地図やデータは GIS の基礎です。GIS は、情報をさまざまな種類のレイヤーに整理して視覚化、解析、組み合わせて、世界のほとんどすべての事象を理解するのに役立つテクノロジです。Web GIS は、個々の多くの GIS システムを接続し、地球の集合的な GIS に編成します。これは、インターネットに接続しているすべてのユーザーが利用できます。仲間に加わって参加しましょう。
GIS には、共通のビジュアル言語を通じて、Web に接続されたすべてのものをつなげる素晴らしい可能性が秘められています。これによって、組織内の人々や、世界中の人々を 1 つにすることができます。今日、人々が携わる実質的にすべての分野では、ありとあらゆる組織が GIS を駆使してマップを作成し、コミュニケーションを図り、解析を行い、情報を共有し、複雑な問題を解決しています。これは、世の中の働きを変えていると言っても過言ではありません。マップや地理データに対する人々の考え方を変えたパワーは、この小さなギャラリーを見ると明らかです。ここでは、魅力的な例をいくつかご紹介します。
GIS は、データの中から意味や洞察を見出すことです。GIS は急速に発展しており、理解を深めるための新たな枠組みやプロセスを提供しています。シンプルでありながら、Web やクラウド コンピューティングへの展開が可能であることに加え、リアルタイム情報との統合 (Internet of Things) が可能な GIS は、人間が活動するあらゆる舞台に適したプラットフォームとなりつつあります。いわば、地球の神経系統なのです。このシステムは今や可能になっただけでなく、あらゆる面で必然的であるとも言えます。なぜでしょうか?
GIS はすべてのデータを統合します。それと同時に、このデータを全体像として、直感的に理解するためのプラットフォームを提供します。GIS の神経系統は、科学的な理解を促進し、さまざまな空間的知識 (生物学、社会学、地質学、気候学など、すべての「~学」) を統合および分析するためのフレームワークをもたらします。
GIS は、局所的、地域的、世界的に起こっていることを理解するためのプラットフォームです。マッピングという共通言語を使い、私たちが住む世界の複雑さを理解し、私たちが直面する問題に対処し、周知するための方法を提供します。Esri では、これを The Science of Where と呼んでいます。
私たちの世界は、人口増加、自然破壊、環境汚染といった課題を抱え、気候変動や持続性のジレンマも大きくなっています。私たちは、これまで以上にこのような問題を共有し、対処できるようになったと感じています。また、GIS は私たちの理解を深めるだけでなく、総合的な問題解決、意思決定、そして中でも特に重要なのは、コラボレーションのためのプラットフォームを提供してくれることを確信しています。しかし、そのためには非常に優秀な人々、最も効果的な手法や技術が必要です。さまざまな分野の科学者、優れた思想家、有能な設計者が協力して、持続的な将来を築く必要があります。GIS 技術と GIS 専門家は、今後、私たちに共通する問題に対応し、立ち向かううえで、ますます重要な役割を担うことになるでしょう。
GIS を使って The Science of Where を活用することで、より深い洞察を得て、より良い決定を下し、行動に移せるようになることを願っています。
Internet of Things は現実のものとなっています。水流を測定、気候変動を記録、人々や物の所在地の特定をするためにインターネット接続された装置の網を活用して、地球上で動くもの、変化するものを測定する方法を学んでいます。この情報網はインターネットを通じて活用できるようになっています。つまり、地球に GIS が備えられている状態になっているのです。ロケーション マッピングと GIS は、何が起こっているか常に把握しておくために必要不可欠なフレームワーク、または言語となっています。
これが完全に実現すると、このフレームワークはある種の好循環をもたらします。各地の GIS ユーザーは、それぞれに小さなピースを寄与して大きなパズルを創り上げています。世界中の科学を何度となく活用し、地理情報を収集して整理して、効果的に表現しています。また、マップとインタラクティブなチャートやグラフを併用することで、その結果を視覚化、描写、共有しています。GIS があれば、さらに一歩踏み込んで、もっと詳細にわたる深い質問を投げかけて、さまざまなシナリオのモデルやテストを行うこともできます。GIS 専門家は、The Science of Where を駆使して、人々の意思決定や行動を形成しています。GIS ユーザーが、このサイクルを世界中の何百もの状況や場所で繰り返すと、行動にも科学が見られるようになります。
