3D は、私たちが世界を見る手段です。3D Web GIS によって、地図にもう 1 つの次元を追加することができます。実際の視点でデータを写真のように詳細に見ることができたり、3D シンボルを使用して想像力に富んだ方法で定量的にデータを表現したり、より深い理解を得ることができたり、扱いにくい問題に対する視覚的な見識を提示することができます。
歴史を通じて、地理情報は、その時代に入手できる最高の平面上に 2 次元マップの形式で作成され、表現されてきました。地面の上、動物の皮、洞窟の壁に走り書きされ、羊皮紙に手書きされ、後に機械的に紙に印刷され、最終的には、すべて現在のような形状とサイズでコンピューター画面の上に表示されました。提供方法にかかわらず、世界は一貫して平面で表現されてきました。これらの 2D マップは、知らない都市で道を探したり、法律的境界を決定する場合など、多くの目的で非常に役立ちました (今も役立っています) が、世界を上から見ているために制限があります。
地理データの 3 次元表示は、数世紀にわたって存在してきました。芸術的な鳥瞰図は、都市や狭い地形の地図を作成する方法として人気があり、一般人が直感的に理解することができました。ただし、それらは静的であり、測定や解析に直接使用できないため、本格的な地図製作者には、多くの場合、信頼性の高いコンテンツを提供する手段ではなく、単なるおもちゃと見なされていました。
しかし、このことは、ArcGIS が「シーン (Scene)」の概念を導入して以来、当てはまらなくなりました。実際、シーンは単なる 3D マップではありません。シーンでは、照明、カメラの傾き、視野の角度なども制御できます。地図製作者は、シーンを作成し、地理情報の極めてリアルな表現を 3 次元で生成することができます。これによって、利用者が地理コンテンツを操作するためのまったく新しい手段が提供されます。地形、建造物、地下地質などのように本質的に 3D である空間情報は、直感的および視覚的であるだけでなく、定量的かつ測定可能な方法で表示できるようになりました。つまり、3D データを用いて、リアルな解析やハード サイエンスを実践できるようになったのです。
シーンの最も明らかなメリットは、山岳の地表高度、周囲を囲む地形、建物の形状、ジェット旅客機の飛行経路など、垂直の情報 (および、体積の情報) を組み込むことができることです。これは、Z 軸があることにより実現できる機能です。
3D では、次元の追加によって、認識しやすいシンボルを割り当てることができるため、より直感的に状況把握ができるマップを作成することができます。あらゆるデータを、すべて現実世界と同じ視点から見ることができます。マップの上で認識されるすべてのシンボルは、凡例を参照する手間を省き、何を示しているかを確実に理解できるようにします。
人類が描いた最も古い部類に入る地図の多くは、特に都市や一定範囲の居住地を景観として表したものでした。これらのスタイルの地図は、静的な 3 次元の鳥瞰図で描かれ、場所を理解するのに役立ちました。現在の GIS ユーザーは、シーンをさまざまな視点で対話的な操作で見ることができます。
私たちは、生活している時間の大部分を、地上から数フィート以内の世界で過ごしています。3D によって、この視界を再現できます。この慣れ親しんだ視点からデータを提供することで、シーン上を仮想的に移動する閲覧者は、物体のサイズや相対的位置を直感的に理解できるようになります。森の中にいることや、道路が湖で行き止まりになっていることをわざわざ説明する必要はありません。見るだけで即座に特徴を認識できます。
GIS コンテンツは、2D または 3D で表示できます。これら 2 つのモードには共通点がたくさんあります。たとえば、どちらも GIS レイヤーを含んでおり、空間参照が存在し、選択、解析、編集などの GIS 操作をサポートしています。
ただし、違いも多くあります。レイヤー レベルでは、電柱は 2D マップでは茶色い円で表示されるかもしれませんが、3D シーンでは同じコンテンツが、体積を持つモデルで、サイズや角度が調整されて配置され、電柱に付属する設備や電線も備えた状態で表示されることがあります。シーン レベルでは、地面のメッシュ、照明光源、霧などの大気効果といった、2D マップでは表現できないプロパティがあります。
ArcGIS では、2D ビューを「マップ」と呼び、3D ビューを「シーン」と呼んでいます。
