世界中で何十億ものスマートフォン、タブレット、ラップトップ コンピューター、その他のインターネットに接続したデバイスが使用されている中で、スタンドアロン アプリが世界の注目を集めています。特に、GIS アプリは地理情報に対する人々の考え方を変えました。どのマップにも、そのマップを使うときにユーザー エクスペリエンスを提供してくれるインターフェイスが備わっています。このユーザー エクスペリエンスによって、GIS はその能力を発揮します。ここでは、最新の高解像度な地形計測機能を提供する Arctic Elevation Explorer アプリを紹介します。
アプリは、軽量なコンピューター プログラムで、Web、スマートフォン、タブレット、その他モバイル デバイス上で実行できるように設計されています。その中でも GIS アプリは特別です。アプリの中心はマップであり、空間的な情報を利用することができます。
今日、アプリは広く普及しています。世界中の何十億という人が Web ブラウザー、コンピューター、そしてモバイル デバイス上でアプリを実行しています。地理に対応した興味深いアプリを、誰もが簡単に作成できるようになりました。直感的なストーリー マップ アプリや Web AppBuilder for ArcGIS®、スマートフォンやタブレット向けのアプリ コレクションに至るまで、GIS を新たな利用者にまで幅広く届ける非常に効果的なアプリを展開するために必要な技術は、世界中の GIS の力と活用範囲に変化をもたらしています。
多くのアプリは、効率のよいユーザー エクスペリエンスを実感できることを主眼においたワークフローを使用して作成されています。これらは、ユーザーを特定のストーリーやタスクまで誘導したり、そのタスクに必要な情報のみを表示したり、メッセージを効率的に伝えることができるよう設計されています。
この章では、アプリの作成の基盤となるものや、独自のアプリの作成方法について説明します。ArcGIS で実際の作業を行う場合に利用されている革新的な方法をいくつか見ていきます。タスクやデバイスの種類にかかわらず、自身の作業に活用できる ArcGIS アプリが見つかるでしょう。現場でのデータ収集が必要ですか? 対応したアプリがあります。データをオープンに共有する必要がありますか? もちろん対応したアプリがあります。モバイル ワーカーの管理、地理位置情報を利用した新規事業の立ち上げ、情報を便利で有意義な方法で共有する革新的な方法の発見などといったことでも、アプリを使って実現できます。
スマートフォンやモバイル デバイスがあれば、場所を問わず GIS マップやアプリを使用できます。これは素晴らしいアイデアです。携帯電話は、連続的な位置認識機能を持つセンサーで、ジオタグ付きの写真を撮影し、位置によってデータを収集する機能も備えています。スマートフォンと GIS を統合することは、さまざまな意味があります。
スマートフォンを使用して、現場でジオタグ付きの写真やビデオを撮影し、それらを使用してストーリーを伝えたり共有することができます。また、現場のデータを収集して企業の情報を更新することもできます。
さらにスマートフォンから位置に基づく企業の情報にアクセスして、知識や認識を深めることもできます。マップを、現場でのナビゲーションと支援、情報の収集や調査の実施などさまざまな作業を実行したりするために使用できます。その結果を、オフィス内の GIS で同期します。
どのオンライン GIS マップにもインターフェイスがあります。これによって、どこにいても GIS を応用できるようになります。興味深いことに、このインターフェイスとは、実際にはスマートフォンで毎日使っているようなアプリなのです。この Web ページでは、GIS アプリで実現できる内容について多数紹介します。読み進めながら、自分が必要としているものが何か考えてください。これから紹介するアプリの中に当てはまるものがあるかもしれません。また、その可能性について考えてみてください。
ArcGIS が提供する多数の Esri ストーリー マップのストーリーテリングのスタイルから選択すると、比較的簡単にストーリー マップを作成して (第 3 章で詳細に説明します)、利用者と関与してインスピレーションを与えることができます。ストーリー マップ アプリは、情報豊かな説明とマルチメディア コンテンツを組み合わせてユーザーとつながり、交流を促進します。
GIS アプリは、地理情報を公開するための刺激的で魅力的な方法を提供します。ライブ マップを操作したり、世界の GIS に情報を伝えたり、アプリで自分のいる場所を追跡し、特定の場所に着いたときにアラートを出すことができれば、アプリは期せずして強力で魅力的な存在となるでしょう。なぜなら、こうした体験は個人的で使いやすいものだからです。