Web GIS はマップを中心に展開します。アプリで共有され、埋め込まれるデータと基本の地理コンテナー用のフレームワークになります。ArcGIS では、これを「Web マップ」と呼びます。次に示す Web マップの目的は実にシンプルで、過去 120 日間に地球上のいたるところで発生した地震を表示することです (印刷物を読んでいる場合は、体験するためにコンピューターでも本書にアクセスできることを確認してください)。
このマップには、興味を引く点がいくつかあります。まず第一に、このマップはナビゲーションが可能です。つまり、画面移動とズームを行えます。マップには多数のズーム レベルがあり、近づくほど各レベルの表示は詳細になります。いずれかの地震のシンボルをクリックして、マグニチュードと各イベントの日時を確認します。
これらの小さな情報ウィンドウは「ポップアップ」と呼ばれます。それらの構成方法については、この章を終えるまでに学習します。
マップには縮尺に合わせたシンボルもあり、各地震の相対マグニチュードを示しています。背景のマップも、この場合、鮮明な地震のシンボルを際立たせる落ち着いた暗い色調でシンボル化されています。
このようなシンボルの組み合わせで編成されているこのデータは、興味深いパターン、つまり、有名な「環太平洋火山帯」を示しています。このマップは、どの Web ページやアプリにも簡単に埋め込むことができます。それにしても、このマップはどこで誕生したのでしょうか? このマップは、ArcGIS のマップ ビューアーにより、Web マップという形で誕生しました。
GIS の地理的編成の側面は、当初からその考え方の一部でしたが、現在では、Web が持つ重要性の要素となっています。Web GIS には、組織全体、コミュニティ間で、さらには Web 上の不特定多数の人々に対してマップと地理情報を使用可能にするためのオンラインのインフラストラクチャが用意されています。Web GIS のこの新しいビジョンは、現在の GIS 専門家たちの作業を全面的に補完、統合、拡張するものです。
データ レイヤーへの Web アクセスは簡単です。レイヤーごとに Web アドレス (URL) が設定されているため、オンラインでのレイヤーの検索と共有が容易です。また、すべてのレイヤーがジオリファレンスされるため、Web GIS は、複数の情報提供者からのレイヤーへのアクセスと独自のアプリへのそれらのレイヤーの組み換えを手助けする統合のシステムになります。これは、個々の目的を果たすためにレイヤーを構築している、世界中の何百万人もの GIS 専門家にとって重要なことです。これらのレイヤーを再びオンラインの GIS エコシステムで共有すると、これらのレイヤーによって、世界中の増大する包括的な GIS が増強されます。このようなリソースは、日々、充実度を増し、ArcGIS ユーザーによって活用され、Web 上で共有されています。
GIS は進化を続けています。GIS の情報モデルは、当初、単一のコンピューター上のローカル ファイルを中心としていました。そこから、クライアントとサーバーをベースにした、集中的なデータベース環境へと発展しました。最新の GIS の進化では、クラウド内でアクセスできる分散 Web サービスのシステムへと歩を進めました。ArcGIS は、ユーザーが、信頼性の高いマップ、アプリ、地理情報レイヤー、および解析をより幅広い利用者に提供するために利用できる Web GIS プラットフォームとなりました。後の章で説明するように、ユーザーは Web やスマート デバイス、およびデスクトップ上の軽量なブラウザー クライアントとカスタムアプリケーションにより各種の情報を利用できます。
従来の GIS ユーザーの制作物の多くは、特定ミッションの業務をサポートする情報製品、つまり重要な基本のレイヤーとベースマップの構築と管理に関連していました。このようなベースマップとデータ レイヤーを非常に詳細に、かつさまざまな縮尺で編纂するのに多額の投資が行われています。これらのデータには、公共施設網、土地所有権、土地利用、衛星画像と航空写真、土壌、テレイン、行政/国勢調査区画、建物と施設、生息地、水路など、他の多くの基本的データ レイヤーが含まれます。
これらの情報製品は、マップ、包括的データ レイヤー、興味深い解析モデルとして次第にオンラインでの活用の場を広げつつあります。このようなデータは、Living Atlas、美しいベースマップと画像のコレクション、役立つ地理情報としてすべてのユーザー用に実用化され、これらすべてが ArcGIS プラットフォームに組み込まれています。ArcGIS プラットフォームでは、それらのレイヤーが、同様に ArcGIS で世界中のユーザーにより共有および登録されている何千ものデータセットとマップ サービスとともにすべての人に提供されています。