3D コンテンツは、2 種類のシーン環境、つまりグローバル (地球レベル) の世界とローカル (局所レベル) の世界に表示することができます。グローバル ビューは、現在、より普及しているビュー タイプです。グローバル ビューでは、3D コンテンツは球形で示されるグローバル座標系に表示されます。グローバルなキャンバスは、地球規模の航空路や航路など、長距離にわたって広がり、地球の曲率を考慮する必要のあるデータに適しています。
ローカル ビューは、立方体のガラスケースの中で表現される世界に似ています。その世界のシーンでは、限定された範囲が操作対象となります。ローカル ビューは、大学のキャンパスや鉱山の現場などの狭い範囲のデータに適しており、投影座標系内での表示をサポートするというその他のメリットもあります。ローカル ビューは、科学データの表示にも効果があります。科学データの表示では、フィーチャの相対的サイズのほうが、楕円体上のコンテンツの物理的位置よりも重要な要件になります。
「サーフェス」は地表などの起伏を持った面の状態を表します。サーフェス データには、サーフェス上のすべてのポイントの X,Y,Z 値が含まれています。サーフェスは、山脈などの現実世界に存在する物理的なものであることもあれば、道路評価計画など、将来的に存在する可能性のある想像上のサーフェスである場合もあります。人口密度サーフェスなど、概念的にしか存在しないテーマでさえ表示することができます。サーフェスには、1 インチ精度の高解像度のものから、90 メートル以上の精度の低解像度のものまで、多種多様な精度があります。
サーフェスの上に他のコンテンツを布を被せたように表示 (ドレープ) できるので、サーフェスはシーンを作成する際の基本的な構成要素になります。サーフェス自体が主役になる場合もあります (エベレスト山のシーンのようなもの)。サーフェスは、航空写真や行政界など、他の重要なシーン データの表面に起伏を持たせる目立たない役割を果たす場合もあります。また、サーフェスは 3D ベクター シンボルの基本的な高さ情報を提供します。たとえば樹木や建物、消火栓など、他の方法ではシーン内の垂直的な位置がわからないものが含まれます。
現実世界のサイズを使用したフィーチャのシンボル表示は、3D では極めて一般的です。たとえば、建物、樹木、および街灯は、仮想世界内で、現実世界と同じ相対的サイズですべて表示されることが期待されます。街灯の推定照明距離を示す球体のような主題的なシンボルでさえ、現実世界のサイズの概念を伝えるのに役立ちます。
しかし、代わりに画面上のサイズを使用したシンボルをシーンで使用できることも役に立ちます。つまり、シーン内で拡大/縮小したときに、そのシンボルは常に同じピクセル数で画面上に表示されます。この効果は、縮尺を変更したときにシンボル サイズが変わらない 2D マップ レイヤーに類似しています。
3D データは、さまざまなソースから入手できるようになっています。以下に挙げている例は、可能性の一端を示しています。ある程度時間をかけて、これらのアプリを皆さんのコンピューター上で操作してみてください。これらおよびその他多くの革新的な例は、ArcGIS Web シーン ギャラリーに集められています。
LIDAR (light detection and ranging) は、レーザー光線を使用して、地表を高密度でサンプリングし、極めて精度の高い X、Y、Z 計測値を生成する光学リモート センシング手法です。LIDAR は、主に航空機レーザー マッピング アプリケーションで使用されており、写真測量のような従来の調査手法に代わる費用対効果の高い方式として利用が拡大しています。LIDAR は、ArcGIS を使って管理、可視化、解析、共有できる、多数の点群データセットを生成します。
統合メッシュ データは通常、大量の重なる画像の集合から 3D オブジェクトを構築するための自動化プロセスで取得されます。この結果、元の入力画像情報が三角形のインタレース構造によるテクスチャ付きメッシュとして統合されます。統合メッシュでは、建物の壁面、樹木、渓谷、崖など、建造物と自然の 3D フィーチャを現実的なテクスチャで表現し、標高の情報を挿入することができます。統合メッシュ シーン レイヤーは通常、市全体の 3D マッピングを目的として作成されます。Drone2Map™ for ArcGIS® で作成した統合メッシュ シーン レイヤーを ArcGIS Desktop または Web アプリで共有することができます。
この数年間で、ドローンは、ローカル エリアの高解像度な画像を撮影する方法として、ますます一般的になってきました。ドローン画像は、通常、各画像の撮影場所を示す地理情報でタグ付けされるため、ArcGIS で使用できる状態となっています。Drone2Map for ArcGIS では、マップ上に未加工のドローン画像を表示できるだけでなく、画像から 2D マップと 3D シーンを作成することもできます。