組織や人々が現場で作業を行う際、GIS を利用して操作性を向上し、効率性アップとコスト削減を実現できる可能性があります。以下に、ArcGIS の現場での使用例をご紹介します。
メキシコ最大の非営利環境保全グループである Pronatura Noroeste は、GIS アプリを使用して海洋観察データを収集します。遠洋でも、エラーが発生しがちな紙形式のデータの代わりに使われるようになりました。技術職ではない現場検査人は、プログラミングの能力がなくても、スマートな Survey123 for ArcGIS アプリを簡単に構成することができます。データの整合性、効率性、正確性を向上するといった目的も達成できました。
Collector for ArcGIS® と Drone2Map を併用し、ノース カロライナ州ウィルミントンのビーチの、高解像度の正射写真を撮影しました。Collector は、測量統制点のネットワークを 3 cm 刻みで捉えます。地上基準点のネットワークを使用し、高解像度の写真と、海岸沿いの低空ドローン ミッションから収集された標高をジオリファレンスしました。
今日の世界では、GIS ユーザーは、GIS を「デジタル ツイン」、つまり日常的な世界をコンピューター化したバージョンを作成、監視、管理する方法として捉えています。GIS を地理空間フレームワークとして使用し、作業の追跡と監視を行うのは理にかなっています。デジタル ツインでは、さまざまなアセットにインストールされたセンサーから取得したデータを使い、その状態、作業状態、場所を継続的に監視します。地理は、これらのマップ位置や現場のセンサー フィードを使用して操作を整理し、管理することができる、汎用的な方法です。
組織の大半は、リアルタイムのデータ フィードを監視、追跡、報告することで、事業を円滑に遂行しています。たとえば、営利会社の多くでは売上と競合相手を追跡します。疫学者は疾病を追跡します。災害時の第一応答者は、事件や事故を監視し、管理します。野生生物学者は動物を追跡し、農家は農作物の状態を感知します。気象学者は天候を監視し、予測します。一方で、さまざまな組織で、モバイル ワーカーの追跡と管理を行っています。
多くの場合、差し迫った問題の解を見つけ出す最良の方法は、地理的な洞察です。マップ上に複数のレイヤーを重ね合わせ、それらを高度な空間モデルで解析することで、今まで見えなかった関係性を浮き彫りにすることができます。ArcGIS を使用しているビジネスマンは、新しい施設の設置場所の選定から最もリスクの大きい地域の発見にいたるまで、モデルを作成し、アプリとして展開することで、ほぼすべての問題に対する解を得ることができます。
メキシコ湾原油流出事故が起きた 2010 年、私は、事故現場の管理に対応していた複数の緊急事態対応機関の中で、顧客を支援するために Esri が派遣したチームに所属していました。状況はやや緊迫しており、私たちは数々の会議を行っていました。そこでは、多くの情報が飛び交い、そのすべてが正確でタイムリーな情報とはかぎりませんでした。現場には多数のチームが存在し、状況の進展を監視したり、データを収集したり、環境調査を行っていました。データの収集活動はまだ紙ベースで行われており、すべてのチーム間の調整は困難でした。
問題は、マップや GIS がなかったことではありません。これらの機関は、すでに最も GIS やマップを高度に利用していたユーザーです。問題は、新しい情報が管理センターに流れてきたときに、適切に共有して、全員が最新情報を把握するという点にありました。私は、海上そして海岸線沿いでデータを収集しているチームが、行動を起こせるように情報を収集して利用可能にすることに苦慮している様子を早い段階から目にしました。
たくさんの科学技術者、緊急事態対応メンバー、イギリス石油会社のスタッフが懸命に努力してくれたおかげで、1 週間以内に多くのことがうまく収まりました。そして、私たちは、GIS がモバイル データの収集や伝達に使用され始めるのを見ました。これらのチームは、マップ、データ、ビデオ、および写真の共有を開始したため、対応メンバーは、緊急指揮センターとうまく連携し、高いレベルで状況を認識できるようになりました。この事故が悲劇的であった一方、モバイル GIS の使用により、これらのチームがどれほど効率的だったかわかりました。
私たちは Esri に戻ると、直接得られたこの経験を活かし、死に物狂いだった週に生まれた多くのアイデアを基にして、製品開発を先導する一役を担いました。このイニシアチブから生まれたアイデアが、第一世代の Collector for ArcGIS アプリになったのです。
今ではこれらと同じ機関で、より効率的な救助および復旧能力を持った対応チームが装備する新しいアプリ群の 1 つとして Collector for ArcGIS が使用されているのを聞くと、非常に励みになります。
