス可能な 175,000 の古い USGS マップを含む Historical Topographic Map Explorer のように、スキャンされた古地図で構成することもできます。独自の古地図や昔の航空写真をジオリファレンスし、それらを組み合わせてモザイクを作成することもできます。
多次元データは、場所、海の深度、および日付別に取得されます。地球科学者は、多くの場合、このデータを 4D と呼びます。それは、このデータが場所を 3 次元で表し、時間をもう 1 つの次元とするためです。モザイク データセットは、多次元データの管理と適用に役立ちます。
ラスターでは、ほとんどすべての種類の地理データセットをサポートするシンプルな汎用データ形式を提供することで、多岐にわたる高度な空間処理や数学関数を簡単に実行できます。また、ラスターを使用すると、シンプルなワークフローで、関心を引く複雑なあらゆるタイプの解析処理や演算を実行することができます。ラスター セルは、互いに積み重ねられると、ある種の処理可能なデータ「スタック」になります。
どの GIS データ レイヤーでも、グリッド形式のデータセットに変換し、他のデータセットと組み合わせることで、多くのレイヤーを含むことができるスタックを作成し、有用な解析モデルでデータを結合できます。
ArcGIS では、ラスター レイヤーとツールを組み合わせて、プログレッシブ モデルが作成されます。各ラスター解析ツールは、地理データに対して単純で重要な処理を実行します。たとえば、加重オーバーレイでのレイヤーの結合、各セルから特定のフィーチャまでの距離の計算、サーフェス上のフロー パスのトレースなどです。また、これらの派生レイヤーを、さらなる結果を生成する追加のツールに入力することもできます。これにより、一連の処理を連結して、独自の空間解析アルゴリズムを作成できます。これらのアルゴリズムでは、ArcGIS を使用して、考えられるほとんどすべての種類の空間的問題をモデリングできます。
過去数年間にわたって、Esri の海洋図ベースマップ チームは、世界の科学的関心が北の方に移っていることに注目してきました。北極海における海氷の減少と船舶航行の増加が表面化し、海洋および海運コミュニティで議論の中心となっています。このようなコミュニティをサポートするため、Esri の海洋図ベースマップ チームは北極海ベースマップを開発しました。
北極海ベースマップは、地球のこの地域に向けて最適化された極投影法を使用します。アラスカを中心とするランベルト正積方位図法を使用すると、北極海ベースマップが、極中心のアプリケーションに対してシームレスにつながります。現在、北極海ベースマップが取り上げているのは、Esri の結束力の強い海運コミュニティから提供された信頼できる測深データのさまざまな海洋ソースからのデータです。世界海洋図ベースマップの Web メルカトル バージョンと同様、北極海ベースマップは 2 つのマップ サービスで構成されています。この Web マップでは、ベース サービスと参照サービスを結合して、マップの「サンドイッチ」が作成されます。
1,500 人を超える人がエベレストに登り、 300 人を超える人が宇宙旅行をして、12 人が月面を歩きましたが、海の最深部に降りて帰ってきた人はわずか 3 人しかいません。我々は、オデッセウスのように、船で海に行って内部の世界を探索する必要があります。その画像を収集するために、我々は船上のサウンド センサーと上方および下方のリモート センサーを利用します。その後、GIS を利用して、この多種多様なデータを使用可能な情報に変換します。この情報は、生息地のマッピングや復元、保護エリアの設計、深海魚場の管理、避難に向けた津波上昇のモデリング、原油流出への対応、港湾ナビゲーションの改善、嵐が海岸を侵食する様子の把握などに使用できます。また、この情報は発見にも使用します。私たちの「新たな」未開拓地帯には、30 億年以上の歴史がありますが、我々はその 10 分の 1 をマッピングするのがやっとで、しかもそれは州立公園のハイキング マップの詳細レベルです。