デフォルトでは、地下のナビゲーションは、3D シーンの地表サーフェスの下を誤ってズームして混乱を引き起こさないように無効化されています。しかし、地下に属するデータをシーンが含む場合 (地下のユーティリティ パイプや地質体など)、3D シーンでこの機能を有効化する必要があります。
フォトリアリスティック ビューは基本的に、写真を使用してフィーチャに質感を持たせ、現実を再現する試みです。それらは、膨大な労力をかけて仮想世界を自分が実際にそこにいるかのように見せる、間違いなく最も一般的なタイプのシーンです。このコンテンツの作成者は、シミュレーション、計画や設計用、および宣伝ビデオや映画用に仮想世界を作成します。その仕様は極めてシンプルで、 「窓の外を眺めるのと同じように仮想世界を表示する」というものです。
GIS では、フォトリアリスティック ビューは、場所がどのように変化したか、またはどのように変化することが予想されるかを、時系列で一般ユーザーに表示する場合に極めて適しています。たとえば、提案された建物が建設されると都市景観がどうなるかや、恐竜が地球上を徘徊していたときに、ある地域の景観がどのようであったかなどです。フォトリアリスティック ビューは、世界の状態がどのように見えるかをユーザーが想像できるようにする役割を果たし、それらをわかりやすく表示します。
3D エレメントを使用して、データおよびその他のフォトリアリスティックでない情報を表現します。そのアイデアは、2D マップの主題図表現を 3D シーンに応用することです。これらのマップは、強力で人目を引く実体験型の情報プロダクトです。多くの場合、移動可能なシーンとして表示されるか、ビデオとしてパッケージ化され、ユーザー エクスペリエンスをコントロールし、最大のインパクトを与えます。
フォトリアリスティック技術と主題的技術を組み合わせて使用したとき、3D シーンは急速に仮想現実のようになり始めます。シーンのフォトリアリティックな部分は親しみやすいシーンをユーザーに提供し、主題的な部分は重要な情報を伝えることができます。Oculus Rift のヘッドセットを装着すれば、いきなり 3D の世界に入り込むことができます。
私達は 3D で空間を体験し、観察します。コンテンツを見る人は、自分がシーン内を移動するのを想像するように効果的に誘導されます。つまり、ユーザーを取り囲む世界のスタイル (外観) は、一般に、ユーザーがシーンをどのように感じるかについて強い影響を与えることができます。
たとえば、暗い照明や濃霧で示された都市は、不吉な前兆や衰退の感覚を表すのに役立ち、人や車を含めた同じ都市の明るい描写は、その都市が活気があり、安全であることを伝えます。ゴッサムとプレザントビルを想像してください。
3D シーン内の GIS コンテンツ自体のシンボル設定も、シーンの外観と操作性に大きな影響を与えます。基本的に、次の 3 つの選択肢があります。完全にフォトリアリスティック、完全に主題的、またはフォトリアリスティックと主題的の組み合わせです。
主題的ビューは、空間情報をより効果的に伝えるように、現実をモデル化および分類します。主題的 3D ビューは、分類、配色、相対的シンボル サイズなど、一般的な 2D カートグラフィック技術を使用して、現実世界をより簡単に理解できるように簡略化します。3D シーンの作成者は、特に科学的データを視覚化する場合、スケマティック (一部の重要な情報を効果的に伝えるために簡略化された表現) を作成します。
GIS ユーザーにとって、主題コンテンツは、効果的で人目を引く、単に位置を示す以上のことを表示する方法になり得ます。主題コンテンツは、それに関する重要なプロパティも表示することができます。以下の例のように、台風の経路と、変化する風速の両方を示すように、台風のデータ ポイントをシンボル表示できます。
コンピューターによって生成された見事な 3D ビューを見た人が、ほぼ必ず言及するのは、リアリティのある表現力です。ご存知のように、レイトレーシング、アンビエント照明、および反射面を備えた 3D ビューは、ほとんど触われそうなほど実際の世界によく似ています。この種の表示は、特定のタイプの地理情報 (提案された未来の都市景観など) を伝えるのには役立ちますが、すべてを描画するのに適した方法ではありません。つまり、すべてのマップが航空写真ではないのと同様に、すべての 3D ビューが現実世界の再現を試みるべきだとは言えません。