毎日、世界中の何百万という GIS ユーザーが、各自の作業に不可欠であるトピックと、その対象地域の地理データ レイヤーの編纂と構築を行っています。情報の範囲には、ビル内の部屋、土地区画、インフラストラクチャ、近隣地区、町や村、地域、州、国、惑星全体、他の惑星系など、ほぼすべてのものが含まれます。Web GIS は、マイクロからマクロまですべての縮尺で動作します。
地理データは編成の基本要素であり、Web GIS 内の情報は位置で分類されます。これらすべてのレイヤーはこの共通の基本要素を共有するため、どのような主題を持つデータも、同じ地理空間を共有する他のすべてのレイヤーと関連づけて重ね合わせ、解析することができます。
これは、デジタル時代以前のマップ作成者がよく理解していた有力な概念です。目視で解析を実現するための「レイヤー サンドイッチ」を苦心して作り上げるために、トレーシング ペーパー、後には透明のプラスチック シートが使われていました。コンピューターを使用してこの処理を能率化したいという願いが初期の GIS 開発の契機となりました。この概念を表す専門用語が「ジオリファレンス」であり、コンテンツの一部を地理的空間内の位置に関連付けることを意味します。
そして今度は、共有データのジオリファレンスという概念を Web へと広げます。突如として、利用可能なコンテンツが、自分独自のレイヤーや同僚のレイヤーだけではなくなり、特定の領域についてこれまでに誰かが公開し共有したすべてのコンテンツになります。これが、Web GIS が魅力的で有用なテクノロジとされる理由です。ユーザーは、異なるデータ作成者から提供されるこれらの各種データセットをどれも自分独自の世界観に統合し、重ね合わせ、空間解析を実行することができます。
GIS は技術であり、科学でもあります。その概念は単純で、地理空間で互いに関連する形で配置されたデータを (ジオリファレンス) 個々のレイヤーに分類します。
GIS の地理データセットは、一定の範囲 (エリア) を網羅する動的なスタッキング マップ レイヤーとして表示されます。これらのレイヤーは、実質的にどのようなオブジェクト (固定されているオブジェクトでも、移動するオブジェクトでも可能)、境界線、イベント、空間現象を描写できます。
ジオリファレンスされる情報レイヤーは、GIS の鍵となる特徴です。本質的に異なるデータを共通の地理空間に表示、結合、解析することができます。
各種の地理情報として ArcGIS に格納することができる情報アイテムについて考えます。よくアクセスされる主要 3 アイテム (レイヤー、Web マップ、シーン) を検証してみましょう。
レイヤーは地理データの論理的なコレクションです。マップについて考えると、 マップには、道路、対象地域、公園、水域、地形のようなレイヤーが含まれている場合があります。レイヤーは、マップやシーンを作成するために地理データがどのように整理および結合されているかを示しています。つまり、レイヤーは地理的解析の基盤でもあります。
レイヤーは、地理フィーチャ (ポイント、ライン、ポリゴン、3D オブジェクト)、画像、サーフェスの標高、セルベースのグリッド、位置を含むほぼすべてのデータ フィード (天気、河川ゲージ、交通状況、セキュリティ カメラ、ツイートなど) を表現できます。以下に、レイヤーの例をいくつか示します。
Web マップは、ArcGIS での作業の基盤となる主要なユーザー インターフェイスです。これらは、GIS アプリケーションのペイロードを保持し、ArcGIS プラットフォーム上で地理的に参照されている情報を共有するために使用される基本の配布メカニズムです。GIS マップごとに、1 つのベースマップ (背景) と作業に必要なデータ レイヤーのセットが含まれます。このマップが 2D の場合、「Web マップ」と呼ばれます。次の画像は、2 次元 Web マップの例です。
シーンは、Web マップの 3D 版です。シーンは Web マップと似ています (これらは、操作オーバーレイによってベースマップ レイヤーと結合されます) が、シーンがもたらす 3 次元、つまり Z 軸は、特定のイベントを調査する際に追加の視点を提供します。次の画像はシーンの例です。
GIS 解析とは、コンピューター処理で導き出した結果を空間的にモデリングし、それらのモデルの結果を調査して解釈するプロセスです。空間解析は、適合性および可能性の評価、推定と予測、解釈と理解などに有効です。
ArcGIS では、分析結果を生成する大規模なモデリング機能のセットを提供します。一般に、これらの関数は、新規のデータ レイヤーと関連する表形式の情報を生成して、ユーザーが ArcGIS を使用して、考えられるほとんどすべての種類の空間的問題をモデリングできるようにします (第 5 章では、この領域の ArcGIS について詳細に説明します)。