それでも、深く暗い海洋探索の将来は我々にかかっており、明るいように思えます。私たちは優れたセンサーと解析法、およびそれらがお互いに最大限の能力を発揮できる方法を開発しています。長年にわたって、衛星および航空機上のセンサーが水面上の事物をうまく感知してきましたが、海中の事物は感知できていません。空中センサーは電磁エネルギーを利用するため、深くなるほど (水柱と呼ばれる海面から海底への概念)、そのエネルギーが歪み、消散します。ただし、音波は、水中をより遠くより高速に伝わることができます。そこで、私たちは水中音響センサーを利用して、水柱を視覚化しました。私たちは、音響信号の強度 (後方散乱) を使用して、物体の形状と海底の特性を解明します。たとえば、堆積物の多いエリアは、通常、反射がありません。一方で、最近噴火した海底火山からの溶岩の流れはガラス状で、きわめてよく反射する傾向にあります。沈没船や墜落機などの金属製の物体も反射します。
音響センサーを使用した航海により、私たちは最高の詳細レベルの画像を取得しましたが、そのような系統的調査が少なすぎます。そこで、私たちは、水中のビデオ撮影や写真撮影によるリモート センシングを必要とします。また、さまざまな次元、解像度、精度のデータを、内部空間を本当に理解するための画像に変換する GIS も必要です。
Landsat 8 データは、インターネットに接続していれば誰でも利用できます。AWS (アマゾン ウェブ サービス) によって Landsat 8 データが自由に利用できるようになったため、Landsat データの格納コストやダウンロードに必要な時間を心配せずに、誰でもオンデマンド コンピューティング リソースを使用して、解析を実行したり、新製品を作成したりできます。2015 年のすべての Landsat 8 シーンだけでなく、2013 年と 2014 年の雲が映っていないさまざまなシーンも利用できます。新しい Landsat 8 シーンはすべて毎日公開され、多くの場合は撮影後数時間以内に利用可能になります。
Landsat は、独自の方法で地球を眺めます。世界のあらゆる場所の画像を撮影し、火山活動から都市のスプロール現象まで、地球の秘密を明らかにします。Landsat は、人間の目で見られるものだけでなく、電磁スペクトルによって広い範囲を捉えます。Landsat は、地球上のあらゆる場所の画像を 16 日おきに撮影するため、我々はそれらの場所がどのような経時的変化を遂げているかを見ることができます。
Esri はこのイニシアチブに積極的に参加しています。Amazon は、アマゾン ウェブ サービスのクラウド上で USGS からの 1 ペタバイトの Landsat 画像をホストして、GIS ユーザー コミュニティがその画像にアクセスして使用できるようにしています。Esri はその一歩先を行き、一般ユーザーがアクセスできる一連の Web サービスを作成して毎日更新しています。毎日、最新の Landsat 8 シーンが追加され、以前のシーンと共に直接アクセスできるようになります。これらのサービスはマルチスペクトルおよび時間対応で、最新の小さいピクチャだけではなく、Landsat からの完全な情報コンテンツも提供します。
2015 年の夏季に、モンタナ州のグレイシャー国立公園は山火事の被害に見舞われました。火災が鎮火すると、モンタナ州の森林資源管理局は、被害を受けた地域を定量化するために焼け跡を計測しました。焼け跡の計測は、森林を再生し、植生を持続するための基礎となります。ただし、地表面での計測は困難で、現実的には不可能です。その代わりとして、衛星画像を計測の基盤として使用できます。
このレッスンでは、モンタナ州の森林局で働く地理空間科学者として、グレイシャー国立公園の被害を解析する役割を果たしていただきます。最初に、山火事の前と後に撮られた Landsat 8 画像を比較します。次に、焼け跡の強調表示と定量的な評価のため、火災後の画像内のバンド割り当てを変更します。その後、この画像を基に、正規化した燃焼指数 (焼失地域を強調するよう作成された比率) を計算して、評価を定量化します。最後に、焼け跡を表すフィーチャクラスを作成して焼け跡の面積を計算し、ArcGIS Online にその結果を公開して森林局と共有します。