GIS ユーザーは、空間情報を伝えるという 1 つの共通の目的を持って、マップとシーンを共有します。3Dで 主題的シンボルを注意深く使用することは、2D の同様の技術と同じ程度、またはそれ以上の効果があります。たとえば、樹木フィーチャを、棒の上に色付きの球体を載せて (枝を刈る必要のある樹木を赤で表して) 表示することは、葉と枝で覆われた高度にリアルなモデルで表示するよりも、ずっと的を射ています。球体のサイズに現実世界の要素 (各樹木の高さや樹冠の幅など) を反映させることができます。ただし、シンボルの実際の値は、地図表現としての値、つまり、どの樹木が重要かを即座に視覚的に理解することができる、よりシンプルで代表的な表現をするための値です。3D を使用するメリットは、棒の上の球体でも、十分樹木のように見えることです。樹木であることを示す明示的な凡例を使用する必要はありません。
数世紀の間、地図製作者は 2 次元に制限されてきました。地図製作者は、シンボル、分類、色を巧みに使用して空間情報を伝えるより効果的な方法を実験してきました。中世の鳥瞰図の存在は、それらを完全に調べるツールがない場合でも、多くの人が 3 番目の次元の威力を理解していたことを示しています。ところが現在では突如として、そのようなツールを誰もが利用できるようになり、3D 地図製作者は、3 次元という素晴らしいもう 1 つの次元を操作することができます。
3D マッピングおよびカートグラフィは、さまざまな産業、政府、および大学で広範囲に渡って適用できます。以下に挙げている例は、可能性の一端を示しています。
ある程度時間をかけて、これらのアプリを皆さんのコンピューター上で操作してみてください。これらおよびその他多くの革新的な例は、ArcGIS Web シーン ギャラリーに集められています。
基本的な ArcGIS シーン ビューアーを使用して、即座に 3D 空間で作業することができます。これは、WebGL をサポートするデスクトップ Web ブラウザーで機能します。WebGL は、3D グラフィックスを描画するためにほとんどの最新のブラウザーに組み込まれている Web 技術標準です。このシーンのギャラリーをチェックして、使用しているブラウザーが適切に構成されていることを確認してください。
インタラクティブな地球で世界を探索できます。KML をはじめとする 3D および 2D マップ データを表示して、空間情報の理解に役立つように目印を描画できます。こちらからダウンロードできます。
ArcGIS Pro は、豊富な 3D 機能が組み込まれている最新の 64 ビット デスクトップ アプリケーションです。2D ビューと 3D シーンを並べて操作することができます。ArcGIS Pro は、Learn ArcGIS に含まれています。
CityEngine は、シナリオ主導型の都市設計をしたり、プロシージャル技術により構築される都市景観を作成するためのルールを開発できる高度なツールです。
各シーンは、世界の 3D 標高サーフェスの上に重ね合わせたベースマップから開始されます。対象地域にズームして、重ね合わせるレイヤーを追加します。
新しいシーンの設計を開始する前に、その目的を知る必要があります。伝えようとするメッセージまたは情報は何ですか?
この質問に答えることは、シーンの多くのエレメントの設計に役立ちます。
重要な点は、それぞれの判断が、そもそもなぜシーンを構築するのかということに基づく必要があるということです。
フロリダ州パーム ビーチ郡の海岸沿いのビーチと入り江には、動植物で満ちあふれたデリケートな生態系も含まれています。しかし、ビーチは本質的に不安定です。ビーチの砂は、引き潮や、時折訪れる嵐によって洗い流されます。沿岸地域では、頻繁な再生や維持管理が必要です。浅海域や入り江から砂が掘り出され (浚渫され)、浸食されたビーチに補充される一方で、海岸線保護のために人工岩礁が作られています。これらの複雑な再生活動を管理するには、適切な監視とマッピングが不可欠です。
以下のレッスンでは、一般ユーザーと政策立案者の両方に向けたプレゼンテーションの一環として、パーム ビーチ郡のいくつかの主要なビーチと入り江をマッピングすることで、この郡のビーチ再生活動を支援します。海底の地物や地形を強調するために、ArcGIS のシーン ビューアーを使用してマップを 3D で作成します。まず、岩礁、堆積物、および浚渫エリアを示すレイヤーを新しいシーンに追加します。次に、主要なエリアのスライドをキャプチャして、強調したい場所にユーザーが簡単に移動できるようにします。最後に、Web アプリを作成して他のユーザーと共有します。