アプリは、多くの提供元から入手することができ、自分のデバイスやユーザーのデバイスで使用することができます。Esri やその他ビジネス コミュニティの開発者が提供する、有名アプリ ストアの既製アプリ、ユーザーがテンプレートやビルダーを使用して構成および公開する「自作」アプリから、ソフトウェア開発キット (SDK) やアプリケーション プログラム インターフェイス (API) を使用して開発者が作成した、完全にカスタマイズされたソリューションまで、さまざまなアプリケーションがあります。
ArcGIS には、ArcGIS Online の組織アカウントを持っていれば、すぐに無料で使用できる一連のアプリが含まれています。Explorer for ArcGIS (Apple iOS プラットフォーム用) のようなマッピング アプリは、データのコレクションを管理する方法を提供します。
ArcGIS Marketplace では、Esri のみならず、代理店やパートナーから提供されるアプリやデータ サービスを入手できます。マーケットプレイスのすべてのアプリは、ArcGIS Online と連携するよう設計されているため、それらを ArcGIS Online グループや組織内のユーザーと共有することができます。
ArcGIS Solutions アプリは、政府および地方自治体、危機管理、公益事業、通信、防衛、情報機関など、さまざまな産業をサポートしています。あらかじめ構成された豊富なアプリのコレクションを利用し、ArcGIS を企業ですぐに使うことができます。
ArcGIS では、アプリ構築者向けの開発者ツールを用意しています。独自のアプリを作成するには労力が必要ですが、最大限の柔軟性がもたらされます。以下の、2 つのスタジオベースのアプリケーション ツールでは、独自のアプリを作成し、独自のコードをたくさん記述しなくても済む、開発者向けワークベンチを提供します。
2009 年、米国地質調査所 (USGS) は、新たに作成した地形図 (US Topo) を電子形式で公開しました。また、2011 年には、1882 年まで遡った米国の履歴地形図の高解像度スキャン画像を公開しました。地形図は、いまだ政府、科学、産業、土地管理計画、およびリクリエーションで日々使用される不可欠なツールです。
古地図は、特定の時間における米国の物理的および文化的な特徴のスナップショットです。特定の地域のマップは、その地域の開発前の様子を示し、時間の経過に伴ってどのように変化してきたか示す詳細なビューを提供することができます。古地図は、多くの場合、科学者、歴史学者、環境問題専門家、系図学者、市民、およびその他特定の地理的な場所や地域の研究において役立ちます。USGS は、Esri の協力を受けながら、1 つの場所を中心として USGS 地形図のこの広範なコレクションを表示できる Web アプリを作成しました。USGS Historical Topographic Map Explorer を使用すると、Web アプリ内にある 178,000 枚を超える古地図のライブラリを簡単に調査し利用することができます。このライブラリは、空間、時間、および地図縮尺でマップ別に整理されています。
USGS Historical Topographic Map Explorer は、インターフェイス ウィンドウの左にある番号付きステップに従うだけで、簡単に使用できます。選択すると、隣接するマップのビューが更新されます。
以下の既製のアプリは、目的に合わせてすぐに使用することができます。
API と SDK の違いを理解しているユーザーは、ArcGIS for Developers Web サイトまたは GitHub にアクセスしてください。
既製のアプリではニーズを満たせないなら、自分のアプリを作成してみるのはいかがですか?
他の大都市と同様、サンディエゴでも火災時には消火栓を利用し、人命と財産の安全性を守っています。いざというときに消火栓が作動するよう、サンディエゴ消防局は定期的に検査を行っています。しかし最近までは、このような作業は、面倒な紙ベースの活動として追跡していました。
この演習では、GIS 技術を使用し、点検のシステムを向上できます。あなたは、サンディエゴ市とサンディエゴ消防局のメンバーとして、消火栓点検のアサインメントを作成、管理し、その作業を現場で終了します。ここでは、コンベンション センター周辺の消火栓を、夏の終わりまでにすべて点検することを目的としています。
消防署長から、消火栓点検の任務を与えられました。そこで、いざというときに消火栓が作動することを確認します。消防署長は Workforce プロジェクトを使用して消防士の作業を管理し、あなたはモバイル アプリを使用してアサインメントを表示および実施します。この作業の中で、Navigator を使用して、点検を行う消火栓までのルートを検索します。