解析機能がシステムに組み込まれていることもあります。これ以外の多くの状況では、経験豊富なユーザーが解析ツールとして独自のモデルを作成します。これらのモデルは、他の ArcGIS ユーザーと共有することができます。また、これらのモデルは、ArcGIS Enterprise (高度な GIS サーバー) でジオプロセシング タスクを新規作成するためにも使用できます。上級ユーザーは高度な解析モデルを作成することができ、他のユーザーがそれらのモデルを共有およびアクセスして、解析結果を処理できます。
初心者でも空間解析を応用できることを意味しています。実践経験を積むと、空間解析とモデリングについての高度な知識のレベルを上げることができます。空間解析の応用をすぐに開始できるということは素晴らしいニュースです。最終的な目的は、GIS を使用して空間的な問題を解決する方法を学ぶことにあります。
どの GIS マップにも、そのマップを使うときにユーザー エクスペリエンスを提供してくれるインターフェイスが備わっています。このユーザー エクスペリエンスを生み出すのはアプリです。アプリによって GIS はその能力を発揮します。他のアプリと同様、これらのアプリも、携帯電話やタブレット、Web ブラウザー、パソコンなど、どこでも使用できます。
軽量のマップ中心のコンピューター プログラムであるアプリについては第 7 章で詳細に説明しますが、ここでは、コンテンツの公開者は、特定のマップやシーン、データ レイヤーを組み合わせ、他のアプリ プロパティを設定して、情報を伝えたい特定のユーザー向けにアプリを構成できることを理解しておく必要があります。構成したこれらのアプリは、保存後に、選択したユーザーと共有できます。さらに、これらのアプリは、自分の ArcGIS アカウント内のアプリ アイテムとして管理できます。
私たちは、アプリの概念を大いに活用しています。使い方もわかっています。基本的な個人用のナビゲーション マップを活用し、重宝しているユーザーも多くいますが、マップ アプリでより多くのことができるようになりたいという期待が高まっています。
結果として、マップベースのアプリは、組織が GIS の活用範囲を有効な方法で広げる手段になっています。
さあここで、ArcGIS を体験してみましょう。以前からのユーザーで、すでに (公開者権限が付与された) ArcGIS サブスクリプションを保持し、かつ ArcGIS Pro デスクトップ アプリがローカル コンピューター上にインストールされている場合は、そのまま Learn ArcGIS のレッスンに進むことができます。これらの 2 つの条件を満たしていない場合は、このセクションを読み続けてください。
このブックにあるレッスンの大半は、ArcGIS プラットフォーム (クラウド内) 上で行うことができ、その多くは ArcGIS 組織の (公開者権限が付与された) メンバーシップを必要とします。これは、データが豊富な学習サンドボックスのようなもので、ArcGIS を使ってみたい学生などのユーザー向けです。メンバーシップをお持ちの方は、マップの利用、データの探索、Web への地理情報の公開をすぐに開始することができます。Learn ArcGIS の組織にアクセスし、[今すぐサイン アップ] リンクをクリックして 60 日間のメンバーシップを有効化してください。
ArcGIS Pro は、ローカル コンピューターにダウンロードおよびインストールして使用するデスクトップ アプリケーションです。ArcGIS Pro をお持ちではない場合、Learn ArcGIS 組織に加入したときに期間限定のライセンスを付与いたします。システム要件を確認してから、下の [ダウンロード] ボタンを使用して、ソフトウェアをローカル コンピューターにインストールしてください。
ArcGIS Pro は、64 ビットの Windows アプリケーションです。お使いのコンピューターで ArcGIS Pro を実行できるかどうかを確認するには、システム要件をチェックしてください。
ArcGIS Pro のダウンロードArcGIS に慣れるには、まずやってみることが一番の近道です。この Learn ArcGIS レッスンでは、ArcGIS Online から郵便番号のレイヤーを追加し、そのレイヤーに人口統計データを付加することによって、ミシガン州デトロイトのマップを作成します。また、スマート マッピングを適用してレイヤーのスタイル設定をしたり、ポップアップを構成して人口統計情報を読みやすくしたりします。最終的には、データに基づいて明確なストーリーを伝える Web アプリを構成して、所見をレポートにまとめます。
ミシガン州デトロイトでは、貧困に苦しむ子供たちが米国のどの都市よりも多く生活しています。今回あなたは、コミュニティ プログラムや貧困救済活動をサポートする慈善団体で働きます。今年、この慈善団体は、その財政的支援をデトロイトの危険な状態の子供たちに向けたいと思っています。あなたの目標は、最も必要とされるところにそのプログラムが提供されるようにすることです。